都市公園には交流拠点としての機能が期待されている |
◇都市公園の新たな可能性を開拓◇
都市の緑化に貢献したい--。大学時代に里山保全など環境保護ボランティアを経験した石井文也さん(仮名)。卒業後は都市緑化に携わるため、「漠然と地元で公務員になろうと考えていた」という。
ただ、公務員の業務は広範囲で望んだ仕事ができないかもしれないと悩んでいた時、都市公園の管理やビル緑化などを手掛ける造園業の世界を知り、思い切って一歩を踏み出した。
入社後の配属は都市公園の管理を担う部署。地方自治体が民間企業に公園管理を委託する「指定管理業務」を主に担当した。現在は地域の防災拠点としても機能する都市公園の管理責任者を務めている。
公園管理では利用客との関係で苦悩することも多い。公園はさまざまな考え方を持つ人が訪れる。「あちらを立てればこちらが立たずという状況にならないよう細心の注意が求められる」という。公園は公共財。「利用者と管理者の垣根を越えて守るため、自分が何をすべきかを考えることが指定管理業務の面白さ」と話す。
公園管理で何よりもこだわるのは芝生の状態。「ベビーカーを芝生内に入れないで」など、具体的な注意事項も交えて「芝生を守りたいという思いを直接伝えるよう意識している」。利用者が使い方を変えてくれた時、うれしさと仕事のやりがいがこみ上げてくる。
カフェなど誘致した収益施設の利益を使い公園整備から維持管理、運営までを一体的に行うPark-PFI(公募設置管理制度)にも携わっている。公園管理の新手法として期待されるが、デメリットを感じることもある。収益を確保することと、公園利用者を増やすことは時に「相反する価値観に基づく行為」になると指摘する。
収益確保にターゲットを絞りすぎれば、一般の来園者を迎える公園本来の目的が脇に置かれてしまう可能性もある。日々の仕事で「一般の来園者を迎えながら収益につながる消費者も受け入れる。バランスの取り方が難しい」と実感している。制度のデメリットをできるだけ少なくし、普及につなげることが重要な課題と思っている。
社会人となってから間もなく10年。後輩も増えてきた。経験を伝え育てる立場を担う場面も多くなった。「自分にできることは自分でしない。自分にできないことを自分でやる」。昔から自身に投げ掛けてきた言葉だ。多分野で横断的に活躍するオールラウンダーを理想像に描く。
「一つの領域で実績を残し、後の仕事は後輩に託したい」。公園管理だけでなく新たな領域に挑み続けたいと思っている。
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