「どうぞご安全に」。建設会社と協力会社が主催する安全大会で、各社の幹部はあいさつや安全講話を締める時、ほぼ全員がこう話す▼毎年夏に行われる安全衛生週間は1928(昭和3)年に産声を上げ、今年で91回目を迎える。6月の準備月間には建設業界でも多くの企業が安全大会を開く。こつこつと積み上げた努力もあり、労働災害は減少傾向にある。ただ事故が完全に無くなるまでには至っていない▼「安全第一」の思いをどう伝えるか。講話に工夫を凝らす企業幹部は多い。大リーグで活躍するイチロー選手の体調管理、欧米人と日本人の安全意識の違い、ドイツの高速道路「アウトバーン」の設計思想などはその一例だ▼独自の安全標語を協力会社から募る企業もある。優秀作品には賞品が贈られるそうだ。考案した企業関係者は「賞品が目的だったとしても、人に訴える標語を考えることを通じて、安全の大切さが心に刻まれれば」と思いを語る▼手を尽くした安全対策はもちろん大切だが、やはり最後は人。丁寧に「ご安全に」と呼び掛け意識改革を促し、一人の被災者も出さないという信念を貫く努力が欠かせない。
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