2024年12月3日火曜日

スコープ/燈の建設業特化型管理業務DXサービス、地場ゼネコン中心に拡大

 AIスタートアップの燈(東京都文京区、野呂侑希代表取締役兼最高経営責任者〈CEO〉)が展開する建設業に特化した管理業務DXサービスが、地場ゼネコンを中心に広がっている。協力会社からの受領請求書や発注、経費精算、見積もりの処理という4サービスを用意。ユーザーは約400社に伸びた。港湾工事などを手掛ける東組(和歌山市、東宗弘社長)は2023年に導入。請求書回覧に伴う移動がなくなり、現場監督員の負担軽減や生産性向上につなげている。
 ◇請求書・発注・経費精算・見積もりで作業効率化
 燈が手掛ける「Digital Billder(デジタルビルダー)」は、22年6月に請求書を対象に開始。同10月に発注と経費精算を、今年9月に見積もりを追加でリリースした。一つだけでも複数を組み合わせて導入することも可能。データや操作方法は各サービスで統一されている。複数を併用すれば、データ連携が可能となる。
 基本料金が設定されており、処理件数などに応じて課金する仕組みになっている。見積もりの依頼や受領、工種細目ごとの発注、工事・工種などに応じた請求書処理、一般経費と現場経費を区別しての経費精算などができる。オンライン上で完結するため、書類の運搬や整理、入力といった手間が不要となり、業務を効率化する。消費税のインボイス(適格請求書)制度や電子帳簿保存法にも対応している。
 請求書サービスは、協力会社からの請求書の受領や承認・保管が対象。協力会社からは、従来通り作成した請求書をPDFにして送信するだけで電子化できる。PDF化の代行も行っている。
 発注サービスでは、オプションとして電子契約機能を用意。建設業関連の契約書の承認・送付を電子的に行える。協力会社は無料で利用でき、収入印紙代を不要にできる。経費精算サービスは、社員からの領収書の受領・承認・保管が対象。見積もり処理サービスでは、依頼から見積書の受領、実行予算への反映、相見積もりまで完結できる。
 各サービスとも顧客からの指摘や要望を踏まえ、改善や拡充を続けている。デジタルビルダー事業の責任者である石川斉彬執行役員AISaaS事業部長は「建設業に特化しているからこそ、かゆい所にまで手が届くように速いスピードで変えていける」(石川氏)。現在は4サービスだが、新サービスとして勤怠管理と原価管理の開発にも着手している。中長期的にはAIによるデータ活用を見据える。蓄積データを学習して書類の仕分け作業を半自動化したり、過去の記録などを参照して見積書の妥当性判断を支援したりするような拡張などが想定される。
 デジタルビルダーは、口コミで広がるケースと、建設業協会の後押しを得て利用が拡大するケースがあるという。石川氏は「日本最高レベルの頭脳が集まっている自信がある。建設会社の力を借りながら業界のことをもっと勉強し、より良いサービスにしたい。地域の皆さんが使っているような状態にしたい」と話す。

 □東組(和歌山市)/23年7月に導入、無駄を無くしてより良い業界へ□
 「現場の監督員の負担軽減が喫緊の課題だった」。東組の東宗弘社長はデジタルビルダー導入前の状況を、こう説明する。同社では現場担当者が現場から本社に戻ってきて、協力会社からの紙の請求書を確認していた。片道1時間かかるような現場もあるため、夜に戻ってくるケースが多く、複数の現場が重なり“チェック渋滞”が起きていた。
 そうした課題意識があったタイミングにデジタルビルダーを知り、建設業に特化しているのであれば効果的だと判断。23年7月に請求書サービス、今年4月に発注サービスをそれぞれ本格導入した。
 東組の宮本志郎土木部課長は「現場監督者がものすごく楽になった。会社に戻る時間を違う業務に充てられると好評だ」と話す。操作方法も簡単で、協力会社への浸透も早かったという。「社内で取り入れから2カ月目に協力会社に対応を依頼した。半年かかると思っていたが、3カ月目には使いこなせていた」(宮本氏)。指定書式がなくても利用できる点もメリットに挙げる。東直也取締役社長室長は「中小建設業の悩みも情報収集した上でのシステムになっている」と評価する。
 建設業に限らず多くの産業で人手不足が課題になっている。東社長は「単なる移動は一番無駄な時間。無駄なことをやると人が離れる」との危機意識を示した上で、「少しでも楽になるように、建設業界全体を変えていくべき時期に来ている」と訴える。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169439
via 日刊建設工業新聞

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