取材で静岡に出張した帰り、二十数年前に通った大学の最寄り駅で途中下車した。お目当てはホームにある立ち食いそば屋の「天玉そば」。甘めの黒いつゆに、小エビと野菜のかき揚げと生卵をのせたどこにでもある定番メニューだが、たまに無性に食べたくなる▼いつも空腹を抱えた貧乏学生時代、ホームに漂うそばつゆの匂いに誘われ、通学仲間たちと食べた思い出の一品でもある。カウンターで背中に寒風を感じながらすするそばはまた格別。冷え込みが強まるこれからが、駅ホームの立ち食いそばシーズン本番といってよいだろう▼地元で長年愛され続けてきた立ち食いそば屋だが、経営は年々厳しさを増しているという。街中の至る所にコンビニができ、大学も学食などの飲食施設を充実させたことから、利用者は減少の一途だそうだ▼数年前から反対ホームの店の営業を昼だけに限定。天ぷらも注文を受けてから揚げる方法に見直したが、一人で切り盛りするおばちゃんは「そろそろ潮時かな…」と漏らす▼都心部では有名店が集まる「駅ナカ」にスポットが当たる。地方駅の魅力向上も地方創生の大きな課題では。
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