都市圏と地方の格差は広がる一方だ… |
「東京の本社やお膝元にある関東圏の支店とは違い、遠方の支店・営業所が管轄するエリアの事業基盤のぜい弱さを経営層はどう感じているのか」
大手ゼネコンの地方支店の事務系社員として勤続20年を越える田村眞さん(仮名)は、都心部に比べて少子高齢化や人口減少が急速に進み、経済の発展性に乏しい地方での明確な経営戦略が見えてこない現状に不満を漏らす。
地元の国立大学に進学し、経済学を学んだ。卒業後も地元に残り、生まれ育った町の活性化や発展に関わる仕事に就こうと考えていた。就職先として建設会社を特に意識していなかったが、駅前再開発や山奥のダム建設などの現場に掲げられていた同じ建設会社のコーポレートマークが頭に浮かんだ。
採用試験は銀行や役所関係のほか、建設分野で思い浮かんだゼネコン1社を受けた。面接などを通して建設業の具体的な仕事内容や役割などを知り、事務職ながらも地域の発展に貢献できることに魅力を感じた。
入社後は研修を終え、本社の管理部門に数年勤務した後、地元の支店に配属された。3K(きつい、危険、汚い)の代名詞とされる建設業。構造物の建設に直接的に関わる技術職と違い、事務職は現場の後方支援的な役回りが多く、それほどの大変さではないだろうと考えていた。
しかし、社内外の調整や予算管理など、日々状況が変わる現場関連の業務では、常に緊張感を持って取り組むことが求められた。現場で死亡事故が発生した際、突然の出来事に形式的なマニュアルでは対応できない中で、事故現場でもマスコミ向けの会見場でも誠実に対処することを心掛けた。会見後には地元の人たちから「大変だろうけど、地元のための工事を最後まで頑張って下さい」と励ましの言葉を掛けられた。
厳しい言葉が飛び交う時もある。それでも建設産業で働く人たちは社会に役立つ仕事に誇りを持ちながら、建築物や社会インフラを造り上げてきた。
人々の暮らしや社会・経済活動を支える建設産業だが、需要が低迷し、受注が落ち込めば営業拠点の縮小・撤退、人員の見直しといった経営判断が迫られる。これまでは景気変動の影響を受けながら、地方支店でも一定の工事量を何とか確保できた。5年、10年後は一段と先が見えない状況にあり、地方の危機意識はより高まっている。
「人・モノ・カネが集まる東京などの大都市圏がある一方で、あらゆる面で縮小傾向に歯止めがかからない地方もあり、旧態依然とした全方位の営業展開では活路を見いだせない」と田村さん。それでも建設会社の存在価値は変わらず、災害復旧など地域の安心・安全に果たす役割は一段と大きくなっている。
地方の営業戦略について、経営陣が示す将来ビジョンからは明確な答えは見いだせない。業界大手のプライドやブランドに縛られず、地方で生き続ける覚悟を持って妙案を模索する毎日だ。
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