インフラメンテナンス政策の転換点となった中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故から2日で10年を迎える。定期点検の法令化によって予防保全型のメンテナンスサイクルは確立したものの、財政難や人手不足などが足かせとなり対策に今も手付かずの市町村は多い。この10年の取り組みを踏まえ、国土交通省の審議会が新たな提言をまとめた。第2章に入るインフラメンテナンス政策の行方とは--。=4面に関連記事
(編集部・沼沢善一郎、片山洋志)
新たなインフラメンテナンス政策の提言は、社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)と交通政策審議会(交政審、同)が合同設置した技術分科会技術部会の「社会資本メンテナンス戦略小委員会」(委員長・家田仁政策研究大学院大学特別教授)がまとめた。これからも緊張感を持ちながら笹子トンネル事故の教訓を引き継いでいくという思いも込め、同部会が2日に斉藤鉄夫国交相へ提言書を手交する。
提言の最大のポイントは「地域インフラ群再生戦略マネジメント」と呼ぶ、小規模な市町村を意識した新たなストックマネジメント手法の提案だ。人口の減少や高齢化が進む中、一つの市町村だけでインフラの管理責任を果たしていくのは難しい。このような認識の下、複数の市町村にまたがる一定エリア内のインフラストック全般を「群」と捉え一体的にマネジメントしていく。
具体的には複数の業務発注を束ねる「包括的民間委託」や、複数の市町村が共同で特定施設の利用や整備などに取り組む「広域連携」を拡充するイメージ。これら従来のマネジメント手法は維持管理などの対象施設が一つの施設分野に特化している。群という新たな考え方に着目した手法では▽道路▽河川▽下水道▽鉄道▽港湾▽空港▽公園▽公営住宅-などの施設分野をまとめてマネジメントする「多分野」横断の考え方も取り入れる。
もう一つポイントになるのが市町村と都道府県の連携促進だ。国交省が市町村にとってヒントになると考える好事例が、奈良県による市町村の道路維持管理業務の補完。県内にある全39市町村の約半数が土木技術者3人以下という状況下で、21年度末までに県が橋梁の点検を29市町村、橋梁長寿命化計画の策定を34市町村から受託し代行。県の担当者は「市町村をさまざまな形でサポートし、地域活力の維持向上や持続可能で効率的な行財政運営を目指している」(県土マネジメント部道路管理課)と話す。
静岡県と下田市は、同市内を走る県管理道路と市管理道路の一体管理を計画。2023年9月から24年8月にかけて、舗装などの小規模修繕や除草を包括委託する。
国交省は奈良や静岡のような道路の包括管理委託が施設分野の枠を超えて広がっていく効果に期待を示す。建設会社などの受注者にとっても「自らの創意工夫や優れた技術などを生かしやすくなり、より安定した利益確保につながるのではないか」(総合政策局公共事業企画調整課)との見方を示す。
国交省は今後、地域インフラ群再生戦略マネジメントの普及に力を注ぐ。新たにモデル地域を選定し、施設の多分野横断や都道府県との連携を柱とする市町村のストックマネジメントを重点的に支援していく。
source https://www.decn.co.jp/
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