企業間取引の優越的地位の乱用規制について議論してきた公正取引委員会と中小企業庁の「企業取引研究会」(神田秀樹座長)は17日、座長一任の形で報告書案をまとめた。現行法の買いたたきとは別に、下請事業者の利益を不当に害する行為を規制する必要があるとして、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を求めた。会見した神田座長は「法改正は(委員が)ほぼ一致」と話し、「デフレ下の企業取引の商慣行を変える」ことの重要性を強調した=写真。
研究会は適切な価格転嫁を促し、「デフレ下の企業取引の商慣行を変える問題意識」(神田座長)で、企業間取引を巡る課題を議論してきた。報告書案では、適正価格(フェアプライス)の観念から、下請事業者からの価格協議の申し出に応じなかったり、親事業者が必要な説明を行わなかったりする行為を「新しい行為類型」として例に挙げた。
下請代金支払では、紙の有価証券の手形を下請法による代金の支払手段とすることを認めず、支払期日までに満額の現金と引き換えるのが難しい手段も認めない考えを示した。下請代金の支払い条件については、下請法が適用されない取引でも手形の廃止や支払サイトを短くする対策が必要と指摘した。その上で、支払サイトを不当に長く設定するような行為は、優越的地位乱用の問題として、独占禁止法の「優越ガイドライン」で考えを示すことを検討するよう求めた。
下請法の適用を逃れる事案があることで、従業員300人(製造委託など)または100人(役務提供委託など)を軸に同法の適用基準を検討することも求めた。「下請」の用語を改める必要があるとも指摘した。知的財産・ノウハウの取引を適正化するための実態調査を幅広い業種で行うことも提案した。
下請法の執行に関し、各産業の所管省庁が保有している中小企業庁の措置請求の調査権限に加えて、問題のある行為に対する指導権限の規定も必要とした。
会見で神田座長は「長年の間に形成された商慣習、慣行を今の時代に合わせないといけない。サプライチェーン(供給網)全体でやる手段として下請法、独占禁止法のガイドライン(の改正、改定)でやろうと考えた」と話した。「(対策を)民間の人に理解していただき、日本経済反転のチャンスに結び付けてほしい」とも求めた。
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