自民党国土強靱化推進本部本部長に就任した佐藤信秋参院議員は、建設専門紙各社の取材に応じ、国土強靱化政策の展望を話した。政府の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の後継となる実施中期計画について「何年で総額いくらくらいかを示し、中身を詰める2段階で進めたい」と検討の加速に意欲を見せた。検討のポイントに、当初予算を含めた全体の規模感や物価上昇の影響を挙げた。災害対応を担う地域建設会社の重要性も強調した。
自民党は11月22日の総務会で本部長人事を決めた。東日本大震災や能登半島地震の復旧・復興が続く中で、自然災害が多発し、南海トラフ地震や首都直下地震による甚大な被害が懸念されている。佐藤氏は「国民の皆さんに日本は災害列島であることを分かっていただけている」と現状認識を示した。自然災害の頻発化、激甚化から「安全に暮らしていくことに対応する力を国民、国土の全体でつくっていく」と抱負を述べた。
2013年に議員立法で国土強靱化基本法が制定され、23年の同法改正によって法律に基づく実施中期計画の策定が決まった。18年の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(事業規模約7兆円)に続き、現在は5か年加速化対策(21~25年度、事業規模おおむね15兆円程度)が進行中。国土強靱化を巡る政府・与党の取り組みには「ハード・ソフトのスピードを上げないといけないという議論になった。(予算の)上積みの思想が持ち込まれた」と語った。
政府は実施中期計画を「早急に策定する」と総合経済対策に明記した。5か年加速化対策は24年度補正予算案で事業規模約14・3兆円、国費約7・4兆円が措置された。事業規模には、民間事業者分(23年度は約7000億円)が来夏に加わる。国費は物価上昇分に相当する緊急対応枠(23、24年度計6000億円)を含めると約8兆円となる。
佐藤氏は実施中期計画について「5か年加速化対策は、3か年緊急対策のペース(事業規模)を2割上げた」とした上で、「(5か年加速化対策の)15兆円の上積みだけでなく、(21~25年度の一般公共事業〈国費〉当初予算の累計〈25年度は推計〉)約32兆円とでも考えていく必要がある」と指摘した。計画期間は「5、7、10年にするかはこれからの議論」としながらも、「物価が上がっている」として「2割増やすのか、毎年5%引き上げるのか、上積み分だけでなく全体を考えていかないとパフォーマンスが落ちる」と説明。「(計約47兆円は)2割増やしたなら約56兆円になる」と話した。
政府には物価上昇の「解釈を十分にしながらの検討」を求めたい意向を表明し、「(既に)上昇した分をベースに考えようではないか」と話した。「災害が来る中で、(対策が)今までと同じようなペースだと間に合わない」と、危機感も示した。12月中に同本部の会合を開く予定。
「政府にどう要求するかみんなで議論していく」とした上で、「総額でいくらにしようという議論が大切になる」と私見を述べた。「(計画策定の)作業が大変。世の中の皆さんを不安にしてしまう」として、総額の了解や決定は「難しいかもしれないが、年内でもいい」と述べた。
災害発生直後から緊急対応に動く建設業は「地域の危機管理産業」と話した。会社の数や人員の問題などから出動できなくなるような事態に懸念を表明。「働く人を大事にするのも経営者を大事にするのも同じこと」と述べ、処遇改善と公共の仕事での配慮を求めた。能登半島地震の復旧では「めげずに立ち向かう人が6割くらいになったかもしれない。地元の建設業にどう頑張ってもらうか考えないといけない」と指摘した。
from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169510
via 日刊建設工業新聞
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