年内の新聞発行は28日(水)で終了します。
新年は元日(日)に新年企画特集号を発行した後、5日(木)から平常通り発行します
また、29日(木)~1月3日(火)に申し込みいただいた電子版の承認は4日(水)以降となります。
ご了承ください。
日刊建設工業新聞社
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日刊建設工業新聞社
大阪府は、2023年度予算案編成で大深度地下シールド工法を使う寝屋川北部地下河川の鶴見調節池工事に同年度着手するため工事費計上を要求している。26日には鶴見立坑(守口市南寺方東通1)と建設中の城北立坑(大阪市城東区関目2)の間に設ける同調節池の設計評価を、学識経験者で構成する大阪府河川構造物等審議会に諮問した。この日、地質や支障物の調査結果、覆工とシールド設計を評価。23年2月に開く審議会で施工や環境配慮を検証、大深度地下の施工安全性を確認し、答申する予定。
鶴見調節池は内径9メートル、延長1779メートル。雨水貯留量は12万立方メートル。
城北立坑からシールドマシンを上り掘進(縦断勾配1500分の1、37分の1)、鶴見立坑に到達させる。急勾配区間(37分の1)では流速が毎秒7メートル以下となるよう、桟を使う減勢工を設ける。形式は検討している。
国土交通省は19年、同地下河川の新規着手計画区間のうち3区間延べ2・2キロについて、大阪府に大深度地下使用法に基づく使用を認可した。新規区間は鶴見立坑~排水機場(大阪市都島区中野町5)で、延長4684メートル。全国初の大深度地下を利用する地下河川となる。
同地下河川は、最上流部の讃良立坑(寝屋川市)から鶴見立坑と松生立坑(門真市)から鶴見立坑の総延長9・7キロが完成し、26万立方メートルの雨水貯留施設として暫定供用中。未着工区間は鶴見調節池と城北立坑と排水機場の間に設ける都島調節池(延長2・9キロ)。
日本工営は27日、ENEOSが静岡市で計画する次世代型エネルギー供給拠点の建設プロジェクト(清水次世代型エネルギー供給プラットフォーム建設工事)のうち、2024年度に供用を開始する施設の工事を受注したと発表した。EPC(設計・調達・建設)事業として、メガソーラーパネルや大型蓄電池を備えた次世代型エネルギー供給プラットフォーム関連施設の建設と、エネルギーマネジメントシステムの構築に取り組む。
次世代エネルギー供給拠点は、清水区の製油所跡地に建設する。電力供給を行うエリアの敷地面積は約4万2000平方メートル。日本工営が国内で手掛けるエネルギーマネジメント施設としては最大規模となる。24年4月から地産の再生可能エネルギー由来の電力を、周辺の公共施設などに供給できるようになる。災害時に自立的な電力供給を敷地内で継続できるようになり、地域の防災・減災への貢献も期待される。
24年度供用開始に向けた工事では、清水製油所跡地の自営線エリアにメガソーラーや大型蓄電池を建設する。近隣の病院や多目的ホールなどの公共施設、併設される水素製造施設向けの電力供給を可能にする。大規模停電などの非常時には電力系統から切り離し、自営線エリアで自立的な電力を供給できるようにすることで安定的に電力を確保する。
工事内容はメガソーラーパネルや大型蓄電池の設置、受変電設備など関連施設の建設や自営線の敷設、地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS)の構築など。一部の業務は日本工営都市空間が行う。
大和ハウス工業とフジタが、商業施設やホテルなどをターゲットに花粉対策空間を創出する「リフレッシュエアルーム」を開発した。花粉などを除去するエアシャワーと、花粉のアレル物質の作用が最大99・4%低減できる光触媒コーティング材を組み合わせた。フジタグループの藤田商事が2023年1月1日に販売を開始する。
開発したエアシャワーはホテルなどのエントランスやエレベーターホールへの設置を想定。サイズは縦800ミリ、横1300ミリ、高さ210ミリ。花粉が衣服に付着する原因となる静電気を除去し、弱風でも花粉などが取り除ける。
静電気の除去はシャープの独自技術「プラズマクラスター」を採用。大和ハウス工業が行った試験では秒速約18メートルの風を5秒間当てるだけで付着した花粉を約80%除去できることを確認した。吸音材を採用するなど静音性も高めた。
吹き飛ばした花粉などは壁や床に施工した吸着性光触媒コーティング材で不活化し空気を清浄化する。大和ハウスグループのホテルで試験導入した結果、宿泊者から満足度88%の高評価を得た。エアシャワーの販売価格(税込み)は運搬や搬入設置工事などを除き198万円。
世界的な原油・原材料価格の高騰が、建設関係各社に重くのしかかっている。東京商工リサーチの調査によると、今後の見込みを含め建設業の98%で調達コストが増加と回答したが、価格転嫁できている割合は48%にとどまった。ゼネコン各社は民間工事で価格転嫁に難航している状況があり、「一部で価格転嫁を認めてもらえるケースもあるが、全額ではなく負担せざるを得ないことが多い」(ゼネコントップ)との声も上がる。選別受注を目指す向きも強まりそうだ。
調査は1~8日にインターネットで実施。有効回答は4889社で、このうち建設業では618社から回答を得た。
世界的な原油・原材料価格の高騰による調達コスト増加については、建設業の89%が「影響を受けている」、9%が「今後影響が見込まれる」と答えた。
コスト増への対応では、52%が価格を転嫁できていなかった。価格転嫁できているケースでも、転嫁率でみると10割は4%にとどまり、7~9割が14%、4~6割が15%となっている。1~3割という回答も15%あり、十分な転嫁が実現しているとは言いがたい状況だ。
対応策では「調達先の分散」「代替的な原材料、部品への切り替え」「在庫の積み増し」の順に多かった。
あるゼネコントップは「大半の民間工事で値上がり分の価格転嫁が難航している。信頼関係があっても『はい分かりました』という発注者はほとんどいない」と話す。調達コストの高騰や高止まりの収束が見込めない中、ゼネコン各社からは「設計・施工案件で、値上がり分の価格交渉に時間を要し着工が遅れている案件もある」「今後の価格高騰分を加味した見積もりを提出して、納得してもらえない場合は無理に受注しない」との声も上がる。
設備工事会社からも「リスク低減のため、契約の際に物価高騰時におけるスライド条項を織り込む」という姿勢が示されている。ただ「民間は事業予算があるため(値上げは)厳しく、いたずらに工事費を上げられない」(ゼネコントップ)のも事実。事業予算に見合う形へ計画の再検討や、VE提案といった工夫もより求められそうだ。
日本有数の大型テーマパークが入場時の手のアルコール消毒を廃止した。大みそかには新型コロナウイルス感染症の対策を講じながらも3年ぶりに新年へのカウントダウンイベントを行うそうだ▼感染症との向き合い方はだんだんに変化し、コロナ前に戻そうとしたり、新しい様式の定着を促そうとしたりする動きが一段と活発になっている。暮らしや経済活動の中でいろいろと考える機会が増えたと感じている方も多かろう▼本紙最終面「回顧」で1年を振り返ると、建設業界には今年もさまざまな出来事があった。中でも特に目立ったのが、2024年4月からの時間外労働の罰則付き上限規制の適用を控えた「働き方改革」への取り組み。このワードを含む本紙掲載記事は1月1日から12月27日までに1190本を超え、昨年と比べ100本以上も多い▼建設団体の調査によれば、働き方改革は着実に進んでいるものの依然として道半ばの状況。長時間労働の是正という長年の課題に待ったなしの対応が求められる▼来年も新しい時代へと向かう変化を的確に捉え、先を見た報道を心掛けたい。建設業界の一新紀元を期して。
大阪府は「新安治川水門」(大阪市港区弁天6)の2024年度着工に向け、23年度に国との協議や工事の積算などの作業を行う予定だ。大阪市にある三大水門の一つ「安治川水門」(同)を更新する事業。「一級河川安治川(旧淀川)水門詳細設計委託」(担当=建設技術研究所)の業務内容によると、新水門は現水門の上流側に設置。引き上げ式のローラーゲート(2門)を採用する。規模は幅約30メートル、高さ約13メートル。高潮に加え、想定最大クラスの津波(L2津波)被害を軽減する構造物とする。
26日に開いた大阪府河川構造物等審議会で、府は新水門のデザインを報告。上屋は「積層構造を採用し存在感のあるデザイン」とし、高さを低くすることで圧迫感や遮蔽(しゃへい)感を軽減する。上屋の外装材にはカーテンウオールを使い眺望スペースを確保、内床式照明も導入した。中央門柱はスリットを入れ遮蔽感を低減させる。扉体下流側にはスキンプレートを使い「すっきりとしたデザイン」とし、上流側は主桁を見せ「力強さを表現」、上下流で見え方を変える。
府は大阪市にあるアーチ型ゲートの三大水門(木津川水門〈大正区三軒家東〉、安治川水門、尻無川水門〈同区泉尾〉)を新水門に建て替える事業を進めており、木津川水門の新水門事業を先行。木津川に続き安治川の新水門事業に着手する。
34年度までに安治川水門改築事業を完了する計画を示している。
香川県は23日、湊川水系河川整備計画の変更原案を公表した。五名ダム(東かがわ市入野山)の再開発で、東かがわ市への日量2000立方メートルの新規水道用水の供給を取りやめる。これに伴い、新設するダムの堤高は従来計画の55・4メートルから52・8メートルに縮小する。
再開発では湊川の洪水時の流量低減を図るため、既設の五名ダムの下流約700メートルの地点に重力式コンクリートダムを整備する。総貯水容量は約570万4000立方メートル。うち有効貯水容量は約525万4000立方メートルとなる。洪水調節容量は約306万立方メートル。
今回の変更では、将来人口推計に基づく水需要予測を行った結果、東かがわ市への新規水道容量の廃止を決定。異常渇水時に香川用水配水エリアに水を送るための渇水対策容量(1・4万立方メートル)を新しく確保する計画とした。利水容量は約219万4000立方メートル。このうち、約218万立方メートルが流水の正常な機能の維持に必要な容量となる。
五名ダム再開発本体概略設計業務は2023年3月24日までの履行期間でニュージェックが担当している。同社はダム軸確定業務や環境調査、全体計画の資料作成業務も手掛ける。
湊川の河道整備では、五名ダム再開発による洪水調節後のピーク流量である毎秒630メートルを安全に流下させるため、河道掘削や築堤、護岸などを施工する。河道整備は河口から東山川合流点までの約6・4キロ区間となる。
関東地方整備局常陸河川国道事務所は21日、水戸市内で那珂川治水対策プロジェクトの現場見学会を開いた。那珂川流域の浸水被害を抑えるため、ハード・ソフト両面で対策を実施している様子を公開。ICT施工を導入した高水敷掘削現場の紹介や、河川の越水、堤防決壊を検知する無線センサーのデモンストレーションをした。同流域は2019年の台風で広範囲にわたり浸水被害が起きた。
同プロジェクトは那珂川流域の浸水被害を最小限にするため、河道掘削や遊水池、堤防を国や県、市町村と連携して整備する。全体事業費は約665億円、事業期間は19~24年度。
河道掘削は、最大高さ約4メートルの高水敷部を那珂川から堤防方向に掘削して河道を確保。水位を低下させる。工事区域は水戸市内と一部ひたちなか市内で▽若宮地区▽水府・枝川地区▽根本地区▽中河内地区▽渡里地区▽下国井地区-の6地区に分けて掘削する。河川両岸を合わせた掘削の総延長は14キロメートル。12月現在、樹木伐採作業を含め、半分以上に着手しているという。砂や粘土を含む掘削土は、改良して築堤土として活用する。
公開した現場は水府・枝川地区(約700メートル)。ICT施工を導入している。建設機械は衛星利用測位システム(GPS)とGNSS(全球測位衛星システム)のアンテナを装備。常に測量が可能で、数センチ単位の精度で施工できる。若年オペレーターでも高い精度で作業できるアシスト機能も備えた。現場担当者は「作業は2~3割ほど効率がよくなった印象」。施工の精度だけでなく、安全性が高まっているという。
19年の台風時、那珂川からの越水が同時多発的に発生し、状況確認に手間取った経験から、同プロジェクトは越水や堤防決壊を効率的に把握できるよう、ソフト面を強化している。関東整備局と同事務所が主体となり、20年から「越水・決壊センサー」を開発。本年度に運用を始め、実証を重ねている。
同センサーは▽衝撃を検知する3軸加速度センサー▽転倒を検知する傾斜センサー▽GPS-を備えた円形の無線機器で、直径約80~85ミリ、高さ40~50センチの杭の内部に入れて運用する。堤防異常は▽水没▽衝撃▽転倒-の3要素で判定。杭の水没は、無線基地局に届く電波の減衰(10分間で約8割減)で判定する。杭の設置場所は那珂川上流の常陸大宮市から下流の水戸市まで、50メートル間隔で計284カ所。浸水被害が大きいと見込む区域を選定した。
センサーが異常を検知すると、関東整備局内にあるサーバーを介して担当職員のパソコンやスマートフォンにアラートが送信される。担当者は現地確認や河川カメラなどで状況把握する。
見学会では実際にセンサーの入った杭を倒し、スマホにアラートが送信される様子を実演した。同事務所の担当者は「センサーは検証の見直しや投資効果を確認し、改良を重ねていく」と強調。治水対策の完了に向けて「地域住民と一体となって進める」と意気込んだ。
政府の検討会は社会構造のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針を22日に了承した。再生可能エネルギーの主力電源化に必要となる系統整備を重点事項に挙げ、海底直流送電網などの整備を従来の8倍以上のスピードで推進すると表明。経済活動の省エネルギー化を徹底させるため、中小企業に向けた省エネ補助金の創設なども盛り込んだ。必要となる財源の一部を、20兆円規模の発行を予定する「GX経済移行債」で調達する方向性も明記した。
「GX実現に向けた基本方針」は同日、東京・永田町の首相官邸で開いた「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)で了承された。意見募集を経て近く閣議決定する。
再エネの主力電源化には洋上風力発電の導入促進が有効だが、適地は北海道や東北地方の日本海側などに多く、大消費地から離れる。今後は海底直流送電を含む送電インフラ整備のスピードを、過去10年間の8倍以上に加速。北海道からの海底直流送電は2030年度の完成を目指して整備するとした。
再エネ関連ではこのほか▽揚水発電所の維持・強化▽次世代型太陽電池の研究開発・導入支援▽浮体式洋上風力発電の技術開発・大規模実証-なども強力に推進する。原子力関連では安全性の確保を前提に、次世代革新炉の開発・建設を進める。
省エネ化関連施策にも注力する。基本方針には民間企業が複数年にわたる省エネ関連投資に切れ目なく対応できるよう「省エネ補助金」を創設すると明記。化石燃料を大量に消費する事業者に対しては、非化石エネルギーへの転換に向けた中長期計画の提出を義務付け、定期的な進捗(しんちょく)報告も求める。
各種施策にかかる費用は今後10年間で150兆円程度と見積もる。国は20兆円規模の「GX経済移行債」を発行し先行投資を可能にする方針。償還には企業や消費者らに費用負担を求め、二酸化炭素(CO2)排出抑制につなげる「カーボンプライシング(CP)」で得られる財源を充てる。CPの導入に必要となる関連法の改正案は次期通常国会に提出する。
四国地方整備局の建設DX技術活用モデル(選択肢型)工事の初弾となる「令和4年度今治道路五十嵐高架橋下部P47-P49工事」で使用する技術が決まった。施工を担当する白石建設工業が日本建設業連合会(日建連)インフラ再生委員会の「建設DX事例集」から選んだ。日建連が現場条件に適している技術かどうかや使用したい時期に支援可能かどうかなどを確認。四国整備局と白石建設工業の3者で調整を行い、5技術をマッチングさせた。
選定した技術は鹿島の「AI配筋検査システム」と清水建設の「リアルタイム自動配筋検査システム」、不動テトラの「点群データを活用した構造物の施工管理」、三井住友建設のリアルタイム鉄筋出来形自動検測システム「ラクカメラ」、淺沼組の「VRによる安全教育訓練」。
工事場所は愛媛県今治市別名。高さ12メートルの橋脚3基を設置する工事で、径1・5メートルの基礎工を24基施工する。現場条件や納期に問題がなく活用できるとして、橋脚1基ごとに鹿島と清水建設、三井住友建設の技術をそれぞれ試行する。
不動テトラの技術はP47橋脚で試行する。橋脚完成後にヒートマップを作成でき、躯体表面の出来栄え評価など出来形管理への活用が期待できるという。
現場のVR(仮想現実)モデルを作成し、足場設置などの安全教育訓練に役立てる淺沼組の技術は、モデル作成に時間を要するため、今回は一般的なVRモデルを提供してもらい、安全教育訓練に活用する。
各技術は2023年2月上旬から順次現場で使用する。四国整備局は同3月上旬をめどに現地見学会を開催する予定だ。地域の建設業をはじめ、周辺の高校生や技術系大学生、小中学生とその保護者にも声を掛ける。企画部技術管理課の水野匡洋課長補佐は「建設業は大きな転換期を迎えていると知ってもらい、最新技術を使用することでインテリジェンスで安全な建設業となることをしっかりとアピールしていきたい」と見学会開催に意欲を見せる。
「建設DX技術活用モデル(選択肢型)」の試行工事は四国整備局独自の施策で一般土木C等級を対象としている。特記仕様書で日建連インフラ再生委員会の「建設DX事例集」に掲載された技術を推奨事例として紹介。受注企業がその中から1技術以上を選び現場に導入する。機械賃料やシステム構築費など必要な追加費用は変更契約できる。地域建設業で課題となる生産性向上を後押しするとともに、業界の魅力を高め担い手の確保につなげる。
国土交通省は2024年4月にスタートする新たな「省エネ性能表示制度」の素案をまとめた。対象は建物を販売したり賃貸したりする事業者。国が定める様式を使い、建物の広告にエネルギー消費性能(BEI)などを表示するよう求める内容だ。制度の決定は23年2月を予定。以降は関係事業者団体の協力を得ながら業界への周知を図る。事業者向けのガイドラインも提供し、円滑な制度施行に備える。
素案は21日にウェブで開いた外部有識者会議「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」(座長・中城康彦明海大学不動産学部教授)で示した。
住宅と非住宅建築物の両方が制度の対象となる。いずれも販売・賃貸する際の▽新聞・雑誌広告▽新聞折り込みちらしなど▽パンフレットなど▽インターネット広告-に指定の様式で省エネ性能を表示するよう求める。
指定の様式では太陽光パネルなどで得た再生可能エネルギーを除く純粋なBEIと、評価年月日を表示する。住宅の場合は外皮性能も、外皮平均熱貫流率(UA値)か冷房期の平均日射取得率(ηAC値)のいずれかの数値で明示する必要がある。
BEIは建築物省エネ法で定める「省エネ基準」に対する1次エネルギー消費量の削減率を示す数値。新たな制度の素案では建物のBEIを6段階で評価する。省エネ基準に不適合(BEI=1・0以上)の建物が最低評価となり、数値が0・1減るごとに高評価を与える。BEI=0・6以下で最高評価が得られる。評価は星の数で表す。
6月に成立した改正建築物省エネ法は建物の販売・賃貸事業者を対象に、省エネ性能の表示を義務付けた。適正に表示していない事業者は国交相による勧告や命令、事業者名公表の対象になる。同省はこれを機に現在運用している建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)を再構築する方針。検討会で新たな制度を具体化し23年2月に議論をまとめる。
同4~6月に関係告示を公布。24年4月に改正法を施行する。
建築・都市・不動産分野の社会課題の解決に向け、各分野のデジタルデータを連携させ付加価値を生み出す試みが一気に加速している。国土交通省が「建築・都市のDX」と称して省内横断の取り組みを展開。先月成立した2022年度第2次補正予算では建築分野のBIMと3D都市モデル「プロジェクト・プラトー」、不動産IDの関連施策に重点が置かれ、BIMモデルをプラトーに反映させるためのデータ変換のシステム開発費用も初めて盛り込まれた。
「建築・都市のDX」は都市再生を促進する方策として、政府が6月決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」で初めて明記された。BIMを建築分野、プラトーを都市分野のデジタルインフラと位置付け、各分野のデータをひも付ける記号として不動産IDを設定。データの連携・蓄積で都市開発・街づくりを加速する新たな使い道を創出する。プラトーをベースとしたオープンイノベーションの促進で、新たなサービス・産業の展開も視野に入れる。
デジタル社会の実現を強力に推進する政府方針を追い風に、22年度第2次補正予算ではBIM関係で80億円、プラトー関係で15億円、不動産ID関係で4・6億円を計上。BIMの普及事業を所管する住宅局の担当者は「これまでも個々に取り組んできたが、連携に踏み出していく新しいフェーズに入った」と捉える。
プラトーは従来の航空測量などで把握できる範囲にとどまらず、さまざまなデータを用いて地下空間など目に見えない領域にも都市モデルを拡張する。BIMモデルを反映できれば建物内部も含めた高精度なデジタルツインが実現する。自動的なデータ更新の在り方なども検討課題に挙がっている。
ユースケース(利活用場面)の開発も焦点となり、プラトーではパイロット事業の実施を想定。具体的な内容は今後詰めるが、例えばデジタルツイン上で計画・設計に必要なデータを容易に取得できる環境が整うことで設計・施工の生産性や品質の向上が可能になるとみている。建物内外の精緻な避難シミュレーションを防災計画や避難場所・動線の設計に反映させるなどの活用法も想定できる。
大阪府と大阪市は22日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場跡地(大阪市此花区)の開発事業者公募に先立ち、マーケットサウンディング(対話)型市場調査を実施すると発表した。万博跡地は夢洲第2期区域として位置付け、万博のレガシーを継承する。エンターテインメントやレクリエーション機能の導入を目指す。参加申し込みは2023年2月24日まで、提案は同5月10日までそれぞれ受け付ける。同5~7月に民間事業者と対話を行い、同夏頃に調査結果の概要を公表する。事業者公募は23年度に始め、25年4月の万博開幕までに開発事業者を決める。
跡地利用の対象は万博会場の一部約50ヘクタール。参加できるのは、同開発の実施主体となる意向がある法人または法人のグループ。調査では開発コンセプトや想定する事業区域、土地利用の方針、全体配置計画、各施設の規模・機能のほか、想定する来街者や従業員数、交通量を聞く。
誘致活動中のカジノを含むIR(統合型リゾート)施設を計画している第1期開発区域と連携した動線や土地利用計画、万博の理念を継承するレガシーの活用可能性や方法、スーパーシティー構想を踏まえた夢洲コンストラクションの将来的な活用の提案も受ける。
このほか、開発スケジュールや土地の契約方法、投資計画についても調査する。
23年1月31日に説明会を開催する。同1月24日まで参加申し込みを受け付ける。
2期区域では「スマートリゾートシティー」をコンセプトに、夢洲の国際観光拠点を強化・拡充する。第1期との連続性を確保するほか、健康・医療産業や研究機関が研究した成果、最先端技術を体験できるようにする。都市データを生かした新しいプロジェクトの創出も目指す。
夢洲を周回できる観光外周道路の整備も想定。用地売却方式と事業用定期借地権方式を見込む。万博閉幕後、早期の開発工事着手を目指す。夢洲に延伸する地下鉄(仮称)夢洲駅の敷地は調査の対象外となる。
東京芸術大学が上野キャンパス(東京都台東区)に整備していた国際交流棟が完成した。隣接する既存の大学会館と一体的につながり、食堂やコミュニティーサロン、茶室などが入る。留学生や学生らが学びながら交流する場となる。施工した前田建設の提案により、鉄骨造と木造を組み合わせた混構造を採用。施工時のコンクリート打設回数を減らし、工期短縮や騒音抑制につなげた。
「国際交流棟(Hisao&Hiroko TAKI PLAZA)」の所在地は上野公園12の8。大学会館の一部を解体した跡地にある。建物は5階建て延べ約1500平方メートルの規模。1・2階がS造、3・4階が混構造、5階がW造となっている。2021年11月に着工し、今年11月30日に竣工した。建物の内外にはパブリックアート作品を設置する。基本設計を隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)と東京芸大、デザイン監修を同事務所、設計監理を東京芸大と前田建設、施工を同社が担当した。
前田建設は8日、現地で報道陣向け見学会を開いた。S造とW造を組み合わせることで、純木造の中高層建築では困難な9メートルスパンの空間を実現。将来の間取り変更に対応できるようにした。建物正面から視認できるメインファサードの耐震ブレースは、火災時に焼損しても建物構造を維持できる設計としており、デザインとして木質の露出を可能にしている。
床板の一部には、北米で一般的な製材同士を固定して床板を構成する工法「NLT」を採用。日本の高温多湿の環境で反りや縮みが生じないかなどを環境実験で確認した。木造部と鉄骨部の接合箇所は耐火処理方法が法規上、明確ではなく、耐火炉で実証実験を行い安全性を確かめた。
S造だけだった基本設計にW造を組み合わせる提案は、大学側が現場周辺で音楽学部の講義などがある中で工事騒音や振動を懸念していたことを踏まえ、前田建設から行ったという。担当した建築事業本部建築設計第1部の永松航介設計第1グループ長は「木造が大規模になっていくと鉄骨造との混構造は避けられないと考えている」と話し、騒音が課題となる市街地の建築物などに応用できる実例になるとした。
危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制する「盛土規制法」の施行日が2023年5月16日に決まった。規制対象となる盛り土や土石の堆積の規模要件や関連工事の技術的基準、中間検査・定期報告の規模要件など施行に必要な事項を定める政令と合わせ、政府が20日に閣議決定した。これに基づき都道府県知事などが盛り土行為の許可などに当たってもらう。
同法では規制区域を「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」に分け、従来の宅地造成規制法から範囲を拡大。両規制区域内での「土地の形質の変更(盛り土・切り土)」と「土石の堆積(一時堆積)」を規制対象行為と位置付け、工事の許可基準も強化した。許可基準に沿った安全対策の確認手段として既存の完了検査に加え、施工中の中間検査・定期報告制度を新設した。
9月には前もって区域指定に必要な基礎調査の実施要領案や安全対策の基準的基準案を公表し、都道府県などには区域指定に向けた先行的な基礎調査に入ってもらっている。国は施行後5年以内に全都道府県で区域指定が終了することを目標にしている。
既存の盛り土を対象とした基礎調査の実施要領案も公表済み。これらとは別に不法盛り土への対応方策も示す予定で、国土交通、農林水産両省が設置する有識者会議「盛土等防災対策検討会」で検討を深めている。
国土交通省はICT施工の新たに目指す姿を近く提示する。これまで取り組んできたICT建設機械の導入などによる「工種単体」の作業効率化を、現場状況のデータ把握・分析を通じた「工事全体」の生産性向上に進化させる。こうした方向性をICT施工のステージ2と位置付け、建設業団体などと今後の進め方について意見交換していく方針だ。先駆的な建設会社などが段階的にステップアップする道筋を示し、さらなるICT施工の効果発現を狙う。
直轄土木工事のICT施工は実施率が年々上昇している。2021年度は対象工種で入札公告した2685件のうち84%を占める2264件で実施。国交省は地域を地盤とする中小建設会社への普及拡大を今後の課題と認識し、小規模現場へのICT施工の適用拡大などに注力している。
一方、現状のICT施工は土工などの工種単位の効率化にとどまっており、生産性向上の効果は限定的との見方もある。工事工程の一連の作業を効率化するための判断は、従来と同じように現場技術者の感覚や経験に委ねられている。こうした問題意識からステージ2では、現場の行動履歴や建機稼働状況などのデータを把握・分析することで技術者の判断を支援し、工事全体の効率化に導くような環境整備を目指す。
例えば盛り土工事の一工程を担うブルドーザーをICT化した場合、前工程となるダンプの土砂運搬も効率化しなければ実質的な生産性向上にはつながらない。前もって各工程のデータを把握・分析し技術者の判断支援に当たる仕組みを備えておけば、施工計画の検討や見直しに大きく役立つ。
国交省はさらに高度化した将来目標としてICT施工のステージ3も展望する。同一現場内の複数の工事が入り組む現場全体の効率化を目指す。施工計画を自動生成するAIの活用や、次世代建機による遠隔・自動施工などを通じ、より最適化された現場の実現を目指していきたい意向だ。
関東地方整備局が取り組む防災分野のDXが本格的に動き出した。地震発生時の初動対応や自治体からの支援要請などを自動集計するシステムが今月始動。地方整備局で初めて実働に入った。ドローンを使った発災時の情報収集にも力を入れ、衛星通信による情報伝送も可能になるなど、災害対応の高度化と省人化に取り組む。今後は風水害にも対応できるようシステムを開発するなど「防災DX」をさらに推進する方針だ。
大地震が発生すると、あらかじめ指定された職員は周囲の状況や県、市町村との連絡態勢を整備局の災害対策本部に報告する。これまではメールで報告していた。報告時間の短縮や被災状況の早期把握などを目的に開発したのが「防災クロノロジーシステム」。2日に本格運用を始めた。
同システムは職員が報告する第一報や、被災自治体の支援要請情報を自動で集計、分類するのが特徴。ウェブブラウザー上の入力フォームに、スマートフォンなどで情報を書き込むと、災害対策本部に送られて自動集計される。
入力はボタンタッチや定型文を加工するだけで良く、省力化を図っている。災害対策本部では自治体からのリエゾン(現地情報連絡員)や支援の要請を速やかに把握できる。試験では初動情報の入力時間が従来の約3分の1、自治体の支援要請が2分の1に短縮できたという。
強い地震が発生した際、国土交通本省や各関係機関に連絡メールを速やかに作成、送信するシステムも同日に稼働した。初動対応の迅速化を目的に開発したシステムで、気象庁が発信する震源や震度の情報を自動判別し、一定の基準以上ならば情報を担当職員へ自動的に知らせる。
職員はシステムを通じて関係各所への報告や連絡メールの送信のほか、非常・警戒・注意の各態勢への移行登録も簡単に行える。入力フォーム内の定型文を修正し、送信ボタンを1回押すだけで本省や各事務所への連絡と、態勢移行の登録が同時にできる。これまで個別にメールを作成、送信し、各事務所に指示を出すのに約30分かかっていたが、システム導入により半分程度で行えるようになった。
関東整備局が衛星通信でドローンの映像伝送を始めたのは、7月に発生したKDDIの通信障害がきっかけという。従来は商用の携帯電話網を使っていた映像伝送を、関東整備局が運用する「Ku-SATII」や「Car-SAT」を経由して行う。災害時でも使用できる独自回線により、被災状況をリアルタイムの映像で確認できる。
小型で持ち運び可能なKu-SATIIと、車載で機動性の高いCar-SATを使い、情報収集能力の向上につなげる。さらに関東整備局ではドローン操縦資格者の育成にも力を入れており、12月時点で職員94人が資格を保有している。
工藤美紀男総括防災調整官は「DXによって人の手によるミスを減らすことができ、防災対応の迅速化、高度化が可能になる」と強調。今後も防災DXの推進に力を注ぐ考えを示した。
3月の福島県沖地震を受け、新幹線施設の地震対策を検証してきた国土交通省の外部有識者会議が中間報告をまとめた。報告書は地震で1径間のRCラーメン橋台が大きく損傷した状況を問題視。JR各社に対し、同様の箇所の耐震補強を2025年度までに終えるよう求めた。対象の柱本数は全国で1140本。JR各社に対する国の財政支援は設けず、耐震補強計画上の優先順位を見直して対応してもらう。
14日に東京都内で開いた「新幹線の地震対策に関する検証委員会」(委員長・須田義大東京大学生産技術研究所教授)の会合で委員らが中間報告の内容を了承した。検証の結果、ラーメン構造を採用した橋台が大きく損傷している状況が分かった。通常の高架部は2、3径間のラーメン橋を使用している。橋脚は6~8本あり耐震性に優れる。
一方、道路との立体交差部では道路幅員に柔軟に対応するため、桁橋を採用しているケースが多い。1径間・4本足のラーメン橋台でプレストレストコンクリート(PC)桁を支えている。橋脚が他の箇所より少ない上に桁の荷重もかかるため、構造物への負荷が大きい。福島県沖地震では第1小坂街道架道橋(福島県国見町)の橋台が沈下し、復旧に26日間かかった。
こうした状況を踏まえ、JR各社には同様の箇所の耐震補強を急いでもらう。対象は▽JR東日本(東北、上越新幹線)970本▽JR西日本(山陽新幹線)170本-の計1140本。両社が設けている耐震補強計画で対象外になっていた柱も多く含まれる。
対策が必要な構造物は、開業当時の設計標準に沿って整備された。現行の設計標準は東日本大震災を受けて12年に改定済み。委員会は設計標準の妥当性も検証したが、十分な耐震性能を確保できると認め、追加の改定は不要と結論付けた。