日本建築家協会(JIA、佐藤尚巳会長)が11月29日に大分県別府市内で開いた「JIA建築家大会2024別府」で、建築家の重松象平氏(OMAパートナー兼ニューヨーク事務所代表、九州大学大学院人間環境学研究院教授)が基調講演した=写真。テーマは「Open-ended Architecture」。Open-endedをキーワードに、建築と都市の関係性や今後の在り方について語った。
1973年生まれの重松氏は九大工学部建築学科を卒業し、98年からオランダ出身の建築家レム・コールハース氏が率いる建築設計事務所「OMA」に所属。中国・北京で「中央電視台本社ビル」(2008年竣工)の建設プロジェクトを指揮した。複雑な形状でアイコニックな建築を担当した重松氏は「右肩下がりの日本経済で育ってきたので近代化の高揚感を知らなかった。当時(00~10年代)の中国で高揚感を体験できた」と振り返った。
08年にOMAパートナーに就任。世界各地でさまざまなプロジェクトを手掛けるとともに、米ハーバード大学や米コロンビア大学などで教育にも従事してきた。こうした経験を通じて「最近は『Open-ended』という限定しない建築、空間に興味を持っている」と話した。
建築デザインを手掛けた「虎ノ門ヒルズステーションタワー」(東京都港区、23年竣工)を「アクティビティーを吸い込み、つなげることに特化したタワー」と紹介。さまざまに用意したつなげる仕掛けを解説しながら、「『集まる』に注目している。集まるための空間で集まるのではなく、そう意図されていない空間にみんなが集まる。それは都市的な建築の使い方だと思う。集まることで場をつくる。人間主導で集まることが面白い」と述べた。
最近懸念している一例として公園を挙げ、「公園は緑があり、ぼーっとゆっくりできる所だと思う。ニューヨークのある公園では今、民間のプログラマーが入り年間1000人以上が集まるイベントをやっている。悪いことではないが、公園が建築のようになり始めている」と指摘した。
重松氏は「建築は高度に洗練され、逆に都市は自由で制御されない」と定義。その上でタワーと公園の事例を踏まえ「『都市が建築化している』と言えるし、『建築が都市化している』とも言える」と持論を展開した。
ニューヨーク州北西部にある「バッファローAKG美術館」(1862年創設)の増設・リノベーションプロジェクト(23年竣工)を紹介。「美術館の役割がギャラリーだけでなく、コミュニティーエンゲージメントへと拡張している。ギャラリーという洗練された機能をきちんとつくりつつ、自発的、都市的な行為が行われる所を建築家として見つけていく」との考え方を示した。
Open-endedの方向性について「限定されていない空間を建築家として見つけていくべきだ。都市がここまで制御(建築化)されてくると、建築が逆に都市的な部分を残していくべきではないか」と締めくくった。
from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169670
via 日刊建設工業新聞
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