2024年12月16日月曜日

回転窓/湖国を愛した人逝く

 句集『湖国』には静岡・浜名湖を題材としたいくつもの作品が収載されている。〈浜名湖の朝風受けて幟(のぼり)立つ〉〈貝眠る奥浜名湖の良夜かな〉▼作者は中村建設(浜松市)代表取締役会長の中村信吾氏。俳句を長年の趣味とし、これまでに『引佐細江』『澪標(みおつくし)』も含めて3冊の句集を上梓(じょうし)している▼近年は俳句音楽の普及にも熱心に取り組む。音楽に合わせて句を詠むことで、言葉の美しさや奥深さがより豊かに表現できるという▼中村氏が78歳で亡くなった。日本建設業経営協会(日建経)会長を務めるなど業界の発展に向けて尽力し、地元・浜松の地域振興にも貢献してきた人である。何事にも真摯(しんし)に向き合うその人柄は、人や自然への優しいまなざしが感じ取れる多くの俳句からもよく分かる▼物理学者で俳人の有馬朗人氏(故人)は『湖国』に一文を寄せている。「俳句は自然や生活・文化などに触れながら己の気持を素直に詠(うた)うものであるが、同時に句作を通して自らを高めていこうとする姿勢が大切である。中村信吾さんには、こうしたひたむきなものがあふれている」。郷土を愛した中村氏の吟行はきっとまだ続いている。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169824
via 日刊建設工業新聞

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