2024年12月24日火曜日

回転窓/希代の詩人の教え

 〈生きているということ いま生きているということ……〉。詩人の谷川俊太郎さんの代表作である「生きる」は、世代を越え多くの人たちに読み継がれてきた詩だろう▼生きること、命をテーマにしつつ重々しくも軽々しくもない、感受性豊かな言葉で表現し、老若男女を問わず共感する人は多い。東日本大震災の発生後、被災者らの間でネットを通じて広がり、心の支えになったようだ▼活躍の場は翻訳、絵本、作詞など幅広い。アニメ「鉄腕アトム」の主題歌を作詞し、米国の絵本「スイミー」や漫画「ピーナッツ」なども翻訳。手掛けたものは子供たちに広く受け入れられた▼おこがましくも同じ言葉をなりわいにする者として、書く際は「できるだけ自分を空っぽにする」という谷川さんの精神状況を意識している。決まり文句など頭の中の言葉にひきずられないようにすると、思いがけない言葉が入ってくるのだとか。小欄も苦しんだ先に、ふっと浮かんだ言葉がピタリとはまる瞬間が少なからずある▼先月、92歳で亡くなられた谷川さん。晩年も創作を続けた希代の詩人の教えを忘れず、今日も紙面と向き合いたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170073
via 日刊建設工業新聞

0 comments :

コメントを投稿