2018年3月5日月曜日

【駆け出しのころ】名工建設取締役専務執行役員土木本部長・岡田裕輝氏

 ◇考える力を身につける◇

 1977年に名工建設に入社し、最初の2年間は比較的工期が短い建設現場を転々としました。大学で土木工学を学んだのですが、実際の現場では分からないことばかりで、とにかく忙しく、休みが取れなかったという記憶だけが残っています。

 転機が訪れたのは3年目の夏に担当した日本道路公団(現中日本高速道路会社)発注の西富士道路伝法工事(静岡県富士市)でした。急に高度な知識や技術を求められたのです。最初に苦労したのが図面の読み方でした。当時の道路公団の図面はヨーロッパで使われている記号などが多く、それを一つずつ調べ、先輩や上司にも聞きながら覚えていきました。

 現場の写真撮影や測量も大変でした。昼間は施工管理に追われ、自分の仕事ができず、夜間に測量を行うこともよくありました。体力的にも厳しい中で、当時考えていたのが、どうすれば測量のポイントを早く出せるのか、効率よく写真撮影ができるのか、現場が円滑に進むのか、ということでした。しかし、その時は考えるだけで、あまり実践ができず、日々の仕事に追われたというのが実情です。

 この現場は、所長が39歳で、あとは30代、20代という若い社員ばかりで、みんなが寝食を忘れて、なんとか工事を仕上げたという感じです。ただ、この現場を経験させてもらったおかげで、その後の工事でつらいと思うことはほとんどありませんでした。同時に現場での自分のポジションが上がるごとに、限られた時間をどう上手に使っていくのか、どう施工すれば効率的にできるのかを考え、上司に相談し、発注者に設計変更をお願いするようになりました。

 例えば、87年に担当した東海道本線清洲BV新設工事ではレールの散水設備を発注者に提案し、採用されました。レールは夏場になると高温になります。線路下に構築するボックスカルバート工事の影響で、レールに余計な力がかかり、ゆがむ危険性があるというので、地下水をくみ上げて散水し、レールを冷やしながら施工しました。

 このほかにも、下水道の推進工事で到達立坑に水をため、立坑内への土砂の浸入を防ぐ水中到達や、工期短縮に向けて、大口径管の敷設工事に土留めではなく、オープン掘削を提案したこともありました。発注者を説得するためには、図面や予算書の作成など手間が掛かります。確かにその準備は大変ですが、提案内容が採用されれば、施工が円滑に進み、リスクも解消できます。

 土木工事はさまざまな工種や施工方法があり、工夫を行う余地がたくさんあります。まずは技術者自身が工事をどう進めれば効率的にできるのかを考えることが大切です。考えを巡らせていれば、思わぬ発想が出て来るものです。少額でリスクが解消できれば、発注者も採用してくれます。若い技術者が考える力を身に付け、新たな発想が生まれるような環境づくりが、これからできれば良いと思っています。

 (おかだ・ゆうき)1977年岐阜大工学部土木工学科卒、名工建設入社。05年名古屋支店土木部長、08年執行役員土木本部土木部長、10年同大阪支店長、12年取締役執行役員大阪支店長、14年同常務執行役員名古屋施工本部長、16年同常務執行役員土木本部長、17年現職に。愛知県出身、63歳。
若い頃は測量が間に合わず、夜間に行うこともあった

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