◇風通しのよい社風が特徴、上司と部下に対話の仕組み導入◇
東亜建設工業は1908年に、浅野財閥の総帥・浅野総一郎が鶴見川の河口に広がる海面約495万平方メートルの埋め立て事業計画を神奈川県庁に提出したことが第一歩とされる。以来、港湾工事に強みを持ち、建築、海外事業でも一段と存在感を高めている。
人材採用に当たっては、▽チャレンジする自立人間▽社外に通用するプロ▽コミュニケーションが取れる協働の推進者-の三つの観点を重視する。採用を担当する管理本部人事部人事課の服部剛至氏は「面接では学生時代にどんなことをやってきたのか、なぜそれをやろうとしたのか、目的意識や課題を解決してきたプロセスに焦点を当てて聞くようにしている」と話す。
学生にとって有利な売り手市場が続く中、応募人数を確保するため、採用側にも工夫が求められる。インターンシップ(就業体験)など、学生との「生の接点」を増やすようにしている。
インターンシップは、従来の2週間で実施するものに加え、17年度から1日で実施するものも導入。学生が職人や社員にインタビューする時間を設けるなど、建設業の一端に触れる独自の方法も取り入れている。「土木や建築、機械などを勉強してきても、実際に現場で行われていることは知らない人がほとんど。ゼネコンの仕事を知る機会にしてほしい」(服部氏)という。
同社の海外売上高比率は2割、進出国は50カ国に上る。17年度から海外勤務を志して同社への入社を希望する学生向けのセミナーを始めた。海外で勤務した経験のある社員らが講師を務め、海外での仕事や生活の細部を直接伝える。課題を設けてのグループワークにも取り組む。海外に特化したセミナーはゼネコンでは珍しく、参加した学生からの評判も上々だ。
服部氏も海外勤務経験者。「海外要員の早期育成が必要。海外では若くしてマネジメントを学べる」として、海外勤務を経験する「トレーニー制度」の拡充を提案した。赴任期間を従来の半年から3カ月に短縮し、対象を入社4年次以降から3年次以降に広げた。人数も年間10人に増やした。
風通しのよい社風が売りの同社だが、さらなる改善へ4月から「TOAダイアログ」と呼ぶ制度を導入した。年4回上司と部下が業務面接ではなく、対話を行う。「何を考えているか、どんなことに興味があるのかなどを共有し、共に成長できる環境をつくるのが狙い。ゼネコンでは新しい試みではないか」(服部氏)。
入社7年目の服部氏は、この制度の導入にも関わった。上司から「会社を担っていくのは若い人材だ。加わってほしい」と直接言われたという。人事制度という根幹の部分に若手から中堅が携われることも、同社の魅力の一つといえる。
年々、学生の就職活動期間が短期化している。服部氏は「将来を考えたり、自分と向き合ったりする時間が減っている。そうなると外面などで会社を選びがちだが、会社の善しあしは中身だ」とし、学生たちには、中身をしっかり見定めて就職活動に取り組んでほしいとアドバイスを送る。
《新卒採用概要》
【新卒採用者数】男性41人、女性6人(17年度実績)
【平均勤続年数】男性20・5年、女性17・0年(18年3月末時点)
【平均年齢】 45・7歳(18年3月末時点)
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