2021年3月15日月曜日

【駆け出しのころ】東光電気工事執行役員技術統括部長・金子純氏

  ◇貪欲に知識増やし能力向上を◇

 電気工事業を営む父親の背中を見て育ち、大学で電気工学を専攻しました。ランドマークの構造物に携わりたいと思い、就職活動ではゼネコンや電力会社なども回りましたが、幼い時から身近な内線電気工事に深く関わりたいという気持ちが大きいことを再確認しました。そんな時、たまたま手にした東光電気工事のパンフレット。東京の都心部で大規模な建築プロジェクトに数多く関わっているところに引かれたのを覚えています。

 入社後、最初の現場は大学の学術総合センター建築工事。電気設備のJVサブとして先輩と2人で現場に立ち、自分は電灯とコンセントを任されました。学生時代に第3種電気主任技術者の資格を取得しある程度の知識はありました。けれども実際の現場業務はさすがに勝手が違いました。

 描かせてもらった施工図を先輩が細かくチェックし、赤ペンで図面は真っ赤に。最初のころは図面の精度が悪すぎて作業員からもかなり怒られました。OJTで熱心な指導を受け、2年目には赤ペンのチェックもほとんどなくなり、いろいろな仕事を任せてもらえるようになりました。

 次の現場は東京郊外のマンションでした。100世帯分の住戸すべてでパターンが異なる特殊な公団住宅。1戸ずつ購入者やコーディネーターの設計事務所と打ち合わせを行いながら、図面を描き上げるのは大変な作業でした。すべてに余裕がなく、図面の精度も下がって収まりが悪くなる。現場対応であちこちから呼び出される毎日でした。現場作業が終わって事務所に戻り、心身共に疲れ切った中で描く翌日の施工図は精度が当然のように悪くなる。まさに負のスパイラルでした。

 寸法が一つ違っただけで収まりへの影響はあちこちに広がります。当時はつらい思いだけが強かったですが、図面をしっかり描き上げることが何より大切なのだと身をもって理解できました。

 入社4年目からは現場代理人として1人で工事を任されました。最初の二つの現場経験を糧に、やるべきことをきちんとやる。段取りもうまくできるようになり、自身の能力を日々高めることで業務の効率化が進み、帰宅時間は自然と早くなりました。

 最後の現場勤務は40代半ばで初の超高層ビル。所長として当社職員約10人、最盛期の作業員約200人という大所帯を率いることに不安もありました。顧客とのコミュニケーションを密にし、何事にも先んじて取り組み、図面をきちんと描くという基本は変わりません。厳しい工程ながらも顧客の信頼を得て無事に完工できました。若手には現場での基本を実践できるよう自ら貪欲に知識を増やし、能力向上につなげてほしいと思っています。

40歳半ばで初めて所長を務めた。
超高層ビルの現場で職員らと(前列左から2人目が本人)

 (かねこ・じゅん)1989年法政大学工学部電気工学科卒、東光電気工事入社。エンジニアリング事業部長、技術統括部長(現任)兼交通事業部長(同)兼施工力強化対策室長(同)などを経て2020年6月から現職。埼玉県出身、55歳。

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