◇施工は鹿島JVら◇
栃木県が、2020年東京五輪や22年国体などを見据えて整備する「総合スポーツゾーン」の工事が順調に進展している。
新設施設の中で先んじて着工した新スタジアムでは、県や建築工事を手掛ける鹿島を代表企業とする建設共同企業体(JV)らが施工にまい進し、スタンドの姿が徐々に見え始めてきた。20年4月の供用開始へ向けて、最盛期に入った現場を取材した。
新スタジアムの計画地は、宇都宮市西川田のかつて競馬場があった場所で、総合スポーツゾーンの北エリアに位置する。第一種公認の陸上競技場で、全天候型舗装の400メートルトラックが9レーン設けられる。Jリーグ設置基準に適合した天然芝のサッカー場としても利用される。観客席数は約2万5000席。丸みを帯びた「おわん型」のスタンドで、長辺250メートル、短辺200メートル、周長720メートルの大きさだ。うねりがあるS造の膜屋根が設けられる。
◇ダイナミックな現場で緻密な作業◇
昨年4月に工事が始まり、同6月から杭工事に着手した。時計回りチームと反時計回りチームという2班体制で施工を進めており、これまでに下部スタンドがおおむね完成し、現在は、上部のスタンド工事などに取り組んでいる。同県県土整備部総合スポーツゾーン整備室の分田久貴室長は、「県民に愛され、県民が誇りに思う施設を目指して、県職員と施工者が一丸となって整備を進めている」と話す。
分田室長㊨と石井所長 |
今回の工事の大きな特徴は、工期短縮を図るため、全体的にプレキャスト(PCa)構造を取り入れていることだ。上部スタンドに用いる階段状の梁の部分は、プレキャストプレストレストコンクリート(PCaPC)構造で、1個当たり10~30トンの部材を現場で地組みしてから、据え付けている。最も小さい組み合わせでも約70トン、最大では200トンという重さになるため、750トンの巨大クレーンを2台投入して、作業に当たっている。
鹿島JVの藤森啓祐監理技術者(次長)は、「部材は大きいが、作業はデリケートでミリ単位で合わせている」と話す。寝かせて地組みした物を、スタンドの斜めの形状に適合する角度に調整してからつり上げて設置していくなど緻密な作業が続く。県の鈴木秀男室長補佐(総括)は、「一つのずれが全体に影響してしまうため、非常に高い施工精度が求められる。一流の技術がなければできない」と説明する。
階段状の梁を設置した後は、PCaPC構造の周方向梁を取り付け、PCa構造の下部床版や階段状の床、踏み石などを順次、設置していく。今秋に屋根の鉄骨工事が始まり、来年4月ころから屋根膜の工事に取りかかる予定だ。来夏にはスタジアムの全体像が現れてくることになる。
県では、今月から一般市民向け現場見学会を行っている。第1回の見学会では、巨大クレーンなどのダイナミックな姿に、参加者からは「すごい!」と歓声も上がった。総合スポーツゾーンの整備工事を見てもらうことで、施設に愛着を持ってもらい、積極的な活用につなげる狙いだ。
今後の見学会は、子どもの参加を見越して、夏休み期間に4回開催する予定にしている。県の分田室長は、「建設現場のすごさを伝えて、建設業の魅力向上に少しでも貢献したい。子どもたちに夢を与える機会にしていきたい」と話している。
◇県民に愛されるスポーツ拠点に◇
栃木県は、国体などを契機に、県民向けの総スポーツ推進拠点となる「総合スポーツゾーン」の整備に取り組んでいる。全体の面積は71・1ヘクタールで、新スタジアムや新武道館、新体育館・屋内水泳場が新設されるほか、既存の硬式野球場や陸上競技場の改修なども一体的に進行中だ。
工事が進む新武道館 |
新武道館や新体育館・屋内水泳場も含めて、主要な工事は着工済み。新武道館は1期工事部分が来年秋に供用開始する予定だ。新体育館・屋内水泳場の整備・運営にはPFI手法が導入されており、21年の国体リハーサル大会に向けて、工事が進んでいる。
《工事概要》
【工事場所】宇都宮市西川田2
【構造・規模】RC・SRC・S造4階建て延べ4万2168m2
【発注者】栃木県
【設計・監理】久米設計・AIS総合設計・本澤建築設計事務所JV
【施工】建築=鹿島・増渕組・渡辺建設・那須土木・磯部建設・浜屋組JV△電気設備=ユアテック・三信電工・大進電気工事・テクノ産業・中央電機通信・前田電設JV△給排水衛生設備=日神工業・田中工業・横山工業JV△空調設備=藤井産業・小牧工業・金箱工設JV
0 comments :
コメントを投稿