2022年12月28日水曜日

年末年始休刊、電子版登録休止のお知らせ

年内の新聞発行は28日(水)で終了します。
新年は元日(日)に新年企画特集号を発行した後、5日(木)から平常通り発行します
また、29日(木)~1月3日(火)に申し込みいただいた電子版の承認は4日(水)以降となります。
ご了承ください。
日刊建設工業新聞社



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大阪府/大深度地下シールド使う寝屋川北部地下河川鶴見調節池、23年度工事費を要求

 大阪府は、2023年度予算案編成で大深度地下シールド工法を使う寝屋川北部地下河川の鶴見調節池工事に同年度着手するため工事費計上を要求している。26日には鶴見立坑(守口市南寺方東通1)と建設中の城北立坑(大阪市城東区関目2)の間に設ける同調節池の設計評価を、学識経験者で構成する大阪府河川構造物等審議会に諮問した。この日、地質や支障物の調査結果、覆工とシールド設計を評価。23年2月に開く審議会で施工や環境配慮を検証、大深度地下の施工安全性を確認し、答申する予定。
 鶴見調節池は内径9メートル、延長1779メートル。雨水貯留量は12万立方メートル。
 城北立坑からシールドマシンを上り掘進(縦断勾配1500分の1、37分の1)、鶴見立坑に到達させる。急勾配区間(37分の1)では流速が毎秒7メートル以下となるよう、桟を使う減勢工を設ける。形式は検討している。
 国土交通省は19年、同地下河川の新規着手計画区間のうち3区間延べ2・2キロについて、大阪府に大深度地下使用法に基づく使用を認可した。新規区間は鶴見立坑~排水機場(大阪市都島区中野町5)で、延長4684メートル。全国初の大深度地下を利用する地下河川となる。
 同地下河川は、最上流部の讃良立坑(寝屋川市)から鶴見立坑と松生立坑(門真市)から鶴見立坑の総延長9・7キロが完成し、26万立方メートルの雨水貯留施設として暫定供用中。未着工区間は鶴見調節池と城北立坑と排水機場の間に設ける都島調節池(延長2・9キロ)。



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日本工営/静岡市で次世代型エネルギー供給拠点をEPC受注、24年度供用開始へ

 日本工営は27日、ENEOSが静岡市で計画する次世代型エネルギー供給拠点の建設プロジェクト(清水次世代型エネルギー供給プラットフォーム建設工事)のうち、2024年度に供用を開始する施設の工事を受注したと発表した。EPC(設計・調達・建設)事業として、メガソーラーパネルや大型蓄電池を備えた次世代型エネルギー供給プラットフォーム関連施設の建設と、エネルギーマネジメントシステムの構築に取り組む。
 次世代エネルギー供給拠点は、清水区の製油所跡地に建設する。電力供給を行うエリアの敷地面積は約4万2000平方メートル。日本工営が国内で手掛けるエネルギーマネジメント施設としては最大規模となる。24年4月から地産の再生可能エネルギー由来の電力を、周辺の公共施設などに供給できるようになる。災害時に自立的な電力供給を敷地内で継続できるようになり、地域の防災・減災への貢献も期待される。
 24年度供用開始に向けた工事では、清水製油所跡地の自営線エリアにメガソーラーや大型蓄電池を建設する。近隣の病院や多目的ホールなどの公共施設、併設される水素製造施設向けの電力供給を可能にする。大規模停電などの非常時には電力系統から切り離し、自営線エリアで自立的な電力を供給できるようにすることで安定的に電力を確保する。
 工事内容はメガソーラーパネルや大型蓄電池の設置、受変電設備など関連施設の建設や自営線の敷設、地域エネルギーマネジメントシステム(CEMS)の構築など。一部の業務は日本工営都市空間が行う。



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大和ハウス工業、フジタ/花粉対策空間を創出、ホテルなどターゲットに販売

 大和ハウス工業とフジタが、商業施設やホテルなどをターゲットに花粉対策空間を創出する「リフレッシュエアルーム」を開発した。花粉などを除去するエアシャワーと、花粉のアレル物質の作用が最大99・4%低減できる光触媒コーティング材を組み合わせた。フジタグループの藤田商事が2023年1月1日に販売を開始する。
 開発したエアシャワーはホテルなどのエントランスやエレベーターホールへの設置を想定。サイズは縦800ミリ、横1300ミリ、高さ210ミリ。花粉が衣服に付着する原因となる静電気を除去し、弱風でも花粉などが取り除ける。
 静電気の除去はシャープの独自技術「プラズマクラスター」を採用。大和ハウス工業が行った試験では秒速約18メートルの風を5秒間当てるだけで付着した花粉を約80%除去できることを確認した。吸音材を採用するなど静音性も高めた。
 吹き飛ばした花粉などは壁や床に施工した吸着性光触媒コーティング材で不活化し空気を清浄化する。大和ハウスグループのホテルで試験導入した結果、宿泊者から満足度88%の高評価を得た。エアシャワーの販売価格(税込み)は運搬や搬入設置工事などを除き198万円。



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建設各社98%が調達コスト増加、過半は価格転嫁できず/東京商工リサーチ調べ

 世界的な原油・原材料価格の高騰が、建設関係各社に重くのしかかっている。東京商工リサーチの調査によると、今後の見込みを含め建設業の98%で調達コストが増加と回答したが、価格転嫁できている割合は48%にとどまった。ゼネコン各社は民間工事で価格転嫁に難航している状況があり、「一部で価格転嫁を認めてもらえるケースもあるが、全額ではなく負担せざるを得ないことが多い」(ゼネコントップ)との声も上がる。選別受注を目指す向きも強まりそうだ。
 調査は1~8日にインターネットで実施。有効回答は4889社で、このうち建設業では618社から回答を得た。
 世界的な原油・原材料価格の高騰による調達コスト増加については、建設業の89%が「影響を受けている」、9%が「今後影響が見込まれる」と答えた。
 コスト増への対応では、52%が価格を転嫁できていなかった。価格転嫁できているケースでも、転嫁率でみると10割は4%にとどまり、7~9割が14%、4~6割が15%となっている。1~3割という回答も15%あり、十分な転嫁が実現しているとは言いがたい状況だ。
 対応策では「調達先の分散」「代替的な原材料、部品への切り替え」「在庫の積み増し」の順に多かった。
 あるゼネコントップは「大半の民間工事で値上がり分の価格転嫁が難航している。信頼関係があっても『はい分かりました』という発注者はほとんどいない」と話す。調達コストの高騰や高止まりの収束が見込めない中、ゼネコン各社からは「設計・施工案件で、値上がり分の価格交渉に時間を要し着工が遅れている案件もある」「今後の価格高騰分を加味した見積もりを提出して、納得してもらえない場合は無理に受注しない」との声も上がる。
 設備工事会社からも「リスク低減のため、契約の際に物価高騰時におけるスライド条項を織り込む」という姿勢が示されている。ただ「民間は事業予算があるため(値上げは)厳しく、いたずらに工事費を上げられない」(ゼネコントップ)のも事実。事業予算に見合う形へ計画の再検討や、VE提案といった工夫もより求められそうだ。



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回転窓/一新紀元を期して

 日本有数の大型テーマパークが入場時の手のアルコール消毒を廃止した。大みそかには新型コロナウイルス感染症の対策を講じながらも3年ぶりに新年へのカウントダウンイベントを行うそうだ▼感染症との向き合い方はだんだんに変化し、コロナ前に戻そうとしたり、新しい様式の定着を促そうとしたりする動きが一段と活発になっている。暮らしや経済活動の中でいろいろと考える機会が増えたと感じている方も多かろう▼本紙最終面「回顧」で1年を振り返ると、建設業界には今年もさまざまな出来事があった。中でも特に目立ったのが、2024年4月からの時間外労働の罰則付き上限規制の適用を控えた「働き方改革」への取り組み。このワードを含む本紙掲載記事は1月1日から12月27日までに1190本を超え、昨年と比べ100本以上も多い▼建設団体の調査によれば、働き方改革は着実に進んでいるものの依然として道半ばの状況。長時間労働の是正という長年の課題に待ったなしの対応が求められる▼来年も新しい時代へと向かう変化を的確に捉え、先を見た報道を心掛けたい。建設業界の一新紀元を期して。



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大阪府/新安治川水門24年度着工めざす、積層構造で存在感

 大阪府は「新安治川水門」(大阪市港区弁天6)の2024年度着工に向け、23年度に国との協議や工事の積算などの作業を行う予定だ。大阪市にある三大水門の一つ「安治川水門」(同)を更新する事業。「一級河川安治川(旧淀川)水門詳細設計委託」(担当=建設技術研究所)の業務内容によると、新水門は現水門の上流側に設置。引き上げ式のローラーゲート(2門)を採用する。規模は幅約30メートル、高さ約13メートル。高潮に加え、想定最大クラスの津波(L2津波)被害を軽減する構造物とする。
 26日に開いた大阪府河川構造物等審議会で、府は新水門のデザインを報告。上屋は「積層構造を採用し存在感のあるデザイン」とし、高さを低くすることで圧迫感や遮蔽(しゃへい)感を軽減する。上屋の外装材にはカーテンウオールを使い眺望スペースを確保、内床式照明も導入した。中央門柱はスリットを入れ遮蔽感を低減させる。扉体下流側にはスキンプレートを使い「すっきりとしたデザイン」とし、上流側は主桁を見せ「力強さを表現」、上下流で見え方を変える。
 府は大阪市にあるアーチ型ゲートの三大水門(木津川水門〈大正区三軒家東〉、安治川水門、尻無川水門〈同区泉尾〉)を新水門に建て替える事業を進めており、木津川水門の新水門事業を先行。木津川に続き安治川の新水門事業に着手する。
 34年度までに安治川水門改築事業を完了する計画を示している。



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2022年12月27日火曜日

旭化成不レジらSPC/横浜ゴム本社跡(東京都港区)開発を白紙に、ユアサ商事へ売却

旭化成不動産レジデンスら3社で組織するSPC(特定目的会社)が、東京都港区の横浜ゴム本社跡地を活用したオフィスビルの開発計画を白紙撤回していたことが分かった。横浜ゴムから土地を取得したSPCが延べ1・8万平方メートル超の施設を建設する計画だったが、経済条件などを判断して開発計画を見送った。SPCは今後、新本社の建設を計画するユアサ商事に土地を売却する考え。
オフィスビルは、都営三田線御成門駅から徒歩3分の距離に位置する新橋5丁目9番(地名地番、敷地面積1759平方メートル)に計画。日比谷通りに面する土地に、地下1階地上21階建て延べ1万8483平方メートル規模のオフィスビルを建設する予定だった。
事業主体は▽旭化成不動産レジデンス▽大成建設▽芙蓉総合リース-の3社で組織するATF特定目的会社で、2021年2月に横浜ゴムから土地を取得した。SPCから開発計画のアセットマネジメント業務を受託していたサンアローズ・インベストメント(東京都中央区、土田賢吾社長)によると、「経済条件などを総合的に判断」した結果、開発計画を見送ったという。
今後は、ユアサ商事が新本社を建設するためSPCから295億円で土地を取得。引き渡し日は23年4月を予定する。既存建物の解体を経て新本社を建設する予定だが、施設規模などは未定となっている。
横浜ゴムは23年3月末に神奈川県平塚市へ本社機能を移転する考え。
オフィスビルの建設を計画していた現在の横浜ゴム本社(12月26日撮影)

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22年度上期の週休2日取り組み、4週8閉所が着実に増加/日建連調査

日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は会員企業の現場を対象に、週休2日の取り組み状況をまとめた。2022年度上期の調査によると、1万2205現場のうち4週8閉所以上を達成したのは45・2%となり、前年同期に比べて4・4ポイント上昇。今回初めて調査した現場社員の休日取得状況では、対象5万3866人の80・1%が4週8休以上となり、交代制などで休日を取得できる環境整備が進んでいるようだ。
今回の調査は週休2日実現行動計画のフォローアップの一環で、100社が回答した。各現場の閉所状況を「4週5閉所未満」から「4週8閉所以上」までの五つに分類した。工種別の現場数は土木が5808現場、建築が6397現場。
土木の現場では4週8閉所以上が前年同期から7・8ポイント高い57・2%となり、半期では18年度の調査以降で初めて5割を超えた。21年度通期でも土木現場の4週8閉所以上は全体の50・0%に達しており、官庁工事を中心に発注者の理解が進んでいると見ている。
建築は4週8閉所以上が34・3%となり、前年同期比で1・7ポイントの微増。一方、4週5閉所以下の割合も35%前後の状況が続いており、建築現場での閉所の取り組みは思うように進んでいないのが実情だ。
会員企業からは「今以上の実施率の向上には、民間発注者の4週8閉所への理解が必要だ」といった意見もある。
現場勤務社員の休日取得状況を工種別で見ると、土木(対象2万5660人)は84・7%が4週8休以上だった。4週7休以上では9割を超えており、公共工事を中心に「特殊な工事を除いて4週8休体制となってきた」との声もある。
建築(対象2万8206人)は4週8休以上が75・8%、同7休以上は9割近くの水準に達している。閉所の厳しさに比べて、社員の休暇取得は全体的に進んでいる様子が見られる。
一方で会員企業からは「週休2日の実施率は上がっているが残業が多くなっている」「残業軽減に向けて業務の分業化やデジタル化をさらに推進する必要がある」との意見も目立つ。24年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制の適用に向け、日建連側は最低限4週8休が確保できないと上限規制のクリアが難しいことから、100%実施を必須条件としている。


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四国整備局/延長832m敷水トンネル(愛媛県大洲市)が貫通、施工は鴻池組

四国地方整備局が愛媛県大洲市で建設している「敷水トンネル」の貫通式が26日、現地のトンネル坑内で開かれた。施工を担当する鴻池組が主催。地元や工事の関係者約90人が出席し、貫通点の通り初めや鏡開きを行って貫通を祝った。
山鳥坂ダム建設事業に伴う県道の付け替え工事(延長6・2キロ)の一環で、トンネルは見の越地区と下敷水地区を結ぶ延長832メートル。片側1車線で断面積は45平方メートル。2021年4月に工事着手した。
式典では久保國夫岩谷地域自治会長と藤高茂治肱川中央自治会長が貫通発破のスイッチを押し、貫通が確認されると鴻池組下敷水トンネル工事事務所の田中啓司所長に木村圭吾副所長が報告し万歳三唱を行った。掘削工事で活躍した北新建設の桐谷敏昭代表取締役と岡崎悟現場代理人が貫通点清めの儀を執り行った。
想定以上に不良地山が多く厳しい施工条件の中、NATMと補助工法を組み合わせて無事貫通を迎えた。鴻池組の平野俊二西日本副所管統括補佐は「覆工コンクリートなど工事は残っているが貫通を一つの区切りとして職員、協力会社が一丸となり竣工まで無事終えたい」と決意を語った。
貫通記念に肱川、河辺両小学校の児童がトンネル内の壁面(防水シート)に思い思いの絵を描いた。山鳥坂鎮縄神楽保存会による神楽も式典に彩りを添えた。
工期は23年3月31日まで。設計は国際航業が担当した。付け替え県道の1次切り替え区間(4・2キロ)の愛の森トンネル(延長2128メートル)が9月に貫通しており、今回の貫通で25年度の同区間の供用開始に向け大きく前進する。
鴻池組関係者による記念撮影

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大林組/ロックボルト遠隔打設専用機を開発、安全性向上と省人化

大林組は山岳トンネル工事のロックボルト打設作業を、遠隔操作で行えるロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」を開発した。削孔からモルタル注入、ロックボルト挿入まで一連の作業を遠隔で操作できる。タブレットに作業状況を表示し、作業員の技量に左右されず高品質な施工を実現する。切羽に作業員が立ち入らずに済むため、安全性向上と省人化に寄与する。

ロボルタスはロックボルト打設作業に必要な削孔、モルタル注入、ロックボルト挿入の各作業を1本のブームで行い、20本のロックボルトを収納できる。トンネル掘削の作業工程を短縮し、作業員が従来の5人から3人に減り、40%の省人化を実現するという。ロックボルトの長さやボルトの種類など各種条件を設定できるため、緊急性の高い設計変更にも対応可能だ。
同社は山岳トンネル建設の生産性を飛躍的に高める統合システム「OTISM(オーティズム)」を開発している。ロボルタスはトンネル掘削の安全性向上・省人化に関する一連のシステム「OTISM/Tunneling(オーティズムトンネリング)」の構成技術の一つとなる。
今後、ロボルタスの実証実験を積み重ね、トンネル工事施工技術との連携を進める。
ロックボルト打設作業は、掘削後にトンネルを構造的に保持するために支保する役割を担う。作業員が切羽付近での騒音や粉じんなどにさらされながら、重量物であるロックボルトを取り扱う過酷な作業。作業員の技量で施工スピードや品質が左右されるなど課題があった。
ロックボルト遠隔打設専用機「ロボルタス」(報道発表資料から)
従来工法との比較(報道発表資料から)
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大阪府市ら/大阪城東部まちづくり新方針決定、来年度にA・C地区市場調査

大阪府や大阪市は26日、同市城東区森之宮付近に広がる「大阪城東部地区」の2022年度版まちづくりの方向性を決めた。28年春を目標時期とする同地区「1・5期」の事業として、大阪メトロが森之宮検車場に設置する新駅や、大阪公立大学森之宮キャンパス「A地区」の情報学研究科施設の民間活力による整備、同大学西側に広がる大阪メトロの用地「B地区」の開発、もと森之宮ごみ焼却工場「C地区」開発を新たに盛り込んだ。A地区とC地区について23年度早期にマーケットサウンディング(対話型市場調査)を行う。
新駅は同地区のアクセスを向上し、大阪メトロ中央線などの活性化にも役立てるため設置を決定。同地区を象徴し、インテリジェンス(知)と、イノベーション(革新)、新規事業を育てるインキュベーションを球体で表すイメージを想定している。森之宮キャンパスには情報学研究科を設置し、周辺施設との連携を深めるとともに、都市のシンクタンク機能や技術開発機能の強化を図る。
B地区(2ヘクタール)では、国際色のある業務・商業・宿泊・居住などの多様な交流・連携機能などを検討。大学との連携で新技術開発などを誘発する方針だ。
C地区(1・2ヘクタール)については「次世代型駅前空間」を計画。鉄道やバス、新しい交通・移動手段「スマートモビリティ」をつなぐ機能や水辺空間の更新、商業機能などの導入も見込む。
都市計画道路・豊里矢田線などの美装化も進める
1・5期開発のイメージ(報道発表資料から)

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回転窓/記録的な値上げの1年

先日の小欄でも触れた「今年の漢字」には「戦」が選ばれたが、4番目に多い投票を集めたのが「高」だった。原料高、原油高、円安などの要因が重なり、身近なモノの値上げが相次いだ1年を象徴する一字である▼中でも食品は製造コストや物流費の上昇で再値上げの動きが広がり、価格を変えずに内容量を減らす実質値上げも目立った。帝国データバンクが主要食品会社105社を集計したところ、今年の値上げは2万品目を超えて「バブル崩壊後では類を見ない記録的な値上げラッシュの年」になった▼来年1~4月には7000品目以上の値上げが予定されているという。食品価格の引き上げは続くが、作り手のコスト増を価格に転嫁しなければ利益が上がらず、賃金の支払いもままならなくなる。そう思い値上げを受け入れていくしかない▼建設業界もこの1年は資機材や燃料などの価格高騰にあえいだ。上昇分を価格転嫁できず、厳しい経営を強いられている企業の現状を踏まえ、民間発注者らには適切な対応をお願いしたい▼本紙最終面で今日と明日、今年の建設業界を回顧する。1年を振り返りながら新たな年を待ちたい。


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香川県/湊川水系河川整備計画変更原案策定、五名ダム再開発の堤高縮小

 香川県は23日、湊川水系河川整備計画の変更原案を公表した。五名ダム(東かがわ市入野山)の再開発で、東かがわ市への日量2000立方メートルの新規水道用水の供給を取りやめる。これに伴い、新設するダムの堤高は従来計画の55・4メートルから52・8メートルに縮小する。
 再開発では湊川の洪水時の流量低減を図るため、既設の五名ダムの下流約700メートルの地点に重力式コンクリートダムを整備する。総貯水容量は約570万4000立方メートル。うち有効貯水容量は約525万4000立方メートルとなる。洪水調節容量は約306万立方メートル。
 今回の変更では、将来人口推計に基づく水需要予測を行った結果、東かがわ市への新規水道容量の廃止を決定。異常渇水時に香川用水配水エリアに水を送るための渇水対策容量(1・4万立方メートル)を新しく確保する計画とした。利水容量は約219万4000立方メートル。このうち、約218万立方メートルが流水の正常な機能の維持に必要な容量となる。
 五名ダム再開発本体概略設計業務は2023年3月24日までの履行期間でニュージェックが担当している。同社はダム軸確定業務や環境調査、全体計画の資料作成業務も手掛ける。
 湊川の河道整備では、五名ダム再開発による洪水調節後のピーク流量である毎秒630メートルを安全に流下させるため、河道掘削や築堤、護岸などを施工する。河道整備は河口から東山川合流点までの約6・4キロ区間となる。



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2022年12月26日月曜日

東京都/総事業規模15兆円の強靱化プロジェクト、23年に始動

東京都は23日に公表した「TOKYO強靱化プロジェクト」で▽地震▽風水害▽火山噴火▽電力・通信等の途絶▽感染症-の五つの災害と複合災害への具体的な対応策をまとめた。従来の防災施策を再考。2040年代に目指す強靱化された東京の姿を描き、インフラ整備などハード面を主体にデジタル技術などソフト対策を組み合わせ、実効性の高い施策を展開する。総事業規模15兆円のうち、今後10年間で6兆円を投じる。=1面参照
都はプロジェクトの推進に当たって、早期に事業執行するため債務負担行為を積極的に活用する。民間が持つ技術やノウハウを一層活用できる発注方法を採用する。設計積算業務の在り方も見直す。プロジェクトに必要な技術職員を確保するため、採用手法の多様化を検討する。重要政策に関わる業務に職員を集中投入する。
プロジェクト対象の五つの災害のうち、事業費が最も多いのは地震対策で9・5兆円を充てる。都が5月に公表した首都直下地震の被害想定では、都心南部が震源の場合、死者は約6000人、建物被害は約19万4000棟に上ることが明らかになった。
1981~2000年に建てられた新耐震基準の木造住宅の耐震性を高めるため、新たな支援策も始める。木造住宅密集(木密)地域に対しては、建物の解体や建て替えを行う際の設計費や監理費を助成する制度を創設する。インフラを効率的に維持管理するためAIなどの活用を加速する。
風水害対策の事業規模は6・6兆円で計画する。合計約150万立方メートルの新たな調節池の事業化時期を当初計画の30年から、前倒しする。河川では、これまで区部で1時間当たり75ミリの降雨量への対策を講じてきた。今後は85ミリ降雨への対応を見据える。高台まちづくりを巡っては、公園など公共施設を活用した高台の確保を加速。救援・救助などの拠点的機能を担う高台まちづくりも目指す。
火山噴火対策には2・1兆円を割り当てた。水道施設で覆蓋化や高度浄水処理などを推進。災害情報システムの機能強化のほか、関係機関との情報共有網を構築する。
風水害に対応する神田川・環状7号線地下調節池(杉並区、東京都提供)

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政府/23年度予算案決定公共事業費6・1兆円、平準化国債も前年度並み

政府は23日、2023年度予算案を決定した。防衛関係費の増加を主要因に一般会計の総額は11年連続で過去最大を更新する114兆3812億円。うち公共事業関係費は前年度を26億円上回る6兆0600億円を確保した。インフラ老朽化対策に重点配分するなど国土強靱化関係予算を拡充し、22年度第2次補正予算で措置した「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の3年目分と一体的に推進する。=2面に関連記事
国土交通省分は一般会計の総額が5兆8714億円(前年度比0・4%増)。うち公共事業関係費は前年度を22億円上回る5兆2502億円となった。地方自治体向けの防災・安全交付金は8313億円(1・9%増)、社会資本整備総合交付金は5492億円(5・6%減)。
一般会計とは別枠の東日本大震災復興特別会計の国交省所管分は401億円(5・6%増)。独立行政法人などに充てる財政投融資には総額で2兆3275億円(40・0%増)を計上した。
施工時期の平準化や施工の効率化を図る観点で、国庫債務負担行為(国債)も前年度並みの水準で設定した。国交省分は2カ年以上の国債7271億63百万円、当該年度の支出がゼロで年度内に発注が行えるゼロ国債1925億53百万円を設定。昨年度創設した「事業加速円滑化国債」は930億71百万円を設定し、5か年加速化対策に基づく事業や災害復旧を対象に計画的で円滑な事業執行を促進する。
国土強靱化関係施策では新技術を活用した老朽化対策、ハード・ソフト一体となった流域治水対策などを重点化。インフラ老朽化対策などによる持続可能なインフラメンテナンスの実現に7388億円、流域治水の本格的実践には5402億円と昨年度を上回る額を計上した。
公共事業関係費の府省別内訳(国交省を除く)は次の通り。
▽農林水産省=6983億円▽厚生労働省=174億円▽経済産業省=22億円▽環境省=495億円▽内閣府=424億円。


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鹿島/月間打設量の国内最高記録を樹立、成瀬ダム堤体工事10月分27万立米

鹿島らが施工する成瀬ダム堤体打設工事(秋田県東成瀬村)で、コンクリートの月間打設量が国内最高記録を樹立した。10月分の打設量が27・1万立方メートルとなり、これまでの最高記録だった1960年8月の黒部ダム(富山県)工事での14・73万立方メートルを上回った。ICTを活用した建設生産システム「クワッドアクセル」を導入し、ブルドーザー3台と振動ローラー4台を自動運転。生産性を高め大量高速施工を実現した。
国土交通省東北地方整備局発注の「成瀬ダム堤体打設工事(第1期)」として、鹿島・前田建設・竹中土木JVが施工。現地発生土材(石や砂れき)やセメント、水などを混合した材料「CSG」で、治水や利水などを狙いとする多目的ダムを建設する。堤高114・5メートル、堤体積485万立方メートルの規模。台形CSGダムとして国内最大規模となる。
堤体のCSG打設にクワッドアクセルを導入。堤体CSGの高速打設に上下流面の保護コンクリート打設が追随できる「置き型枠自動スライドシステム」も適用した。堤体上でクレーン作業が不要となり、ダンプトラックでCSG運搬を実施している。
2022年度の打設は11月中旬に完了し、雪解け後の23年4月中旬に再開する予定。先行している右岸側打設箇所の高さに左岸側打設箇所が追いつき施工のピークを迎える。堤体上では自動のブルドーザーと振動ローラーに、自動ダンプトラックを加えた3機種連携による打設を行う。
1期工事の工事は23年3月まで。随意契約で2期工事に入り、全体工期は最長で27年3月までを予定する。
左岸堤体上のクワッドアクセルによるCSG打設(報道発表資料から)

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スペースワン/国内初の民間ロケット射場が完成、設計・施工は清水建設

小型ロケットで超小型の人工衛星を打ち上げる“宇宙宅配サービス”提供へ--。キヤノン電子とIHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行、紀陽銀行の5社が出資するスペースワン(東京都港区、豊田正和社長)が和歌山県串本町に建設していた国内初の民間射場「スペースポート紀伊」が完成し、2023年2月末の初号機打ち上げに向け急ピッチで準備が進む。22日、射場施設が初めて報道陣に公開された。
◇宇宙宅配サービス提供へ
建設地は串本町田原地区(敷地面積約15ヘクタール)。管制室や衛星組み立て室などが入る総合指令棟やロケットを組み立てる整備棟、モーター保管庫、ロケット打ち上げ射点、移動式射点組み立て足場などを備える。清水建設の設計・施工で19年4月に着工し、21年度にすべての施設が完成した。
打ち上げる小型ロケット「カイロス」の基本構成は固体燃料3段式+軌道変更用液体エンジン。IHIエアロスペースが実績を重ねてきた固体燃料式ロケットの技術を継承した。全長は約18メートルで重量が約23トン。代表径は約1・35メートル、衛星を載せる先端部のフェアリングは約1・5メートルとなっている。太陽同期軌道(南向)では重量150キロまで衛星の搭載が可能だ。
人工衛星ビジネスの動きが活発化する中で、現状は民間の射場がなく海外で打ち上げる必要があるという。「契約から打ち上げまで1年、衛星引き渡しから4日後に打ち上げという世界最短を実現する」(スペースワン)ことで、高まるニーズに対応していく。2020年代半ばには年間20機の打ち上げを目指す。“ロケットの町”を打ち出した地域の活性化や雇用創出などの波及効果も期待される。
ロケット整備棟〈右〉と移動式射点組み立て足場
射場の管理・運営を行う総合指令棟
将来的に年間20機の打ち上げを目指す(スペースワン提供)
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関東整備局/3D計測技術で出来形管理手引作成、ICT施工普及へ全国初

関東地方整備局は現場技術者向けの「3次元計測技術を用いた出来形管理の活用手引き(案)」を作成した。イラストを多用し用語解説を加えるなど分かりやすさを重視。代表的な4工種は施工フローも盛り込み、出来形管理にとどまらずICT施工全体で活用できる。2023年度のBIM/CIM原則適用を見据え、建設現場での3Dデータ活用をさらに進める。手引の作成は全国で初めてという。
手引案は共通編と、工種別に▽土工▽舗装工▽路面切削工▽河川浚渫工▽護岸工▽表面安定処理・固結工(中層混合処理)▽固結工(スラリー撹拌〈かくはん〉)▽法面工▽トンネル工▽基礎工(矢板工・既設杭工、場所打ち杭工)▽擁壁工▽構造物工(橋脚・橋台)▽土工(1000立方メートル未満)・床掘り工・小規模土工・法面整形工-の13編の計14編で構成する。
国交省が3月に改訂した「3次元計測技術を用いた出来形管理要領(案)」をベースに図解を多く用いて、現場技術者により使ってもらえるよう工夫。現場のさまざまな場面で活用できるよう内容も充実させた。
共通編では初めてICT施工にチャレンジする技術者でも分かりやすいよう、冒頭に用語集を設けたほか、ICT機器ごとの特徴や、どの工事でどのICT機器を使ったら良いかなどをイラストを交えて解説。ICT機器ごとに必要な精度水準を表で掲載し、現場でICT施工を担当する技術者が求める情報がすぐに手に入るよう配慮している。
各工種編では、従来施工とICT施工を「ビフォー・アフター形式」で比較し、何が変わったか一目で分かるようにした。このほか土工、舗装工、護岸工、構造物工の4工種は、ICT施工のフローも掲載。施工計画書の作成から工事基準点の設置、地形データ・3D設計データの活用、施工、出来形管理図表の作成、電子納品まで一連の工程で、どのようなデータを作成するのか解説している。
関東整備局では独自の取り組みとして10月から、すべてのBIM/CIM活用工事を対象に実施計画書のウェブヒアリングを行っている。23年度に直轄土木工事で予定するBIM/CIM原則適用に備え、情報共有や職員のスキルアップを図っている。今後、手引案を業界団体や他の発注者などにも送り活用を呼び掛けるほか、他の地方整備局にも周知していく考えだ。
若手職員がデザインしたこだわりの表紙

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回転窓/播州室津の天然ゆりかご

作家・司馬遼太郎(1923~96年)は紀行シリーズ『街道をゆく』で播州揖保川・室津みちを旅している。室津に着いて宿の窓から見えたのは室津港(兵庫県たつの市)。奈良時代に行基が整備した悠久の歴史を持つ港である▼この港で水揚げされる代表的な海産物の一つは養殖カキ。三方を囲む山から豊かな栄養分が海に流れ込み、そこは良質なカキが育つまさに天然のゆりかごのようだという▼兵庫県がカキの名産地と知ったのは、建設関連会社の知人から「室津カキ」を頂いたのがきっかけだった。あまりのおいしさに産地を調べて分かった次第で、ファン歴こそ長くないものの味の良さには太鼓判を押せる▼育ったカキを一度引き揚げ、殻に付いた不純物を取り除くなどしてから、再び海に戻して身を太らせる。こうした一手間も二手間もかけるのもうまさの秘訣(ひけつ)だろう▼冒頭の紀行には室津のタコとシャコのことが書かれている。ここでカキの養殖が始まったのは90年代後半。司馬が旅で訪れた当時はまだ名産ではなかった。今の時代であれば、地域のブランドとなった海の恵みのカキもきっと登場したに違いない。


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関東整備局常陸河川国道/那珂川治水対策の現場見学会開く、越水・決壊検知を実演

 関東地方整備局常陸河川国道事務所は21日、水戸市内で那珂川治水対策プロジェクトの現場見学会を開いた。那珂川流域の浸水被害を抑えるため、ハード・ソフト両面で対策を実施している様子を公開。ICT施工を導入した高水敷掘削現場の紹介や、河川の越水、堤防決壊を検知する無線センサーのデモンストレーションをした。同流域は2019年の台風で広範囲にわたり浸水被害が起きた。
 同プロジェクトは那珂川流域の浸水被害を最小限にするため、河道掘削や遊水池、堤防を国や県、市町村と連携して整備する。全体事業費は約665億円、事業期間は19~24年度。
 河道掘削は、最大高さ約4メートルの高水敷部を那珂川から堤防方向に掘削して河道を確保。水位を低下させる。工事区域は水戸市内と一部ひたちなか市内で▽若宮地区▽水府・枝川地区▽根本地区▽中河内地区▽渡里地区▽下国井地区-の6地区に分けて掘削する。河川両岸を合わせた掘削の総延長は14キロメートル。12月現在、樹木伐採作業を含め、半分以上に着手しているという。砂や粘土を含む掘削土は、改良して築堤土として活用する。
 公開した現場は水府・枝川地区(約700メートル)。ICT施工を導入している。建設機械は衛星利用測位システム(GPS)とGNSS(全球測位衛星システム)のアンテナを装備。常に測量が可能で、数センチ単位の精度で施工できる。若年オペレーターでも高い精度で作業できるアシスト機能も備えた。現場担当者は「作業は2~3割ほど効率がよくなった印象」。施工の精度だけでなく、安全性が高まっているという。
 19年の台風時、那珂川からの越水が同時多発的に発生し、状況確認に手間取った経験から、同プロジェクトは越水や堤防決壊を効率的に把握できるよう、ソフト面を強化している。関東整備局と同事務所が主体となり、20年から「越水・決壊センサー」を開発。本年度に運用を始め、実証を重ねている。
 同センサーは▽衝撃を検知する3軸加速度センサー▽転倒を検知する傾斜センサー▽GPS-を備えた円形の無線機器で、直径約80~85ミリ、高さ40~50センチの杭の内部に入れて運用する。堤防異常は▽水没▽衝撃▽転倒-の3要素で判定。杭の水没は、無線基地局に届く電波の減衰(10分間で約8割減)で判定する。杭の設置場所は那珂川上流の常陸大宮市から下流の水戸市まで、50メートル間隔で計284カ所。浸水被害が大きいと見込む区域を選定した。
 センサーが異常を検知すると、関東整備局内にあるサーバーを介して担当職員のパソコンやスマートフォンにアラートが送信される。担当者は現地確認や河川カメラなどで状況把握する。
 見学会では実際にセンサーの入った杭を倒し、スマホにアラートが送信される様子を実演した。同事務所の担当者は「センサーは検証の見直しや投資効果を確認し、改良を重ねていく」と強調。治水対策の完了に向けて「地域住民と一体となって進める」と意気込んだ。



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政府/GX実現基本方針を了承、8倍のスピードで系統整備推進・省エネ補助金も創設

 政府の検討会は社会構造のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針を22日に了承した。再生可能エネルギーの主力電源化に必要となる系統整備を重点事項に挙げ、海底直流送電網などの整備を従来の8倍以上のスピードで推進すると表明。経済活動の省エネルギー化を徹底させるため、中小企業に向けた省エネ補助金の創設なども盛り込んだ。必要となる財源の一部を、20兆円規模の発行を予定する「GX経済移行債」で調達する方向性も明記した。
 「GX実現に向けた基本方針」は同日、東京・永田町の首相官邸で開いた「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)で了承された。意見募集を経て近く閣議決定する。
 再エネの主力電源化には洋上風力発電の導入促進が有効だが、適地は北海道や東北地方の日本海側などに多く、大消費地から離れる。今後は海底直流送電を含む送電インフラ整備のスピードを、過去10年間の8倍以上に加速。北海道からの海底直流送電は2030年度の完成を目指して整備するとした。
 再エネ関連ではこのほか▽揚水発電所の維持・強化▽次世代型太陽電池の研究開発・導入支援▽浮体式洋上風力発電の技術開発・大規模実証-なども強力に推進する。原子力関連では安全性の確保を前提に、次世代革新炉の開発・建設を進める。
 省エネ化関連施策にも注力する。基本方針には民間企業が複数年にわたる省エネ関連投資に切れ目なく対応できるよう「省エネ補助金」を創設すると明記。化石燃料を大量に消費する事業者に対しては、非化石エネルギーへの転換に向けた中長期計画の提出を義務付け、定期的な進捗(しんちょく)報告も求める。
 各種施策にかかる費用は今後10年間で150兆円程度と見積もる。国は20兆円規模の「GX経済移行債」を発行し先行投資を可能にする方針。償還には企業や消費者らに費用負担を求め、二酸化炭素(CO2)排出抑制につなげる「カーボンプライシング(CP)」で得られる財源を充てる。CPの導入に必要となる関連法の改正案は次期通常国会に提出する。



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四国整備局/DX活用モデル初弾に5技術使用、23年3月に現地見学会

 四国地方整備局の建設DX技術活用モデル(選択肢型)工事の初弾となる「令和4年度今治道路五十嵐高架橋下部P47-P49工事」で使用する技術が決まった。施工を担当する白石建設工業が日本建設業連合会(日建連)インフラ再生委員会の「建設DX事例集」から選んだ。日建連が現場条件に適している技術かどうかや使用したい時期に支援可能かどうかなどを確認。四国整備局と白石建設工業の3者で調整を行い、5技術をマッチングさせた。
 選定した技術は鹿島の「AI配筋検査システム」と清水建設の「リアルタイム自動配筋検査システム」、不動テトラの「点群データを活用した構造物の施工管理」、三井住友建設のリアルタイム鉄筋出来形自動検測システム「ラクカメラ」、淺沼組の「VRによる安全教育訓練」。
 工事場所は愛媛県今治市別名。高さ12メートルの橋脚3基を設置する工事で、径1・5メートルの基礎工を24基施工する。現場条件や納期に問題がなく活用できるとして、橋脚1基ごとに鹿島と清水建設、三井住友建設の技術をそれぞれ試行する。
 不動テトラの技術はP47橋脚で試行する。橋脚完成後にヒートマップを作成でき、躯体表面の出来栄え評価など出来形管理への活用が期待できるという。
 現場のVR(仮想現実)モデルを作成し、足場設置などの安全教育訓練に役立てる淺沼組の技術は、モデル作成に時間を要するため、今回は一般的なVRモデルを提供してもらい、安全教育訓練に活用する。
 各技術は2023年2月上旬から順次現場で使用する。四国整備局は同3月上旬をめどに現地見学会を開催する予定だ。地域の建設業をはじめ、周辺の高校生や技術系大学生、小中学生とその保護者にも声を掛ける。企画部技術管理課の水野匡洋課長補佐は「建設業は大きな転換期を迎えていると知ってもらい、最新技術を使用することでインテリジェンスで安全な建設業となることをしっかりとアピールしていきたい」と見学会開催に意欲を見せる。
 「建設DX技術活用モデル(選択肢型)」の試行工事は四国整備局独自の施策で一般土木C等級を対象としている。特記仕様書で日建連インフラ再生委員会の「建設DX事例集」に掲載された技術を推奨事例として紹介。受注企業がその中から1技術以上を選び現場に導入する。機械賃料やシステム構築費など必要な追加費用は変更契約できる。地域建設業で課題となる生産性向上を後押しするとともに、業界の魅力を高め担い手の確保につなげる。



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国交省/新たな省エネ性能表示制度で素案、建物広告にBEI明記

 国土交通省は2024年4月にスタートする新たな「省エネ性能表示制度」の素案をまとめた。対象は建物を販売したり賃貸したりする事業者。国が定める様式を使い、建物の広告にエネルギー消費性能(BEI)などを表示するよう求める内容だ。制度の決定は23年2月を予定。以降は関係事業者団体の協力を得ながら業界への周知を図る。事業者向けのガイドラインも提供し、円滑な制度施行に備える。
 素案は21日にウェブで開いた外部有識者会議「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」(座長・中城康彦明海大学不動産学部教授)で示した。
 住宅と非住宅建築物の両方が制度の対象となる。いずれも販売・賃貸する際の▽新聞・雑誌広告▽新聞折り込みちらしなど▽パンフレットなど▽インターネット広告-に指定の様式で省エネ性能を表示するよう求める。
 指定の様式では太陽光パネルなどで得た再生可能エネルギーを除く純粋なBEIと、評価年月日を表示する。住宅の場合は外皮性能も、外皮平均熱貫流率(UA値)か冷房期の平均日射取得率(ηAC値)のいずれかの数値で明示する必要がある。
 BEIは建築物省エネ法で定める「省エネ基準」に対する1次エネルギー消費量の削減率を示す数値。新たな制度の素案では建物のBEIを6段階で評価する。省エネ基準に不適合(BEI=1・0以上)の建物が最低評価となり、数値が0・1減るごとに高評価を与える。BEI=0・6以下で最高評価が得られる。評価は星の数で表す。
 6月に成立した改正建築物省エネ法は建物の販売・賃貸事業者を対象に、省エネ性能の表示を義務付けた。適正に表示していない事業者は国交相による勧告や命令、事業者名公表の対象になる。同省はこれを機に現在運用している建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)を再構築する方針。検討会で新たな制度を具体化し23年2月に議論をまとめる。
 同4~6月に関係告示を公布。24年4月に改正法を施行する。



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国交省/「建築・都市のDX」本格始動、BIMとプラトーのデータ連携で生産性向上

 建築・都市・不動産分野の社会課題の解決に向け、各分野のデジタルデータを連携させ付加価値を生み出す試みが一気に加速している。国土交通省が「建築・都市のDX」と称して省内横断の取り組みを展開。先月成立した2022年度第2次補正予算では建築分野のBIMと3D都市モデル「プロジェクト・プラトー」、不動産IDの関連施策に重点が置かれ、BIMモデルをプラトーに反映させるためのデータ変換のシステム開発費用も初めて盛り込まれた。
 「建築・都市のDX」は都市再生を促進する方策として、政府が6月決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」で初めて明記された。BIMを建築分野、プラトーを都市分野のデジタルインフラと位置付け、各分野のデータをひも付ける記号として不動産IDを設定。データの連携・蓄積で都市開発・街づくりを加速する新たな使い道を創出する。プラトーをベースとしたオープンイノベーションの促進で、新たなサービス・産業の展開も視野に入れる。
 デジタル社会の実現を強力に推進する政府方針を追い風に、22年度第2次補正予算ではBIM関係で80億円、プラトー関係で15億円、不動産ID関係で4・6億円を計上。BIMの普及事業を所管する住宅局の担当者は「これまでも個々に取り組んできたが、連携に踏み出していく新しいフェーズに入った」と捉える。
 プラトーは従来の航空測量などで把握できる範囲にとどまらず、さまざまなデータを用いて地下空間など目に見えない領域にも都市モデルを拡張する。BIMモデルを反映できれば建物内部も含めた高精度なデジタルツインが実現する。自動的なデータ更新の在り方なども検討課題に挙がっている。
 ユースケース(利活用場面)の開発も焦点となり、プラトーではパイロット事業の実施を想定。具体的な内容は今後詰めるが、例えばデジタルツイン上で計画・設計に必要なデータを容易に取得できる環境が整うことで設計・施工の生産性や品質の向上が可能になるとみている。建物内外の精緻な避難シミュレーションを防災計画や避難場所・動線の設計に反映させるなどの活用法も想定できる。



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2022年12月23日金曜日

政府/GX実現基本方針を了承、8倍のスピードで系統整備推進・省エネ補助金も創設

政府の検討会は社会構造のGX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針を22日に了承した。再生可能エネルギーの主力電源化に必要となる系統整備を重点事項に挙げ、海底直流送電網などの整備を従来の8倍以上のスピードで推進すると表明。経済活動の省エネルギー化を徹底させるため、中小企業に向けた省エネ補助金の創設なども盛り込んだ。必要となる財源の一部を、20兆円規模の発行を予定する「GX経済移行債」で調達する方向性も明記した。
「GX実現に向けた基本方針」は同日、東京・永田町の首相官邸で開いた「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)で了承された。意見募集を経て近く閣議決定する。
再エネの主力電源化には洋上風力発電の導入促進が有効だが、適地は北海道や東北地方の日本海側などに多く、大消費地から離れる。今後は海底直流送電を含む送電インフラ整備のスピードを、過去10年間の8倍以上に加速。北海道からの海底直流送電は2030年度の完成を目指して整備するとした。
再エネ関連ではこのほか▽揚水発電所の維持・強化▽次世代型太陽電池の研究開発・導入支援▽浮体式洋上風力発電の技術開発・大規模実証-なども強力に推進する。原子力関連では安全性の確保を前提に、次世代革新炉の開発・建設を進める。
省エネ化関連施策にも注力する。基本方針には民間企業が複数年にわたる省エネ関連投資に切れ目なく対応できるよう「省エネ補助金」を創設すると明記。化石燃料を大量に消費する事業者に対しては、非化石エネルギーへの転換に向けた中長期計画の提出を義務付け、定期的な進捗(しんちょく)報告も求める。
各種施策にかかる費用は今後10年間で150兆円程度と見積もる。国は20兆円規模の「GX経済移行債」を発行し先行投資を可能にする方針。償還には企業や消費者らに費用負担を求め、二酸化炭素(CO2)排出抑制につなげる「カーボンプライシング(CP)」で得られる財源を充てる。CPの導入に必要となる関連法の改正案は次期通常国会に提出する。


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JR東海/リニア新幹線長野県駅(飯田市)が着工、施工は清水建設

JR東海が計画するリニア中央新幹線(東京・品川駅~名古屋駅)「長野県駅(仮称)」(飯田市)の新設工事が22日、着工した。高さ約20メートルの高架橋形式の駅舎を想定し、施工は清水建設が担当する。神奈川や岐阜など4県で整備する中間駅のうち、工事未着手なのは山梨県だけとなった。 新駅の工事場所は上郷飯沼、座光寺。施工範囲は約950メートル。駅の構造は本線と副本線を合わせて2面4線で、ホーム幅は最大約40メートルを想定する。
年度中ごろ高架橋の工事に着手する考え。=4面に起工式
駅舎の完成予想(駅、広場等のイメージ。今後の検討により変更の可能性あり)=JR東海提供

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関東整備局常陸河川国道/那珂川治水対策の現場見学会開く、越水・決壊検知を実演

関東地方整備局常陸河川国道事務所は21日、水戸市内で那珂川治水対策プロジェクトの現場見学会を開いた。那珂川流域の浸水被害を抑えるため、ハード・ソフト両面で対策を実施している様子を公開。ICT施工を導入した高水敷掘削現場の紹介や、河川の越水、堤防決壊を検知する無線センサーのデモンストレーションをした。同流域は2019年の台風で広範囲にわたり浸水被害が起きた。
同プロジェクトは那珂川流域の浸水被害を最小限にするため、河道掘削や遊水池、堤防を国や県、市町村と連携して整備する。全体事業費は約665億円、事業期間は19~24年度。
河道掘削は、最大高さ約4メートルの高水敷部を那珂川から堤防方向に掘削して河道を確保。水位を低下させる。工事区域は水戸市内と一部ひたちなか市内で▽若宮地区▽水府・枝川地区▽根本地区▽中河内地区▽渡里地区▽下国井地区-の6地区に分けて掘削する。河川両岸を合わせた掘削の総延長は14キロメートル。12月現在、樹木伐採作業を含め、半分以上に着手しているという。砂や粘土を含む掘削土は、改良して築堤土として活用する。
公開した現場は水府・枝川地区(約700メートル)。ICT施工を導入している。建設機械は衛星利用測位システム(GPS)とGNSS(全球測位衛星システム)のアンテナを装備。常に測量が可能で、数センチ単位の精度で施工できる。若年オペレーターでも高い精度で作業できるアシスト機能も備えた。現場担当者は「作業は2~3割ほど効率がよくなった印象」。施工の精度だけでなく、安全性が高まっているという。
19年の台風時、那珂川からの越水が同時多発的に発生し、状況確認に手間取った経験から、同プロジェクトは越水や堤防決壊を効率的に把握できるよう、ソフト面を強化している。関東整備局と同事務所が主体となり、20年から「越水・決壊センサー」を開発。本年度に運用を始め、実証を重ねている。
同センサーは▽衝撃を検知する3軸加速度センサー▽転倒を検知する傾斜センサー▽GPS-を備えた円形の無線機器で、直径約80~85ミリ、高さ40~50センチの杭の内部に入れて運用する。堤防異常は▽水没▽衝撃▽転倒-の3要素で判定。杭の水没は、無線基地局に届く電波の減衰(10分間で約8割減)で判定する。杭の設置場所は那珂川上流の常陸大宮市から下流の水戸市まで、50メートル間隔で計284カ所。浸水被害が大きいと見込む区域を選定した。
センサーが異常を検知すると、関東整備局内にあるサーバーを介して担当職員のパソコンやスマートフォンにアラートが送信される。担当者は現地確認や河川カメラなどで状況把握する。
見学会では実際にセンサーの入った杭を倒し、スマホにアラートが送信される様子を実演した。同事務所の担当者は「センサーは検証の見直しや投資効果を確認し、改良を重ねていく」と強調。治水対策の完了に向けて「地域住民と一体となって進める」と意気込んだ。
河道掘削現場
円形のセンサー〈左〉を杭の内部に入れて運用する
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秋田洋上風力発電/能代港で商業運転開始、単機出力4200kWを20基

秋田、能代両港でウインドファーム事業を展開する秋田洋上風力発電(秋田市、岡垣啓司社長)が、22日に能代港洋上風力発電所の商業運転を開始した。単機出力4200キロワットの風車20基を港内に据え付けた。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度に基づき東北電力ネットワークに売電する。秋田港洋上風力発電所も試運転と法定検査を進めており、能代港と同様に近く商業運転を開始する見込みだ。
プロジェクトの総事業費は約1000億円。丸紅をはじめ大林組、東北電力、コスモエコパワー、関西電力、中部電力、秋田銀行、大森建設、沢木組、協和石油、加藤建設、寒風、三共の13社が出資している。商業ベースで国内初の大型洋上風力発電事業として2016年4月に会社を設立した後、開発調査などを経て20年2月から発電所を建設していた。
洋上工事のうち風車の基礎と海底ケーブルはEPCI(設計・調達・建設・据え付け)方式で鹿島・住友電気工業JVが施工。送変電設備などの陸上工事はきんでんが担当した。風車のブレードは直径117メートル、ウィンドファームの総発電容量は計33基で約14万キロワットになる。
商業運転を開始した能代港洋上風力発電所(秋田洋上風力発電提供)

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九大・九電工/室内照度測定の小型群ロボットを開発、現場の長時間労働是正へ

九州大学と九電工は、室内照度を自動測定するロボットを開発した。複数の小型ロボットが室内を自走しながら照度の測定データを短時間で取得できる。建物の完成直前に行う照度測定は、日光の影響を避けるために夜間に行われ、人的負担が大きかった。ロボットによる生産性向上で現場技術者の長時間労働を是正しようと、8カ月と短期間でプロトタイプの完成にこぎ着けた。
九電工が電気設備工事を施工する福岡県朝倉市内の物流施設「ESR福岡甘木ディストリビューションセンター」で21日、九大システム情報科学研究院の倉爪亮教授と九電工の酒見和幸技術本部技術開発部長が会見した。
開発では、小型群ロボットが協調して動作する「スワームロボットシステム」を活用。JIS規格に基づく照度測定器を載せた3台の小型ロボットを用い、1400平方メートルの室内を人が測定する場合に25分要するところを17分に短縮できる様子も披露した。手作業よりもきめ細かくデータが取得できるのも利点という。
今後、測定データから自動で試験成績書に直接アウトプットできるソフトウエアを開発して書類作成業務も自動化。2023年度中に実用化し、九電工が電気設備工事を行う「物流施設、工場、無柱でフロア面積の広いオフィスなどの照度測定に活用していきたい」(酒見氏)とする。
24年4月に迫った建設業での時間外労働の罰則付き上限規制適用も視野に、現場作業の生産性向上に役立て、他社への外販も見据える。
九大と九電工は21年12月、社会課題の解決に向けたイノベーション創出を目的とした組織対応型連携を締結。今回の開発が初弾案件となる。
働き方改革という直面する課題に対し、倉爪教授が詳しいROS(ロボットオペレーティングシステム)で過去に開発された技術やノウハウを生かし、短期間での開発につなげた。
照度測定向けのロボットを「空調や温度の測定にも応用できるのではないか」(酒見氏)と見ている。
倉爪教授〈左〉と酒見部長
3台のロボットが室内を試走
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回転窓/日銀の「サプライズ」

日銀が長期金利の変動幅を0・5%程度に拡大する方針を20日発表した。黒田東彦総裁は「利上げではない」と説明したものの、事実上の利上げと同じ効果を持つとされる▼従来の大規模な金融緩和策の修正を、市場は「サプライズ」と受け止めたようだ。同日の東京外国為替市場の円相場は半日で5円強の円高に。債券市場も同日から21日にかけて長期金利が急騰し、新たな上限に近づく動きを見せている▼経営への影響は立場によってさまざま。輸入材が多い建設関係企業トップは、円高基調を見据えて「目先では恩恵がある」とする一方、「マンション需要への影響が気になる」とも。住宅ローン金利の上昇は、マンション購入意欲にブレーキを掛ける可能性がある▼海外を見ても、先行して利上げが進む欧米では、景気後退への懸念が高まる。「ゼロコロナ政策」を緩和した中国での感染再拡大も世界経済に暗い影を落とす▼ある企業トップは、事業環境の急変が起こりえることを前提に経営基盤を構築していかざるを得ないと強調する。困難が伴うが、新たな地平を切り開くチャンスと捉え、強い経済を取り戻していきたい。


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大阪府・大阪市/万博跡地利用で対話調査、23年1月31日に説明会

 大阪府と大阪市は22日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場跡地(大阪市此花区)の開発事業者公募に先立ち、マーケットサウンディング(対話)型市場調査を実施すると発表した。万博跡地は夢洲第2期区域として位置付け、万博のレガシーを継承する。エンターテインメントやレクリエーション機能の導入を目指す。参加申し込みは2023年2月24日まで、提案は同5月10日までそれぞれ受け付ける。同5~7月に民間事業者と対話を行い、同夏頃に調査結果の概要を公表する。事業者公募は23年度に始め、25年4月の万博開幕までに開発事業者を決める。
 跡地利用の対象は万博会場の一部約50ヘクタール。参加できるのは、同開発の実施主体となる意向がある法人または法人のグループ。調査では開発コンセプトや想定する事業区域、土地利用の方針、全体配置計画、各施設の規模・機能のほか、想定する来街者や従業員数、交通量を聞く。
 誘致活動中のカジノを含むIR(統合型リゾート)施設を計画している第1期開発区域と連携した動線や土地利用計画、万博の理念を継承するレガシーの活用可能性や方法、スーパーシティー構想を踏まえた夢洲コンストラクションの将来的な活用の提案も受ける。
 このほか、開発スケジュールや土地の契約方法、投資計画についても調査する。
 23年1月31日に説明会を開催する。同1月24日まで参加申し込みを受け付ける。
 2期区域では「スマートリゾートシティー」をコンセプトに、夢洲の国際観光拠点を強化・拡充する。第1期との連続性を確保するほか、健康・医療産業や研究機関が研究した成果、最先端技術を体験できるようにする。都市データを生かした新しいプロジェクトの創出も目指す。
 夢洲を周回できる観光外周道路の整備も想定。用地売却方式と事業用定期借地権方式を見込む。万博閉幕後、早期の開発工事着手を目指す。夢洲に延伸する地下鉄(仮称)夢洲駅の敷地は調査の対象外となる。



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2022年12月22日木曜日

東京芸大/S・W造の国際交流拠点が完成、デザイン監修を隈研吾氏・施工は前田建設

 東京芸術大学が上野キャンパス(東京都台東区)に整備していた国際交流棟が完成した。隣接する既存の大学会館と一体的につながり、食堂やコミュニティーサロン、茶室などが入る。留学生や学生らが学びながら交流する場となる。施工した前田建設の提案により、鉄骨造と木造を組み合わせた混構造を採用。施工時のコンクリート打設回数を減らし、工期短縮や騒音抑制につなげた。
 「国際交流棟(Hisao&Hiroko TAKI PLAZA)」の所在地は上野公園12の8。大学会館の一部を解体した跡地にある。建物は5階建て延べ約1500平方メートルの規模。1・2階がS造、3・4階が混構造、5階がW造となっている。2021年11月に着工し、今年11月30日に竣工した。建物の内外にはパブリックアート作品を設置する。基本設計を隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)と東京芸大、デザイン監修を同事務所、設計監理を東京芸大と前田建設、施工を同社が担当した。
 前田建設は8日、現地で報道陣向け見学会を開いた。S造とW造を組み合わせることで、純木造の中高層建築では困難な9メートルスパンの空間を実現。将来の間取り変更に対応できるようにした。建物正面から視認できるメインファサードの耐震ブレースは、火災時に焼損しても建物構造を維持できる設計としており、デザインとして木質の露出を可能にしている。
 床板の一部には、北米で一般的な製材同士を固定して床板を構成する工法「NLT」を採用。日本の高温多湿の環境で反りや縮みが生じないかなどを環境実験で確認した。木造部と鉄骨部の接合箇所は耐火処理方法が法規上、明確ではなく、耐火炉で実証実験を行い安全性を確かめた。
 S造だけだった基本設計にW造を組み合わせる提案は、大学側が現場周辺で音楽学部の講義などがある中で工事騒音や振動を懸念していたことを踏まえ、前田建設から行ったという。担当した建築事業本部建築設計第1部の永松航介設計第1グループ長は「木造が大規模になっていくと鉄骨造との混構造は避けられないと考えている」と話し、騒音が課題となる市街地の建築物などに応用できる実例になるとした。



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国交省/新たな省エネ性能表示制度で素案、建物広告にBEI明記

国土交通省は2024年4月にスタートする新たな「省エネ性能表示制度」の素案をまとめた。対象は建物を販売したり賃貸したりする事業者。国が定める様式を使い、建物の広告にエネルギー消費性能(BEI)などを表示するよう求める内容だ。制度の決定は23年2月を予定。以降は関係事業者団体の協力を得ながら業界への周知を図る。事業者向けのガイドラインも提供し、円滑な制度施行に備える。
素案は21日にウェブで開いた外部有識者会議「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度に関する検討会」(座長・中城康彦明海大学不動産学部教授)で示した。
住宅と非住宅建築物の両方が制度の対象となる。いずれも販売・賃貸する際の▽新聞・雑誌広告▽新聞折り込みちらしなど▽パンフレットなど▽インターネット広告-に指定の様式で省エネ性能を表示するよう求める。
指定の様式では太陽光パネルなどで得た再生可能エネルギーを除く純粋なBEIと、評価年月日を表示する。住宅の場合は外皮性能も、外皮平均熱貫流率(UA値)か冷房期の平均日射取得率(ηAC値)のいずれかの数値で明示する必要がある。
BEIは建築物省エネ法で定める「省エネ基準」に対する1次エネルギー消費量の削減率を示す数値。新たな制度の素案では建物のBEIを6段階で評価する。省エネ基準に不適合(BEI=1・0以上)の建物が最低評価となり、数値が0・1減るごとに高評価を与える。BEI=0・6以下で最高評価が得られる。評価は星の数で表す。
6月に成立した改正建築物省エネ法は建物の販売・賃貸事業者を対象に、省エネ性能の表示を義務付けた。適正に表示していない事業者は国交相による勧告や命令、事業者名公表の対象になる。同省はこれを機に現在運用している建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)を再構築する方針。検討会で新たな制度を具体化し23年2月に議論をまとめる。
同4~6月に関係告示を公布。24年4月に改正法を施行する。
新たな様式のイメージ(国交省資料から)

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政策活動国交省/「建築・都市のDX」本格始動、BIMとプラトーのデータ連携で生産性向上

建築・都市・不動産分野の社会課題の解決に向け、各分野のデジタルデータを連携させ付加価値を生み出す試みが一気に加速している。国土交通省が「建築・都市のDX」と称して省内横断の取り組みを展開。先月成立した2022年度第2次補正予算では建築分野のBIMと3D都市モデル「プロジェクト・プラトー」、不動産IDの関連施策に重点が置かれ、BIMモデルをプラトーに反映させるためのデータ変換のシステム開発費用も初めて盛り込まれた。
「建築・都市のDX」は都市再生を促進する方策として、政府が6月決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針)」で初めて明記された。BIMを建築分野、プラトーを都市分野のデジタルインフラと位置付け、各分野のデータをひも付ける記号として不動産IDを設定。データの連携・蓄積で都市開発・街づくりを加速する新たな使い道を創出する。プラトーをベースとしたオープンイノベーションの促進で、新たなサービス・産業の展開も視野に入れる。
デジタル社会の実現を強力に推進する政府方針を追い風に、22年度第2次補正予算ではBIM関係で80億円、プラトー関係で15億円、不動産ID関係で4・6億円を計上。BIMの普及事業を所管する住宅局の担当者は「これまでも個々に取り組んできたが、連携に踏み出していく新しいフェーズに入った」と捉える。
プラトーは従来の航空測量などで把握できる範囲にとどまらず、さまざまなデータを用いて地下空間など目に見えない領域にも都市モデルを拡張する。BIMモデルを反映できれば建物内部も含めた高精度なデジタルツインが実現する。自動的なデータ更新の在り方なども検討課題に挙がっている。
ユースケース(利活用場面)の開発も焦点となり、プラトーではパイロット事業の実施を想定。具体的な内容は今後詰めるが、例えばデジタルツイン上で計画・設計に必要なデータを容易に取得できる環境が整うことで設計・施工の生産性や品質の向上が可能になるとみている。建物内外の精緻な避難シミュレーションを防災計画や避難場所・動線の設計に反映させるなどの活用法も想定できる。


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建設技術研究所ら5者/トンネル照明灯具の取り付け異常検知デバイスを開発

建設技術研究所ら5者は21日、電源を使わずにトンネル照明灯具の取り付け異常を検知するデバイス「フリークエンター」を開発したと発表した。LEDランプが付いたデバイスを灯具に取り付け振動を加えると、灯具を固定するボルトの緩み具合によってLEDが異なる光り方をする。これにより灯具の異常を検知する仕組みだ。老朽化などによる照明灯具の落下リスクを事前に把握できる。国土交通省の「点検支援技術性能カタログ」に登録された。
フリークエンターは、京都大学のインフラ先端技術コンソーシアム(八木知己大学院工学研究科教授)が開発した。構成メンバーのうち開発に携わったのは建設技術研究所のほか▽構研エンジニアリング(札幌市東区、池田憲二社長)▽鷺宮製作所(東京都新宿区、西見成之代表取締役)▽京都大学大学院工学研究科インフラ先端技術産学共同講座の塩谷智基特定教授▽北海道大学大学院工学研究院の橋本勝文准教授。
フリークエンターは手で持ち運べる箱状のデバイスでLEDランプが付いている。鷺宮製作所が開発した振動で発電する「エナジーハーベスタ」を活用し、検査時の電源を確保する。
使い方は4本のボルトでトンネル覆工壁面に固定されている照明灯具に、フリークエンターを取り付けた状態でハンマーなどを使って振動を与える。ボルトが緩んだり、取り付け金具が腐食したりすると灯具の固有振動数が低下する性質を活用し、振動数の変化によって変わるLEDの光り方で異常の有無を判断する。
同コンソーシアムは今後、フリークエンターの技術を応用し、トンネル照明灯具以外への適用を進め、付属施設点検のシステム化を目指す。
従来は作業員が実際の取り付け状況を目視したり、揺すったりして点検していた。人の感覚に依存する部分が多く、点検の質が作業員の技量に左右されるリスクがあった。
トンネル照明灯具といった付属施設の取付部の異常が年々増加している。異常を検知する技術の開発が行われるも、異常検知システムのコストが高いことや、異常と判断する基準設定の難しさなどから社会実装が進まない現状がある。このため安価で電源を使わずに異常を検知できる点検支援技術の開発が課題となっていた。
フリークエンターを照明灯具に取り付けて振動を与え、LEDランプの光から異常の有無を確認する(報道発表資料から)

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大阪メトロ/森之宮検車場(大阪市城東区)に新駅設置、28年春開業へ

大阪メトロは21日、大阪市城東区森之宮1の森之宮検車場に新駅を設置する方針を決定した。最寄りの中央線森ノ宮駅と新駅の間は検車場を出入りするために設けてある線路を活用し、営業車両を走らせる。2028年春の開業を目指す。大阪府と大阪市らが開発を進め、大阪公立大学の新キャンパス整備が進む大阪城東部地区の「森之宮」を同市の東の拠点として位置付け、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を開く西の拠点「夢洲」(大阪市此花区)と結ぶ中央線の機能強化を目指す。
森之宮の開発エリアは現在、大学などの開発の需要が拡大しているのに対し、交通手段が限られているのが現状。このため、大阪メトロは交通環境の整備が必要と判断し、新駅設置でアクセスの向上と開発エリアのポテンシャルを向上させる。
今後、関係者と協議し、建設計画などを詰める。
完成イメージ(報道発表資料から)

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四国整備局/DX活用モデル初弾に5技術使用、23年3月に現地見学会

四国地方整備局の建設DX技術活用モデル(選択肢型)工事の初弾となる「令和4年度今治道路五十嵐高架橋下部P47-P49工事」で使用する技術が決まった。施工を担当する白石建設工業が日本建設業連合会(日建連)インフラ再生委員会の「建設DX事例集」から選んだ。日建連が現場条件に適している技術かどうかや使用したい時期に支援可能かどうかなどを確認。四国整備局と白石建設工業の3者で調整を行い、5技術をマッチングさせた。
選定した技術は鹿島の「AI配筋検査システム」と清水建設の「リアルタイム自動配筋検査システム」、不動テトラの「点群データを活用した構造物の施工管理」、三井住友建設のリアルタイム鉄筋出来形自動検測システム「ラクカメラ」、淺沼組の「VRによる安全教育訓練」。
工事場所は愛媛県今治市別名。高さ12メートルの橋脚3基を設置する工事で、径1・5メートルの基礎工を24基施工する。現場条件や納期に問題がなく活用できるとして、橋脚1基ごとに鹿島と清水建設、三井住友建設の技術をそれぞれ試行する。
不動テトラの技術はP47橋脚で試行する。橋脚完成後にヒートマップを作成でき、躯体表面の出来栄え評価など出来形管理への活用が期待できるという。
現場のVR(仮想現実)モデルを作成し、足場設置などの安全教育訓練に役立てる淺沼組の技術は、モデル作成に時間を要するため、今回は一般的なVRモデルを提供してもらい、安全教育訓練に活用する。
各技術は2023年2月上旬から順次現場で使用する。四国整備局は同3月上旬をめどに現地見学会を開催する予定だ。地域の建設業をはじめ、周辺の高校生や技術系大学生、小中学生とその保護者にも声を掛ける。企画部技術管理課の水野匡洋課長補佐は「建設業は大きな転換期を迎えていると知ってもらい、最新技術を使用することでインテリジェンスで安全な建設業となることをしっかりとアピールしていきたい」と見学会開催に意欲を見せる。
「建設DX技術活用モデル(選択肢型)」の試行工事は四国整備局独自の施策で一般土木C等級を対象としている。特記仕様書で日建連インフラ再生委員会の「建設DX事例集」に掲載された技術を推奨事例として紹介。受注企業がその中から1技術以上を選び現場に導入する。機械賃料やシステム構築費など必要な追加費用は変更契約できる。地域建設業で課題となる生産性向上を後押しするとともに、業界の魅力を高め担い手の確保につなげる。


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回転窓/市長と芸人の共通点

漫才の日本一決定戦「M-1グランプリ」を毎年楽しみにしている。今年も先日決勝戦が行われ、新たなスターが誕生した▼M-1は結成15年以内のコンビならプロ、アマ問わず出場できる。今年は最多7261組がエントリーし、予選に自治体の首長や職員も出場。プロでも落ちる1回戦を突破し計3組が2回戦まで進んだ▼その一組は大阪府柏原市の冨宅正浩市長が友人と結成した「市長・市民」。マイクを前に「ほんまの市長です」と切り出して笑いを誘い、相方から「市長って暇なん?」とからかわれる場面も。「アピールが弱い」と突っ込まれつつ特産のブドウを紹介した▼冨宅市長は「柏原のPRになるのなら何でもやる」と出場を決めたそうだ。1回戦突破後はこれまでになく親子連れや若者から声を掛けられ、市内のブドウ直売所に新規来客もあったという▼メッセージをどう分かりやすく伝えるのか。こうした点で市長と芸人に求められるスキルは共通しているのかもしれない。漫才コンテストへの挑戦が市の知名度を上げ、若い世代が行政に関心を持つきっかけにもなればグランプリに値する成果と言えるだろう。


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2022年12月21日水曜日

CCUS小規模現場で利用加速へ/ANDPADと連携、GPS活用し履歴蓄積

住宅工事などの小規模現場をターゲットとした建設キャリアアップシステム(CCUS)の利用環境が整ってきた。CCUS登録技能者の就業履歴を蓄積するカードリーダーの設置が難しい現場状況に対応したサービスを拡充。CCUSとAPI連携するシステムとして新たに「ANDPAD」を追加し、スマートフォンのGPS(衛星利用測位システム)機能の活用で現場の入退場を管理できるシステムが利用可能となった。

ANDPADはスマホなどで現場の写真や図面、資料といったデータを一元管理し、工事関係者で共有できるクラウド型の建設プロジェクト管理サービス。アンドパッド(東京都千代田区、稲田武夫代表取締役)が運営しており、住宅工事などを手掛ける建設会社で利用が広がっている。
GPSを活用した入退場管理システムでは技能者のスマホ画面に、そこから約1キロ圏内にある現場を一覧表示。技能者は一覧表示された中から入場する現場を選択し、ボタンをクリックするだけで現場の入場日時・退場日時を登録することができる。
CCUSとAPI連携している別システムで、カードリーダーなどの機器設置が必要ない就業履歴の蓄積手法としてコムテックス(富山県高岡市、後藤敏郎社長)が提供する「キャリアリンク」がある。携帯電話の発信やスマホの顔認証で現場の入退場を管理できる。
無料の就業履歴登録アプリケーション「建レコ」には2023年夏ごろに「ロギング機能」を追加。カードリーダーの機種ごとに順次、対応可能となる予定だ。同機能ではカードリーダー本体に就業履歴データを一時的に保管し、後でまとめてCCUSに送信できる。
インターネットに接続できない現場を考慮し、建レコをインストールしたパソコンがあれば就業履歴を登録できる「オフラインログイン機能」は以前からあった。ロギング機能ではパソコンも不要で、小型のカードリーダーをポケットなどに入れて現場に持ち込めば対応可能となる。


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清水建設/クリーンルームの空調負荷を大幅削減、AIで最適制御

清水建設はクリーンルームの空調負荷低減に向け、室内に循環させる清浄空気の風量を最適化する空調制御システムを開発した。2019年に自社開発した省エネ型クリーン空調制御システム「クリーンEYE」の制御機構にAIを活用。センサーが捉えた室内環境の変化に応じてファンフィルターユニット(FFU)の運転出力を制御し、必要最小限のエネルギーで要求水準を満たす清浄環境を維持する。

クリーンEYEは、電子デバイス製造装置の組立工場などで要求されるISOクリーンクラス6~8の清浄環境に適応した空調制御システム。画像型人感センサーや室内の粒子濃度を検知するパーティクルセンサー、検知した各種データを基にFFUの出力調整を行う制御装置で構成する。施設稼働時に想定される発塵(じん)量の最大値で循環風量を決める一般的な空調システムに比べ、省エネ性能は約50%に達する。
開発した空調制御システムは、クリーンEYEの空調制御機構に深層強化学習機能を付加した。AIが室内環境データからエリア単位で清浄度の過不足を推定。FFUの運転出力を状況に応じてきめ細かに調整し空調負荷を減らす。
AIの深層強化学習にはCFD(数値流体力学)解析技術を活用。実運用の前に訓練用のデータを作成し、仮想空間で事前学習が行える環境を構築した。通常は学習開始から収束までに半年程度かかる学習期間を約2カ月に短縮できる。
FFU運転制御のAI化により、室内の清浄化に必要な搬送動力を従前システムと比べて30%削減する。同社はクリーンルーム施設の新設や改修計画に広く展開していく考えだ。
AI空調制御システムの概要(清水建設提供)

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野村不ら/中野サンプラザ周辺再開発、超高層ビルの特定業務代行者を募集

野村不動産らは21日、東京都中野区の複合施設「中野サンプラザ」周辺の再開発事業で設計、施工などを任せる特定業務代行者の公募手続きを始める。募集要項は27日までに手続き事務を担う都市みらい推進機構の担当窓口へメール(nakano4-nng@toshimirai.jp)すれば、受け取ることができる。整備するビルは最高高さ約262メートルに達し、中野エリアの活性化に期待がかかる。=2面に公告

再開発のプロジェクト名は「(仮称)中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」。施行区域は中野駅前の中野4の2の47ほか(区域面積約2・3ヘクタール)。中野サンプラザや移転が決まっている中野区役所が立地する。施行予定者は▽野村不動産(代表者)▽東急不動産▽住友商事▽ヒューリック▽JR東日本-の5社。
委託業務には基本・実施設計や建築物の施工に加え、事業推進の支援などを含む。公募には経営事項審査の総合評定値が建築一式と土木一式でともに1900点以上(11月末時点)の事業者が参加できる。2012年以降に延べ10万平方メートル、高さ100メートルを超える複合施設の設計・施工を手掛けた実績も求める。鉄道近接工事の施工経験も問う。
再開発ビルは敷地南側の高層棟(最高高さ262メートル)と北側の低層棟(同60メートル)の2棟構成。総延べ約29万8000平方メートルの規模となる。高層棟には商業施設と住宅(約1100戸)、オフィスを設け、低層棟には最大7000人収容のホールとホテルが入る。物価上昇分を想定した最新の総事業費は約2250億円。
野村不らは昨年5月に中野区と再開発の基本協定を結んだ。区は関連する都市計画を23年6月にも決定。都からの事業計画認可などを経て、24年7月ごろに既存建物の解体を含む工事に着手し、28年度の竣工を目指す。再開発に先立ち、現在の中野サンプラザは23年7月2日に全館で営業を終える。
敷地北東から見た再開発ビルの外観イメージ(中野区議会の資料から)

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東北整備局/鳥海ダム建設(秋田県由利本荘市)転流式開く、施工は前田建設

東北地方整備局が秋田県由利本荘市の子吉川上流で実施している「鳥海ダム」建設プロジェクトで、河川の流れを仮排水トンネルに切り替える転流式が18日に同市内で開かれた。ダム堤体の建設予定地を乾いた状態にするための重要な工程。仮排水トンネル工事と仮締め切り工事の施工者は前田建設。設計は建設技術研究所が担当した。転流工や右岸上部掘削などを終えると本体着工の準備が整うことになる。
仮排水トンネルの長さは708メートル、内径8・4メートルで2020年度に着工した。式典には御法川信英衆院議員、湊貴信由利本荘市長、板屋英治東北整備局河川部長、前田建設ら工事関係者が出席。祝辞に続いて東北整備局鳥海ダム工事事務所の竹内久一所長が転流開始を宣言した後、転流船進水やくす玉開披で節目を祝った。
鳥海ダムの建設地は鳥海町百宅地先。洪水調整や水道水供給、発電などの役割を担う。完成すると堤高81メートル、堤頂長365メートル、堤体積133・1万立方メートルの台形CSGダムになる。総貯水容量は4680万立方メートル、総事業費は約1100億円を計画し、28年度の事業完了を目指している。事業進捗(しんちょく)率は本年度末時点で36・3%(事業費ベース)を見込む。
関係者によるくす玉開披(鳥海ダム工事事務所提供)
完成した仮排水トンネルの呑み口(鳥海ダム工事事務所提供)
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北陸整備局/新潟県内大雪対応でテックフォース派遣、地元建設会社ら集中除雪

新潟県内は19日から20日未明にかけて12月としては記録的な大雪に襲われた。なかでも柏崎市の国道8号では、長崎新田交差点から米山海岸パーキング間約22キロにわたって断続的に渋滞した。=5面に関連記事
北陸地方整備局は19日午後3時40分、国道8号の同区間を災害対策基本法に基づく道路区間に指定し、全面通行止めにした。北陸整備局長岡国道事務所と地元建設会社は現地の集中除雪作業を進めるとともに、通行の支障となる車両の移動作業を実施した。
北陸整備局は19日午後3時30分にテックフォース(緊急災害対策派遣隊)の第1陣を柏崎市米山町に派遣。第2陣も程なく現地に投入して午後7時50分ごろから渋滞車両の確認とドライバーへの支援物資の配布、給油活動などを行った。
現地で立ち往生している車は20日午前1時の時点ではおよそ800台に達したが、除雪が進んだ結果、午前4時の時点では240台余りに減少。昼前には解消した。
給油活動
食料品などの支給を行うテックフォース隊員(いずれも北陸整備局ホームページから)
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回転窓/神様は左がお好き

近所に左足を重視して練習する少年サッカースクールがある。思わず右足でボールを触った子どもたちが照れ笑いしつつ、決まった回数の腕立て伏せを行っていた▼利き足が左の選手はサッカー人口の10%に満たないそうだ。ボールの持ち方や視野が右利きと異なり、ピッチ上でも目立つ存在なのだとか。スクールでは創造性をつかさどるとされる右脳を刺激し、観客を魅了する選手になってほしいとの願いも込めて左足の鍛錬を推奨している▼サッカーW杯のカタール大会で3度目の優勝を果たしたアルゼンチン。ケンペス、マラドーナといった往年の名選手、現役のメッシ選手ら国民に歓喜をもたらせたチームのエースはいずれも左利きだ▼決勝のフランス戦でもアルゼンチンの得点者はすべて左利き。決着を付けるPK戦も左利きの選手が決め、右利きの2人は左隅に蹴り込んだ。この日はサッカーの神様が左にほほ笑んだと思えた▼今回が自身最後のW杯と公言してきたメッシ選手。最後の得点を右足で決めた姿に、スクールの子どもたちは右足も大切だと気付いたそう。大会MVPのメッシ選手はやはり偉大だ。


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盛土規制法23年5月16日施行、盛り土行為が許可制に/政府

 危険な盛り土を全国一律の基準で包括的に規制する「盛土規制法」の施行日が2023年5月16日に決まった。規制対象となる盛り土や土石の堆積の規模要件や関連工事の技術的基準、中間検査・定期報告の規模要件など施行に必要な事項を定める政令と合わせ、政府が20日に閣議決定した。これに基づき都道府県知事などが盛り土行為の許可などに当たってもらう。
 同法では規制区域を「宅地造成等工事規制区域」と「特定盛土等規制区域」に分け、従来の宅地造成規制法から範囲を拡大。両規制区域内での「土地の形質の変更(盛り土・切り土)」と「土石の堆積(一時堆積)」を規制対象行為と位置付け、工事の許可基準も強化した。許可基準に沿った安全対策の確認手段として既存の完了検査に加え、施工中の中間検査・定期報告制度を新設した。
 9月には前もって区域指定に必要な基礎調査の実施要領案や安全対策の基準的基準案を公表し、都道府県などには区域指定に向けた先行的な基礎調査に入ってもらっている。国は施行後5年以内に全都道府県で区域指定が終了することを目標にしている。
 既存の盛り土を対象とした基礎調査の実施要領案も公表済み。これらとは別に不法盛り土への対応方策も示す予定で、国土交通、農林水産両省が設置する有識者会議「盛土等防災対策検討会」で検討を深めている。



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2022年12月20日火曜日

国交省/ICT施工で工事全体の効率化へ、工種単体から次の段階に

国土交通省はICT施工の新たに目指す姿を近く提示する。これまで取り組んできたICT建設機械の導入などによる「工種単体」の作業効率化を、現場状況のデータ把握・分析を通じた「工事全体」の生産性向上に進化させる。こうした方向性をICT施工のステージ2と位置付け、建設業団体などと今後の進め方について意見交換していく方針だ。先駆的な建設会社などが段階的にステップアップする道筋を示し、さらなるICT施工の効果発現を狙う。

直轄土木工事のICT施工は実施率が年々上昇している。2021年度は対象工種で入札公告した2685件のうち84%を占める2264件で実施。国交省は地域を地盤とする中小建設会社への普及拡大を今後の課題と認識し、小規模現場へのICT施工の適用拡大などに注力している。
一方、現状のICT施工は土工などの工種単位の効率化にとどまっており、生産性向上の効果は限定的との見方もある。工事工程の一連の作業を効率化するための判断は、従来と同じように現場技術者の感覚や経験に委ねられている。こうした問題意識からステージ2では、現場の行動履歴や建機稼働状況などのデータを把握・分析することで技術者の判断を支援し、工事全体の効率化に導くような環境整備を目指す。
例えば盛り土工事の一工程を担うブルドーザーをICT化した場合、前工程となるダンプの土砂運搬も効率化しなければ実質的な生産性向上にはつながらない。前もって各工程のデータを把握・分析し技術者の判断支援に当たる仕組みを備えておけば、施工計画の検討や見直しに大きく役立つ。
国交省はさらに高度化した将来目標としてICT施工のステージ3も展望する。同一現場内の複数の工事が入り組む現場全体の効率化を目指す。施工計画を自動生成するAIの活用や、次世代建機による遠隔・自動施工などを通じ、より最適化された現場の実現を目指していきたい意向だ。


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熊谷組/コッター床版工法の品質管理、クラウド活用し一元化

熊谷組はプレキャスト・プレストレストコンクリート(PCaPC)床版などを活用し、橋梁床版取り換えが急速施工できる「コッター床版工法」の品質管理を効率化するサプライチェーン(供給網)マネジメントシステムを開発した。これまで別々に行っていた関連部材の製造工場(継ぎ手、PC床版)と現場の品質管理データをクラウドで一元管理。部材製品の流れや情報の共有、管理がリアルタイムに行え、現場管理業務を大幅に省力化する。

コッター床版工法はプレキャスト床版を機械式継ぎ手(コッター式継ぎ手)で接合し急速施工と省人化、高品質化などを実現。継ぎ手はC型金物とH型金物があり、これらを組み合わせてボルトで締結し、専用の目地材を充てんして床版同士を接合する。熊谷組ら4社が共同開発した。
熊谷組が開発した品質管理システム「KIS-C」は、コッター床版工法に関連する部材製造工場と施工現場の間で、製品の流れに合わせてリアルタイムに情報共有し、施工全体の最適化を図る。従来の品質管理は工場と施工者、発注者間で品質管理資料を紙面で共有していたが、部材製造から出荷納品に至る各品質管理情報をクラウドで一元管理する。
現場では製造工場の品質管理資料の共有に加え、床版ボルト締結時の締め付けトルク値管理が効率化できる。トルクレンチで計測したトルク値がタブレット端末を通じてクラウドに自動記録され、従来のように野帳への記録やデータ再入力の必要がなくなる。
タブレット端末ではトルク値管理と同時に、継ぎ手位置情報とコッター式継ぎ手の製造番号を記録。部材の製造情報と使用箇所を関連付けることでトレーサビリティー管理も可能だ。情報管理画面には床版と継ぎ手を模擬的に表示。確認したい部材をクリックするだけで、必要な品質管理情報が表示される。
システムを活用するとコッター床版工法の現場管理業務を50%、ループ式継ぎ手を使う従来工法に比べ約80%削減できるという。2023年から本格運用を開始する予定だ
現場ボルト締結のトルク値管理(熊谷組提供)

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竹中工務店ら/肌と心に作用する新感覚建築体験イベント、ポーラギンザで26日まで

竹中工務店と化粧品の製造販売を行うポーラ(東京都品川区、及川美紀社長)は、肌と心に作用する新感覚のアートと空間を体験できる建築「WI-COCOON」を開発した。繭の形をモチーフにデザインし、肌と心を潤す最適な温度と湿度を保った室内環境を創出。26日まで東京都中央区のポーラギンザで体験イベントを開催している。
体験建築はポーラが取り組む肌と環境の研究、竹中工務店が持つ健康で快適な空間づくりの知見を融合させた。繭を模した複雑な形状の建築物は八つの木製パネルを組み合わせて製作。5軸CNC加工機(自動工作機械)を使い高精度な部材切り出しによる分割製作とし、現地で簡単に組み立てることができる。外部は繭のようにフェイクファーをあしらっている。
内部は健やかな肌を保つ温湿度環境を創出。乾燥肌にとって理想とされる肌水分量と油分量に近づける温度26度、湿度75%の空気に包まれた室内で、映像や音、香り、感触を通して没入するアート体験を楽しめる。 設計に携わった竹中工務店大阪本店設計部設計第1部門の鈴木雅史設計2グループ長は「実験で肌に効果があることが確認できた。今後はホテルなどへの適用も検討していきたい」としている。
繭をイメージした外観(ポーラギンザで)
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フルデプス/世界初の実験に水中ドローン貢献、海中音響通信で完全遠隔無線制御

静岡・清水港でNTTなど3社が行った海中音響通信技術の実証実験(15日まで実施)で、国産水中ドローンメーカーのフルデプス(東京都中央区、吉賀智司社長)の「ダイブユニット300」が活躍した。海中用の音響通信技術を駆使しながら完全遠隔無線制御型水中ドローンを動かす世界初の実験。スピーカーやマイク、水密加工した機器を装備したダイブユニット300が無線操作や映像情報の伝送に貢献した。
フルデプスは、NTT、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズの実験に技術協力した。海中の通信の品質を劣化させる海面反射波を抑圧する時空間等化技術や、浅い海域で観測される船、生物、重機などの雑音を抑える環境雑音耐性向上技術というNTTの独自技術を適用。映像配信や機体制御といった水中ドローンを巡るフルデプスの機体とノウハウを組み合わせた。
ダイブユニット300は、映像を含む水中の情報収集や水深300メートルまでの潜航などができる。オプション機器が豊富でダムや護岸の点検、建設工事などでの利用が目立ってきている。実験のために音響通信用のスピーカー、マイク、バッテリーと、音響設備を格納した金属製の水密容器を装着した。音響関係の機器はNECが製造・用意した。
実験用の機体は海上の船から海中の映像を見ながら操作できる。船内の音響通信装置がドローンに制御信号を送り、ドローンは受信した制御信号に従って移動・撮影。映像データを船の装置に送る。
浅い海中は構造物や地形の影響で音波の波形が乱れやすく、さまざまな雑音も生じる。音響通信に適さず、ドローンの無線操作が難しい。NTTらは新技術で必要な音響通信の質や伝送速度を確保し、完全遠隔無線制御型水中ドローンを実現した。フルデプスの吉賀社長は「ダイブユニット300の性能を評価していただき、最先端技術の実証実験に協力できた」と手応えを示す。
機体は信号が途絶えるなど不測の事態に備えた制御機能を備える。機体の制御・管理は1人で実施可能。現在の機体は重量の約7割を音響機器と水密容器が占めるが、機器、容器とも軽量化と小型化が見込めている。有線制御の水中ドローンが潜航できない海中の構造物が入り組んだ場所や、各地で行われる洋上風力発電施設工事などでの利用が期待されるという。港湾の海中設備などの点検作業で生産性や安全性の向上にもつながる。
NTTなどは音響通信の技術開発や水中ドローンユーザーの開拓を進める考え。フルデプスは機体の性能と付加価値を積極的にアピールする。
船上からつった実験用の機体
音響通信用の機器も船内の操作室
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奈良県/平城宮跡歴史公園南側地区計画案(奈良市)、24年度から整備

奈良県は、平城宮跡歴史公園(奈良市)の南側地区(約5ヘクタール)に整備する公園の計画案をまとめた。有識者や地域住民などの意見を踏まえ、公園内に歴史を感じる空間のほか、憩いの場や快適に過ごせる施設を整備する。便益施設はPark-PFI(公募設置管理制度)を想定し、カフェなどの飲食店を誘致して公園の利便性を高める。2024年度から公園整備を進める予定。
同公園は国が整備を進める国営公園区域(約122ヘクタール)と県営公園区域(約15ヘクタール)で構成し、歴史や快適性、利便性を備えた施設を整備している。
南側地区の整備コンセプトは「歴史を感じながら、憩いくつろげる快適空間を整備」。平城宮のスケールを実感してもらい、家族連れや地域住民らが気軽に立ち寄れ、安心して過ごせる場にする。
広場の周りに管理事務所(約450平方メートル)や防災倉庫・トイレ(約150平方メートル)、屋根付き広場(約700平方メートル)、便益施設(約300平方メートル)を計画し、南側に自家用車や観光バスを収容する駐車場を配置する。駐車場地下に雨水貯留施設を設ける。一部施設は奈良時代の建物をほうふつするデザインを検討する。
県は23年3月に整備計画を策定し、23年度に実施設計を作成、24年度から公園の整備を始める。概算事業費は約25億円と試算している。
全体イメージ(整備計画案から)

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回転窓/鎌倉殿とだるま市の縁

NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が最終回を迎えた。鎌倉時代を中心に史実に沿いつつも、登場人物らの人間模様が独自の視点でドラマチックに描かれ、脚本を担当した三谷幸喜氏らしさが随所に感じられた▼武士が台頭する世では争いが絶えない。源平の戦いの後、敵味方を問わない供養や永久平和の祈願が盛んに。全ての衆生を救済するため33の姿に変化する観音様の信仰は全国的に広がり、関東でも源頼朝の発願で坂東三十三観音が開設された▼自宅近くには五番札所の飯泉観音で知られる飯泉山勝福寺(神奈川県小田原市)がある。毎年12月17、18両日に関東地方で一番早くだるま市が開かれる。境内では縁起物の大小さまざまなだるまが売られ、商売繁盛・家内安全を願う人たちでにぎわう▼今年のだるま市は休日と重なり、子ども連れの姿が目立った。ここ数年のコロナ禍による自粛ムードで少なくなった屋台の数も例年並みに増え、久しぶりに活気が戻った地元の風物詩に胸が熱くなった▼国内外の社会情勢を見ると、先行きの不透明感は強まる一方。来年も困難にくじけず、七転八起のだるまのように頑張ろう。


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記者手帖/2023年は明るい年に

「戦後最も厳しい」--。政府が防衛3文書として国家防衛戦略や防衛力整備計画とともに16日閣議決定した国家安全保障戦略。眼下の国際情勢を踏まえ、日本の現状をそう位置付けた◆振り返ると、2022年はここ数年で暗いニュースが最も多かった1年ではなかったか。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は戦闘が長期化し犠牲者の増加や国際的な経済の悪化を招いている。戦争とは無縁と思われた現代の日本にとって決して対岸の火事ではない。増大する台湾有事のリスクやミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、東アジアの脅威は確実に増しているように思う◆建設業界もウクライナ侵攻や新型コロナウイルスの感染拡大が影響し、主な資材の価格が軒並み過去最高を更新。建設各社が利益確保に奔走した。ただ政府の方針も受け技能者の賃上げは着実に進展。建設キャリアアップシステム(CCUS)の技能者登録が100万人を超えるなど明るい兆しも見えつつある◆来年の干支(えと)は卯(う)年。一般的に卯年の相場は「卯は跳ねる」という意味合いから上昇相場にあるとされる。今年と一転し、明るいニュースであふれる年になることを期待したい。(か)


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国交省/ICT施工で工事全体の効率化へ、工種単体から次の段階に

 国土交通省はICT施工の新たに目指す姿を近く提示する。これまで取り組んできたICT建設機械の導入などによる「工種単体」の作業効率化を、現場状況のデータ把握・分析を通じた「工事全体」の生産性向上に進化させる。こうした方向性をICT施工のステージ2と位置付け、建設業団体などと今後の進め方について意見交換していく方針だ。先駆的な建設会社などが段階的にステップアップする道筋を示し、さらなるICT施工の効果発現を狙う。
 直轄土木工事のICT施工は実施率が年々上昇している。2021年度は対象工種で入札公告した2685件のうち84%を占める2264件で実施。国交省は地域を地盤とする中小建設会社への普及拡大を今後の課題と認識し、小規模現場へのICT施工の適用拡大などに注力している。
 一方、現状のICT施工は土工などの工種単位の効率化にとどまっており、生産性向上の効果は限定的との見方もある。工事工程の一連の作業を効率化するための判断は、従来と同じように現場技術者の感覚や経験に委ねられている。こうした問題意識からステージ2では、現場の行動履歴や建機稼働状況などのデータを把握・分析することで技術者の判断を支援し、工事全体の効率化に導くような環境整備を目指す。
 例えば盛り土工事の一工程を担うブルドーザーをICT化した場合、前工程となるダンプの土砂運搬も効率化しなければ実質的な生産性向上にはつながらない。前もって各工程のデータを把握・分析し技術者の判断支援に当たる仕組みを備えておけば、施工計画の検討や見直しに大きく役立つ。
 国交省はさらに高度化した将来目標としてICT施工のステージ3も展望する。同一現場内の複数の工事が入り組む現場全体の効率化を目指す。施工計画を自動生成するAIの活用や、次世代建機による遠隔・自動施工などを通じ、より最適化された現場の実現を目指していきたい意向だ。



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2022年12月19日月曜日

関東整備局/防災DXが本格始動、地震発生時の初動対応自動集計

 関東地方整備局が取り組む防災分野のDXが本格的に動き出した。地震発生時の初動対応や自治体からの支援要請などを自動集計するシステムが今月始動。地方整備局で初めて実働に入った。ドローンを使った発災時の情報収集にも力を入れ、衛星通信による情報伝送も可能になるなど、災害対応の高度化と省人化に取り組む。今後は風水害にも対応できるようシステムを開発するなど「防災DX」をさらに推進する方針だ。
 大地震が発生すると、あらかじめ指定された職員は周囲の状況や県、市町村との連絡態勢を整備局の災害対策本部に報告する。これまではメールで報告していた。報告時間の短縮や被災状況の早期把握などを目的に開発したのが「防災クロノロジーシステム」。2日に本格運用を始めた。
 同システムは職員が報告する第一報や、被災自治体の支援要請情報を自動で集計、分類するのが特徴。ウェブブラウザー上の入力フォームに、スマートフォンなどで情報を書き込むと、災害対策本部に送られて自動集計される。
 入力はボタンタッチや定型文を加工するだけで良く、省力化を図っている。災害対策本部では自治体からのリエゾン(現地情報連絡員)や支援の要請を速やかに把握できる。試験では初動情報の入力時間が従来の約3分の1、自治体の支援要請が2分の1に短縮できたという。
 強い地震が発生した際、国土交通本省や各関係機関に連絡メールを速やかに作成、送信するシステムも同日に稼働した。初動対応の迅速化を目的に開発したシステムで、気象庁が発信する震源や震度の情報を自動判別し、一定の基準以上ならば情報を担当職員へ自動的に知らせる。
 職員はシステムを通じて関係各所への報告や連絡メールの送信のほか、非常・警戒・注意の各態勢への移行登録も簡単に行える。入力フォーム内の定型文を修正し、送信ボタンを1回押すだけで本省や各事務所への連絡と、態勢移行の登録が同時にできる。これまで個別にメールを作成、送信し、各事務所に指示を出すのに約30分かかっていたが、システム導入により半分程度で行えるようになった。
 関東整備局が衛星通信でドローンの映像伝送を始めたのは、7月に発生したKDDIの通信障害がきっかけという。従来は商用の携帯電話網を使っていた映像伝送を、関東整備局が運用する「Ku-SATII」や「Car-SAT」を経由して行う。災害時でも使用できる独自回線により、被災状況をリアルタイムの映像で確認できる。
 小型で持ち運び可能なKu-SATIIと、車載で機動性の高いCar-SATを使い、情報収集能力の向上につなげる。さらに関東整備局ではドローン操縦資格者の育成にも力を入れており、12月時点で職員94人が資格を保有している。
 工藤美紀男総括防災調整官は「DXによって人の手によるミスを減らすことができ、防災対応の迅速化、高度化が可能になる」と強調。今後も防災DXの推進に力を注ぐ考えを示した。



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神戸市/神戸空港サブターミナル延べ1・7万平米、22年度内に提案競技公告

 神戸市は「神戸空港サブターミナル整備基本計画(案)」を公表した。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開催に伴う航空需要の拡大に対応するため、延べ約1万7000平方メートルの国内・国際線一体型サブターミナルを設計・施工一括(DB)方式で整備する。本年度内にも事業者を決める提案競技を公告する予定だ。概算事業費は約90億円を見込む。  サブターミナルは既存ターミナルから管制塔を挟んだ西側敷地に建設する。エプロンも西方向に拡張する。東面にバスやタクシーの乗降施設を整備し、既存ターミナルとの間を行き来する移動手段を提供する。  施設は2階建てで、出発・到着ロビーや総合案内、商業施設などが約4000平方メートル、国内線エリアが約2500平方メートル、国際線エリアが約3000平方メートル、そのほかCIQ(税関・出入国管理・検疫)や航空会社事務所などが約7500平方メートルを予定している。  ユニバーサルデザインを採用し、再生可能エネルギーを導入するなど環境負荷の低減を図る。直下型・海洋型大規模地震や津波、高潮などに対策を講じ、大規模災害時の広域防災拠点機能を担う。  23年度早期にDB事業者を選定し契約を結んだ後、同年度~24年度に設計・建設を進め、25年に供用開始する。  神戸空港は06年にポートアイランド沖の人工島(中央区神戸空港、約272ヘクタール)に開港。空港面積は約156ヘクタールで、既存ターミナルの規模がS造4階建て延べ1万7100平方メートル、滑走路が1本(延長2500メートル)。  現在は国内線専用で1日の発着回数の上限が80回。サブターミナルの供用開始とともに国内線を120回に拡大し、国際チャーター便を受け入れる。サブターミナルの完成後、30年頃をめどに予定している1日上限40回の国際定期便の就航開始に合わせて新国際線ターミナルを整備する予定。
サブターミナルの建設場所(報道発表資料から)

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横浜市/三ツ沢公園(神奈川区)再整備基本構想案、新たな球技場整備は公民連携視野

 横浜市は、三ツ沢公園球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)の移転・新設を含む三ツ沢公園の再整備で基本構想案をまとめた。新たな球技場や新設する野球場などのゾーニングで基本的な考え方を示した。新球技場を三ツ沢公園(約28ヘクタール)内の北側に新設し、老朽化した他の公園施設などを再整備。既存の球技場も引き続き活用する。市民病院建設に伴い廃止した野球場は、旧市民病院跡地に新設する。  市は今後、代替機能の確保や民間企業からの球技場建設・寄贈提案などを精査し各課題の検討を深める。整備スケジュールなどは未定だが、整備・運営では公民連携なども視野に入れる考えだ。  16日の市議会温暖化対策・環境創造・資源循環委員会で報告した。市は8月から9月にかけて「三ツ沢公園球技場を含む公園の再整備に向けた基本的な考え方(案)」に対する市民意見を募集した。市民から寄せられた声を踏まえ、構想案をまとめた。  新たな球技場はグラウンドと観客席の近さなど現球技場の特徴を生かして整備する。陸上競技場は老朽化状況に応じて必要な更新を検討する。補助陸上競技場は現位置付近に再整備し、陸上競技場との連携を図る。第3テニスコート周辺でコートの増設とレストハウス更新などを検討する。現在の市民病院建設に伴い廃止した野球場は、旧市民病院跡地に新設する。  現球技場はサッカーJ2横浜FCがホームスタジアムとして使用している。横浜FCの親会社であるONODERA GROUP(東京都千代田区、小野寺裕司社長)は10月、市に新スタジアムを建設し寄贈することを提案した。市は財政負担の軽減や市民サービス向上などで公民連携を視野に入れており、寄贈の提案についても精査する考えだ。  球技場の所在地は神奈川区三ツ沢西町3の1(三ツ沢公園内)。建設から58年が経過し、老朽化が著しい。バリアフリー化が不十分であることに加え、観客席に屋根がないなどJリーグのスタジアム基準も満たしていない。
ゾーニング計画

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関東整備局/防災DXが本格始動、地震発生時の初動対応自動集計

 関東地方整備局が取り組む防災分野のDXが本格的に動き出した。地震発生時の初動対応や自治体からの支援要請などを自動集計するシステムが今月始動。地方整備局で初めて実働に入った。ドローンを使った発災時の情報収集にも力を入れ、衛星通信による情報伝送も可能になるなど、災害対応の高度化と省人化に取り組む。今後は風水害にも対応できるようシステムを開発するなど「防災DX」をさらに推進する方針だ。  大地震が発生すると、あらかじめ指定された職員は周囲の状況や県、市町村との連絡態勢を整備局の災害対策本部に報告する。これまではメールで報告していた。報告時間の短縮や被災状況の早期把握などを目的に開発したのが「防災クロノロジーシステム」。2日に本格運用を始めた。  同システムは職員が報告する第一報や、被災自治体の支援要請情報を自動で集計、分類するのが特徴。ウェブブラウザー上の入力フォームに、スマートフォンなどで情報を書き込むと、災害対策本部に送られて自動集計される。  入力はボタンタッチや定型文を加工するだけで良く、省力化を図っている。災害対策本部では自治体からのリエゾン(現地情報連絡員)や支援の要請を速やかに把握できる。試験では初動情報の入力時間が従来の約3分の1、自治体の支援要請が2分の1に短縮できたという。  強い地震が発生した際、国土交通本省や各関係機関に連絡メールを速やかに作成、送信するシステムも同日に稼働した。初動対応の迅速化を目的に開発したシステムで、気象庁が発信する震源や震度の情報を自動判別し、一定の基準以上ならば情報を担当職員へ自動的に知らせる。  職員はシステムを通じて関係各所への報告や連絡メールの送信のほか、非常・警戒・注意の各態勢への移行登録も簡単に行える。入力フォーム内の定型文を修正し、送信ボタンを1回押すだけで本省や各事務所への連絡と、態勢移行の登録が同時にできる。これまで個別にメールを作成、送信し、各事務所に指示を出すのに約30分かかっていたが、システム導入により半分程度で行えるようになった。  関東整備局が衛星通信でドローンの映像伝送を始めたのは、7月に発生したKDDIの通信障害がきっかけという。従来は商用の携帯電話網を使っていた映像伝送を、関東整備局が運用する「Ku-SATII」や「Car-SAT」を経由して行う。災害時でも使用できる独自回線により、被災状況をリアルタイムの映像で確認できる。  小型で持ち運び可能なKu-SATIIと、車載で機動性の高いCar-SATを使い、情報収集能力の向上につなげる。さらに関東整備局ではドローン操縦資格者の育成にも力を入れており、12月時点で職員94人が資格を保有している。  工藤美紀男総括防災調整官は「DXによって人の手によるミスを減らすことができ、防災対応の迅速化、高度化が可能になる」と強調。今後も防災DXの推進に力を注ぐ考えを示した。
関東整備局が保有するCar-SAT。車両天井に取り付けられた衛星通信アンテナは電子走査式で常に自動的に衛星を補足する
Ku-SATIIのアンテナと機材。可搬式なのが特徴。本局と事務所に合わせて29台を保有する
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日建設計/柔らかく重たい梁で「縦ノリ」対策、公開実験で8割以上低減を確認

 日建設計は、コンサートなどで観客が音楽に合わせて体を動かすことで発生する振動(縦ノリ)を低減する防振架構を開発した。硬くて軽い梁で床を支える通常の架構と異なり、柔らかく重たい梁を用いる点が特徴。重りとダンパーを搭載して、重量と減衰を確保することで居住性能も高める。15日に効果測定の公開実験を行い、振動を8割以上低減できることを確認した。  「縦ノリ防振架構」は、振動を周囲に伝えない柔らかい梁と、床自身の揺れを抑える重たい梁、制振ダンパーなどで構成。梁には、通常の鉄骨の2倍程度の強度を備える超高強度鋼材「H-SA700」を使用する。梁下部にコンクリート製の重りの箱を設置し、内部には電気炉酸化スラグ骨材を入れることで、ふわふわとした揺れの発生を防ぐ。制振ダンパーは縦ノリ時の揺れ戻しを防ぎ、地震時にも効果を発揮する。  公開実験は、愛知県長久手市内で15日に実施した。5人が同時に梁の上で連続で飛び跳ねて振動を発生したが、振動を8割以上の低減した。データをモニターに表示し効果を確認した。  ライブ会場での縦ノリは、周辺の建物に震度3程度の揺れを引き起こすこともあるが、地盤改良などを実施するとコストがかかるため、対策が課題になっていた。  同架構では、発生する振動を80~90%低減できるため、別用途の施設でもであっても音楽ライブが実施しやすくなり、事業者の収益改善につながる。  日建設計エンジニアリング部門構造設計グループの朝日智生アソシエイト(名古屋大学受託研究員)は「需要は多く、さまざまな場面で提案していきたい」、研究に協力する名古屋大学の福和伸夫名誉教授は「設計事務所がこのような取り組みを行うことは興味深い」と話した。
「縦ノリ防振架構」の実験概要(日建設計提供)
「縦ノリ防振架構」のポイント(日建設計提供)
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国交省/21年度直轄工事・業務、契約額過去5年で2番目の高水準

 国土交通省が16日に公表した「国土交通省直轄工事等契約関係資料(2022年度版)」によると、21年度の直轄工事・業務の契約金額の合計は2兆5605億円となり、過去5年で2番目に高い水準だった。内訳は工事が2兆0552億円(20年度比14・1%減)、業務が5053億円(2・9%増)。工事は過去5年で最も高かった20年度を下回ったものの、業務はここ数年の右肩上がり傾向が続いており過去最高水準をさらに更新した。  工事・業務の契約件数の合計は2万8858件で、過去5年で20年度、19年度に次ぐ3番目の多さ。20年度と比べると契約件数、契約金額ともに見劣りする数字だが「過去5年平均とほぼ同じで、それほど低い水準ではない」(官房会計課)との見方もできる。業務には建築・土木コンサルタントや測量、地質調査などが含まれ、20年度比で件数が減少した一方、金額は増加しており発注ロットの大型化が推測される。  一般競争入札と指名競争入札による契約工事9576件のうち、契約に至る過程で不調が発生したのは349件。発生率は3・6%で、20年度の4・2%から改善し過去5年で最も低かった。業務の不調は1万1060件のうち165件。発生率は1・5%で、20年度の1・4%とほぼ同水準だった。入札辞退のあった工事件数は2748件(20年度2772件)、業務件数は1043件(867件)だった。  低入札価格調査が実施された工事件数の割合は1・2%で、20年度と同率。調査の結果、調査対象と契約に至らなかったケースは7件(増減なし)だった。業務の低入札価格調査の発生率は0・9%で、前年度の1・1%を下回り過去5年でも最も低かった。調査対象と契約に至らなかったのは4件(9件)だった。  過去5年の落札率は▽17年度=工事92・52%、業務84・59%▽18年度=92・74%、84・92%▽19年度=93・06%、84・71%▽20年度=93・02%、84・83%▽21年度=92・55%、84・86%-と推移し、ほぼ横ばいとなっている。 関連記事


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回転窓/建設産業の未来予想図

 子どもの頃、マンガ雑誌などに掲載される21世紀の未来都市や宇宙旅行といった「未来予想図」を楽しみに見ていた方もおられるのでは。そうした主に1950~70年代の作品を、初見健一氏が著書『昭和ちびっこ未来画報』(青幻舎)で紹介している▼暮らしや交通、宇宙などジャンルはさまざま。空想科学イラストの巨匠たちが未来を独特の画風で表現し、当時の子どもたちは想像力をかき立てられた▼作品の中には切り立った壁面に複数の建設ロボットがへばり付いて動き、巨大な土木構造物を造る未来も。「大建設時代のエース」(69年)のタイトルから時代の勢いも感じられる▼2014年10月発行の本紙提言特集では、読者ら60人が考える「50年後に実現させたい夢の技術」を掲載している。改めて紙面を読むと、これからの建設生産を大きく変えるかもしれないアイデアばかりで興味は尽きない▼未来画に描かれた空想の世界を実現するのは難しく、現実離れしたものであっても、子どもたちがわくわくしながら見たり読んだりできるのが大切なのでないだろうか。建設産業が描く未来予想図を発信していきたい。

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2022年12月16日金曜日

国交省有識者会議/新幹線地震対策中間報告、ラーメン橋台耐震化25年度完了へ

 3月の福島県沖地震を受け、新幹線施設の地震対策を検証してきた国土交通省の外部有識者会議が中間報告をまとめた。報告書は地震で1径間のRCラーメン橋台が大きく損傷した状況を問題視。JR各社に対し、同様の箇所の耐震補強を2025年度までに終えるよう求めた。対象の柱本数は全国で1140本。JR各社に対する国の財政支援は設けず、耐震補強計画上の優先順位を見直して対応してもらう。
 14日に東京都内で開いた「新幹線の地震対策に関する検証委員会」(委員長・須田義大東京大学生産技術研究所教授)の会合で委員らが中間報告の内容を了承した。検証の結果、ラーメン構造を採用した橋台が大きく損傷している状況が分かった。通常の高架部は2、3径間のラーメン橋を使用している。橋脚は6~8本あり耐震性に優れる。
 一方、道路との立体交差部では道路幅員に柔軟に対応するため、桁橋を採用しているケースが多い。1径間・4本足のラーメン橋台でプレストレストコンクリート(PC)桁を支えている。橋脚が他の箇所より少ない上に桁の荷重もかかるため、構造物への負荷が大きい。福島県沖地震では第1小坂街道架道橋(福島県国見町)の橋台が沈下し、復旧に26日間かかった。
 こうした状況を踏まえ、JR各社には同様の箇所の耐震補強を急いでもらう。対象は▽JR東日本(東北、上越新幹線)970本▽JR西日本(山陽新幹線)170本-の計1140本。両社が設けている耐震補強計画で対象外になっていた柱も多く含まれる。
 対策が必要な構造物は、開業当時の設計標準に沿って整備された。現行の設計標準は東日本大震災を受けて12年に改定済み。委員会は設計標準の妥当性も検証したが、十分な耐震性能を確保できると認め、追加の改定は不要と結論付けた。



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国交省/総合評価方式試行見直しにPDCA導入、「新規参入型」本運用へ

国土交通省は各地方整備局で試行している総合評価方式のさまざまな評価形式の標準化や改善、廃止などを検討するPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを導入する。担い手確保や工事品質向上などの試行目的に応じた高い効果を確認できれば、整備局単位から全国展開に試行範囲を広げ、さらには継続的な本運用に移行する流れ。先行的に効果検証に当たった試行8類型のうち、直轄工事の受注実績がない企業を評価する「新規参入促進型」を新たに本運用に位置付ける方針も示した。

直轄工事の総合評価方式の運用ガイドラインにPDCAを位置付ける。有識者会議「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」傘下の「建設生産・管理システム部会」が15日に開いた会合で説明し、ほぼ了承を得た。
PDCAに基づく検証は試行ごとに5年周期を目安に行う。検証主体は各整備局の総合評価委員会や本省の同部会を想定。整備局単位の試行で有効性が確認され、より広く展開したり政策的に全国で実施したりする必要があれば全国的な試行に格上げする。有効性が認められない場合の統合・廃止や格下げ、制度改善なども判断する。全国で実績を重ね、有効性が定着した試行は本運用に移行する。
国交省は一定程度の実績がある試行8類型の有効性を昨年度までに検証していることから、その結果をPDCAに当てはめて今後の位置付けを検討。このうち直轄実績がない企業の新規参入を促す目的が共通している「チャレンジ型」と「自治体実績評価型」の採用実績や有効性を評価し、両者を統合した「新規参入促進型」として本運用に格上げすることを提案した。
このほか、▽地元企業活用審査型▽特定専門工事審査型-の2類型は全国的な試行としての位置付けを据え置く。各整備局でそれぞれ試行してきた▽地域防災担い手確保型等▽企業能力評価型等▽登録基幹技能者評価型等▽若手女性技術者活用型等-の4類型は新たに全国的な試行に位置付ける予定だ。
同省は総合評価ガイドラインを年度内に改正したい考え。PDCAの考え方に加え、前回改正以降に導入した評価項目や評価プロセスの改善方策も盛り込む。


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清水建設/工場の建設・運用を最適化、バーチャル空間で稼働検証

清水建設は工場建設向けのエンジニアリング事業を強化する。設計から運用段階に至るまでデジタルツインを継続的に活用し、施設価値を最適化するプラントエンジニアリングサービスの提案活動を始めた。バーチャル空間の工場で稼働シミュレーションを実施。コストや生産能力などを検証し最適な工場プランを導き出す。完成後も稼働データと設計データを比較検証し運用改善につなげる。
近年の工場は労働力不足などを背景に、生産ラインの自動化や省人化が共通の課題となっている。限られた事業予算で費用対効果を最大化する施設計画の立案が求められる。
新たに提供するサービス「Growing Factory(グローイングファクトリー)」は、独自開発した生産シミュレーターと3Dプラントモデルの連携システムを利用する。
設計段階ではバーチャル空間に建設した複数の工場プランで稼働シミュレーションを実施。イニシャルコストやランニングコスト、品目別の生産能力などを検証し事業予算と整合した最適なプランを提案する。
全体構想を確定した後、ニーズに応じた工場内の生産、物流ラインの自動化や省人化を検討。シミュレーション結果に基づき製造設備や搬送機器の最適な組み合わせを導き出す。
工場完成後も稼働データを基に生産ラインのボトルネックやライン稼働率、構内物流をデジタルツインで可視化。市場環境の変化も加味しながら改善策の検討や実践、稼働率向上に継続的に取り組む。
カーボンニュートラル(CN)にも対応。電力使用データと実績データをデジタルツインで比較検証してエネルギーの使用特性を解析し電力削減を図る。工場立地に即した創エネルギー設備の導入やグリーン電力の活用も状況に応じて検討し、CNな工場を実現する。
食品工場での適用イメージ(清水建設提供)

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東京芸大/S・W造の国際交流拠点が完成、デザイン監修を隈研吾氏・施工は前田建設

東京芸術大学が上野キャンパス(東京都台東区)に整備していた国際交流棟が完成した。隣接する既存の大学会館と一体的につながり、食堂やコミュニティーサロン、茶室などが入る。留学生や学生らが学びながら交流する場となる。施工した前田建設の提案により、鉄骨造と木造を組み合わせた混構造を採用。施工時のコンクリート打設回数を減らし、工期短縮や騒音抑制につなげた。
「国際交流棟(Hisao&Hiroko TAKI PLAZA)」の所在地は上野公園12の8。大学会館の一部を解体した跡地にある。建物は5階建て延べ約1500平方メートルの規模。1・2階がS造、3・4階が混構造、5階がW造となっている。2021年11月に着工し、今年11月30日に竣工した。建物の内外にはパブリックアート作品を設置する。基本設計を隈研吾建築都市設計事務所(東京都港区)と東京芸大、デザイン監修を同事務所、設計監理を東京芸大と前田建設、施工を同社が担当した。
前田建設は8日、現地で報道陣向け見学会を開いた。S造とW造を組み合わせることで、純木造の中高層建築では困難な9メートルスパンの空間を実現。将来の間取り変更に対応できるようにした。建物正面から視認できるメインファサードの耐震ブレースは、火災時に焼損しても建物構造を維持できる設計としており、デザインとして木質の露出を可能にしている。
床板の一部には、北米で一般的な製材同士を固定して床板を構成する工法「NLT」を採用。日本の高温多湿の環境で反りや縮みが生じないかなどを環境実験で確認した。木造部と鉄骨部の接合箇所は耐火処理方法が法規上、明確ではなく、耐火炉で実証実験を行い安全性を確かめた。
S造だけだった基本設計にW造を組み合わせる提案は、大学側が現場周辺で音楽学部の講義などがある中で工事騒音や振動を懸念していたことを踏まえ、前田建設から行ったという。担当した建築事業本部建築設計第1部の永松航介設計第1グループ長は「木造が大規模になっていくと鉄骨造との混構造は避けられないと考えている」と話し、騒音が課題となる市街地の建築物などに応用できる実例になるとした。
東京芸大国際交流棟の外観(8日撮影)
木質を露出させた耐震ブレース (8日撮影)
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愛知県/名古屋三河道路有識者委が初会合、概略ルート・構造の検討推進

愛知県は14日、「名古屋三河道路有識者委員会」(委員長・中村英樹名古屋大学大学院環境学研究科教授)を設置し、名古屋市中区の県庁で初会合を開いた。県が進めている概略ルート・構造の検討に対し、客観的な立場からの助言を求める。今後、数年間かけて2回の委員会開催と地域からの意見収集を行い、概略ルートなどを決定する予定。

検討対象としている区間は、名古屋三河道路のうち、優先整備区間に設定されている西知多道路~名豊道路間。渋滞の目立つ境川渡河部を含んでいる。早期に整備し、物流網の信頼性確保と交流域の拡大による産業の活性化や交通円滑化、交通事故の減少、災害時にも機能する道路ネットワークの構築などを目指す。
初会合では、地域の道路交通の現状や課題を確認した上で、構想段階評価手続きの進め方や政策目標案、地域の意見収集の方法などについて意見を交わした。県は議論を踏まえ、準備が整い次第、1回目の地域の意見収集を実施する。郵送による住民アンケートや沿線自治体へのヒアリング調査などを行う。
名古屋三河道路は、知多地域(弥富市)から西三河地域(岡崎市)までを東西に貫く総延長約50キロの高規格道路。製造業集積地から名古屋港や中部国際空港へのアクセス性向上が期待される。伊勢湾岸自動車道とのダブルネットワーク形成により、防災力強化にも貢献する。2021年3月に、国と県の新広域道路交通計画で調査対象となった。


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大阪メトロ/自動運転バス走行レベル4を実証、遠隔制御など確認

大阪メトロは15日、2025年大阪・関西万博の交通手段として導入を目指す自動運転バスの実証実験を報道関係者に公開した。同社はNTTコミュニケーションズやパナソニックグループ、大林組、日本信号など10社と実証実験を続けており、一定の条件で完全自動化するレベル4の運行や遠隔でのバスの制御などを確認した。
実証実験の期間は12月1日~2023年1月31日。万博会場を想定した舞洲(大阪市此花区)のテストコース(1周約400メートル)で来場者の輸送を見据えた自動運転バスの走行を試した。
実験では信号に合わせて発進や停止を行い、高速通信規格「5G」を利用して複数の車種・台数の車両を遠隔操作。遠隔監視システムと保険会社のシステムを連動させ、バスで事故が発生した場合を想定した現場対応のデモンストレーションも行った。
大林組と大林道路は次世代の道路インフラとして期待される産業廃棄物を出さない土系の材料を使った舗装や土のうを使用した路盤材を公開。歩道に設置できるソーラーパネルも披露した。
今回の実験では、万博会場へのアクセスルートを想定し、衛星利用測位システム(GPS)を受信しづらい場所でも自動運転が可能な特殊塗料を用いた走行実験も行われる。
大阪メトロの柿本恭志自動運転企画課長は「車内映像の監視やトラブル時など課題を抽出し、自動運転バスを実現したい。将来的にはキャッシュレス決済ができるようにしたい」と話した。
テストコースを走る自動運転バス
遠隔操作室
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