2021年3月9日火曜日

【記者手帖】住民を勇気付けた背中

  2016年4月の熊本地震で発生した大規模斜面崩壊で落橋し、架け替え工事に入っていた国道325号阿蘇大橋が完成した。阿蘇大橋地区ではJR豊肥本線と国道57号が昨年開通しており、7日に橋が通れるようになったことで、斜面崩壊の影響で寸断されていた主要な交通インフラはすべて回復した◆地震発生から5カ月後、崩壊した斜面の緊急対策工事の現場を取材した。斜面に入った真っ黒な亀裂。山頂からワイヤでつり下げた無人化施工の小型バックホウと、命綱を着けて操作するオペレーター。対岸にぶら下がる阿蘇大橋。眼下で動くミニカーほどの大きさに見える重機。土煙の中で目の当たりにした現場の過酷さに驚いた◆中でも斜面を登る工事用モノレールを運転する技術者の背中が記憶に残っている。片道30分ほどかけて山頂まで毎日登っているという技術者の作業服の背中には汗がにじんでいた◆地震発生以降の約5年間ほど南阿蘇村に建設業関係者が集結した時期はなかっただろう。昼夜を問わず難工事に挑む数多くの背中は復興を目指す地域住民に勇気を与えたに違いない。(松)

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