2021年3月4日木曜日

【回転窓】人形に願いを

  桃の節句で親しまれている3月3日のひな祭り。女の子のいる家庭では、ひな人形を飾り、ちらしずしやはまぐりのお吸い物などのごちそうを囲んでお祝いした方も多かろう。ひな人形には、生まれた子が健やかで優しい女性に育つようにとの願いが込められている▼由来の一つは草木や紙、わらなどで作った素朴な人形に、自分の災厄を移して海や川に流したはらいの行事。それに平安時代に始まる人形遊び(ひいな遊び)が結び付き、現在の祝いの形になったとされる▼江戸時代には商工業の発展に合わせ、人形づくりも盛んに。人形の材料に使われるキリの産地だった埼玉の岩槻周辺も日本人形の一大生産地として栄えた。現在もひな人形の問屋や商店などが立ち並び、地域の歴史を今に伝える▼さいたま市が岩槻区に整備した「岩槻人形博物館」が先月22日、開館1周年を迎えた。国内唯一の人形がテーマの公立博物館として注目を集める▼開業がコロナ禍と重なったものの、来館者数は感染状況が落ち着くにつれ徐々に増えていったという。緊急事態宣言下で苦難は続くが、伝統行事・文化に込められた思いを大切にしたい。

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