2022年12月23日金曜日

関東整備局常陸河川国道/那珂川治水対策の現場見学会開く、越水・決壊検知を実演

関東地方整備局常陸河川国道事務所は21日、水戸市内で那珂川治水対策プロジェクトの現場見学会を開いた。那珂川流域の浸水被害を抑えるため、ハード・ソフト両面で対策を実施している様子を公開。ICT施工を導入した高水敷掘削現場の紹介や、河川の越水、堤防決壊を検知する無線センサーのデモンストレーションをした。同流域は2019年の台風で広範囲にわたり浸水被害が起きた。
同プロジェクトは那珂川流域の浸水被害を最小限にするため、河道掘削や遊水池、堤防を国や県、市町村と連携して整備する。全体事業費は約665億円、事業期間は19~24年度。
河道掘削は、最大高さ約4メートルの高水敷部を那珂川から堤防方向に掘削して河道を確保。水位を低下させる。工事区域は水戸市内と一部ひたちなか市内で▽若宮地区▽水府・枝川地区▽根本地区▽中河内地区▽渡里地区▽下国井地区-の6地区に分けて掘削する。河川両岸を合わせた掘削の総延長は14キロメートル。12月現在、樹木伐採作業を含め、半分以上に着手しているという。砂や粘土を含む掘削土は、改良して築堤土として活用する。
公開した現場は水府・枝川地区(約700メートル)。ICT施工を導入している。建設機械は衛星利用測位システム(GPS)とGNSS(全球測位衛星システム)のアンテナを装備。常に測量が可能で、数センチ単位の精度で施工できる。若年オペレーターでも高い精度で作業できるアシスト機能も備えた。現場担当者は「作業は2~3割ほど効率がよくなった印象」。施工の精度だけでなく、安全性が高まっているという。
19年の台風時、那珂川からの越水が同時多発的に発生し、状況確認に手間取った経験から、同プロジェクトは越水や堤防決壊を効率的に把握できるよう、ソフト面を強化している。関東整備局と同事務所が主体となり、20年から「越水・決壊センサー」を開発。本年度に運用を始め、実証を重ねている。
同センサーは▽衝撃を検知する3軸加速度センサー▽転倒を検知する傾斜センサー▽GPS-を備えた円形の無線機器で、直径約80~85ミリ、高さ40~50センチの杭の内部に入れて運用する。堤防異常は▽水没▽衝撃▽転倒-の3要素で判定。杭の水没は、無線基地局に届く電波の減衰(10分間で約8割減)で判定する。杭の設置場所は那珂川上流の常陸大宮市から下流の水戸市まで、50メートル間隔で計284カ所。浸水被害が大きいと見込む区域を選定した。
センサーが異常を検知すると、関東整備局内にあるサーバーを介して担当職員のパソコンやスマートフォンにアラートが送信される。担当者は現地確認や河川カメラなどで状況把握する。
見学会では実際にセンサーの入った杭を倒し、スマホにアラートが送信される様子を実演した。同事務所の担当者は「センサーは検証の見直しや投資効果を確認し、改良を重ねていく」と強調。治水対策の完了に向けて「地域住民と一体となって進める」と意気込んだ。

河道掘削現場
円形のセンサー〈左〉を杭の内部に入れて運用する
source https://www.decn.co.jp/

0 コメント :

コメントを投稿