2024年12月31日火曜日

自民・足立敏之議員が死去

 訪問先のインド洋の島国モルディブで27日に死去した自民党の足立敏之参院議員の事務所は30日、死去の経緯などを公表した。現地でシュノーケリング中に行方不明となり、捜索・発見後に医療機関に搬送されたものの死亡を確認。死因は溺死とされ、地元警察による検査結果では遺体に外傷は認められなかったという。同日現在は帰国のための最終手続き中で、通夜・告別式の日程などは未定としている。
 事務所の報告によると、足立氏の今回の渡航(25日出発、30日帰国予定)は家族同行のプライベート(私費)での訪問だったが、2004年のスマトラ島沖で発生した地震による津波被害を受けた現地の視察も計画。日本の技術で整備された防波堤が被害軽減につながり、事前防災の効果や離島のインフラの状況などを見た上で、帰国後に報告する予定だったという。

2024年12月27日金曜日

ダム工事総括管理技術者会/静岡県富士市の小学校で出前授業、ペーパークラフトに挑戦

 日本ダム協会(押味至一会長)が事務局を務めるダム工事総括管理技術者会(CMED会、内藤明会長)は3日、静岡県富士市の吉原小学校でダムの役割などについて学んでもらう出前ダム授業を行った。小学5年生96人が参加し、座学やダムのペーパークラフト製作などを通じてダムへの理解を深めた。
 授業では内藤会長が趣旨を説明した後、奈須野恭伸副会長が「ダムの役割」をテーマにダムの定義や役割、種類、構造について現在の地球環境にも触れながら解説。静岡県内にある堤高50メートル以上のダムも紹介した。
 児童はペーパークラフトによる川上ダムの製作にも挑戦した。大人で1時間程度かかるペーパークラフトを、多くのグループが40分程度で完成させた。児童へのお土産として、自宅で作成できるペーパークラフトや製作の見本になる完成済みのペーパークラフトが配布された。日本ダム協会設立50周年の記念品の組み立て式スマホスタンドとダムの写真入りアクリルスタンドも配布した。
 児童からCMED会に贈られた手紙では、「ダムの大切さがよく分かった」「本物のダムを見に行きたくなった」といった感想が寄せられた。「本物のダムを造ってみたくなった」など、ダム工事に関心を持った児童もいた。
 CMED会はダムへの理解を深めてもらうため、出前授業に積極的に取り組んでいる。




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回転窓/激動の時代に

 2024年がまもなく終わる。皆さんにとって、どのような年だっただろうか。4月には建設業に時間外労働の上限規制が適用。魅力ある産業に転換するための生みの苦しみを感じる場面もあった▼世相を1文字で表す「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)の1位は「金」。パリ五輪・パラリンピックのメダルラッシュや政治の裏金問題、物価高騰などが関心を集めた。「災」「翔」「震」「新」が上位に連なっており、明るさと不安が混在する今を表している▼20年代も中間地点を迎える。社会を一変させたコロナ禍や、ロシアによるウクライナ侵攻、緊迫度を増す中東情勢、生成AIの浸透など世界史に刻まれるであろう動きがめじろ押し。激動の時代を私たちは生きている▼今年の本紙発行はきょうまで。「良いお年をお迎え下さい」と話を締めたいところだが年末年始も社会は動く▼年初の能登半島地震では、発災直後から行政や建設業界らの関係者が支援に奔走した。被災地での奮闘は今も続く。国や地域の守り手がいるからこそ、笑顔で過ごせる日常が保たれる。平穏な日々の裏側にあることを忘れずにいたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170175
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宮崎市上下水道局/新たな事業計画素案、耐震化・津波対策を推進・点検に最新技術

 宮崎市上下水道局は、上下水道の新たな事業計画「みやざき水ビジョン(2025-2034)」の素案を公表した。南海トラフ巨大地震などの災害発生に備え、上下水道施設の耐震化や津波対策、危機管理体制を強化する。人口減少に伴う労働力不足を懸念し、AIやドローン、人工衛星など最新技術を活用した施設の点検・調査を推進。厳しい見通しの財政状況を受け、官民連携による持続的な事業運営の方策も検討していく。
 計画期間は2025~34年度。各年度ごとに施策の取り組み状況を確認し、必要に応じて内容を見直す。
 期間内の主な概算事業費については、上水道の経年管更新に約88億円、幹線管路耐震化に約72億円を計画。公共下水道の改築更新には約295億円、耐震・耐津波化に約95億円を見込む。施設の耐震化率に関する成果指標では上水道の基幹管路を23年度時点の43・9%から34年度に47・2%、下水道の重要幹線などを90・6%から92・1%にそれぞれ引き上げるとした。
 DX推進では管路の経年劣化に対し、人工衛星からのレーダー照射を活用して効率的に漏水を確認する技術を導入。目視点検の不可能な大規模な水管橋にはドローン点検で事前の事故防止に努める。危機管理体制の強化では1973年に完成して老朽化している上下水道局庁舎について、災害対応の拠点機能を維持・強化していけるように今後の在り方を検討する。
 官民連携の推進では、施設の維持管理や修繕、更新を一体的に民間に委ねる「ウオーターPPP」の導入可能性について上下水道ともに調査・研究を進める。
 20年2月の前計画の策定後にコロナ禍や物価高騰などで大きく社会情勢が変化し、1月の能登半島地震や8月の日向灘地震で巨大地震への危機感が高まったことを受け、ビジョンの改定に着手。財政運営の方針「宮崎市上下水道局経営戦略」と統合させた上で新計画としてまとめた。




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日本工営/AIで小規模橋梁点検効率化、作業時間約2割減

 日本工営が、AI技術を駆使して橋長10メートル以下の小規模橋梁の定期点検の効率化に取り組んでいる。山口県の小規模橋梁の定期点検に、県と共同開発した点検アプリを導入。記録作成機能により、点検結果を県の記録様式に整える手間が省ける。3Dモデル上に損傷情報を関連付ける機能も備えた。事前検証では作業時間を約2割削減できた。
 損傷程度の評価を支援するAI技術をタブレット端末で使用する。損傷箇所を撮影して損傷の種類や部位などの情報を入力し「評価実行」のボタンを押すと、AIが解析した損傷状況の評価・判定結果を表示する。この結果を点検アプリ上で点検記録としてまとめることができる。
 同社は土木研究所構造物メンテナンス研究センター(CAESAR)の「AIを活用した道路橋メンテナンスの効率化に関する共同研究」に参画し、AI技術などに関する最新知見を積極的に取り入れている。
 2022年度に山口県の「AIによるインフラ点検・診断システム」設計業務を受託。県内に約2600橋ある小規模橋梁の定期点検を高度化・効率化するため県と協働し、県独自の損傷判定基準や点検記録様式を踏まえてシステムを開発した。県内市町でもシステムの採用が進む。山口県の取り組みは、1月に国土交通省のインフラメンテナンス大賞優秀賞を受賞している。
 同社は今後、山口県を好事例とし、他の地方自治体の定期点検の高度化・効率化に向けたコンサルティングサービスに取り組んでいく考えだ。




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東京都/河川の高潮対策整備方針で素案、防潮堤かさ上げ推進・優先度や時期示す

 東京都は低地を流れる河川の高潮対策をまとめた「河川における高潮対策整備方針(仮称)」の素案を26日に公表した。気候変動に伴う海面上昇などを踏まえ、河川ごとの施設整備内容・時期を記載した。目黒川、古川、海老取川、石神井川を最も優先度が高い河川に位置付け、防潮堤のかさ上げに取り組む。対策必要時期は2040年ごろとしている。
 呑川と旧江戸川(上流側)の河川施設整備も急ぐ。50年ごろに呑川の防潮堤をかさ上げし、旧江戸川に対してはス-パー堤防を建設する。
 80年ごろまでに新河岸川のほか、神田川、妙見島で防潮堤の高さを引き上げ、日本橋川では水門を建設する。2100年以降に隅田川、中川、旧江戸川(下流側)でスーパー堤防整備を促進する。
 大半が満潮面以下の地盤高の地域を流れる江東内部河川に対しては、気候変動を考慮した降雨にも対応する。基本的には現在の排水機場をそのまま活用。ただ、海面上昇により満潮時に水門を閉鎖する必要があることから、水門に閘門機能を追加する。
 隅田川沿いに設置してある「隅田川テラス」は今後満潮時に浸水する可能性があるため、現在より50センチかさ上げする。




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2024年12月26日木曜日

国交省/「外国人材とつくる建設未来賞」表彰式開く、業界全体で育成を

 国土交通省は24日、建設分野の特定技能外国人と受け入れ企業・団体を表彰する「外国人材とつくる建設未来賞」の表彰式を東京都千代田区の都道府県会館で開いた=写真。「優秀外国人建設技能者賞」を受賞した6人と、「外国人材育成賞」と「事業展開賞」を受賞した6社に中野洋昌国交相が表彰状を手渡した。「審査委員長特別賞」として、技能者を直接雇用していないものの外国人材の受け入れ・育成を積極的に支援する元請企業による2団体も表彰した。
 中野国交相は冒頭のあいさつで「日本が選ばれる国となり、建設業が選ばれる産業であり続けるためには、建設業界全体で連携し外国人材を育成し、外国人材の方々が中長期にわたって活躍できる未来を見通せることが重要だ」と訴えた。
 外国人材育成賞を受賞した▽高知丸高▽タカラ▽手塚工務店▽日本興志▽矢島鉄筋工業-の5社は、日本語学習や技能訓練のサポートなどを通じた働きやすい職場づくりの実績が評価された。審査委員長の蟹澤宏剛芝浦工業大学教授は講評で「(受賞企業らは)国籍を問わず、担い手の定着に向け活動している。その取り組みを水平展開してほしい」と期待した。
 事業展開賞を受賞した高知丸高は、建設機械の教習所と連携し、自社以外の外国人材も受け入れる通訳常駐型の技能講習センターを開設。森建設はベトナムに現地法人を設置し、外国人技能者と帰国後のフォローアップや再就職で連携している。
 審査委員長特別賞の戸田みらい基金は、外国人技能者のスピーチコンテストやオンラインの無料日本語講座などに取り組む。竹中工務店・竹和会は、外国人技能者が対象の「安全体感訓練研修」や、人権尊重に向けた処遇・就労・生活環境の実態確認調査などの活動が評価された。




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回転窓/地方への誘客がカギ

 年末年始の休みを前に、早くも国際空港への直行特急が停車する最寄り駅では大きなキャリーバッグを転がす人が目立ってきた。2024~25年は休日の並びがよく、最大で9連休も見込める。これは19~20年以来の長い休みとなる▼24年は訪日客数が過去最多を更新した。リピーターの多いアジア圏に加え、円安による割安感から欧米やオーストラリアの客数が増加。24年1~11月の累計はコロナ禍前の19年同期比で米国は57・4%、オーストラリアは47・1%それぞれ増えた▼訪問先は大都市圏に偏っている。観光庁によると23年の外国人延べ宿泊者数のうち、東京や京都、兵庫、愛知など8都府県に宿泊した外国人の割合は、全体の7割を占めた▼客足が大都市圏に集中したこともあり、東京や大阪、京都では宿泊費が高騰している。訪日客増のあおりを受け、日本人観光客が日帰りや大都市圏周辺での宿泊を余儀なくされているという▼政府が目指す「観光立国」の実現には地方への誘客がカギを握る。自然や食など豊富な観光資源がある地方を訪ねる。まだ決めかねている年末年始の過ごし方の一つとして考えたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170152
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国交省/再生アス合材利用拡大へ技術的検討開始、技術基準改定に反映

 国土交通省は25日、再生アスファルト合材の利用を拡大するための技術的な検討を進めることを決めた。舗装の技術基準見直しの一環。見直しに当たっての考え方に、低炭素材料の導入促進とともに再生アスファルト合材のさらなる再生利用を追加する。適正な再生利用を進めるための技術的な検討を行い、舗装の技術基準の改定に反映する。=2面に関連記事
 同日の社会資本整備審議会(社整審、国交相の諮問機関)道路分科会道路技術小委員会(二羽淳一郎東京科学大学名誉教授)が、再生アスファルト合材の利用拡大を検討することで一致した。
 同合材は改質剤を添加する改質技術と、耐久性のある再生技術の知見が十分でなく、大型車交通の多い箇所や交差点、橋面、排水性舗装などに基本的に使われていない。一方、アスファルト合材の不正納入を巡る同省の有識者委員会は再生骨材に関し、長期耐久性の知見があれば発注時の仕様に指定が可能になるとして、長期耐久性の検証や改質技術の開発を求めていた。
 国交省は技術的な検討の結果、再生アスファルト合材の利用を拡大できれば、アスファルト・コンクリート塊のリサイクルの質の向上や脱炭素につながるとみている。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170150
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大成ロテック/残コン・戻りコンを直接受入、再生材へ処理スキーム構築

 大成ロテックが産業廃棄物の中間処理施設「城南島リサイクルセンター」(東京都大田区)で、都内の建設現場で増加する残コンクリート・戻りコンクリートの受け入れ事業を展開している。生コン工場には戻さず、不養生コンクリートを産廃の汚泥として直接受け入れ処理するスキームを構築。専用の養生プールで固化した後、コンクリート廃材(コンがら)と一緒に破砕設備で中間処理し、再生路盤材を製造・販売する。今後も多様なニーズに応え、持続可能な資源循環サイクルの構築に貢献していく。
 同社の城南島リサイクルセンター(城南島3の1の1、敷地面積8825平方メートル)は、2015年4月に産廃中間処理施設として稼働を始め、コンがらやアスがらなどを受け入れ処理してきた。
 20年3月には残コン・戻りコンの処理事業も開始。「建材商社から都内で残コン・戻りコンが受け入れられる工場を増やしてほしいと生コン工場が強く要望している実態を聞き、産廃中間処理事業とのシナジー(相乗効果)が見込めると判断した」と、同社の田邉仁城南島リサイクルセンター工場長は事業に乗り出した狙いを説明する。
 臨海部の工場地帯に立地し、残コン・戻りコンが多く発生する都心の建設現場から近いこともあり、同センターの受け入れ量は年々増加している。20年度に約1・2万トンだった受け入れ量は、21年度約2・1万トン、22年度約2・5万トン、23年度約3・2万トンと推移。現在約30の生コン工場と契約し、24年度も約3万トンを見込む。
 生コン工場から出荷されたものの、都内の建設現場で使われずに残って返される残コン・戻りコンは、全体の約3%に当たる約24万立方メートルと言われる。こうした不養生コンクリートは一般的に生コン工場で固化・破砕し、産廃として処理されている。多くの生コン工場で固化するために必要な敷地の確保が難しく、破砕時に発生する騒音や粉じんなどの問題も抱えているのが現状という。
 今後もコンがらや残コン・戻りコンの処理ニーズは高いと見られる。だが同センターは当面、現在の受け入れ量を維持する方針。コンがらや残コン・戻りコンなどから製造する再生路盤材の需要が低迷しているためで、こうした需給バランスや施設の保管・処理能力も考慮してさらなる受け入れ調整が必要としている。




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阪神高速会社/新港・灘浜航路工区鋼斜張橋2件、横河ブリッジJVらに

 阪神高速道路会社は、大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)事業のうち、六甲アイランドとポートアイランド間に位置する新港・灘浜航路部に架橋する7径間連続4主塔の橋梁形式として国内初、世界最大規模となる鋼斜張橋を建設する。
 技術提案・交渉方式の設計交渉・施工タイプを適用する「新港・灘浜航路工区(西)鋼斜張橋工事」と「同(東)鋼斜張橋工事」の事業者を選定する公募型プロポーザルを実施し、西工区は20億0870万円(税抜き、以下同)で横河ブリッジ・エム・エムブリッジ・JFEエンジニアリング・宮地エンジニアリング・日本ファブテック・三井住友建設鉄構エンジニアリング・横河NSエンジニアリングJV、東工区は18億1470万円でIHIインフラシステム・川田工業・カナデビア・高田機工・瀧上工業・駒井ハルテック・日本車両製造・UBEマシナリーJVを優先交渉権者に選定した。
 設計交渉・施工タイプは、設計、施工の受注者は同一だが契約は別々に行う。優先交渉権者として選定された者と設計業務の契約を締結後、同社と優先交渉権者との間で価格などの交渉を行い工事契約に至る。
 神戸市の東灘区と長田区を結ぶ大阪湾岸道路西伸部(延長14・5キロ)のうち、六甲アイランド(東灘区)とポートアイランド(中央区)間の海上部に架ける斜張橋を建設する。
 神戸港の新港航路と灘浜航路を通り、橋梁形式は7径間連続4主塔鋼斜張橋。橋長は2739メートル。支間長は653メートル。主塔の高さは191~213メートル。東工区はアプローチ部の2径間連続細幅箱桁橋(延長154メートル)も施工する。
 設計業務では、主構造の詳細設計を行い、斜張橋の解析や架設計画などを検討する。業務期間はいずれも2027年6月12日まで。概算の鋼重は西工区が主塔1万5500トン、桁2万9500トン、橋脚5000トンの計5万トン。東工区が主塔1万4500トン、桁2万9000トン、橋脚3200トン、アプローチ橋の桁2100トン、橋脚1200トンの計5万トン。ケーブルの重量は含まない。
 両工区とも工事は鋼主塔工2基、ケーブル工、鋼桁工、鋼製橋脚工。工期は工事契約時に設定する。西工区の工事場所は神戸市中央区港島5、東工区は同東灘区向洋町西3。




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U’sFactory/一連サービスでBIM積算効率化、実践教育にも応用可能に

 BIM関連サービスを手掛けるU’sFactory(横浜市保土ケ谷区、上嶋泰史社長)は、BIMのモデリングや積算などを効率化するシステムの一体展開を強化する。グラフィソフトのBIMソフト「Archicad」に対応した自動化システムを主軸に、建築構造図面の部材リストをAIで自動解析するツールなどと組み合わせることで、半自動的に見積書などを作成できる。若手らへの実践的な教育にも応用可能と見ており、働き方改革にも生かしてもらう。
 U’sFactoryが展開する自動化システム「BI For Archicad」は、対象建築物の鉄筋や足場、屋根などさまざまなオブジェクトを自動的に生成して、計画立案や積算などの生産性を高める。構造3Dモデル作成ツール「BI Structure」や、部材リストをAIで解析できるシステム「AI Structure」も提供。3Dモデル上で情報共有できるウェブコミュニケーションツール「Info360」も含め連動して利用することで、業務効率化を後押しする。
 例えば、PDFデータの構造図から鉄筋本数などを拾う場合、読み取る範囲を設定すると、3Dモデル上の当該箇所にオブジェクトや文字情報を自動的に生成する。部材リストなども作成できる。未抽出の部分が生じる場合があるが、そこだけを対象に再度AI処理する機能も搭載している。
 自動作成された梁などの部材リストは、断面形状などと見比べながらチェックできる。部材リストは、CSV形式で出力でき、手入力の手間や誤記リスクを減らす。これらのデータを基に、集計表や見積書まで作成可能だ。Info360を通じて、確認事項や修正履歴も蓄積できる。
 現場管理用の黒板を自動作成することも可能。黒板を3Dモデル上に並べて表示し、写真撮影に最適な角度も提案する。
 手入力作業を極力なくして、BIMのモデリング・修正作業を10分の1に減らすのが同社の目標。上嶋社長は「目標とする効率化に近づいてきた」との見解を示す。未熟練者でも一連の業務を手掛けられるため、「BIMを通じた教育ツールの意義も見えてきた。さらに開発を進めて完成形を目指す」と話す。




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2024年12月25日水曜日

誰もが活躍できる業界へ-担い手確保の挑戦・4/ゆるやかな訓練で自己価値再認識

 ◇国交・厚労・文科の3省連携で推進へ
 さまざまな事情で就労から遠ざかっている若者を建設業へ呼び込む--。全国建設関係訓練校等連絡会議の桑原敏彦会長は、魚と野菜を同時に育てるアクアポニックス(アクポニ)をきっかけに入職を促す活動を始める。自身が率いる職業訓練校の利根沼田テクノアカデミー(群馬県沼田市)では高校生などへの2拠点教育も推進する。こうした活動に加え、複数の省庁にも働き掛け、担い手の間口を広げようとしている。
 桑原会長は、来年4月に始めるアクポニ研修を「ゆるやかな訓練で自分の価値を再認識し、『社会に出て大丈夫なんだ』と思える場にしたい」と話す。
 同アカデミーは、研修生のディスカッションで「意見を否定せず、相手と自分の価値をともに認める」ことを重んじる。こうした考えが、負荷の少ない作業で成功体験を積み肯定感を高める「マイルド・ソフト・トレーニング」の根底にある。訓練生向けにコンテナハウスの組み立て研修も行っており、これもニートの職業訓練に活用したい考えだ。
 学校に行けない子どもたちが通うフリースクールとの連携も模索する。桑原会長は「学校以外のところで学ぶフリースクールは、2拠点教育と同じ方向性」と見て、「オンデマンドで互換単位認定をできるようにしたい」と展望する。
 取り組みを加速するには、関係省庁との関係構築も欠かせない。11月16、17日に行った2拠点教育には国土交通省職員が初めて講師として参加。建設業振興基金(振興基金)が150万円を助成した。
 同27日のサポートステーション連携会議は同省と厚生労働省、振興基金から担当者が出席した。2拠点教育やフリースクールに関連した動きは、文部科学省の所管分野と重なる。国交、厚労、文科の3省をつなぐのは「政治の力」(桑原会長)。同連絡会議は国会議員などと勉強会を開いており、3省の担当者も参加している。
 全国への波及も狙う。元厚労事務次官の村木厚子氏が代表となり、若者支援の全国組織「子ども・若者支援全国ネットワーク」を年度内に立ち上げる予定。同連絡会議も参画する。
 同ネットワークの立ち上げに向けた会議の参加者の多くが支援団体で「建設業はうちだけ。みんな驚いていた」と桑原会長。「建設業が目を向けてこなかった領域に入ってイメージチェンジしなければ、人手不足の中で淘汰(とうた)される一方だ」との危機感が、これまでの活動の殻を破る原動力になった。誰もが活躍できる建設業界への歩みを、今後も進めていく。
 =おわり
 (編集部・坂口恭大)




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国交省/23年度直轄工事スライド条項適用実績、インフレ変更額3・8倍に

 国土交通省は2023年度に直轄工事で適用したスライド条項の実績をまとめた。スライド条項の種類別に見ると、適用件数とスライド額の合計(減額スライドを含む)は、全体スライド22件・2億5487万円(22年度33件・2億6349万円)、単品スライド242件・18億1837万円(280件・19億2225万円)、インフレスライド955件・174億0341万円(626件・45億2829万円)。特にインフレスライドによる変更額が22年度の3・8倍に急増した。
 24日公表の「国土交通省直轄工事等契約関係資料(24年度版)」に記載した。最近の資材価格高騰の影響で22年度は特に単品スライドの活用が拡大し、21年度に比べ件数が10倍、変更額が8・9倍に伸びた。23年度は単品スライドの適用が横ばいで推移しながら、インフレスライドの活用が大きく広がった格好だ。
 複数の資材価格が一斉に上昇する局面ではインフレスライドが有効との認識が業界内に浸透したことが背景にありそうだ。単品スライドは個別の資材の価格変動額が工事費の1%を超えなければ受注者負担となり適用できない。資材価格や労務費のトータルの上昇額が大きい場合はインフレスライドの適用が効果的だ。
 同資料によると、23年度の直轄工事の契約件数は22年度比0・2%減の1万2424件、契約金額は5・0%減の1兆9363億円だった。同資料は国庫債務負担行為(国債)を活用した複数年度工事も当初契約の締結年度に契約金額をすべてカウントする。23年度は防衛省関連の国債工事の発注が多かった22年度の反動減とみられる。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170112
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四国銀行/本店ビル建て替え(高知市)概要公表、3棟延べ2・5万平米に

 四国銀行は、本店ビル(高知市南はりまや町1の1の1、敷地面積約1946平方メートル)などを建て替える計画の概要を固めた。現在の本店、別館、駐車場敷地を活用し、駐車場棟、新本部棟、新本店棟の順に建て替える。3棟はいずれもS造で総延べ約2万5000平方メートル規模となる。駐車場棟は2026年夏頃、新本部棟は28年夏頃、新本店棟は31年春頃の完成を目指す。設計・監理は日建設計が担当。施工者は未定。
 新本店棟は5階建て延べ約5500平方メートル、別館南の駐車場敷地(高知市堺町7の4、敷地面積3101平方メートル)に建設する新本部棟は9階建て延べ約1万4000平方メートルでともに中間層免震構造となる。本店西隣の別館敷地(同堺町1の6、同1412平方メートル)に建設する駐車場棟は5階建て延べ約5500平方メートル。自走式駐車場とする。
 コンセプトは「四銀の森」。外観に高知県産材を採用するとともに、周囲には高知産植物などを植樹し、高知の自然の豊かさをイメージした緑あふれる環境を整備する。初弾工事となる別館解体は25年春の着手を予定している。
 現本店ビルはSRC造地下2階地上6階建て延べ9796平方メートルで1963年に建てられた。高知の観光名所「はりまや橋」にある交差点に面している。5月に建て替え方針を発表した。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170116
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2024年12月24日火曜日

年末年始休刊、電子版登録休止のお知らせ

年内の新聞発行は27日(金)で終了します。 新年は元日(水)に新年企画特集号を発行した後、1月6日(月)から平常通り発行します。 また、28日(土)~1月5日(日)に申し込みいただいた電子版の承認は6日以降となります。 ご了承ください。 日刊建設工業新聞社

滋賀県/原松原線彦根お城トンネル開通、交通渋滞緩和に貢献

 滋賀県が彦根市内で整備を進めてきた都市計画道路原松原線「彦根お城トンネル」が22日に開通した。慢性的な交通渋滞の緩和や災害に強い道路ネットワークの構築が期待される。同日、現地で式典を開催。国や県、地元自治体の関係者らが出席し、開通を喜び合った。
 冒頭、三日月大造県知事は「工事は難工事を極めたと聞いているが、関係者の皆さまの技術を駆使して工事を進めていただき深く感謝している。渋滞が解消され、安全に人や物が行き交う道路として活用されることを願っている」とあいさつ。
 和田裕行彦根市長は「今後増加する観光客をおもてなしするために非常に重要な道路であり、地域経済や県政の発展にも寄与する。『整備効果が高かった』と言っていただけるよう今後も尽力していきたい」と決意を述べた。
 近畿地方整備局の出口陽一副局長は「本道路の整備により、渋滞が解消され民間の交通確保が図られるとともに、災害に強い道路ネットワークへの転換が図られることを期待している」と開通を祝った。
 この後テープカットとくす玉開披、通り初めで開通を祝った。
 原松原線は、国道8号と国道306号が交差する外町交差点の慢性的な渋滞を緩和するため、8号古沢町交差点と306号原町交差点を新たに結ぶ全長1700メートルのバイパス道路。トンネル延長は1135メートルに及ぶ。2010年度に事業着手し、総事業費は約160億円。トンネルの施工は戸田建設・昭建・金子工務店JVが担当した。
 トンネル名は22年7~9月に県が彦根市民らを対象に実施した公募で決定した。




from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170076
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回転窓/希代の詩人の教え

 〈生きているということ いま生きているということ……〉。詩人の谷川俊太郎さんの代表作である「生きる」は、世代を越え多くの人たちに読み継がれてきた詩だろう▼生きること、命をテーマにしつつ重々しくも軽々しくもない、感受性豊かな言葉で表現し、老若男女を問わず共感する人は多い。東日本大震災の発生後、被災者らの間でネットを通じて広がり、心の支えになったようだ▼活躍の場は翻訳、絵本、作詞など幅広い。アニメ「鉄腕アトム」の主題歌を作詞し、米国の絵本「スイミー」や漫画「ピーナッツ」なども翻訳。手掛けたものは子供たちに広く受け入れられた▼おこがましくも同じ言葉をなりわいにする者として、書く際は「できるだけ自分を空っぽにする」という谷川さんの精神状況を意識している。決まり文句など頭の中の言葉にひきずられないようにすると、思いがけない言葉が入ってくるのだとか。小欄も苦しんだ先に、ふっと浮かんだ言葉がピタリとはまる瞬間が少なからずある▼先月、92歳で亡くなられた谷川さん。晩年も創作を続けた希代の詩人の教えを忘れず、今日も紙面と向き合いたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170073
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建築家・谷口吉生氏が死去/モダニズムを追求、代表作に葛西臨海水族園など

 建築家の谷口吉生(たにぐち・よしお)氏=写真(谷口建築設計研究所提供)=が16日、肺炎のため死去した。87歳だった。装飾的要素をできるだけそぎ落としたシンプルな形状と洗練されたモダニズム建築で知られ、国内外で活躍した。葬儀は近親者で行う。後日「メモリアルの会」が開かれる予定だ。
 谷口氏は、1937年東京都で生まれた。慶応大学工学部機械工学科を卒業後、米ハーバード大大学院で建築を学んだ。建築家の丹下健三に師事。79年に独立して谷口建築設計研究所を設立した。
 代表作には、資生堂アート・ハウス(静岡県掛川市)や土門拳記念館(山形県酒田市)、猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)、葛西臨海水族園(東京都江戸川区)、ニューヨーク近代美術館(米ニューヨーク)、GINZA SIX(東京都中央区)などがある。自己主張を抑えたシンプルな作風を軸としながら、光の採り入れ方や周辺環境への調和などを緻密に計算して、名建築を生み出してきた。
 日本建築学会賞など多数の受賞歴があり、2011年に旭日中綬章を受章した。21年には文化功労者に選ばれた。父は建築家の谷口吉郎。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170074
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誰もが活躍できる業界へ-担い手確保の挑戦・3/「2拠点教育」で実地の学び

 ◇自由な議論で魅力向上へ
 「建設業に行く人は普通じゃないイメージ」「テレビCMを頑張ってるけど、まずテレビを見ないよね」--。そんな本音を、山あいの夜更けに若者たちがぶつけ合った。利根沼田テクノアカデミー(群馬県沼田市)は、高専生や高校生への担い手確保の活動にも注力。都市部と山間地域で林業などを経験してもらう「2拠点教育」を実施した。学生らは体験を元に議論。国土交通省の若手職員を交えたディスカッションも行った。
 11月16、17日に沼田市で行った2拠点教育には、豊田工業高等専門学校(豊田高専、愛知県豊田市)と葛西工科高校(東京都江戸川区)から9人が参加した。16日は杉林で伐倒作業を見学。バーベキューで親睦を深め、たき火を囲んで林業を含む建設業への入職促進について議論した。
 ある学生は、大手ゼネコンがテレビCMに力を入れていることを挙げ「(私たちの世代は)あまりテレビを見ない」とミスマッチを指摘。「原宿や渋谷の大きなモニターやTikTok(ティックトック)で、頭に残るフレーズで訴えるのがいい」と提案した生徒もいた。ある生徒は「高校の学科を『普通科』『建築科』と分けるのが良くない。建設業の人は普通でないイメージを植え付けてしまう」と話した。
 豊田高専の学生は17日の午前8時から、国交省入省3年目で国土政策局地方政策課の深堀貴良氏を講師にディスカッション。同省の2地域居住施策を踏まえ、豊田市と沼田市での2地域居住の実現可能性について話し合った。
 学生たちは交通費などの点で難しいとしつつも、乗り合いバスやシェアハウスの活用を提案。深堀氏は「乗り合いバスの発想はなかった」と感嘆。空き家を改修したシェアハウスの画像を見た学生は「行政の考えるシェアハウスと、私たちが住みたいそれとは違う」とばっさり。年間50万人の観光客を受け入れる香川県三豊市の事例を参考に、ニーズを的確に捉える重要性を語った学生もいた。
 続いて、両校の学生らは木材工場での製材作業を見学。職人の指導で木製藤棚の組み立て作業を行った。藤棚は葛西工科高校の校内に設置する。来年度は職人を高校に招き、木材を使った小屋をつくる。
 同アカデミーの花坂弘之講師は「建築や土木のDXは、現実のものをデジタルでフィードバックする『デジタルツイン』だ。学校と違う拠点での実地の学びが大切になる」と語る。2拠点教育は2025年度に都内の建築・土木科がある高校、26年度は関東圏などに対象を広げ展開していく。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170071
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福岡市/市民病院移転建替、千早病院と統合再編へ25年度に基本構想策定

 福岡市は老朽化に伴う移転建て替えを検討している福岡市民病院(博多区吉塚本町)について、国家公務員共済組合連合会(KKR)が運営する千早病院(東区千早)と統合し、病床数300~350床に再編する方針を示した。統合後の施設規模は延べ3万5000平方メートル程度を想定。移転候補地は東区の3カ所に絞り込んだが、これら以外に敷地面積1万8000平方メートル以上を条件に新たな候補地を検討するとした。
 移転建て替えの検討状況は、20日に開かれた学識者や市議会議員でつくる「福岡市病院事業運営審議会」(会長・平田泰彦福岡市医師会参与)で報告した。2025年3月までに開催予定の次回会合で審議会としての答申を取りまとめる。答申内容を踏まえ、市は25年度中の基本構想策定を目指す。
 市民病院の移転建て替えでは、高度専門医療や感染症医療、災害医療への対応力強化を掲げている。現在の204床の病院規模では医療サービスの拡充が厳しいことから増床を検討。福岡県保健医療計画で病床過剰地域となっており単独では増床を実施できないため、市民病院と同様に施設・設備の老朽化などが課題の千早病院との移転統合を目指す方針を固めた。
 移転候補地は6月に示した5カ所のうち、▽かしいかえん跡地(東区香住ケ丘7、敷地面積約12万平方メートル)▽香椎浜ふ頭緑地(同区香椎浜ふ頭1、約4万5000平方メートル)▽九州大学箱崎キャンパス跡地への移転を計画している箱崎中学校跡地(同区筥松4、約3万平方メートル)-に絞り込んだ。
 これら候補地3カ所については、現時点では活用が可能になる時期が未定であることから、関係者へのヒアリングを継続しつつ、このほかに移転先となりうる候補地を検討するとした。
 統合相手の千早病院は1965年に開院。病床数は175床。市と市民病院、KKRの間で今後、統合再編に関する協議を進める。




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清水建設/あと施工アンカー設計・施工法に初の強度指定、常時荷重の部材接合有効

 清水建設は日本ヒルティ(横浜市都筑区、堺直樹社長)の協力を得て、短工期かつ低コストでRC造やSRC造の躯体に鉄骨小梁を接続する「あと施工アンカー」の設計・施工法を確立した。信頼性を証明する初の強度指定をこのほど国土交通相から取得。2022年3月の国交省告示第1024号の一部改正を踏まえ、強度指定を取得したあと施工アンカーは既存コンクリート躯体と耐震補強部材の接合に加え、鉄骨小梁など常時荷重を受ける部材との接合にも適用できるようになった。あと施工アンカーの適用拡大を目指す。
 強度指定を取得したのはコンクリート躯体を穿孔し接着剤を注入した孔に挿入、定着させる鉄筋。清水建設は告示の一部改正を受け早期の強度指定に向け、母材コンクリート躯体の強度や有効埋め込み長、鉄筋径、施工の向きといったパラメーターを変えながら500体超の試験体を作成しアンカーの性能を確認。施工法も実験を経て適切な穿孔方法や接着剤の充填方法を確立した。
 一般的に常時荷重を受ける鉄骨小梁は、コンクリート床の開口端部に発生する撓(たわ)みを防止する補強材や、躯体から跳ね出した点検歩廊や鉄骨階段を支える支持材などとして用いられている。
 従来は鉄骨小梁を増設する場合、小梁を固定するアンカーボルトが収まる大きさで母材コンクリート躯体を深く斫(はつ)り取りアンカーボルトをセットしてコンクリートを再打設する。ただ施工に手間がかかり斫り工事による既存鉄筋の損傷、騒音・粉じん、コンクリート打設によるアンカーの位置ずれ、周囲の汚損などが懸念。容易に施工できるあと施工アンカーによる接合が求められていた。
 清水建設によると、従来施工法の工期と工事費、廃棄物発生量を「100」とした場合、強度指定を受けたあと施工アンカーを用いることでそれぞれ約30、約15、約1に抑えられる。




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2024年12月23日月曜日

回転窓/人気のポタ電と防災

 略して「ポタ電」と呼ばれるポータブル電源の市場が拡大しているという。アウトドアレジャーに便利で、災害時の非常用バッテリーとしても役立つ▼需要の高まりに伴い新たに市場参入するメーカーも少なくない。消費者にとって製品の種類が豊富なのは歓迎だが、いざ選んで買おうとするとこれが非常に迷う。うなずかれる方も多いのではないだろうか▼購入に当たっては用途に応じて必要な容量や出力数を検討し、充電の方法や時間、充放電を繰り返せる回数などの仕様も確認する。採用されている電池タイプの特性も知っておきたい。自宅や職場などに備えてあればいざという時にきっと頼りになる▼防災用でも普段から使い方に慣れておくことが必要だろう。購入したまま一度も使わずに眠らせていたのでは非常時に何とも心もとない。他の防災用品も定期的に点検し、できれば事前に使っておきたい▼かくいう小欄も先日、災害に備えてあれこれ迷った末に、ようやくポタ電を購入した。もうすぐ迎える年末年始の休みに試運転も兼ねて電気グリルを接続してみたい。今度はそれでどんなものを焼こうか迷い始めている。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170055
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凜/国土交通省関東地方整備局・川上朋美さん、災害に対し何ができるのか

 国土交通省に入って15年目になる。入省のきっかけは高校生の時に遭遇した中越地震。当時住んでいた新潟県長岡市内の自宅は幸い大きな被害はなかったものの、近くに大規模な仮設住宅が建設された。それまでテレビの中の出来事だった災害が「初めて身近な自分ごと」になった。進学の際は「災害に対して何ができるのか」と考え、土木の道を選択。就職でも民間ではなく公務員を志望した。
 2015年9月に発生した関東・東北豪雨の被災地で復旧事業に取り組む関東地方整備局下館河川事務所へ18年に異動し、復旧工事の発注や監督を担当。通年施工で復旧の完了を急いだが、大雨の際は水位が上がり「ヒヤヒヤした」経験も。事務所の工務課から出張所の監督業務へと担当が変わったため、自身が積算した設計図面が立体として形になっていくのを目の当たりにするという「面白い経験をさせてもらった」。
 本局勤務を経て、23年に下館河川事務所で水防担当を務めた。自身の出す警報が地方自治体の避難判断に直接つながる重要な業務。「一つ一つの判断が住民の命につながっている。ボタン一つ押すことは簡単だが、重いものを感じた」と振り返る。
 これまでインフラ管理を担当したことがない。「今後、管理の重要性がますます高まってくるので、地に足が着いた仕事をきちんとやっておきたい」と将来を見据える。
 国土交通省関東地方整備局河川部河川計画課(かわかみ・ともみ)




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東京都交通局/地下鉄のバリアフリー化推進、25年度予算原案に120億円

 東京都交通局は地下鉄のバリアフリー化をさらに推し進める。2025年度予算原案に24年度予算(44億91百万円)の倍以上の規模となる119億95百万円の関連経費を計上した。駅にエレベーターを設置するほか、年齢や障害の有無にかかわらず誰もが使いやすい「人にやさしい車両」を導入する。乗客がより快適で円滑に移動できる公共交通の実現を目指す。
 都交通局によると、地下鉄車両の更新数が増えたことで予算額も増加した。具体的な車両数は現在調整中だ。新たな車両は内部にフリースペースを設置するほか、低い位置につり手や荷棚を取り付ける。優先席に縦手すりを追加。車内液晶モニターは多言語に対応する。エレベーターの設置対象駅や基数は「現在調整中」(都交通局担当者)。
 バリアフリー化を進める中で課題も見えてきた。例えばエレベーターを設置する場合、駅の中で整備効果が高い場所を対象にする。ただ設置現場のほとんどが「整備に必要な空間の確保が難しい」(同)状況だ。解決に向けて検討を続けている。
 都交通局は現行の「経営計画2022」(22~24年度)で、期間中に人にやさしい車両を合計16編成導入する計画だ。対象は三田線(4編成)、新宿線(4編成)、大江戸線(8編成)。バリアフリールートを充実するために必要なエレベーターは期間中に6駅に新設する。
 新たな経営計画の期間に入る25年度も、駅や車両、バス停留所の施設・設備の整備に計画的に取り組む方針。新たな技術を活用しながら移動サポートなどのサービスをより効果的に提供する考えだ。




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青森県/青森港(青森市)長期構想案、災害時の代替輸送機能など確保

 青森県は20~30年程度の長期的な視点で青森港が担う役割と将来像を示す「青森港長期構想」案を公表した。県沖合を航行するRORO船(貨物車両ごと輸送可能な船舶)が途中寄港できる高規格ターミナルをバルクターミナルに隣接して整備。大型船舶に対応する第2バースで耐震強化岸壁の新設・延伸も検討する。本州、北海道の大動脈を軸に県と国内外をつなげる「ユニットロード物流拠点」を目指す。2025年1月17日まで意見を募集している。
 地震など災害リスクの高まりを受け、東北で大規模地震が発生した場合の広域防災拠点として強靱なユニットロードターミナルや太平洋、日本海両側港湾の代替輸送機能を確保する。大規模地震発生時の物資輸送で行動計画を見直し、青森港事業継続計画(BCP)に反映するなど実効性の高い災害対策を確立。将来の取扱貨物量を踏まえ、係留施設を沖館埠頭マイナス13メートル岸壁と沖館埠頭マイナス10メートル岸壁の2バースに集約し、クルーズ船を本港地区にシフトすることで効率的なバース利用を目指す。
 クルーズ船で青森を訪れる旅客にとって玄関口になる本港地区では新中央埠頭・中央埠頭を中心にみなと緑地PPP(港湾環境整備計画制度)などを活用した新たな集客施設の立地を促進しウオーターフロントの面的なにぎわい空間を創出する。青い海公園クルーズターミナルは観光物産館「アスパム」と一体利用で機能を拡充する。拠点の整備に合わせ、インバウンドの増加に対応した次世代モビリティ(超小型EV、デマンド交通など)の拡充も検討する。
 洋上風力発電の基地港湾となる油川埠頭を候補地に着床式洋上風力発電設備のメンテナンス資機材を受け入れる。沖館東防波堤の港内側の静穏な水域は、洋上風力発電設備の浮体基礎の保管水域としての活用も検討する。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170046
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NIPPO/搭乗式電動ローラーを舗装現場適用、環境性と施工性を両立

 NIPPOは国内初となる舗装用の搭乗式電動ローラーを導入し、国土交通省中部地方整備局発注の「令和5年度1号清水立体飯田地区舗装設備工事」(静岡市清水区)に適用した=写真(NIPPO提供)。エンジンを搭載していないため二酸化炭素(CO2)を排出せず、騒音もほとんど発生しない。水平振動機構を備えており、有振動時の周辺環境に与える影響が少なく舗装の施工継ぎ目部では効率的に高密度を得られる特徴がある。
 稼働時間は振動の有無や転圧速度などの使用状況によって異なるものの、フル充電で5~10時間。充電時間は200ボルトで約10時間となる。
 現場導入の課題だったのが充電方法の確立。舗装のような短期間に屋外で行われる工事では商用電源からの充電が難しい。昼間使用した電動ローラーを充電するため、無人の夜間に発電機を稼働させることは安全や騒音の面で問題が懸念された。
 そこで200ボルトの出力が可能な可搬式バッテリーを導入。昼間に発電機で可搬バッテリーを充電しておき、夜間に可搬式バッテリーを用いて搭乗式電動ローラーを充電する。CO2削減のため、化石燃料を使用しないバイオディーゼル燃料「B100燃料」専用の発電機を使用している。
 NIPPOによると、国内で舗装用の電動建機は販売されていない。2023年12月にドイツのヴィルトゲングループであるHAMM社から搭乗式電動3トン・コンバインドローラーを購入した後、複数の現場で試験運用していた。
 今後は運転操作時や充電方法などの課題を抽出。環境負荷や夜間工事での有効性の評価も進め、カーボンニュートラル(CN)の実現に貢献していく。




from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=170058
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2024年12月20日金曜日

宮城県女川町/出島大橋が開通、島民の安心守る「いのちの橋」

 宮城県が女川町から受託し建設していた町道女川出島線の長大橋「出島(いずしま)大橋」の架橋工事が完了し、離島の出島と本土を結ぶルートが19日に全線開通した。鋼中路式アーチ橋で橋長364メートル、アーチ支間長306メートル。出島は同町の沿岸漁業拠点で、本土側との利便性が向上することで水産業や観光振興が期待されている。天候に左右されない緊急時医療経路、災害時には避難道路として島民の安全を支える「いのちの橋」が完成した。
 出島は東日本大震災で一時全島避難になり、人口減少が深刻になっている。人口は11月末時点で約100人。町道女川出島線は物流機能の向上などを目的に2015年度に町事業として着手した。女川町尾浦地区の国道398号を起点に離島・出島の県道出島線(出島福合浦)に接続する延長2920メートルの路線で総事業費は約167億円。
 出島大橋は海上に架設する長大橋で高度な知識と技術が要求されるため、16年度に県が発注した。事業費は約89億円。上部工(設計・製作・施工)をJFEエンジニアリング、下部工は橋本店・東日本コンクリートJVが施工した。
 同日に本土、出島の2会場で開通式が開かれ、須田善明女川町長や村井嘉浩宮城県知事、国会議員、工事関係者、地域住民ら総勢157人が出席した。席上、須田町長は「橋の完成は半世紀にわたる町の宿願であり、関わられた全ての方に心からお礼申し上げたい」と謝意を表明。「町民、島民、皆さんと一緒によりよい未来を描いていくには、ここからが大切だ」と気を引き締めた。来賓の村井知事は「暮らしを守る『いのちの橋』だ。県としても観光面などで応援していく」などと述べた。
 この後、須田町長、村井知事、西村明宏元環境相、徳山日出男国土技術研究センター理事長らが本土側のたもとに移動しテープカット。出島大橋の中央で島民ら出島大橋会場の参加者と合流し、くす玉開披で開通を祝った。一般車両は19日午後3時から通行を開始した。
 本体工事には17年度に着手し、11月に完成した。工事のうち、下部工は橋台2基、橋脚2基。下部工形式は逆T式橋台、壁式橋脚。▽本土側・側径間の架設▽出島側・側径間の架設▽中央径間の架設-の3段階に分けて橋体を設置した。
 アーチ橋の構造体をJFEエンジニアリングの津製作所(三重県)で製作し、現場近くのヤードで一括架設用の大ブロックに組み立てた。4000トン級のフローティングクレーンでつり上げ、架設地点にえい航した。海上ベント設備の設置にはSEP(自己昇降式作業台)船を使用した。




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回転窓/忘年会問題

 忘年会や新年会をやるか、やらないか、行くか、行かないか--。頭を悩ませている人がいるのではないか。かつては参加が当然という雰囲気で、断るには口実が要るのが前提だったように思う▼時代は大きく変わった。東京商工リサーチが今月実施した調査によれば、今シーズンに忘・新年会を実施する企業は60%にとどまった。コロナ禍前は実施していたものの実施しないケースも多い。最多の理由は「開催ニーズが高くない」(65%)▼会社によっては懇親会費用を補助するケースもあるだろう。一部の人だけに恩恵があるようでは不公平感が募る。とはいえ、コロナ禍を経て、雑談を含めたコミュニケーションの大切さを実感した人も多いはず▼ある企業は数十年ぶりに社員旅行を企画したところ、100人規模が参加したそう。フレックス制度を導入している企業は、社内でコミュニケーションを取る時間帯をあえて設定し、交流や議論を呼び掛けた▼交流の押し付けもあまりに素っ気ない状況も、どちらも行き過ぎると弊害がある。価値観が変わる時代だからこそ、組織と従業員が歩み寄って良い案配を探りたい。




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内閣官房/GX分野別投資戦略の見直し案、省エネ住宅導入支援

 内閣官房は19日、GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」(2023年策定)の改定案をまとめた。家庭から排出される二酸化炭素(CO2)の削減に向けた「くらし関連部門」では、方策としてZEH水準を大きく上回る省エネ性能を持つ住宅の導入支援や、住宅性能表示制度の基準充実などを新たに追加。30年までに省エネ水準の高い住宅供給に向けた枠組みを構築する。
 同日開いた「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」で改定案を示した。
 現行戦略はくらし関連部門について、今後10年程度で約2億トンのCO2削減に向け官民投資額約14兆円を引き出すことを目標としている。改定案では、投資促進策としてZEH水準を大きく上回る省エネ性能を持つ住宅の導入支援を追加。実現に向けた制度づくりでは、25~30年度に省エネ基準をZEH・ZEB水準に引き上げるため、より高い省エネ水準の住宅供給を促進する枠組みを構築するとした。
 次世代型地熱の分野別投資戦略も今回新たに示した。現状よりもさらに深い場所での地熱資源や、地下に水や割れ目のない地点での開発といった開発領域の拡大に取り組む。今後10年間で官民投資31兆円以上を目指すとした。
 製造業、運輸、くらし、エネルギーといった分野別の投資促進施策では、25年度予算案に計上される支援見込み額を年内にも盛り込む予定。
 政府は23年にGX投資の拡大に向けた重点分野の10年間の道筋を示す分野別投資戦略を策定。国民の「暮らし」や浮体式洋上風力発電など「次世代再生可能エネルギー」といった16の重点分野を設定し、GXの方向性などをまとめた。20兆円規模のGX経済移行債を活用した投資促進策により、150兆円以上の官民GX投資を実現するとしている。




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福岡県苅田町/新庁舎建設PPP導入対話結果、DB方式にメリット

 福岡県苅田町は計画する新庁舎建設について、9月に民間事業者を対象に実施したPPP手法導入に関するサウンディング(対話)型市場調査の結果概要を公表した。対話では設計・施工一括(DB)方式に対し、行政側の事務負担の軽減、民間事業者側の資機材の調達難に関するリスク軽減を図りやすいとの意見があった。町は対話結果を踏まえて事業手法を検討しており、2025年1月中旬ごろに公表する基本計画の素案に盛り込む考え。
 対話には設計2者、建設・その他4者、維持管理・運営2者が参加した。調査項目は▽事業手法▽事業範囲▽事業期間▽創意工夫・コスト縮減の可能性、事業費の目安▽事業提案の評価-など。
 民間活力導入についてはDB方式、DBO(設計・建設・運営)方式、PFIのBTO(建設・移管・運営)方式で意見を求めた。DB方式はが事業者側にとって効率的な事業実施を可能とし、主に建設会社から参画しやすく、望ましいとの声があった。
 DBO方式は主に維持管理・運営企業にとってメリットが大きいが、SPC(特別目的会社)設立が必要となった場合に、手続きの煩雑さなどがあり、メリット以上に負担も大きいとの意見が出た。BTO方式は一括発注による人員や事務負担の軽減、町民サービスの向上を図れるが、資金調達やコンソーシアムの組成といった企業間の連携にハードルがあり、金利上昇に伴う行政側のコスト増加のリスクもあるとの指摘を受けた。
 事業期間については、設計に1年半~2年程度、建設は2~3年半程度との回答があった。
 町は対話結果を基に事業手法の決定に向けた検討を進めている。25年1月中旬~下旬に基本計画素案に対する意見募集を行い、同3月中の計画策定を目指す。
 建設候補地は富久町の現庁舎と三原文化会館、歴史資料館がある敷地(面積約1万6500平方メートル)を想定。国指定史跡「石塚山古墳」の隣接地であるため、25年度以降に文化会館と歴史資料館を解体した後、文化財調査を実施する予定。
 基本構想によると、新庁舎の必要延べ面積は約1万平方メートルで、庁舎機能延べ約8200平方メートル、活動支援機能など複合化機能延べ約1800平方メートルを見込む。




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鹿島/CSG締め固め品質管理新手法を成瀬ダムで導入、人員7割削減

 鹿島は、現場発生土材(石や砂れき)やセメント、水などを混合した材料「CSG」で打設したコンクリートの締め固め品質を管理する手法「Geo-DX Compaction」を開発した。地盤の電気抵抗を利用し現場密度(土木工事現場の土の密度)を算出する。盛り土の締め固め管理で行う「現場密度試験」の業務を省力化し、品質管理人員を7割削減。広域で面的な現場密度をリアルタイムにデータ取得できる。
 同手法は四つの電極が取り付けられた計測装置をバギーでけん引する。地盤の電気抵抗を連続計測し現場密度を算出。施工面全域の締め固め品質管理が可能となる。
 連続計測した地盤の電気抵抗を基にリアルタイムに現場密度を算出できるため、結果をヒートマップで可視化し、施工面全域にわたる締め固め品質の面的管理を実現した。従来法では広域な施工面に対し、試験孔数点の現場密度しかデータ取得できなかった。
 同社は秋田県東成瀬村で施工中の成瀬ダム堤体打設工事(国土交通省発注)に導入。現場密度の誤差は1立方メートル当たり約プラスマイナス0・05トンとなり、従来法の試験と同等の精度を確認した。
 従来、試験孔の削孔などに要していた3人の試験員を計測装置をけん引するバギーの運転者1人に削減し、CSGの締め固め品質管理業務を省力化。試験業務に従事する人員を約7割削減でき、施工面全域にわたる現場密度の可視化を実現した。
 計測深度は電極間隔を変えることで自由に調整できるため、現場にあった品質管理が可能となる。同社は今後、同手法の計測自動化を目指し、CSGなどの締め固め品質管理のさらなる省力化と、工事の生産性や安全性向上を図る。装置の小型化も検討している。CSG以外に盛り土工事全般に導入できるため、造成工事などにも広く展開していく考え。




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2024年12月19日木曜日

回転窓/国土形成への歩み

 子どもから大人まで楽しめる人生ゲームは1968年に玩具メーカーのタカラ(現タカラトミー)から発売された。その起源は1860年までさかのぼり、米国で印刷業を営んでいた若手経営者ミルトン・ブラッドレーが考案した▼遊び方は盤上のルーレットを回し、出た数字に合わせて自動車型のこまを進める。億万長者を目指しながら、就職や結婚など人生のさまざまな出来事を疑似体験できるのが特徴。最新版では選択できる職業が動画クリエーターなどはやりの仕事も取り入れ31種類に増えた▼国土形成計画法に基づき、国土形成の方針や目標を定めた次期広域地方計画の中間素案が近く公表される。この中で国土強靱化やエネルギー・食料問題など幅広い分野への対応方針が示される予定だ▼少子高齢化に歯止めがかからず、総務省は50年に生産年齢人口が21年比で3割減の5275万人にまで落ち込むと試算する。素案には子どもを安心して生み育てられる環境づくりも盛り込まれる▼人生ゲームのように生活や仕事も〈山あり谷あり〉だが、美しく暮らしやすい国土形成への歩みは後戻りなどさせず着実に進めたい。




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UBE三菱セメント/社長に平野和人代表取締役副社長昇格、25年4月1日就任

 UBE三菱セメントは17日、平野和人代表取締役副社長が2025年4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。経営体制を刷新し社長の下、執行体制を一本化。持続的成長に向け経営の一層の強化と充実を図るのが狙い。小山誠社長は代表取締役会長に就く。
 平野 和人氏(ひらの・かずと)1985年上智大学法学部卒、三菱鉱業セメント(現三菱マテリアル)入社。執行役常務セメント事業カンパニープレジデントなどを歴任。宇部三菱セメントで取締役東京支店長、常務、代表取締役兼取締役副社長などを兼務した。2022年4月にUBE三菱セメントが営業を開始し代表取締役副社長に就任。神奈川県出身、63歳。




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公取委、中企庁研究会/企業間取引の優越的地位乱用規制について報告書案

 企業間取引の優越的地位の乱用規制について議論してきた公正取引委員会と中小企業庁の「企業取引研究会」(神田秀樹座長)は17日、座長一任の形で報告書案をまとめた。現行法の買いたたきとは別に、下請事業者の利益を不当に害する行為を規制する必要があるとして、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を求めた。会見した神田座長は「法改正は(委員が)ほぼ一致」と話し、「デフレ下の企業取引の商慣行を変える」ことの重要性を強調した=写真。
 研究会は適切な価格転嫁を促し、「デフレ下の企業取引の商慣行を変える問題意識」(神田座長)で、企業間取引を巡る課題を議論してきた。報告書案では、適正価格(フェアプライス)の観念から、下請事業者からの価格協議の申し出に応じなかったり、親事業者が必要な説明を行わなかったりする行為を「新しい行為類型」として例に挙げた。
 下請代金支払では、紙の有価証券の手形を下請法による代金の支払手段とすることを認めず、支払期日までに満額の現金と引き換えるのが難しい手段も認めない考えを示した。下請代金の支払い条件については、下請法が適用されない取引でも手形の廃止や支払サイトを短くする対策が必要と指摘した。その上で、支払サイトを不当に長く設定するような行為は、優越的地位乱用の問題として、独占禁止法の「優越ガイドライン」で考えを示すことを検討するよう求めた。
 下請法の適用を逃れる事案があることで、従業員300人(製造委託など)または100人(役務提供委託など)を軸に同法の適用基準を検討することも求めた。「下請」の用語を改める必要があるとも指摘した。知的財産・ノウハウの取引を適正化するための実態調査を幅広い業種で行うことも提案した。
 下請法の執行に関し、各産業の所管省庁が保有している中小企業庁の措置請求の調査権限に加えて、問題のある行為に対する指導権限の規定も必要とした。
 会見で神田座長は「長年の間に形成された商慣習、慣行を今の時代に合わせないといけない。サプライチェーン(供給網)全体でやる手段として下請法、独占禁止法のガイドライン(の改正、改定)でやろうと考えた」と話した。「(対策を)民間の人に理解していただき、日本経済反転のチャンスに結び付けてほしい」とも求めた。




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京大、鹿島/月面人工重力施設の共同研究開始、5年程度で成立性見極め

 京都大学と鹿島は、月面人工重力居住施設「ルナグラスNEO」の実現可能性を探る共同研究に着手した。月面で人類が長期間安全に生活できる環境を構築するのが目的。18日に同大大学院総合生存学館専攻長の山敷庸亮教授、鹿島イノベーション推進室の大浜大室長、大野琢也宇宙担当部長らが同大吉田キャンパス(京都市左京区)で会見し、研究の意義と内容を説明した。今後5年程度で成立性を見極め、将来的な月面探査や宇宙移住に向けた技術的基盤の確立を目指す。
 ルナグラスNEOは月面での生活環境を地球に近い形で再現するため、遠心力を利用して人工重力を発生させるドーム型の居住施設。高さは約400メートル、直径約200メートルで1分間に3回転する。施設内部には生態系循環システムも設置し、1万人が居住できるという。
 重力不足がもたらす骨密度低下や筋力の衰えといった健康面のリスクを軽減し、長期滞在を実現する技術として注目される。
 回転による人工重力が人体に与える影響を医学的に評価する必要もあり、地球上での技術検証を可能にする過重力施設「ジオグラス」の建設を計画。閉鎖環境での微小生態系の循環を実現する「ミニコアバイオーム」の研究も進める。
 今後の検討課題としては、現地材料の利用など月面環境に適した建設方法の確立を挙げる。具体的には月の表面を覆う砂や岩の破片などの堆積物を活用した建材の開発や、AIを活用した無人施工技術の導入が求められる。極端な温度差や宇宙放射線への対策として、遮へい性や耐久性を備えた素材の選定も重要になる。
 同日の会見で山敷氏は「宇宙空間で持続的に生活するには、生存基盤となる重力環境の再現と宇宙放射線の防御、生態系の循環が欠かせない」との見解を示した。大浜氏は「これまでの基礎的な概念検証の成果が国内外で高く評価された。施設の構造や施工の成立性といった観点から研究をさらに先に進め実現を目指す」と述べた。
 大野氏は「低重力環境に長期間適応すると地球に戻れなくなる可能性があり、それぞれの環境に暮らす人たちの間で分断が生じる恐れがある」と指摘。その上で「この分断を防ぐために人工重力居住施設の構築が不可欠だ」と意義を強調した。




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福岡市/博物館本館改修ROで実施方針、25年4月にWTO入札公告

 福岡市は「福岡市博物館リニューアル事業」のうちRO(改修・運営)方式のPFIで行う本館や駐車場などの改修と、施設全体の維持管理・運営について、実施方針と要求水準書の案を公表した。2025年3月に特定事業に選定し、同4月に総合評価方式の一般競争入札(WTO対象)を公告する。同10月に提案書を締め切り、同11月ごろに落札者を決定・公表する。
 参加資格は、▽設計▽施工▽工事監理▽開館・開業準備▽維持管理・運営-の各業務を担う企業で構成するグループ。
 各担当企業の入札参加資格のうち設計と工事監理は市で土木設計か建築設計、設備設計の入札参加資格があり、1級建築士事務所を1者以上含めることなど。
 施工担当は経営事項審査の総合評定値が建築一式工事900点以上(1者は1100点以上)、電気工事860点以上、管工事820点以上、土木一式工事900点以上で、13年度以降に展示面積1000平方メートル以上の博物館などの施工実績がある者を含めること。
 RO方式で行う福岡市博物館(早良区百道浜、敷地面積5万0648平方メートル)の本館SRC造3階建て延べ1万6920平方メートルの改修では、老朽化した設備の更新や1階の浸水対策の増強、体験学習室の拡充、キッズスペースの設置、文化財の保存・保管機能の増強などを想定している。
 26年2月ごろの事業契約の締結後、設計に着手。本館の休館は同10月ごろを予定している。28年9月まで工事を行い、開業準備を経て29年3月ごろの本館リニューアルオープンを目指している。維持管理・運営期間は44年3月末まで。
 民間負担分を除く公共負担額は約169億3000万円(うち施設改修費約78億5000万円)と試算している。
 同事業では北側ゾーンの収蔵庫棟の増築、南側ゾーンの広場改修は市の直接整備方式で進めるが、整備後の維持・管理運営はPFIの対象に含める。
 実施方針の作成などPFIアドバイザリー業務の担当は三菱UFJリサーチ&コンサルティング。




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2024年12月18日水曜日

回転窓/考・現場のデジタル化

 自動車運転免許の更新で免許センターを訪れると、デジタル化対応がかなり進んでいることに驚いた。ウェブからの来場予約やキャッシュレス決済、事前のオンライン講習など…▼予約が原則となり、初めの手続きをする入り口付近は混雑が目立たなくなったが、対面で手数料を支払う次の窓口には長蛇の列が。「どうせやるならウェブの事前決済も」とつい小言も言いたくなる▼国土交通省の工事事務所と厚生労働省の地方労働局との意見交換で、ある地域建設会社の女性幹部が「DXで働き方が変わってきた」と話した。復職した女性社員がドローンでの起工測量や3D設計で活躍しているという▼初期投資が伴うだけでなく最新機器を使いこなすための研修も必要だが、現場の仕事が効率化されるなど着実に成果が上がっているようだ。働き方改革の推進にもDXは欠かせなくなっている▼免許センターでは予約者の端末が少なく、予約なしの人の方が次の窓口に早く進めていた。建設業界も同様、DX導入の過渡期にはいろいろと課題も出てこよう。あくまで利用者主体のデジタル化でなければ持続的な効果は期待できない。




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東京都/BIM活用し都営住宅建替、円滑導入に向けた体制構築

 東京都はBIMを活用した都営住宅建て替えを円滑に進めるための体制構築に力を入れる。2025年度に都の職員を対象に研修を行い、BIMに関する知識を増やし、理解を深める。設計会社や建設会社などに向け、BIM導入や活用についての基本的な考え方などを示したガイドライン案を24年度内に策定し、25年度に試行する予定だ。
 都住宅政策本部は25年度予算で「公営住宅建設事業等」に771億3百万円を要求した。一部を職員向けのBIM研修費用に充てる。発注者として必要な知識を身に付ける。
 民間事業者に向けたガイドライン案は24年度内に策定する。策定に当たっては都営住宅の建て替え事業を受注した事業者が、設計や工事でどの程度BIMを使ったか調査。都市再生機構など他組織のBIMの導入状況も把握しながら、ガイドラインをまとめる。
 BIMの活用を巡っては、国土交通省が26年春に建築確認でBIM図面審査を始める予定。申請者はBIMソフトウエアで作成した整合性の高い申請図書を、「設計者チェックリスト」やBIMモデルとともに提出。審査者は同チェックリストに基づく項目に関して整合性確認の一部を省略できる。都も26年春ごろにBIMデータを使った建築確認申請を始めたい考えだ。
 25年度の要求額771億3百万円の中には団地の建て替え費用も含まれる。都は現在、主に1960年代後半~70年代前半(昭和40年代)以前に建てた都営住宅を年間3800戸のペースで建て替えている。25年度も同数を建て替える予定だ。




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奈良県/スポーツ拠点施設整備基本計画策定業務プロポ公告、1月14日まで参加受付

 奈良県は、県立橿原公苑(橿原市)に新設する武道場と弓道場、近鉄橿原線の新駅西側に計画するアリーナなどを含めたスポーツ拠点の整備基本計画を策定する。17日に「スポーツ拠点施設整備基本計画策定業務委託」の公募型プロポーザルを公告した。橿原公苑全体の整備の在り方や陸上競技場や野球場など既存施設の改修計画も検討する。2025年1月14日まで参加表明書を受け付ける。企画提案書の提出期限は同1月28日。ヒアリング審査を実施した上で、最優秀提案者を選定する。
 計画では、31年に開催予定の国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会に向けて施設整備を進める。橿原公苑では陸上競技場と野球場、多目的広場を改修するほか、駐車場の増設を予定。武道場は公式大会の開催基準を満たす施設とし、武道以外のスポーツ大会が開けるようにする。
 アリーナは県立医科大学の新キャンパス整備に伴い設置される近鉄橿原線の新駅西側に整備する。アリーナの床面積は2500平方メートル、観客席は5000席を想定し、音楽イベントにも対応する。
 参加資格は単体または2者JV。建設コンサルタント「都市計画及び地方計画」部門で登録し、県内に本店や支店、営業所を置くこと。過去10年以内に国や地方自治体が発注した体育施設整備を含めた国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会に関する基本計画策定業務の履行実績があること。
 25年1月29日にプレゼンテーションとヒアリングを実施し、事業者選定審査会が評価項目に基づいて採点を行う。
 同業務では、橿原公苑全体の整備の在り方として配置計画と動線計画、既存施設のバリアフリー化、駐車場計画、交通計画、防災機能計画などを検討。再生可能エネルギー設備の導入や建物の省エネルギー化の手法などを含めた脱炭素化計画を作成する。武道場と弓道場は施設の機能や規模などを検討する。
 アリーナは機能や規模を整理するほか、収容人数や駐車場計画、交通計画、配置計画、動線計画などを検討し、基本計画を取りまとめる。
 PFIなど民間活力導入可能性調査も行い、最適な手法を検討する。民間事業者の参入意向を把握するため、サウンディング(対話)調査も実施する。事業費の算出や整備スケジュールも検討する。
 履行期間は25年12月26日まで。委託限度額は9240万円(税込み)。




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竹中工務店、鹿島ら/資材自動運搬ロボ共同開発へ、25年4月実用化めざす

 竹中工務店と鹿島、アクティオの3社が、建設現場の資材を自動で運ぶロボットを共同開発している。高層建物の工事現場で、中層部に運ばれた資材を高層部へと自動で運搬。平均10人程度が必要な搬送作業を、ロボット運行者など2人で完了できるようにする。作業員が専門的な作業に従事できる時間を増やし、施工効率を高める。現場で実証を重ね、2025年4月の実用化を目指す。
 ロボットは作業員が少ない休憩時間や夜間の運用を想定する。現場の高層階用と低層階用のエレベーターの乗り換え地点となる中層フロアで待機。低層階から資材が到着すると、作業員が事前に指定したフロアまで自動で運ぶ。7月に大阪市内の建設現場で実証を行い、自動搬送できることを確認した。
 前方270度の物体を検知するセンサーと、建物のBIMデータから作成した走行用地図を基に自律走行する。稼働はバッテリー式。実証実験では、8時間の充電で2日間の夜間作業に対応できたという。周辺の人やモノをレーザーで検知するセンサーを搭載し、走行中の衝突なども防げるようにした。
 運搬可能な最大重量は2000キロ。工事で多く採用される横幅900ミリ、縦幅1800ミリ、厚さ12・5ミリのボード材を50枚まとめて運べる。稼働に必要な人員はロボットに指示を出す運行者とエレベーターオペレーターの2人。運搬作業を省人化することで、足場の組み立てなど専門業務に従事できる作業員を増やす。
 運搬スピードは人が作業する際の半分程度で、今後の改善課題に挙げる。竹中工務店の担当者は「ロボットが戻るまでに資材を用意して待ち時間を減らすなど、運用の工夫でスピードをカバーしたい」と話す。施工ロボットや遠隔操縦技術を共有する「建設RXコンソーシアム」での提案を通じ、実装現場の拡大を目指す。




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日建設計/自然光に近い照明が脳を活性化、中央大学で学修効果を実証

 日建設計が、脳の活性を促す光環境で学修力を引き出す空間創出に注力している。閉鎖空間になりがちな地下空間で自然光に近い照明を生み出す技術を2023年4月に開発し、設計手法を確立。中央大学茗荷谷キャンパス(東京都文京区)に導入し学修効果を検証した結果、実際の自然に近いコントラストを再現。利用者へのアンケートでは照明と気付かない利用者が半数以上いることを確認した。
 天空光模擬照明投光器と直射光模擬投光器で照らすことで自然光に近い光環境を構築。自然光を再現するLED照明と植栽を組み合わせ、樹木のある自然景観としリラックス効果を誘発する。集中力と記憶力向上につながるという。
 同大学の司法試験を目指す学生が利用する地下自習室で効果検証した。学生116人を対象にアンケートした結果、63%の学生が照明と気付かずに太陽光と思っていた。実際に自習室を使う法学部学生は「最初は照明であることに気付かなかった。屋外とつながりを感じられるため閉鎖感がなくリラックスして勉強できている」と話した。
 同社は今後、照明技術を発展させ、都市部に建設されたホテルや病院、介護施設、オフィスなどにも応用。既に複数のプロジェクトで提案しており、エンジニアリング部門環境デザイン室の海宝幸一ダイレクターは「来年からプロジェクトが始まり今後も提案が増えるだろう。脳波の測定も行い、さらなる光環境の設計に生かしたい」と展望する。




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2024年12月17日火曜日

回転窓/次世代の人づくり

 地方を中心に半導体関連の設備投資が活発だ。製造拠点の新設に合わせ、周辺のインフラ整備など関連する建設事業も活況を呈している▼先週、半導体産業を網羅する国際展示会「セミコン・ジャパン2024」が東京ビッグサイトで開かれた。今年のテーマに「半導体の未来がここにある。」を掲げ、国内外の関連企業トップらによる講演のほか、先端技術や最新の取り組み事例などを紹介。今後の産業発展の方向性などを発信した▼ビデオメッセージを寄せた石破茂首相は、半導体産業の立地が進むエリアで中小企業を含めた投資が旺盛な現状を説明。熊本県で1人当たり年間約38万円の雇用者報酬の増加につながるとの試算結果を示し、こうした投資効果を全国的に展開する必要性を強調した▼産業発展と地域活性化は喜ばしいことだが、人材の獲得競争は激化しているよう。新たな雇用の受け皿が創出され、担い手確保の問題は深刻さを増す▼建設業は持続可能な社会を実現する上で欠かせない基幹産業の一つ。処遇改善や働き方改革と合わせ、ものづくりの楽しさを積極的に伝えながら、次世代の人づくりを進めてほしい。




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政府/スモールコンセッションプラットフォーム設立、都内で記念シンポ開く

 政府は16日、小規模なPPP/PFIなど「スモールコンセッション」を推進するための「スモールコンセッションプラットフォーム」を設立した。同日東京都内で設立記念シンポジウムを開き、中野洋昌国土交通相がビデオメッセージで設立を宣言した=写真。スモールコンセッションは事業費10億円未満の小規模な単位で官民連携手法を導入し廃校や空き家、未利用公有地などを有効活用する仕組み。国交省は2024年度補正予算案で初期段階を支援する経費として1億29百万円を新規計上している。
 中野国交相は「石破内閣が掲げる地方創生2・0でもスモールコンセッションを突破口として推進していきたい」と強調。その上で「重要なキーワードは連携。多くの関係者が柔軟な協力関係を結ぶことで地域の元気を実現していく」と力を込めた。内閣府の今井絵理子政務官は「官民が連携した取り組みが日本成長の起爆剤として地方創生の実現に大いに貢献すると期待している」と設立を祝った。
 同プラットフォームの運営委員長を務める根本祐二東洋大学PPP研究センター長は「地方の小規模な案件に官民連携をどうやって導入していくか。スモールコンセッションはこの課題を正面から捉えた手法だ。ぜひ発展させていきたい」と語った。




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岩手県北上市/工学系大学基本構想を年度内に策定、事業費82億円以上

 岩手県北上市が新たな工学系大学「北上市立大学(仮称)」の設置に向けた議論を加速している。23日に開催する基本構想策定委員会(委員長=藤代博之岩手大学名誉教授)第2回会合で運営・組織や開設場所などを検討。建築・土木を含めた専門分野についても協議する。基本理念や養成する人材像を盛り込んだ基本構想を年度内に策定。来年度初頭には設置の可否を判断し、決定を受けた上で2025年度に基本計画の策定に着手する。
 大学の開設で地域企業への人材輩出や若年層流出の抑制、にぎわいの創出などまちづくりの側面からの効果を期待している。学識経験者などで構成する基本構想策定委員会が10月18日に開いた第1回会合で基本理念、養成する人材像、教育の特色などを確認した。2回程度の会合を経て25年3月下旬までに基本構想をまとめる。
 設置場所は市街地再開発エリアを考えている。北上市立大学の定員は80~120人を想定。開学までの校舎整備には国の交付金などを活用しながら約82億~99億円を投資する。開学後の運営で1年当たり学費約3億円、交付税約7億円の収入を見込んでいる。
 機運醸成を図るための各地域や団体への説明会も開催している。11月30日時点で計30回開き延べ1400人が出席した。今後も希望などを受け継続して展開していく。




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大林組ら/冷温水パネルの熱伝導と放射熱を用いた超局所冷暖房開発

 大林組らは、冷温水パネルの熱伝導と放射熱を利用した超局所冷暖房システム「Comfy TOUCH(コンフィタッチ)」を開発した。ベンチなどの家具や床に取り付けた冷温水パネルに、30度程度に温度調節された水(冷温水)を流し、熱伝導と放射熱で冷涼感やぬくもりを得る仕組み。従来型空調に比べ約10%程度の電力消費で、半屋外空間でも快適に過ごせる。新たな空間活用を提案する。
 冷暖房や除加湿などの機器販売やシステム開発を行うピーエス(東京都渋谷区、平山禎久代表取締役)と共同開発した。コンフィタッチは鋼製の冷温水パネルと、木材など異なる素材で構成。冷温水パネルと家具や床と一体化したモジュールで製作する。半屋外空間でも施設内のさまざまな場所で寝転んだり、もたれたりできる空間が構築でき、長時間の滞在を可能にする。
 空間利用者が冷温水パネルに接触や近接して冷涼感や暖かさを体感するため、半屋外空間の従来型空調に比べ局所性やエネルギー効率が高い。パネルに流れる冷温水が30度前後の中温度帯のため、井戸水や地下水といった自然エネルギーを活用しやすい。
 同じ条件の空間にコンフィタッチ適用のベンチ2基と従来型空調1基のランニングコストを比較したところ、消費電力は冷房時に約89%削減し、暖房時に約93%削減する。ランニングコストの抑制を実現する。




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2024年12月16日月曜日

中部整備局/中部縦貫道坊方トンネル(岐阜県高山市)が貫通、施工は安藤ハザマ

 中部地方整備局高山国道事務所が岐阜県高山市で工事を進めていた中部縦貫自動車道坊方トンネルの貫通式が7日、坑内貫通地点付近で開かれた。発注者や施工者、地元関係者ら多数が出席。通り初めや鏡開き、万歳三唱などを行い、事業の節目を祝った。施工は安藤ハザマが担当した。
 貫通の儀では、同社の山根丈作業所長が掘削作業を準備、秒読みし、東佑亮高山国道事務所長や田中明高山市長らが起動スイッチを押した。貫通確認の後、清めの儀や通り初めの儀が行われた。
 あいさつで東所長は「山岳地のトンネル工事では珍しく、発破せずにロードヘッダで地山を削る方法で掘削した。トンネル工事では日本初ともいえる大型掘削機械を遠隔操作する実証実験を行い、先進的な事例となることができた。地域との交流・連携ではロックボルトキャップを設置するイベントなどを開催した。今後の工事も安全・着実に進め、高山清見道路の一日も早い開通を目指す」と力を込めた。
 田中市長は「中部縦貫道の整備は観光や防災で大きな効果が期待できる。地方創生の全国的なモデルとなり、市全体で整備効果を存分に発揮していく」と話した。
 鏡開きなどの後、最後に安藤ハザマの本岡竜執行役員名古屋支店長の音頭で万歳三唱を行い、貫通を祝った。
 坊方トンネルの延長は1422メートル。幅員は9・5メートル。2023年2月1日に掘削を開始し、24年10月24日に上下6ミリ、左右5ミリの精度で貫通した。




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回転窓/湖国を愛した人逝く

 句集『湖国』には静岡・浜名湖を題材としたいくつもの作品が収載されている。〈浜名湖の朝風受けて幟(のぼり)立つ〉〈貝眠る奥浜名湖の良夜かな〉▼作者は中村建設(浜松市)代表取締役会長の中村信吾氏。俳句を長年の趣味とし、これまでに『引佐細江』『澪標(みおつくし)』も含めて3冊の句集を上梓(じょうし)している▼近年は俳句音楽の普及にも熱心に取り組む。音楽に合わせて句を詠むことで、言葉の美しさや奥深さがより豊かに表現できるという▼中村氏が78歳で亡くなった。日本建設業経営協会(日建経)会長を務めるなど業界の発展に向けて尽力し、地元・浜松の地域振興にも貢献してきた人である。何事にも真摯(しんし)に向き合うその人柄は、人や自然への優しいまなざしが感じ取れる多くの俳句からもよく分かる▼物理学者で俳人の有馬朗人氏(故人)は『湖国』に一文を寄せている。「俳句は自然や生活・文化などに触れながら己の気持を素直に詠(うた)うものであるが、同時に句作を通して自らを高めていこうとする姿勢が大切である。中村信吾さんには、こうしたひたむきなものがあふれている」。郷土を愛した中村氏の吟行はきっとまだ続いている。




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凜/和歌山県庁西牟婁振興局建設部建築課・藤田愛さん、やってきたことはつながる

 2008年度に入庁し、現在は出先機関で建築確認申請の審査などを担当している。これまでには再開発や官民連携事業にも関わり、職員派遣では民間企業や、東北地方の被災自治体に赴いた。県職員の魅力は「いろいろなことを幅広く手掛けて、経験を積んだり、つながりを作ったりできること」。今後は経験を生かして空き家問題など、県が抱える課題の解決に貢献したいと意気込む。
 大工だった祖父の影響で建築の道を志し、「地域づくりにつながる根本的な仕事をしてみたい」との思いで県職員を志望した。
 大きく成長できたと振り返るのは、本庁で担当した大規模開発だ。当時は官民連携の複合駅舎整備や、組合施行の再開発が同時に進展。民間企業との協議に何度も臨んだ経験から、「行政として『こうしていきたい』という考えを明確に持たないと、官民連携の取り組みはうまくいかない」との思いを強くした。
 本庁ではハウスメーカーに派遣される機会もあり、まちづくりを民間側から見る視点も養った。東北地方では災害公営住宅の整備を担当。全国から集まっていた派遣職員とのつながりは、今でも宝物になっている。
 県内では人口減少が進み、空き家問題が深刻化している。「今まで個別にいろいろな仕事をしてきたが、やってきたことはつながる」と藤田さん。培った経験や人脈を生かし、「うまく解決できる方法を考えていきたい」と前を向く。
 (ふじた・あい)




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政府/入契法適正化指針と品確法基本方針、変更を閣議決定

 政府は13日、第3次担い手3法を踏まえ公共工事の発注者などが新たに講じる必要がある措置を盛り込んだ、改正公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく「適正化指針」と改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づく「基本方針」の変更を閣議決定した。
 入契法適正化指針の記載事項は公共発注者の努力義務となり、その実施情報を毎年度の実態調査(入契調査)で報告を求めた上で公表する。改正法では特に是正が必要と認められる場合、要請だけでなく「勧告」できることも可能とした。品確法基本方針の記載事項も公共発注者に努力義務が課される。合わせて発注関係事務の共通したルールとなる品確法の「運用指針」の改定作業も進めており、年明けにも策定する。
 いずれも改正建設業法・入契法と改正品確法への具体的な対応と、時間外労働の罰則付き上限規制や業務のデジタル化といった昨今の課題への対応について明記した。
 品確法基本方針では発注者の講じるべき措置として週休2日工事の推進や時間外労働規制に対応した工期設定や猛暑日の考慮、施工時期の平準化に向けた関係部局間連携の強化、地域の実情を踏まえた適切な入札参加条件・規模の設定などを規定する。
 受注者にも現場従事者の能力や経験に応じた適切な処遇確保やICTを活用した生産性の向上などを新たに規定し対応を求める。




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茨城県常総市/大生郷工業団地周辺で産業用地開発を構想、12月から地権者に意向調査

 茨城県常総市が、大生郷工業団地周辺地区を対象とした産業用地開発を構想している。同地区北部の整備を最優先に、国内回帰企業や新規立地企業などを誘致。多機能複合産業拠点の形成を目指す。2030年ごろまでに面的整備を終え、企業誘致を進めたい考え。都市計画課によると、12月から地権者に対し土地利用転換の意向調査などを実施し、結果を基に今後の方針を固めるという。
 同地区は市の西~北西部、鬼怒川の西部に当たる。首都圏中央連絡自動車道(圏央道)が横断しているもののICが整備されておらず、鬼怒川を挟んで東側の常総ICが最寄りとなる。県西部の南北の交通軸となる路線「鬼怒川ふれあい道路(西幹線)」は、一部事業化されているが、同工業団地以北0・9キロと以南3・9キロが未整備となっている。
 市は、同地区の将来像を描いた「大生郷工業団地周辺地区基本構想」を6日に公表した。産業系土地利用の誘導に向けた開発地区の設定や鬼怒川ふれあい道路の整備の在り方、圏央道スマートIC開設の可能性などをまとめた。
 基本構想の中で、▽同工業団地北部地区(33・8ヘクタール)▽同工業団地東部地区(7・6ヘクタール)▽圏央道スマートIC周辺地区(33・4ヘクタール)-の3カ所を産業団地開発地区に設定した。北部地区は3~5ヘクタールの中規模画地を中心に整備し、製造業を集積する。東部地区は新規立地企業の誘致を図る。スマートIC周辺地区は、1~3ヘクタールの小規模画地を整備。中継輸送拠点や次世代基幹物流施設を設けるという。
 今後のロードマップによると、同地区の主要道路となる鬼怒川ふれあい道路は40年ごろの全線開通を想定している。未整備区間の整備促進につなげるため、北部地区の開発を最優先にする。スマートICは30年代半ばごろの開設を目指し、早期事業化を推進していく。東部地区は、北部地区とスマートIC周辺地区の成果や需要動向を踏まえ、事業化を判断するという。




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山梨市、長大ら/社会課題解決へ連携、量子などデジタル技術活用

 長大は山梨県山梨市と、量子などのデジタル技術による社会課題の解決に向け連携する。長大は量子コンピューターで社会課題の解決策や優先順位を導き出して都市全体を最適化する「クオンタムシティ」を構想している。山梨市での取り組みは初弾案件。研究開発や人材育成と組み合わせて地域産業を活性化し、世界への技術輸出を見据えた近未来都市のモデルケースを構築していく。
 両者にデジタル技術導入コンサルティングで強みを持つQテクノロジー(山口県周南市、岡本大社長)を加えた3者が13日、「デジタルを活用した地域活性化に関する包括連携協定」を締結した。▽デジタルを活用した地域活性化▽量子やAIなどによる防・減災の強化とIT教育促進▽空飛ぶクルマなど次世代モビリティ研究▽IT企業などの拠点整備-などで協力する。
 同日に山梨市役所で締結式を開き、高木晴雄山梨市長と長大の野本昌弘社長、岡本社長が協定書を取り交わした。
 野本社長は「長大は山梨県で多くの社会インフラに携わってきた。地域活性化や防災など待ったなしの課題を解決するために、私たちの技術を活用できると思う。魅力あるまちづくりに貢献したい」と話した。岡本社長は「山梨市が世界一の先端都市となるように頑張る」と意気込んだ。高木市長は「先端技術で世の中が大きく動いている。山梨市は時代に先駆けて動きたい」と語った。




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2024年12月13日金曜日

道建協、日本道路/土浦テクノBASE(茨城県土浦市)で中学生対象に職業体験開催

 日本道路建設業協会(道建協、西田義則会長)と日本道路は10、11日、茨城県土浦市にある同社の研究複合施設「日本道路土浦テクノBASE」で、土浦市立土浦第五中学校の生徒を対象に職場体験を行った=写真。2日間で約110人が参加し、特殊機械の乗車やドローン操作、ショールーム・特殊舗装の見学、アスファルト供試体製作の見学などを行った。道建協が主催で職場見学会を開くのは2回目。道路建設業の魅力や社会的役割の発信が目的だという。
 冒頭のあいさつで道建協の中原大磯広報・技術開発部長は「職場体験学習で道路建設に関わる仕事や最新の技術への理解を深め、どのように社会貢献しているのか学んでほしい」と呼び掛けた。日本道路の矢板正光土浦テクノBASE所長は「今日の経験が将来を考えるきっかけになるといい」と語った。
 ドローン体験では、工事現場の測量に使用するドローンを生徒が実際に操縦するなど、楽しみつつ建設業への理解を深めた。安全教育用のVR(仮想現実)では、安全確認不足による事故を疑似体験し、どんな行動が事故につながるか学んだ。
 4月に運用を始めた土浦テクノBASEは、研究施設や研修所、機械センター、ショールームを兼ね備えた複合施設。最新技術や技能を習得する研修の場だけでなく、工法や製品など幅広い情報を発信する拠点にもなっている。




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建築へ/「学士会館」旧館を保存・活用へ、優れた設計や先進性を学ぶ場に

 昭和の名建築である「学士会館」(東京都千代田区)が年内をめどに一時休館となる。同会館を保有する学士会(樺山紘一理事長)が、住友商事と共同で再開発するためだ。同会館は戦前のクラブ建築の傑作として知られ、旧館は曳家して保存・活用される。その魅力や歴史的意義を、近代建築史を専門とする藤岡洋保東京工業大学名誉教授に解説してもらった。
 同会館は、旧帝国大学(国立7大学)出身者の親睦などを目的としたクラブ建築で、集会室や食堂などの大規模空間から娯楽室、宿泊室まで多様な用途が混在する。岡田信一郎(1883~1932年)設計で自前の会館建設のためボーリング工事を予定していた日に関東大震災が起きた。震災復興の区画整理に伴う敷地変更などからコンペとなり、高橋貞太郎(1892~1970年)が設計者に選ばれ、1928年に旧館(SRC造地下1階地上4階建て延べ5700平方メートル)が完成した。
 高橋は、日本橋高島屋や川奈ホテル、帝国ホテル新本館などの名建築を手掛け、ホテル設計の草分け的存在として活躍した。藤岡氏は「高橋は大胆なことができる性格で、学士会館もけれん味のない豪快なデザインだ。間違いなく代表作の一つ」と説明する。
 L字型の敷地を生かす形で、左右非対称に各機能を配置した。1~2階に大空間を集約し、3階を小集会室、4階を宿泊室とすることで、上に行くに従って階高が小さくなり窓の高さも低くなる。「シンプルでありながら秩序が感じられる立面」(藤岡氏)に仕上げた。日本にモダニズムが導入され始めたころで、「過去の建築様式の適用を控え、よりシンプルなデザインにしようとしているあたりに、当時のデザインの特徴がうかがえる」と藤岡氏は解説する。
 外装は、地下部分と地上1階を基壇として扱い、当時の新製品の人造石「富国石」を貼り付けた。アーチ状の正面玄関周りは富国石を周りよりも高く配置し、入り口へと導くように目立たせている。上層は当時流行の茶色のスクラッチ・タイル張り。持ち送りの側面だけに装飾を施し、それ以外は平滑な面で、1階エレベーター脇の柱にはパネル状の人造石を鋲(びょう)止めしたデザインとした。旧談話室(現・食堂)の暖炉など内部空間も魅力的だ。
 藤岡氏は「デザインだけではなく、技術的にも高く評価される」と指摘する。耐震構造などの先駆者だった佐野利器(1880~1956年)が監修しており、旧館の柱のほとんどにH形鋼を採用した。
 H形鋼の国産は1961年からであり、当時としては革新的だった。「2階の大集会室や大食堂の幅をできるだけ大きくするために、米国からH形鋼を輸入して全面的に取り入れた。建築技術史の面からも注目すべき事例だ」(藤岡氏)。
 地下には松杭を密に打って地盤を固めている。最先端技術があってこそ、現役の建物として生き続けている。
 利用者の増加などを踏まえ、37年には藤村朗(1887~1953年)の設計で新館(SRC造地下1階地上5階建て延べ3637平方メートル)が増築されている。藤村はより堅実なデザインを取り入れた。藤岡氏は「設計者は本音の勝負が大事。テイストが違うのは当然だ」と話す。新館は、再開発に伴い解体される。
 「旧館は高橋作品だが、それは1人ではなくある集団を指している」と藤岡氏は言う。高橋は有能な部下に仕事を任せることで名建築を作り上げていった。かつては施主側も含めて、伸び伸びと仕事をさせるリーダーが多かった。藤岡氏は「今の世の中はルールが整いすぎ、制約が多くなって、冒険がやりにくくなっているのではないか」と指摘する。
 安全や品質確保の重要性は十分に理解しつつも、「鷹揚(おうよう)さがなければ社会は萎縮してしまう。設計者がもっと腕を振るえる社会環境が望ましい」との思いがよぎる。旧館には、時代に即した挑戦を追求した熱意の痕跡がある。「現場を見なければ分からないことがある。時代背景や設計趣旨を理解した上で、旧館から学べることが多い。これからも多くの人に見てほしい」と期待を込める。




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回転窓/未来を見据えた論戦を

 経団連が9日、2040年を見据えた提言を発表した。成長と分配の好循環を生み出し、公正・公平で持続可能な社会を目指す方向だ▼富裕層への増税の徹底などによる税・社会保障一体改革が必要だとした。バーチャルも活用しながら広域連携を進める「新たな道州圏域構想」や、文系と理系が分断される教育からの脱却など大胆な提案も盛り込んでいる▼災害の頻発化・激甚化にも言及し、日本が亜熱帯化している前提で、将来の災害に備えるべきだと指摘。地元に愛着を持つ住民に配慮しつつも、リスクに応じた居住誘導を進めるような立地適正化も掲げた▼24年度補正予算案が国会で議論されている。石破政権で初めてとなる総合経済対策が柱。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の5年目分などが盛り込まれている。速やかな成立と迅速な実行を期待したい▼ただ補正予算では本当の意味で継続的な施策は難しい。国土強靱化への実行力あるプランや、希望を持てる国にするためのグランドデザインが今こそ必要。揚げ足取りではなく、未来への提案力を競い合う真剣勝負の論戦を繰り広げてほしい。




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東京都/埠頭の強化・新規整備を推進、24年度内に経営戦略策定

 東京都は埠頭の機能強化や新規整備などを戦略的に進めるため、2024年度内に東京港の経営戦略を策定する。社会環境が急激に変化する中、AIを含め先端技術も使った施策を展開。DXや脱炭素化を推し進める。環境への配慮や物流の効率化を前面に打ち出し、世界の荷主から選ばれる港を目指す。
 経営戦略には50年の東京港の姿と、その実現に向けた方策などを盛り込む。詳細な内容や戦略の期間などは今後固める。
 東京港の貿易額は国内最大で、国内のコンテナ貨物の4分の1を扱っている。人口減少や気候変動が急速に進む中、今後も国際物流拠点として国民生活を支えるため、先端技術を使い、港の機能を高める。
 経営戦略では、コンテナ貨物を運ぶ車両による交通渋滞も重点課題の一つに位置付ける。
 おおむね10年先の港湾施設の規模や配置などを定めた「東京港第9次改訂港湾計画」(23年策定)では、33~37年に外貿(日本と外国の貿易)6320万トン、内貿(日本国内の海上輸送)4580万トンの計1億0900万トンと想定。貨物量の増加が続く見通しだ。
 季節や時間によって一部のコンテナターミナル周辺で発生するトラック渋滞は長年の課題だ。場合によっては莫大(ばくだい)な経済的損失の原因にもなる。加えて、港湾や物流の現場で担い手不足が深刻化する中、物流の停滞がより深刻化するおそれもある。コンテナ物流の円滑化を図り、現場で働く人が快適に働ける環境も整える。
 東京港のDX化を巡って都は現在、港湾や海岸などの情報を一元化する「東京みなとDX」を推進中。通常業務の生産性を高めるとともに、災害時の対応の迅速化を図る。25年度にシステムの運用開始を目指している。




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国交省・沓掛敏夫官房技術審議官/直轄現場で課題解決し成長促す

 国土交通省の沓掛敏夫官房技術審議官が日刊建設工業新聞など専門紙各社の取材に応じた=写真。国交省の力の源泉は「現場力」と話し、直轄現場を共に担う建設業者と目線を合わせ事業を推進する考えを示した。建設業を若年層などに選ばれるような持続可能な産業とするため、直轄現場は課題解決の最前線として「範を示していく役割がある」。現場作業などのICT化も先導し「(建設業者の)成長力を付けるようなことにも取り組みたい」と話した。
 7月の就任以降、全国各地を回り建設業者の生の声を聞いてきた。地域ごとに抱える課題の多様さにも触れたが「共通して聞こえてきたのは担い手不足」と指摘した。現場従事者の処遇改善や働き方改革を促進する第3次担い手3法の具体化に注力。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)の「運用指針」を年明けにも策定し「(地方自治体などの)発注者に周知し、何をどう変えていけばいいか分かってもらうよう取り組む」。
 直轄工事では土日休みの完全週休2日の実現を目指す。季節ごとの気候条件や多様な現場条件に応じた休日の取り方に対応する必要性を認識しつつも「まずは次世代の担い手などに他産業と同じく週休2日が『できる』と示す段階だ」と強調。その次のステップとして働き方のバリエーションを増やしていく方向を提案した。
 現場のICT化は4月公表のi-Construction2・0を踏まえ先進的な取り組みを後押しする一方、「やりたいけれど、どうしたらいいか分からない会社もいる。身軽に便利さを感じられるなどレベルに応じたICTがある。きめ細かに対応し(業界)全体がICTに向かっていってほしい」と底上げを志向。生産性向上に限らず、省人化や安全・品質向上、働き方の多様化や新たな働き手の呼び込みなどにつながるICTの可能性を訴え、一歩を踏み出す建設業者らを支える仕組みをつくっていく。




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国交省/直轄工事・業務のWLB認定加点、25年度にも全案件に拡大

 国土交通省は直轄工事・業務の入札時にワーク・ライフ・バランス(WLB)関連の認定取得企業を加点評価する措置を2025年度にも全面展開する。総合評価方式と企画競争方式(プロポーザル方式を含む)を活用するすべての発注案件で運用を開始する予定。18年度の導入以降、規模の大きな工事から段階的に適用対象を拡大しており、その最終ステップとなる。
 加点評価の仕組みは16年施行の女性活躍推進法を踏まえ導入。▽女性活躍推進法に基づく「えるぼし認定」▽次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」▽若者雇用促進法に基づく「ユースエール認定」-のいずれかを取得している企業に対し1点加算を標準としている。各認定制度の段階・ランクに関係なく、加点幅は一律に設定している。
 直轄工事・業務では当初、一般土木、建築のA等級工事の一部に限って適用。24年1月には加点対象を一般土木、建築のA・B等級工事まで拡大した。その1年後を目安に全案件での導入を目指す方針をあらかじめアナウンスし、業界団体を通じ建設会社に認定取得の準備を推進するよう働き掛けてきた。
 既に建設業団体や学識者が参加する会合で、加点措置の全面展開について説明している。参加者からは、各認定の取得に時間を要するため、実際の運用までのスケジュールを早めに示すよう要望があった。地方の中小建設会社にとって認定取得のハードルが高いことを懸念する声もあった。例えばB等級工事でC等級の企業の入札参加を認める「B+C」ではB等級の企業に有利に働く可能性がある。国交省はこうした点も踏まえ、配点の在り方などを検討していく考えを示す。




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水道事業、官民連携の動き活発化/ウオーターPPPなど自治体の関心高まる

 上水道・下水道・工業用水道分野の官民連携に関する地方自治体の関心が一段と大きくなってきた。国土交通省によると、多くの団体が施設の更新・耐震化を課題と捉え、官民連携を軸に対策の検討が必要と考えているという。広域化、DX、AM(アセットマネジメント)などへの関心も高い。国庫補助の要件見直しもあって、上下水道施設などの維持管理や修繕、更新を一体的に民間に委ねるウオーターPPPに前向きな自治体が増えている。
 水道関係の事業者は、老朽化や料金収入などさまざまな課題と向き合っている。経営の効率化や技術者不足といった課題にも対応する必要がある。下水処理場であれば、点検・操作といった管理業務は9割以上が民間委託され、複数の業務を複数年委託する包括的民間委託が増加している。ウオーターPPPをはじめPFI法に基づくコンセッション(公共施設運営権)事業が広がりつつある。
 自治体の関心は、更新・耐震化、管路・機器の維持管理、DX、広域連携・広域化、AMに向けられている。官民連携の取り組みとして、ウオーターPPPを検討する自治体は多く、導入可能性調査に着手した団体が複数ある。長野県茅野市は2025年度に同調査を実施する予定。岐阜県のように流域関連の公共下水道と一体で検討したり、県内の市町村が単独、近隣とで導入の検討に着手していたりする地域がある。
 地域連携の動きも活発化する見通し。岐阜県内は東濃地域の複数の市が官民連携の可能性を模索中。鳥取県内は、県管理の流域下水道事業と5自治体が25年度に導入可能性調査を行う予定だ。東京都武蔵村山市は、契約手法の検討に入っている。
 水道では官民連携の導入調査や検討、計画作成を支援する国交省の官民連携等基盤強化推進事業の採択が27年度までとなっている。下水道は汚水管改築の国費支援が、緊急輸送道路に埋設された管の耐震化を除いて、ウオーターPPPの導入決定が27年度以降に要件化される。工業用水道も経済産業省が一定規模の事業の場合、28年度からウオーターPPPの導入を補助金採択の要件にする。
 こうした状況から自治体やインフラ管理者によるウオーターPPPの事業化は「2、3年でさらに増える」(国交省幹部)とみられている。




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横浜市/新たな図書館整備へ延べ1万~2万平米規模想定、25年度に建設地など検討

 横浜市は新たな大型図書館を建設する方針だ。既存施設の老朽化対策や閲覧席拡充、デジタル対応などが目的。従来の市立図書館の枠組みを再構築し、市民サービスの向上を図る。立地場所や規模などは2025年度に検討する予定だが、現中央図書館(中区)と同程度の延べ1万~2万平方メートル規模を想定。建設地は市内全域からの交通アクセスやまちづくりの観点などを踏まえて検討する。図書館と取次所間の図書輸送量の増加などから、新たな図書館では物流センター機能の強化も視野に入れている。
 12日の市議会こども青少年・教育委員会で「今後の市立図書館再整備の方向性」を報告した。当面10年程度の間に進める市立図書館全体の再整備の基本的方向性を示している。
 現在、市立図書館が抱える課題として▽施設の老朽化▽インクルーシブやデジタル対応の遅れ▽デジタルを活用した新機能導入が困難▽書庫収容量が逼迫(ひっぱく)し市民1人当たりの蔵書保有量が他の政令市と比較し少ない▽各館の物流スペースの狭隘(きょうあい)化-などを指摘。従来の図書館全体の枠組みを再構築し、デジタル技術などを生かしながら、市民サービスの充実とアクセス性向上を図る。
 従来の中央図書館1館と17地域館で一律のサービスを提供する体制から、提供機能を分担する体制に変更する。今後は1区1館を基本とし、現中央図書館は全体の司令塔としつつ、新たな大型図書館を新設する。地域館の老朽化対策は周辺エリアのまちづくりなどの進捗を踏まえて実施する。短期的対応として、再整備とは別に快適空間を目指したリノベーションを行う。
 具体的には現中央図書館(延べ約2万平方メートル)を司令塔とし、地域館は周辺の状況に応じて延べ約3000平方メートル規模の地域館と、延べ約5000平方メートル規模の地域館(中規模)として再整備する。新たな図書館は「教育都市横浜」の知の拠点と位置付け、図書も含めた多様なメディアに対応可能とする。利用者同士の交流や創造・発信拠点、物流センター、居心地の良さなどの機能を備えた先進的図書館像を描いている。




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鴻池組、イクシス/RC橋脚耐震補強の表面処理工をロボットで自動化

 鴻池組とイクシスは、RC橋脚の耐震補強(RC巻き立て)に伴う表面処理工(バキュームブラスト)が自動化できるロボットを開発した。エアシリンダー(空圧)により橋脚に把持し、橋脚壁面をタイヤで自律走行しながら自動研掃する。足場が不要になり、通常2人で行う研掃作業をロボット1台で代替できるため、省人化や苦渋作業軽減、安全性の向上が期待できる。11、12日に大阪府岸和田市の鴻池組岸和田機材センターで公開試験を行った。
 矩形(くけい)断面のRC橋脚を対象とし、現時点では橋軸方向1~3メートル、橋軸直角方向2~6メートル、橋脚高さ15メートルまでの範囲に適用できる。
 ロボットの総重量は約800キロ。研掃ユニットと昇降ユニットで構成する。昇降ユニットは可変式で、フレームのパーツを組み替えることで幅広い寸法に対応。昇降機構(駆動輪モジュール)や押し付け機構、落下防止機構を備える。複数箇所に設置したセンサーやカメラから得た情報をフィードバックし、装置全体を自律的に稼働させる。
 研掃ユニットは上下、水平、前後の3軸移動機構を搭載。フレームと一体化した走行レールに沿って毎秒60~80ミリの速度で自律的に水平移動する。ブラストカップを壁面に密着させることで、研掃材の漏れや粉じんの飛散を防ぐ。
 ブラストガンの大型化や橋脚の2面同時研掃により、1日当たり160平方メートル以上の施工が可能。通常のバキュームブラスト工法に比べ生産性が2倍以上向上する。
 公開試験では最大適用可能寸法の橋脚を模したボックスカルバートの試験体(3メートル×6メートル、高さ4・5メートル)に装置を設置。壁面を昇降させながら前後両面を精度良く自律研掃できることを確認した。2025年度以降に現場適用を目指す。
 鴻池組の先森昭博土木事業総轄本部技術本部長は「より現場のニーズに合った技術へと磨きをかけていく」と話し、橋梁以外の耐震補強や鋼製構造物の塗膜除去工、維持管理分野への適用拡大も視野に、装置の改良を検討していく考えだ。




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2024年12月12日木曜日

回転窓/しばらく使われない空間

 リニア中央新幹線のトンネル工事を前に静岡県内で進められていたボーリング調査がいったん中断となった。山梨県内の地質がもろい箇所で調査のための穴が土でふさがり継続が困難に。静岡工区の進展を待ちたい▼リニアは2027年に開業予定だったが、JR東海が今年3月に延期を表明した。開業は34年以降にずれ込む見通しだが、「開業までの猶予ができた」と新駅周辺のまちづくりを加速させるなど前向きにとらえる自治体は少なくないようだ▼神奈川県と相模原市、JR東海の3者が先月、同市緑区で建設中の神奈川県駅(仮称)でイベントを開いた。新駅の広さは長さ約680メートル、最大幅約50メートルで大半が掘削済み。2日間で約6000人が来場したという▼深さ約30メートルの地下トンネルで歌手の河村隆一さんが歌声を披露。掘削先端部ではリニアをテーマにプロジェクションマッピングも上映され、参加者には思い出深いイベントになったろう▼建設現場の状況は日々変わっていく。開業延期でしばらく使われない空間があるとしたら、リニア事業や建設工事への理解を深めてもらう絶好の場になるかもしれない。




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東京都/生活道路拡幅の助成拡充検討、能登半島地震踏まえ木密対策強化

 東京都は木造住宅密集(木密)地域の生活道路拡幅や、防災機能を備えた公園整備に対する区市町村などへの助成拡大を検討している。1月の能登半島地震では、石川県輪島市の木密地域で大規模火災が発生。狭隘(きょうあい)道路の閉塞(へいそく)などが原因だったという。輪島市での教訓を踏まえ木密対策を強化。検討結果は2024年度末に改定する「防災都市づくり推進計画」の「基本方針」に反映する。
 都は現在、木密解消に向け「東京都木造住宅密集地域整備事業」などを展開。区市町村に対し、老朽建築物の建て替えを促すとともに、道路・公園など公共施設の整備をサポートしている。
 防災都市づくり推進計画の改定に向け、都はデジタル技術を使った情報発信も検討している。震災に対する地域の危険度のほか、道路整備による空地の確保状況などを地元区や住民などに伝える。地域の現況を理解することで、都を含めた行政と地元住民との連携を強化し、木密解消につなげる。
 防災都市づくり推進計画は、延焼遮断帯の形成のほか緊急輸送道路の機能確保など、都市構造の改善に関する施策推進を目的に策定されている。「基本方針」と「整備プログラム」で構成。基本方針は、防災都市づくりに関する施策の指針や目標を提示している。
 整備プログラム(20年度末改定)では、不燃化対象地域を「木密地域」「整備地域」「重点整備地域」の3層構造に分け、地域ごとに対策を提示している。




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清水建設/熊本県人吉市で国内初の地域医療連携組織実現へ、コンサル業務も展開

 清水建設は11日、熊本県の人吉球磨地域で地域医療連携組織の組成を目指すと発表した。産官学29機関の協力を得て、地震と台風の複合災害を想定した地域災害医療連携訓練を実施しており、訓練で得られた知見を生かしていく。地域医療連携組織の組成が実現すれば国内初となる。洪水浸水想定区域の災害拠点病院を足掛かりに、地域レベルの医療連携の実現に向けたコンサルティングも展開していく。
 同社は人吉医療センターと共同で、医療や建築、土木の知見を融合した球磨川の氾濫に備えるためのタイムライン防災計画の検討を進めていた。2023年10月からは、熊本県人吉保健所と医療連携の在り方などを協議。同保健所が呼びかけ、今年3月に産官学の検討会を立ち上げていた。
 16の医療関連機関が参加した訓練を10月20日に人吉市で実施しており、今月11日には振り返り会合を行った。保健所や複数の病院間で情報共有するグループトークシステムや、広域災害救急医療情報システム「EMIS」の有効性などを再認識した。
 同センターは地域の拠点病院だが、2020年7月豪雨で浸水被害を受けた。そうした状況下で、水害発生後2日間に平時の10倍となる62人の救急搬送を受け入れ、院内リソースが著しく逼迫(ひっぱく)した。地域レベルで組織的な医療連携を実践するための仕組みづくりが課題となっている。
 同社は、水害に強い病院建築の提案や、自社開発の災害時医療事業継続支援システム「MCP」の提供などにも取り組み、地域医療の高度化を後押しする。




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東京都/オリンピック記念宿舎(渋谷区)を建替、25年1月に着工

 東京都は代々木公園(渋谷区)にあるオリンピック記念宿舎の建て替え工事を2025年1月に着手する。新たな記念宿舎の規模は既存とほぼ同じ平屋約120平方メートル。現在、建物内には人が入れないが、建て替え後は中に入ってくつろげる空間を設ける。記念宿舎周辺にある園路や広場も改修し、来園者が楽しめるエリアを創出する。
 記念宿舎は築70年以上が経過し、内外装ともに劣化が進んでいた。新たな建物は木造で現在の外観デザインを継承する。内部にはカフェなどを入れる計画だ。
 記念宿舎に通じる園路には照明設備を設置する。近くにある「見本園」も改修。現存する記念樹木を生かし、来園者が憩えるベンチなどを備えた広場空間に刷新する。
 工事は記念宿舎の建て替えから着手し、その後周辺エリアへと展開する。利用開始は26年3月を予定している。
 今回の工事は「都立公園リフレッシュプロジェクト」の一環。誰もが使いやすく楽しめるよう公園をリニューアルする。対象は代々木公園のほか小金井公園(小金井市)など約10カ所で、期間は10年間。エントランスや園路広場などまとまったエリアを改修する。




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2024年12月11日水曜日

JIA建築家大会/重松象平氏が講演、「Open-ended」キーワードに

 日本建築家協会(JIA、佐藤尚巳会長)が11月29日に大分県別府市内で開いた「JIA建築家大会2024別府」で、建築家の重松象平氏(OMAパートナー兼ニューヨーク事務所代表、九州大学大学院人間環境学研究院教授)が基調講演した=写真。テーマは「Open-ended Architecture」。Open-endedをキーワードに、建築と都市の関係性や今後の在り方について語った。
 1973年生まれの重松氏は九大工学部建築学科を卒業し、98年からオランダ出身の建築家レム・コールハース氏が率いる建築設計事務所「OMA」に所属。中国・北京で「中央電視台本社ビル」(2008年竣工)の建設プロジェクトを指揮した。複雑な形状でアイコニックな建築を担当した重松氏は「右肩下がりの日本経済で育ってきたので近代化の高揚感を知らなかった。当時(00~10年代)の中国で高揚感を体験できた」と振り返った。
 08年にOMAパートナーに就任。世界各地でさまざまなプロジェクトを手掛けるとともに、米ハーバード大学や米コロンビア大学などで教育にも従事してきた。こうした経験を通じて「最近は『Open-ended』という限定しない建築、空間に興味を持っている」と話した。
 建築デザインを手掛けた「虎ノ門ヒルズステーションタワー」(東京都港区、23年竣工)を「アクティビティーを吸い込み、つなげることに特化したタワー」と紹介。さまざまに用意したつなげる仕掛けを解説しながら、「『集まる』に注目している。集まるための空間で集まるのではなく、そう意図されていない空間にみんなが集まる。それは都市的な建築の使い方だと思う。集まることで場をつくる。人間主導で集まることが面白い」と述べた。
 最近懸念している一例として公園を挙げ、「公園は緑があり、ぼーっとゆっくりできる所だと思う。ニューヨークのある公園では今、民間のプログラマーが入り年間1000人以上が集まるイベントをやっている。悪いことではないが、公園が建築のようになり始めている」と指摘した。
 重松氏は「建築は高度に洗練され、逆に都市は自由で制御されない」と定義。その上でタワーと公園の事例を踏まえ「『都市が建築化している』と言えるし、『建築が都市化している』とも言える」と持論を展開した。
 ニューヨーク州北西部にある「バッファローAKG美術館」(1862年創設)の増設・リノベーションプロジェクト(23年竣工)を紹介。「美術館の役割がギャラリーだけでなく、コミュニティーエンゲージメントへと拡張している。ギャラリーという洗練された機能をきちんとつくりつつ、自発的、都市的な行為が行われる所を建築家として見つけていく」との考え方を示した。
 Open-endedの方向性について「限定されていない空間を建築家として見つけていくべきだ。都市がここまで制御(建築化)されてくると、建築が逆に都市的な部分を残していくべきではないか」と締めくくった。




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回転窓/安定した経営環境を

 韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による「非常戒厳」宣言後、政治の混乱が続いている。軍が国会議事堂に突入する異常事態を招いた責任は大きいと言えよう▼隣国の動向は日本にも負の影響をもたらしかねない。東アジアの安全保障環境が厳しさを増す中、米国第一主義を掲げるトランプ米政権の再登板も控え、日米韓3カ国連携の抑止力低下が懸念される▼野党が過半数を占める「ねじれ状態」の韓国議会。10月の衆院選で与党が過半数割れした日本も、来夏に予定される参院選の結果次第では政治の不透明感が高まる恐れもある▼2024年も残り20日間となった。本社は年末進行のまっただ中で、恒例の新春企画で企業トップへのインタビュー取材が増えている。多忙な師走の合間を縫って取材に応じていただけるのは本当にありがたい▼多くのトップが不安材料として指摘するのが世界的な地政学リスク。建設資材は原材料の多くを輸入に頼っており、リスクが顕在化すれば建設業の経営にも多大な影響が及ぶ。大きな混乱など生じず、各社が培った技術力やノウハウを安定した環境で発揮できるよう願う。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169679
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土木学会、建築学会/タスクフォース進捗で会見、議論の深まり確認

 土木学会(佐々木葉会長)、日本建築学会(竹内徹会長)の両学会幹部は9日、東京都内で会見した。2021年に設置した土木・建築タスクフォース(TF)の取り組みについて、竹内会長は「互いの分野への理解が一段と深まった」と強調。さまざまな課題への議論も進んでおり、「共通課題に向けてさらにTFの取り組みを進めていきたい」と成果を報告した。
 両学会は21年に協力に関する覚書(MOU)を交換。TFの下にワーキンググループ(WG)を設置して複数の分野で議論し、毎年活動内容を報告している。同日に「第3回合同シンポジウム 土木・建築 連携の深化を求めて」を開催。総括会見には竹内会長のほか、TF委員長を務める今村文彦(土木学会副会長)、広田直行(建築学会副会長)両氏らが出席した。
 竹内会長はTFの方向性について「土木と建築はそれぞれに攻める分野が公共や民間と異なったり、逆に共通するところもある。共同でできる点で足並みをそろえるのが理想的な目標だ」と展望した。25年度以降の課題について広田委員長は「例えば構造設計基本WGでは両学会の技術的可能性の課題が明らかになり、意見交換では生成AIの方向性も課題として浮上した」と述べた。
 竹内会長はアンケートWGが報告した若い世代の海外志向の低下傾向にも言及。「海外から働き手を積極的に受け入れるのも一つの交流になる。ダイバーシティーを確保し、海外からの人材導入は日本人の働き手の意識改革を進める上で大きなテーマだ」と意欲を見せた。今村委員長は「グローバルは課題の一つ。ダイバーシティーも柱に検討していきたい」との考えを示した。




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愛知県/名古屋三河道路(西知多道路~名豊道路)概略ルート固まる

 愛知県は9日、第3回名古屋三河道路有識者委員会を名古屋市内で開いた。優先整備区間に位置付けた名古屋三河道路(西知多道路~名豊道路区間)の第3回構想段階評価を行い、同委員会は3ルート帯案のうち南側ルートが最も優位とする対応方針案を了承した。県は今後、対応方針の決定に向け計画段階環境配慮書の手続きを進める。
 名古屋三河道路は知多地域や西三河地域を東西に貫く高規格道路。このうち、西知多道路から国道23号名豊道路までが優先整備区間に位置付けられ、西知多道路の長浦IC付近~名豊道路高棚北IC付近の区間について県が概略ルートや構造の検討を進めている。
 3ルート帯案のうち、A案は北側を最短で結ぶ新たな自動車専用道ルート。延長は約19キロ。概算事業費は約3200億~3800億円。B案は南側を通過し沿線地域の工場などへのアクセスも考慮した新たな自動車専用道ルート。延長は約20キロ。概算事業費は約3100億~3700億円。C案は既存道路の車線数増などで機能を強化する現道活用案。延長は約23キロ。概算事業費は約2300億~2800億円で3案中最も低い。
 県は、物流の効率化や渋滞緩和、安全面、防災面、環境面などさまざまな観点から各案を比較検討した結果、名古屋港や中部国際空港への速達性と定時性が向上し、沿線の生産拠点や防災拠点などへのアクセス性に優れる南側ルート案が最も優位と判断した。構造は盛り土構造と高架構造が主となる見込み。JCTは3カ所、ICは6カ所程度に設置する考え。




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大林組ら/バイオ燃料を建設現場で実証、調達~メンテナンスのプロセス検証

 大林組らは、廃食油や廃動植物油などを原料とするバイオ燃料「リニューアブルディーゼル(RD)」を一部の建設現場で使用する実証実験を11月に始めた。出光興産が海外から調達したRDを油圧ショベルの燃料として活用し、機械のメンテナンスやコストなどを調べる。燃料の調達から供給、運用、メンテナンスまでのプロセスも検証する。
 出光興産、松林(京都府宮津市、松林威寿社長)の2社と共同で実施している。出光興産が欧州の安全規格「EN規格」に適合したRDを海外から調達。松林が大林組の建設現場まで運び、軽油の代替燃料として使用している。
 RDの使用期間や導入する工事現場などは明らかにしていない。大林組は実証を通じて、RDの使用による建機への影響などを調査する。出光興産は結果を基に、RDを「出光リニューアブルディーゼル(IRD)」として2025年から販売する。
 大林組は50年カーボンニュートラル(CN)の実現に向け、低炭素型燃料の活用に力を入れている。大阪・関西万博の建設工事では、建設機械の燃料に100%バイオディーゼル燃料やRDを使用した実証実験を実施。建機の運用上で大きな影響はなかったという。
 大林組の担当者は「低炭素型燃料の使用は最初の一歩の段階にあり、さらに踏み出していくことが重要だ。パートナーと連携しながら取り組んでいきたい」と話した。




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五洋建設/790億円投じ洋上風力建設作業船を建造、保有へ子会社も設立

 五洋建設は総額約790億円を投じて、洋上風力建設に使用する自航式大型起重機船(HLV)と自航式ケーブル敷設船(CLV)を建造する。10日に開いた取締役会で決めた。今後見込まれる15メガ~20メガワットクラス風車の基礎(モノパイル)を安全かつ効率的に施工するため、HLVに世界最大級の5000トンつり全旋回式クレーンを搭載。世界最大級となるCLVで風車建設工事から電力ケーブル敷設工事へと事業を拡大する。一般海域や排他的経済水域(EEZ)の洋上風力建設を見据える。
 HLVは一般海域のプロジェクトで風車の大型化に伴うモノパイル重量の増加や、SEP(自己昇降式作業台)船での基礎施工が困難になることを見込んで建造する。2028年3月の完成を目指す。
 CLVは着床式・浮体式洋上風力、海底直流送電の電力ケーブルの敷設工事での稼働を予定する。5000トン×2基(合計1万トン)の電力ケーブルタンクを搭載し、大型ウインドファームに対応する。気象・海象条件の厳しい外洋でも効率よく安全にケーブルを敷設できる。最新型のトレンチャー(埋設機)とワークROV(遠隔操作無人探査機)も搭載し、ケーブル埋設作業を効率よく行う。28年2月の完成を予定し、同年度上期に稼働させたい考え。
 五洋建設は両船の保有に当たり子会社も設立する。HLVとCLVは子会社と芙蓉総合リースの共同保有で、CLV搭載のトレンチャーとROVは子会社と小島組の共同保有となる。CLVの運航は小島組に運航管理を委託する予定だ。
 HLVの建造費約1200億円のうち五洋建設は約600億円を投資。CLVは本体約310億円に、トレンチャーとワークROV約55億円を加えて約365億円となり、五洋建設は約190億円を投資する。




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2024年12月10日火曜日

水機構/利根川河口堰大規模地震対策事業着手式開く、関係者らがくす玉開披

 水資源機構(金尾健司理事長)は7日、「利根川河口堰大規模地震対策事業着手式」を千葉県東庄町の東庄公民館で開いた。同機構や国、地元関係者ら約100人が集まり、くす玉開披で待望の事業着手を喜んだ。完成から50年以上が経過し老朽化している同河口堰の機能を維持しつつ耐震化工事を行う。事業期間は2038年度までの15年間。総事業費は約550億円を見込む。
 式典で金尾理事長は「職員一丸となり、DX活用により作業の生産性向上、効率化・省力化、高い品質確保を達成し、一日も早い事業効果の発現に向け、安全かつ確実に事業を進めていく」と語った。
 来賓としてあいさつした熊谷俊人千葉県知事は「利根川河口堰の耐震化は、災害から県民の生命財産を守り、社会の重要な機能を維持する重要な取り組み。大変ありがたく思っている」と期待を込めた。国土交通省の藤巻浩之水管理・国土保全局長は「利根川河口堰が半世紀以上にわたり地域を支え続けてきたのは偉大なことだ。国交省としても耐震工事の伴走支援に全力で尽くしていきたい」と述べた。
 利根川河口堰は1971年の完成。東庄町と茨城県神栖市にまたがる利根川最下流部に位置し、海水の逆流による塩害防止や上流の各取水施設を通じた水供給の役割を担ってきた。ただ河床洗掘の進行や躯体・ゲート設備の劣化で、想定される首都直下地震により機能喪失の危険性があったため、24年度に大規模地震対策に着手した。




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回転窓/勝利の美酒

 年末年始は仕事の付き合いやプライベートで何かと酒宴の席が増える方は多かろう。酒の種類も飲み方も多様化が進み、最近はアルコールが苦手な人向けの低アルコール飲料の商品も豊富だ▼昔から国内で生産されてきた清酒(日本酒)や焼酎などの「和酒」のほか、明治以後に実用的な生産が開始されたビール、ワイン、ウイスキーなどの「洋酒」を含め、国内の酒造業は多角化を進めてきた。その一方、成人の飲酒人口は減り続けている▼酒類業の所管官庁である国税庁がまとめた「酒レポート」によると、少子高齢化や人口減少、消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化などから、国内市場は全体として縮小傾向にある。社会構造的な要因が大きいため、今後も酒類の国内消費量が大きく増えることは見込みにくい▼先週、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に日本の「伝統的酒造り」の登録が決まった。製造・販売関係者にとっては吉報だろう▼勝利の美酒に酔いたいところだが、酒造りも担い手不足が深刻なよう。技術継承などの問題・課題を乗り越え、これからもおいしいお酒を造り続けてほしい。




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国交省/「立適プラス」、立地適正化計画の実効性向上策公表

 国土交通省は都市機能の誘導を図る立地適正化計画の実効性向上に向けた方策・取り組みを公表した。計画作成や取り組みの裾野拡大と、適切な見直しの推進の二つの方向性を提示。まちづくり施策を統一的に評価する「まちづくりの健康診断」制度の確立や広域連携の推進、データ整備・標準化、制度・効果の理解醸成などに取り組む。都市機能の集約や接続を進める「コンパクト・プラス・ネットワーク」の実現を促す。
 国交省は「立地適正化計画の実効性の向上に向けたあり方検討会」(座長・谷口守筑波大学システム情報系社会工学域教授)の検討成果を、「持続可能な都市構造の実現のための『立適+(プラス)』」として6日に公表した。
 取り組みの裾野拡大に向け、立地適正化計画に基づく持続可能なまちづくりの必要性が高い都市の主体的な計画策定を促す。具体的には市町村が現状を的確に認識するための情報やデータの提供、施策効果と都市経営上のメリットの連動性の整理と施策連携の強化、必要な人材確保に向けた支援などに取り組む。
 市町村による計画の適切な見直しを促すため、まちづくりの健康診断の体系を確立する。▽国から評価用リポートを市町村に提供▽市町村はデータを見ながら施策の取り組み状況、チェック機能を記載し国に提出▽国はリポートを基に見直しの方策を市町村に紹介▽市町村は適切に計画を見直し-といった流れを想定する。国が主導して見直し制度を確立し、立地適正化計画の実効性を高める。25年度から運用に入る予定だ。




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2024年12月9日月曜日

職能大学校/職人の感覚見える化する技能分析スタジオ公開、25年度に本格実装へ

 厚生労働省所管の職業能力開発総合大学校(東京都小平市)は6日、職人の感覚を可視化して学生の技能習得につなげる「技能分析スタジオ」を報道機関に公開した。作業時の視線や体の動きを感知し、画面に映す装置を身につけた学生によるのこぎり引き作業を実施。配筋作業を効率化するMR(複合現実)システムも説明した。これら技術を2025年度にも授業の教材として本格実装していく。
 技能分析スタジオは感覚に基づく技能をデータに残し、指導方法を改良するため23年度に開設した。ゴーグル型の視線計測装置や、筋肉の動きを捉えるため手のひらに付ける筋電計などから得た情報を画面に投影するモーションキャプチャーシステムを備えている。システムを装着した学生が木材に足をかけてのこぎりを入れると、画面に赤い丸で囲まれた視線や体の動き、足の力のかかり具合が映し出された。
 大学校の塚崎英世教授は「熟練した職人が持つ勘やこつは言葉での説明が難しい。こうしたものを『見える化』して伝えたい」と話した。システムを利用して作った動画は学生の確認テストに使っており、25年度にも授業の教材として本格実装する。スタジオは職人が展開図を描く時の脳の動きや、空間把握能力の分析にも活用していく。
 大学校基盤整備センター開発部の武市淳高度技能者養成訓練開発室長は、ヘルメットとゴーグルが一体となって視界の情報を画面に映すMRシステムを説明した。頭にかぶって組み立て中の鉄筋を見ると、既存の鉄筋に重なって完成後の配筋図が表示される。武市室長は「受講者ごとの技能のばらつきを抑え、読図能力を身につけられる」とシステムへの期待を話した。




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回転窓/虫と天気の言い伝え

 昔から虫や鳥、動物と天気の関係にはいろいろな言い伝えがある。天気予報のない時代に経験則から生まれた生活の知恵とも言えよう▼例えばハチが低いところに巣を作った年は台風が多いと言われる。クモの巣に朝露がかかっていると晴れる、トンボが低く飛ぶ時は雨が降るといったことわざなども知られる▼今年も各地でカメムシが大量発生していると報じられた。こうした年の冬は大雪になると伝えられる。関連性があるかどうかは分からないが、いずれにしろ日常生活や交通、工事などに支障が出るほどの大雪には十分警戒したい▼以前、豪雪地域で着工間もないダム建設現場の所長が「地元の方からこの地域は水分を多く含んだ重い雪が降ると聞いている」と話すのを聞いたことがある。このため1年目の冬に雪の質や降り方をよく調べ、仮設も含めた施工計画に反映させていかなければならないと教えていただいた▼工事関係者には当たり前でも第三者が「そこまで綿密に対策を練るのか」と初めて知ることは多い。言い伝えもどのようにして生まれたのかその背景や意味が分かれば、新たな気づきとなるかもしれない。




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凜/日本道路九州支店管理部管理課・山崎梨央さん、次世代の担い手確保にやりがい

 父親をはじめ建設業で働く人が身近におり、社会基盤を支える重要な役割を担う建設業界に魅力を感じていた。大学の専攻は別分野だったが「道路業界もその一翼を担い、国や地域の発展を支えておりその仕事に携わりたい」との思いから日本道路に入社した。
 総務・人事に配属され、社会保障の手続きや採用活動などの業務を担当。「次世代の担い手となる人材確保に携われている」ことにやりがいを感じている。学生に「道路業界は足元から人々の暮らし、社会を支えている」と魅力を伝え、学生と年が近いことから何でも質問しやすい雰囲気作りを心掛けている。
 同社は業界に先駆け女性工事管理者の採用を積極的に行い毎年入社している。2025年4月には新しい人事制度をスタートし女性社員の活躍の場を広げるとの目標を掲げている。「育児休業、育児短時間勤務、テレワークなど女性のライフイベントに合わせて長く働ける環境。女性の仲間が増えてほしい」と願う。
 趣味は旅行。壮大な山道や美しい海岸沿いの道路を走っている際に「この美しい景観と調和した道路を実現するためにどれだけの工夫や努力があったのだろう」と想像し、人々の豊かな生活を支えている建設業の魅力を再認識している。「これからも採用活動などを通じ、『道からはじまる街づくり』の一助となれるように努力していきたい」と意気込む。
 (やまさき・りお)




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大阪広域水道企業団/25年度から週休2日、原則全ての工事で

 大阪広域水道企業団は企業団発注工事での週休2日の確保に向けて、2025年度から新たに「週休2日工事」を実施する。原則、全ての工事を対象とし、25年4月1日以降の公告案件(早期発注分含む)で適用する。国や大阪府と同様の補正係数を用い、週休2日に要する費用を計上することで、建設業の労働環境の改善や担い手確保といった取り組みを後押しする。
 実施要領によると、対象工事は災害復旧工事や単価契約工事、緊急修繕などを除く、企業団発注の全ての工事。発注方法は原則、発注者指定方式。補正係数は土木工事が労務費で「1・04」、機械経費(賃料)「1・02」、共通仮設費「1・03」、現場管理費「1・05」。月単位での週休2日(4週8休、現場閉所率28・5%以上)の確保を前提に、これらの補正係数を乗じた積算を行い、当初設計金額を算出する。
 ただし工期内のひと月でも達成できなかった場合、通期の補正係数(現場管理費「1・03」、現場管理費以外「1・02」)に切り替え請負金額を変更する。通期で達成できなければさらに当該補正分を減額する。
 受注者は現場閉所計画を前月末までに監督員に提出する必要がある。
 週休2日実施の履行確認は受注者から提出された「現場閉所実績書」「現場閉所報告書」により、工事完了後に監督員が行う。
 天候などによる予定外の現場閉所日も現場閉所日数に含めることができる。週休2日の確保を理由にした工期変更は認めない。




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改正業法・入契法/変更協議円滑化など12月13日施行、初の規制措置・適切対応を

 改正建設業法・公共工事入札契約適正化法(入契法)の段階的な施行の2回目として、適切な価格転嫁に向けた契約変更協議の円滑化措置などの規定を13日に施行することが決まった。受注者に契約前の「恐れ(リスク)情報」の通知を義務化するなど、今回の施行で改正業法に基づく規制措置が初めて効力を持つことになる。通知を受けた注文者にはリスク発現時の誠実な協議対応を努力義務化しており、下請にとって注文者となる元請などにも適切な対応が求められることになる。
 政府が施行期日を定める政令を6日に閣議決定した。
 施行となる主な規定は、業法のうち▽契約書の法定記載事項の追加(第19条第1項第8号)▽契約変更協議の円滑化(第20条の2)▽監理技術者などの専任義務の合理化(第26条)▽営業所技術者などの職務の合理化(第26条の5)▽処遇確保の努力義務の新設(第25条の27)▽ICT活用に関する努力義務の新設(第25条の28)-など。入契法では▽契約変更協議に誠実に応じる公共発注者の義務(第13条)▽公共工事の施工体制台帳の提出義務の合理化(第15条)-などが施行となる。
 6日には監理技術者などの専任義務の合理化で、新たな特例として創設する兼任制度の金額要件や兼任可能な現場数を定める政令も閣議決定した。
 省令で定める他の要件を施行日の13日までに決定・公表し、併せて詳細な運用ルールを「監理技術者制度運用マニュアル」に整理する。
 省令ではリスク情報の具体的内容や通知方法も定める。元下間と受発注者間の「建設業法令順守ガイドライン」を同時に改定し、誠実協議の在り方なども含めて運用上の留意点をかみ砕いて解説する。




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全建/与党幹部らに公共事業予算の確保要望、強靱化実施中継計画早期策定も

 全国建設業協会(全建)の今井雅則会長は4日と6日に与党幹部らを訪ね、2025年度公共事業予算の確保を要望した。地域建設業が将来を見通せる十分な予算の確保を求めるとともに、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の後継として法制化された国土強靱化実施中期計画の早期策定や、5か年加速化対策を上回る事業量の確保も訴えた。
 4日には自民党の鳩山二郎内閣府副大臣を訪ねた。鳩山副大臣は国土強靱化について「防災・減災の取り組みは重要で確実に進めていく。(現行の)国土強靱化5か年加速化対策は補正予算の約1・7兆円でしっかりやっていく」と受け止めた。
 6日には公明党の西田実仁幹事長と岡本三成政務調査会長に要望。西田幹事長は実施中期計画の事業規模について「公明は5か年で20兆円を掲げている。5か年年加速化対策よりも上がっていかないとデフレになる」と全建の要望に理解を示した。
 岡本政調会長は「設計労務単価は12年連続で上げているが、工期の競争は相変わらず激しい」との問題意識を示し、工期設定に関する発注者の責任の在り方に言及した。




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建設技術研究所/土砂災害切迫時の自治体判断を補助、地域ごとの危険度通知

 建設技術研究所は、土砂災害が迫った時に市町村の判断を補助する土砂災害危険度情報システム「どしゃキジ」を開発した。地域ごとの地形や地質をAIが分類。雨が降った際に崖崩れなどが起きる可能性を過去の災害との比較で示し、細かい地域ごとに危険度情報として市町村に伝える。首長が避難指示を出す際の判断に生かしたり、防災訓練に活用したりすることができる。
 特許を取得した京都大学大学院の小杉賢一朗教授の研究を基に、19都県で土砂災害警戒情報基準検討業務に携わってきた建設技術研究所の知見を踏まえて開発した。
 どしゃキジはAIでひもといた地域特性に基づき、気象庁から10分ごとにもたらされる雨量データを分析。「あとどのくらい雨が降れば崖が崩れるか」といった危険の切迫性を表す「未経験降雨指数」にまとめ、同社の水災害リスクマッピングシステム「RisKma(リスクマ)」のプラットフォーム上に表示する。過去にその地域を襲った具体的な災害名を挙げ、「どの災害以来の危険度なのか」といった情報を知らせる。過去の災害情報を検索できる機能も設けた。
 過去の降雨情報に基づいたシミュレーター機能を搭載してあり、防災訓練や警戒態勢の点検にも利用できる。
 市町村では豪雨などの発生時に政府の土砂災害警戒情報が発表された後、局地的な災害の切迫性が分からず「避難指示発令が『空振り』となる恐れから判断をためらうケースがある」(建設技術研究所砂防部)。避難範囲の絞り込みも難しいという。




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北海道恵庭市/柏陽地区複合施設基本計画案、公共部分はDBO方式採用

 北海道恵庭市は「柏陽地区複合施設整備基本計画」案をまとめた。多世代の交流・子育て機能を備えた公民複合機能施設を整備する計画で、公園整備を含めた公共機能はDBO(設計・施工・維持管理)方式、民間機能は定期借地方式を活用して整備する。2025年度に事業者を選定し、28年度の開業を目指す。
 同市では現在、柏陽団地と隣接する恵央団地の建て替えを進めており、これに伴う余剰地に公共施設の集約・複合化と民間機能の導入により交流・子育て機能を付加した公民複合機能施設の整備を計画している。
 計画地は柏陽町4の14ほかの2万0985平方メートルの敷地。公共施設と保育園からなる公共機能と商業施設などの民間機能、公園機能を整備する。
 敷地北側には配置する公共機能は、多目的ホールや交流スペースなど公共諸室(延べ床面積1250平方メートル)と保育園(1164平方メートル)で構成。その南側には都市計画公園として整備するかしわぎ公園(敷地6300平方メートル)、公園西側には両施設の利用者・職員用に計110台分の駐車場(3300平方メートル)を整備する。。
 公共施設西側に配置する民間機能は飲食店(延べ床面積20~400平方メートル)や物販・ドラッグストア(1200~4000平方メートル)の入居を想定する。
 整備に当たっては公共部分がDBO方式、民間部分が定期借地方式を採用。概算事業費には、駐車場を含めた公共諸室整備に約16億9000万円、公園整備に約1億3000万円、保育園整備に約13億8000万円を試算する。
 公共諸室の事業期間は設計・施工に2年、維持管理・運営に15年を基本に検討する。民間機能は、民間が土地を賃借し施設の所有権を持った独立採算型の事業を想定。公共諸室を対象としたDBO方式と同じ事業期間を基本に、民間事業者からの提案を受け決める。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169625
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2024年12月6日金曜日

回転窓/再建する力

 内閣府沖縄総合事務局による首里城正殿(那覇市)の復元工事が進行中だ。5月に上棟を祝う「工匠式」を迎えた。清水建設・國場組・大米建設JVが施工を担い、赤瓦屋根の瓦ぶき作業などが進む▼清水建設が現場のデジタルツインを公開している。7月時点で骨組み状態の屋根は、11月には赤瓦が連なる見事な姿に。匠(たくみ)の技で復元していく様子がよく分かる▼2019年10月の火災で燃え落ちた首里城の姿に、ショックを受けた方は多かろう。つらい出来事をどう乗り越え次につなげるかで、未来への行動の真価が問われる▼パリのノートルダム大聖堂の再開式典が7日開かれる。同4月の大規模火災で屋根の大部分などが焼失した際、フランスのマクロン大統領は5年以内の再建を宣言。式典を前に、マクロン氏は「(火災後の)炭を芸術に変えた」(時事)と関係者をねぎらったという▼日仏の両施設はともに地域に根付き、人々のよりどころとも言える存在だろう。歴史的価値だけでなく、守り続けたいと願う多くの意思があってこそ、復元・再建を進めることができる。完成した姿を見て、建築が持つ力を感じたい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169545
via 日刊建設工業新聞

国交省建設振興課長・城麻実氏に聞く/処遇改善し専門工事業の担い手確保へ

 建設現場で働く技能者らの処遇改善に向けた取り組みが一段と活発化している。6月の「第3次担い手3法」の成立を受け、適正な賃金が技能者一人一人に行き渡る環境を整えようと、国や関係団体らでさまざまな施策の具体化や制度化の検討が進む。専門工事業の魅力をより高めることで若者たちの入職を促し、持続可能な建設業の実現を目指す。国土交通省不動産・建設経済局の城麻実建設振興課長に、専門工事業の発展を後押しする関連施策や今後の展望を聞いた。
 --専門工事業の現状をどう見ていますか。
 「将来の担い手の確保は、専門工事業はもちろん、建設産業全体で最重要課題かつ喫緊の課題の一つと認識しています。技能者の高齢化が進んでおり、現場で頑張っている人たちが10年後にリタイアされた時にどうなるのか。若者に建設業で働きたいと思ってもらう上で大事なのは処遇改善であり、建設業法、公共工事入札契約適正化法(入契法)、公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)を一体的に改正し、6月に成立した『第3次担い手3法』でも担い手の確保や生産性の向上などを柱に掲げています。技能者の皆さんがいなければ工事を進めることはできません」

 --今回の法改正のポイントについて。
 「第3次担い手3法は、専門工事業で働く技能者の皆さんに適切な賃金が行き渡るところに注力している法律だと言えます。適正な労務費の基準に関する中央建設業審議会(中建審)のワーキンググループ(WG)でも『技能労働者の賃金が行き渡ること』を労務費の基準の目的として明確にしています。建設業の商慣行である請負契約の中で、元請側から価格が決まるのではなく、下請側から必要な経費分をしっかり積み上げていく世界を目指します」
 「資材価格の高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止も、今回の法改正の重要事項の一つ。資材高騰の影響がありそうだという『リスク情報(おそれ情報)』を受注者から注文者に通知し、実際にそれが顕在化した時は、請負代金について受発注者間で誠実に変更協議に臨むよう求めています。このほか、働き方改革を進めるため、工期ダンピング対策も強化しています。著しく短い工期での契約締結を発注者だけでなく、受注者にも禁じました」
 「生産性向上に向けては、ICTを活用した現場管理の効率化を推進すべく、国が指針を作成します。これら一連の施策は段階的に施行され、最後は今から1年後の来年12月までに著しく低い労務費の禁止やダンピング対策の強化などが施行されます。当局では、第3次担い手3法が今後の魅力ある建設産業につながるよう、局を挙げて取り組んでいます」

 --契約の適正化をどう進めていきますか。
 「労務費の基準にかかる職種別の検討は、鉄筋と型枠の2職種と、住宅分野で先行して取り組み、そこでの成果を他の職種での議論にも反映していく予定です。基準づくりの基本的な考え方は『単位施工量当たりの金額』。1人当たりの金額ではただの単価になってしまうので、生産性部分で競争の余地を残します。また大切なのは、適正水準の労務費が重層下請構造の中で下請事業者まで行き渡り、さらには、技能者の方々へ賃金が行き渡ることです。適正な労務費・賃金の支払いに向けた仕組みも検討していきます」
 「労務費が確保されても他が削られては意味がありません。労務費だけでなく、必要な経費についても見積もりの中できちんと内訳を明示すること。発注者・元請・下請といった契約手続き上の関係者がそれぞれの段階でしっかり必要経費を認識することが重要です。労務費の基準に関するWGでは、請負契約の競争性を保ちつつ、いかに必要経費の行き渡りを進めるか検討しており、今後、より具体的な議論に入っていきます。元請・下請の関係者が一堂に会して、職種別にきめ細かく、忌憚(きたん)なく意見を交わし、関係者が合意した形で基準づくりを進め、新たな商慣行へと近づけていくことを重要視しています」
 「今回の法改正の前から専門工事業団体では、法定福利費の内訳明示などで、熱心に標準見積書を作っていただいていると思います。最近では取り組み内容が多岐にわたる安全衛生経費について、注文者と受注者でどちらが対策を実施し、どちらが費用負担するかを整理する『確認表』の作成や、安全衛生経費の内訳を明示した『見積書』の作成を促進しています。こうした取り組みを通じて、必要経費がきちんと確保されるようにすることも、労務費の基準の議論に加え、重要な点です」
 「着任後、専門工事業は、非常に多くの職種からなる多様性に驚かされました。労務費の基準の職種別意見交換では、それぞれの職種の特性や現在の商慣行なども踏まえ、労務費の基準の作成のみならず、その実効性を確保するには、どうしていくべきかをしっかり業界の皆さんとも意見交換しながら、実態もよく伺いながら、議論を進めていきたいと考えています」

 --建設キャリアアップシステム(CCUS)の今後の展望は。
 「CCUSは技能・経験に応じた適切な処遇につながる業界横断のシステムであり、これまでの取り組みで技能者・事業者の登録は進みました。今後は、技能者の皆さんがメリットを感じられるものへと、さらに発展させていきます」

 --担い手の確保では、女性や外国人材など誰もが働きやすい環境整備も不可欠です。
 「現在、国交省では、建設産業で働く女性の活躍・定着を促進する新しい実行計画の年度内の策定に向け、建設分野の関連団体との検討会でさまざまな意見を交わしています。技術者、技能者それぞれの立場で課題も異なり、よりきめ細かく議論していくこととしています。また、女性活躍・定着促進を議論の切り口にしつつも、過度に女性のみに着目するのではなく、女性が働きやすい職場は若者や外国人の方々も含め、全ての人たちにとって働きやすい職場である、という意識の下、建設産業全体の担い手確保につながるような内容とすべく、検討を進めています」
 「検討に際し、重点テーマを三つ設定しています。一つは、きめ細かい広報戦略。ターゲットとして、高校生や大学生など就職を控えたご本人ももちろんながら保護者の方々や先生方、さらには小中学生へのPR強化も必要であると認識しています。これまでも、業界団体・企業の皆さんはいろいろ工夫し、国交省としても情報発信を行ってきましたが、今後の広報についての方向性が示せればと考えています」
 「二つ目は、例えば建設ディレクターといった女性が活躍しやすい領域を明示すること。より具体的なイメージが持てるような形で発信したいです。三つ目は建設産業の現場について、ハード・ソフト両面から改善していくこと。トイレや更衣室などハード面からの現場環境の改善に加え、現場で働く人たちの理解醸成といったソフト面の取り組みも必要です。現場に着目するということで、専門工事業の皆さんにもしっかりとフォーカスしながら新計画をまとめていきます」
 「本日お話ししたことは、いずれも国と建設業界が官民連携して取り組むことが必要不可欠であり、業界の協力をいただきながら、一緒に魅力ある専門工事業界の実現に向けて、取り組んでいきたいと考えています」。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169537
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週休2日工事、25年度中に全市区町村実施へ/国交省と全都道府県で働き掛け

 国土交通省と全都道府県は、2025年度中に全市区町村で週休2日工事が行われるよう連携して働き掛け・助言に取り組むことで合意した。公共工事入札契約適正化法(入契法)に基づく実態調査(入契調査)結果を見ると、22年度の時点で週休2日工事(交代制を含む)を1件でも実施している市区町村は379団体で、全体の22・0%に過ぎなかった。国交省によると、23年度の実績で実施率は「50%を若干超える程度」に高まる見通し。24年度中に管内市区町村の実施率100%を見込む都道府県もあるという。
 全国8ブロックでの全日程を5日に終了した24年度下期「ブロック監理課長等会議」(入札契約担当課長会議)で、国交省と全都道府県・政令市による申し合わせ事項に盛り込まれた。申し合わせでは都道府県・政令市が発注する原則すべての工事で週休2日を達成するよう取り組みを一層強化することも決めた。
 中央建設建設業審議会(中建審)が3月改定した「工期に関する基準」を踏まえ、適正工期の確保に確実に取り組む。改正公共工事品質確保促進法(公共工事品確法)に基づき小規模自治体の発注体制を強化するため、これを機会に都道府県と連携した市区町村への支援・働き掛けを強める。
 国交省は毎年度の入契調査で、全公共発注者に週休2日工事の実施の有無を回答してもらっている。直近の調査で22年度実績を確認しているが、市区町村の実施率には地域差がある。新潟、富山、石川、三重の4県内では4分の3以上の市町村が実施。一方、宮城、群馬、山梨、兵庫、奈良、和歌山、広島、徳島、香川、福岡、佐賀、沖縄の12県内では実施率が1割に満たなかった。全く実施していない地域はなかったが、3県内ではわずか1団体の実施にとどまった。
 同会議ではこうした実態を都道府県と共有し、管内市区町村への働き掛けを強化する必要性を確認。直轄工事や都道府県・政令市工事の優良・工夫事例や、市区町村への有効な働き掛けの方法なども周知した。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169548
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日本設計、米オートデスク/データドリブン設計の確立・実践に向け協働

 日本設計と米オートデスク(サンフランシスコ、アンドリュー・アナグノスト社長兼最高経営責任者〈CEO〉)は、データに基づく設計(データドリブン設計)の確立に取り組む。設計やプロジェクト管理の効率性と品質向上を目指すとともに、データベースを活用した新しい設計手法の実現を加速させる。BIMとデータベースを連携させ、設計プロセスの全体最適化を視野に入れた革新的な手法を追求していく。
 両社は4日に東京都内で会見し包括契約の更新を発表。今後3年間の取り組み内容を明らかにした。包括契約は今回で4度目。
 日本設計は、DX推進に向けた全社横断的な体制を構築。データをより有効活用するプロジェクト推進の仕組みを整備し、設計プロセスを効率化する。BIMを用いることでデータを蓄積していき、標準的なデータを構築。個人やチームによって生じていたばらつきを減らして共通化を図り、設計品質のさらなる向上につなげる。データを蓄積することで、新たな活用方法も生まれるとみる。全社的な意識改革も目指す。
 オートデスクは、データを一元管理できるソリューション「オートデスク・コンストラクション・クラウド」(ACC)を展開している。BIMデータを最大限に活用するための戦略やソリューションの提案、実行支援を提供する。他社ソフトのデータも含めて分析可能にすることを目指しており、日本設計も取り入れる方向だ。両社はAI活用も加速していく。
 日本設計の篠崎淳社長は「BIMは実践的なフェーズに移行している。この更新で新たなステージに挑戦したい」と強調。オートデスクのルー・グレスパンバイスプレジデントは「日本設計は日本でのBIMの先駆者だ。これからも協力していく」と語った。




from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169552
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札幌市/厚別南・青葉地区義務教育学校新築計画(厚別区)、26年度に増築棟着工

 札幌市は、厚別区の新札幌わかば小学校と青葉中学校を再編して新設する「(仮称)厚別南・青葉地区義務教育学校」の実施設計を進めている。新札幌わかば小学校の校舎を改修するとともに、グラウンドにRC造3階建て延べ4150平方メートルの増築棟と第2屋内運動場を新築する。2025年度に実施設計を終え、26年度の着工を目指す。
 青葉中学校を新札幌わかば小学校の敷地(厚別区厚別南7の9の1、敷地面積1万5262平方メートル)に移転し整備する。基本・実施設計は建築と設備に分け発注しており、建築設計は岡田設計、設備設計は真紀設備設計事務所がそれぞれ担当している。
 基本設計段階の配置計画を見ると、増築棟には普通教室11室、図書室や技術室などの特別教室3教室、多目的室1室などのほか、1階に延べ1164平方メートルの第2屋内運動場、給食調理室、児童会館を整備する。既存校舎(RC造4階建て延べ4667平方メートル)は改修し、各階で増築棟と接続する。
 25年度は実施設計とともに、新札幌わかば小学校敷地内のプールと物置の解体を進める。26、27年度に増築棟を新築し、28年度に既存校舎の改修工事を行う。29年度の開校後に、青葉中学校の校舎を解体し、30年度以降にグラウンドを整備する。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169547
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中野サンプラザ跡地再開発(東京都中野区)、施行認可申請に向け協議継続/野村不ら

 ◇設備工事費想定の3倍
 工事費高騰に伴い事業スケジュールが後ろ倒しになる中野サンプラザ跡地(東京都中野区)の再開発に関して、施行予定者の野村不動産の担当者が5日の中野区建設委員会に出席した。同社担当者は「事業改善につながる施設計画の変更を行う。今後も地権者などと協議し、施行認可申請に向けて取り組む」と説明した。
 「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」の計画地は中野4(区域面積約2・3ヘクタール)。JR・東京メトロ中野駅の北側に位置する。
 野村不の担当者によると、当初は建設物価指数などを基に工事費を見積もり、工事費の上昇は見込んでいた。だが、特定業務代行者が工事の下請業者から費用を見積もったところ、「設備工事費は想定の3倍、エレベーター工事費は2倍などになった。ここまでの上昇は前例がなかった」(同社担当者)。原因として専門業者の繁忙期の重なりや建設業の働き方改革などが影響しているとした。
 同社の別の担当者は「大規模建築物に対応できるゼネコンやサブコンは限られている。今後はさまざまな事業業者が対応できるような施設計画にしていく必要がある」と今後の方向性を示した。
 同社を代表者とする施行予定者は再開発ビルの用途面積割合の変更を提案。住宅部を従来の4割から6割に引き上げた。同時に商業空間の充実も図るとした。
 中野サンプラザ跡地開発を巡っては、野村不らが施行認可申請を7月に行った後、改めて工事費を見積もったところ、約900億円増額することが判明していた。中野区は新たな事業スケジュールを示すことを求めている。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169550
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大成建設/建築物改修後の省エネ性能を事前評価、ZEB化可能性を短期間で診断

 大成建設は既存建築物改修後の省エネ性能を設計前段階で評価し、リニューアルによるZEB化の可能性を短期間で診断するツールを開発した。同社がZEBプランナーとしてツールを活用し、改修する既存建築物の形状や方位、窓の配置、空調設備機器の配置や更新状況など、物件ごとの特性に考慮した適切な省エネ改修項目を短期間で選定。費用対効果が高い最適な改修メニューや改修方法を速やかに提案していく。
 建築物リニューアルの初期診断業務で運用を開始した。ツールの名称は「ZEBリノベ@診断」。あっという間に診断できるという思いを込めている。
 同社によると、従来の省エネ改修では建築物の規模などに応じた改修のメニューや方法、コストと省エネ効果のバランスといった検討項目が多岐にわたり、最適な提案作成には数カ月かかる。ツールの活用で提案作成の期間を大幅に短縮できる見通しという。
 ツールを用いて最適な省エネ改修項目を短期間で選定した後、建築研究所が公表しているエネルギー消費性能計算プログラムデータ「WEBプログラム」を利用し、改修工事後のおおむねの省エネ性能を事前に評価してZEB化の可能性を診断する。過去の設備更新や部分的な修繕などの履歴が見つからず、竣工図や改修図、設備図などの図面が一部不足していても対応できる。
 省エネ改修工事によるランニングコスト低減や二酸化炭素(CO2)排出量削減の効果も概略値として試算。併せて建築工事や設備工事の費用を算出するための参考として、断熱窓への更新、壁や屋根への断熱付加、設備工事での高効率な空調設備やLED照明器具への更新、照明制御設備の追加などの工事数量も自動算出する。
 国が掲げる既存建築物のZEB普及目標では、2050年にストック平均でZEB基準水準の省エネ性能が確保されていることを目指している。同社はツールを活用した初期診断とともに、ZEB化改修工事や運用段階のサポートなどトータルで支援する。




from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169554
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2024年12月5日木曜日

回転窓/技術者の心構え

 土木工学者の吉田徳次郎(1888~1960年)は1954年12月発行の土木学会誌で、良いコンクリートとそうでないものを「知識と施工についての正直親切の程度の差からおこる」と説いた。技術者の心構えとして現代にも通じる▼第37代土木学会長を務め、学術発展に貢献してきた吉田は数多くの土木事業でコンクリートの施工導入を指導した。その中には塚原ダム(宮崎県、38年竣工)や佐久間ダム(静岡県、56年)など当時の日本経済を支えてきたものばかり▼国内には1481カ所のダムが存在する。利水と治水機能を持った多目的ダムは573カ所を数える▼11月には栃木県鹿沼市にある南摩ダムが試験湛水を開始した。豪雨時に下流域への洪水調整機能を発揮するだけでなく、周辺河川が渇水した時は同市とその近隣自治体、埼玉や千葉県の一部にも水が送られる▼発注者の水資源機構にとってこれが最後の新規ダム建設とされ、維持管理業務がメインになりつつある。ダムのポテンシャルを一層高めていくためにも、地道なメンテナンスと技術者の「正直で親切」な意識が必要であることに変わりはない。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169501
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自民党国土強靱化推進本部長・佐藤信秋氏/実施中期計画、総額示し2段階で策定

 自民党国土強靱化推進本部本部長に就任した佐藤信秋参院議員は、建設専門紙各社の取材に応じ、国土強靱化政策の展望を話した。政府の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の後継となる実施中期計画について「何年で総額いくらくらいかを示し、中身を詰める2段階で進めたい」と検討の加速に意欲を見せた。検討のポイントに、当初予算を含めた全体の規模感や物価上昇の影響を挙げた。災害対応を担う地域建設会社の重要性も強調した。
 自民党は11月22日の総務会で本部長人事を決めた。東日本大震災や能登半島地震の復旧・復興が続く中で、自然災害が多発し、南海トラフ地震や首都直下地震による甚大な被害が懸念されている。佐藤氏は「国民の皆さんに日本は災害列島であることを分かっていただけている」と現状認識を示した。自然災害の頻発化、激甚化から「安全に暮らしていくことに対応する力を国民、国土の全体でつくっていく」と抱負を述べた。
 2013年に議員立法で国土強靱化基本法が制定され、23年の同法改正によって法律に基づく実施中期計画の策定が決まった。18年の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(事業規模約7兆円)に続き、現在は5か年加速化対策(21~25年度、事業規模おおむね15兆円程度)が進行中。国土強靱化を巡る政府・与党の取り組みには「ハード・ソフトのスピードを上げないといけないという議論になった。(予算の)上積みの思想が持ち込まれた」と語った。
 政府は実施中期計画を「早急に策定する」と総合経済対策に明記した。5か年加速化対策は24年度補正予算案で事業規模約14・3兆円、国費約7・4兆円が措置された。事業規模には、民間事業者分(23年度は約7000億円)が来夏に加わる。国費は物価上昇分に相当する緊急対応枠(23、24年度計6000億円)を含めると約8兆円となる。
 佐藤氏は実施中期計画について「5か年加速化対策は、3か年緊急対策のペース(事業規模)を2割上げた」とした上で、「(5か年加速化対策の)15兆円の上積みだけでなく、(21~25年度の一般公共事業〈国費〉当初予算の累計〈25年度は推計〉)約32兆円とでも考えていく必要がある」と指摘した。計画期間は「5、7、10年にするかはこれからの議論」としながらも、「物価が上がっている」として「2割増やすのか、毎年5%引き上げるのか、上積み分だけでなく全体を考えていかないとパフォーマンスが落ちる」と説明。「(計約47兆円は)2割増やしたなら約56兆円になる」と話した。
 政府には物価上昇の「解釈を十分にしながらの検討」を求めたい意向を表明し、「(既に)上昇した分をベースに考えようではないか」と話した。「災害が来る中で、(対策が)今までと同じようなペースだと間に合わない」と、危機感も示した。12月中に同本部の会合を開く予定。
 「政府にどう要求するかみんなで議論していく」とした上で、「総額でいくらにしようという議論が大切になる」と私見を述べた。「(計画策定の)作業が大変。世の中の皆さんを不安にしてしまう」として、総額の了解や決定は「難しいかもしれないが、年内でもいい」と述べた。
 災害発生直後から緊急対応に動く建設業は「地域の危機管理産業」と話した。会社の数や人員の問題などから出動できなくなるような事態に懸念を表明。「働く人を大事にするのも経営者を大事にするのも同じこと」と述べ、処遇改善と公共の仕事での配慮を求めた。能登半島地震の復旧では「めげずに立ち向かう人が6割くらいになったかもしれない。地元の建設業にどう頑張ってもらうか考えないといけない」と指摘した。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169510
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道建協会員23年度調査/6割超が上限規制原則ルール達成、土曜閉所率も上昇

 道路建設会社の働き方改革が進展している。日本道路建設業協会(道建協、西田義則会長)が会員企業に行った調査によると、2023年度に時間外労働上限規制の原則ルールを達成した会員企業の割合は6割を超えた。土曜日(第1、2、4)の閉所率も6割を上回った。ICT活用や閉所に対する顧客への理解呼び掛けといった取り組みが奏功したと見られる。一方、会員からは「(特に民間工事で)厳しい工期設定が長時間労働を是正する上での支障」との声も上がった。
 「2023年度時間外労働時間実態調査」によると、年間360時間以内の原則ルールを達成した会員企業の割合は、23年度が61・0%と前年度(58・1%)を2・9ポイント上回った。年間720時間以内の特別条項の達成率も97・9%と前年度(96・4%)と比べ上昇した。
 道建協は17年に時間外労働に関する自主規制達成目標として、建設業への時間外労働の上限規制適用開始の2年前(22年)には、年間の時間外労働の上限を720時間と設定。段階的に時間外労働の削減に取り組んできた。
 時間外労働削減に向けた工夫を見ると「ノー残業デーの実施」「勤怠管理システムの導入・活用」「ICTの活用」「職員の増員や業務分担の見直し」といった取り組みが挙がった。道建協は「上限規制の達成率は上昇傾向にある。取り組みが確実に推進している」と見る。
 長時間労働を是正する上で支障となっている事例では「厳しい工期設定」「特に民間工事で工期に余裕がない」「発注者向けの提出書類の多さ」といった発注者側に起因する内容が挙がった。「施工管理技術者などの慢性的な人員不足」を指摘する声も寄せられた。
 今回、初めて調査した休日の取得状況を見ると、4週8休所以上が81・2%と最も多く、4週7休(11・1%)や4週6休(5・2%)を大きく上回った。
 土日閉所の実施状況は、道建協が閉所運動対象としている第1、2、4土曜日の閉所率が平均で62・2%。前年度を3・4ポイント上回った。労働従事別で見ると合材工場の52・0%(4・0ポイント上昇)が最も低く、次に低い現場事務所は60・4%(3・6ポイント上昇)だった。
 道建協は11月、西田会長名で会員企業に対して働き方改革のさらなる推進を呼び掛けた。時間外労働上限規制の順守と週休2日の実現を加速させる。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169498
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東保証/24年4~9月期決算増収増益、資材高騰や学校など大型建築影響

 東日本建設業保証(東保証、栗田卓也社長)の2024年度4~9月期連結決算は増収増益となった。収益認識基準の適用を開始した21年度以降、4~9月期として初めての増収増益。営業収益のうち収入保証料は前年同期比10・0%増の53億2百万円。資材価格の高騰や、市区町村による学校などの大型建築の増加などが影響した。責任準備金戻し入れは14・1%増の62億92百万円。営業利益は201・5%増の3億38百万円、純利益は100・5%増の11億32百万円だった。
 栗田社長が3日に東京都内で会見し、24年度上期の事業実績を説明した。公共工事の前払金保証の状況は、保証金額が8・9%増の2兆0236億円、請負金額が9・9%増の5兆3018億円、件数が0・9%減の7万4238件だった。
 保証金額の増加幅1647億円のうち1096億円は市区町村の増加分に当たる。市区町村の学校建築工事の増加などが押し上げ要因となった。全体では資材価格の上昇などに伴いスライド条項が適用されたことや、発注機関の職員不足を背景に工事1件当たりが大ロット化傾向にあることなどが保証金額の増加に寄与した。
 栗田社長は25年3月期の見通しについて「(3日時点で)4~9月期と同様の水準を維持している。11月末には24年度補正予算案を決定しており、基調的には大きく変わらないだろう」との見方を示した。電子保証の取り扱い発注機関は東日本地区で218カ所(11月1日時点)。前年度の110カ所から「着実に増加している。事務の効率化にもつながるだろう」(栗田社長)と力を込めた。




from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169502
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パシコン/人事制度改革を検討、25年10月以降に役職等級制度導入など

 パシフィックコンサルタンツは人事制度改革に乗り出す。社員の役割に応じて給与水準を決める「役職等級制度」の導入も含め検討段階で、2025年10月以降に順次実施する。検討課題に挙がっている役職等級制度は役割を明確化し、年齢に関係なくポストに見合った報酬にすることで、社員がより高いパフォーマンスを発揮できるようにするイメージだ。実現すれば従来型の年功序列から大きく変革することになる。社員の意見も聞きながら、慎重に判断するとみられる。
 大本修社長が4日、日刊建設工業新聞社らの取材に応じ、明らかにした。大本社長は「イノベーションの実現には多様性が求められる。年功序列で頑張っても頑張らなくてもほどほど(の報酬)では将来に希望を見いだせない人もいる。若い人は(役職等級制度の方が)納得感があると思う」と検討の背景を説明した。
 「従業員と意見交換し、丁寧にやっていかなければいけない」と強調。仮に導入する場合は「定年を過ぎたら(報酬を)下げるのではなく、パフォーマンスに応じた報酬に変えていく。入社何年ではなく、役職や役割に応じて報酬が決まる」とのイメージを話した。




from 企業・経営 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169506
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築地地区まちづくり(東京都中央区)/敷地内に環状車路、交通結節点で首都高と接続

 東京・中央区は2日、東京都が進める「築地地区まちづくり事業」の検討状況を明らかにした。事業者側は敷地内の動線計画として、敷地全体に2階レベルの人工地盤を整備する方針。1階レベルを車路、2階レベルを歩行者空間に充て、完全な歩車分離を実現する。車路は敷地内に四角形を描くような環状道路となり、敷地東側に設ける「交通結節点」が今後整備される首都高速道路晴海線の出口につながる見通し。
 同日区内で開いた「銀座地区・築地地区合同まちづくり協議会」に示した。環状道路は敷地中央にできる「大規模集客・交流施設」や、浜離宮恩賜庭園に面した「レジデンス棟」「ホテル棟」などを囲む形を想定している。新大橋通りと晴海通りで、それぞれ公道に接続する。
 環状道路の東端に「交通結節点」を設ける。ロータリーの中にバスターミナルやタクシープールを配置。一般車やバス、タクシー、次世代モビリティーなど多様な交通機関の発着機能を集める。交通結節点の直上部には「空飛ぶクルマ」のポートを設け、隅田川方面には舟運への乗り換え拠点も整備する考え。
 首都高湾岸線東雲JCTから北西に伸びる晴海線は、現在晴海出入り口まで供用されているが、将来的には首都高都心環状線に接続する予定。完成すれば敷地を南東から北西まで貫く。出入り口は北西方向から入って交通結節点のロータリーに接続する見通しだ。
 2階レベルの人工地盤は、計画地内の施設と周辺市街地を結ぶバリアフリーネットワークとしても機能する。区は事業者側に対し、新大橋通りをまたぎ、朝日新聞社側と接続する歩行者デッキの整備などを要望している。事業は三井不動産が代表企業を務めるグループ「ONE PARK×ONE TOWN」が推進している。東京都と事業者は2024年度末に基本協定、26年度に定期借地権設定契約を締ぶ予定。第1期建築工事は32年度、第2期建築工事は38年度の完了を目指す。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169492
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取手駅西口A街区再開発(茨城県取手市)/市が基本構想案、25年2月末にも都計決定

 茨城県取手市は、取手駅西口A街区の市街地再開発事業で整備する再開発ビルの基本構想案をまとめた。現取手図書館を移転。図書館機能を中心にカフェや多目的ラウンジなどを設け、市民交流拠点にする。想定整備費は43億~48億円。市は2025年2月末ごろをめどに再開発事業の都市計画決定を行う見通し。再開発ビルは27年度中にも着工し、29年度の完成を予定している。
 「取手駅西口A街区地区第一種市街地再開発事業」は組合施行を想定。再開発準備組合が設立されており、同組合は事業協力者に選定した大京、戸田建設の2者と協定を締結している。準備組合は、25年度中に組合設立と事業計画の認可を茨城県から取得する見込み。26年度に権利変換計画の認可取得や建築物の実施設計などを実施するという。
 再開発の事業区域面積は約0・6ヘクタール(A街区全体は0・7ヘクタール)。個別の土地利用を希望した地権者の土地が事業の施工区域外となっている。用途地域は商業地域(建ぺい率80%、容積率500%)。防火地域、駐車場整備地区となっている。
 8月時点の施設計画によると、再開発ビルは住宅棟と非住宅棟(店舗・公共・駐車場)で構成。21階建て総延べ3万0800平方メートルの規模を想定する。住宅棟はA街区北側に整備し、規模は20階建て、専有面積1万4000平方メートル(計画戸数約200戸)。非住宅棟はA街区南側に建てる。建物は5階建て、専有面積約7100平方メートルの規模。
 非住宅棟は、1階と3階の一部に商業や業務系の施設、2階に来客用駐車場を配置。3階の一部と4、5階に図書館を核とした複合公共施設を整備する。キャッチコピーは「あなたの居場所、私の居場所、取手駅前Library」に設定した。
 市は、基本構想案に対する一般の意見を募集している。期間は25年1月10日まで。資料は市ホームページや市役所、取手駅前窓口、取手図書館などで閲覧できる。意見の提出は中心市街地整備課への持参か郵送、メール、FAXで受け付ける。




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奈良県/まほろば健康パーク拡張、民活導入し大屋根広場など整備

 奈良県は、まほろば健康パーク(大和郡山市)の拡張整備に民間のノウハウを活用する。新たに大屋根広場やアウトドアスペースなどを設ける計画で、幅広い世代が利用し、遊びを通して子育てを支援する公園を整備する。11月28日に開いた「インクルーシブ機能検討委員会」(委員長・根本哲夫奈良女子大学生活環境学部教授)で基本計画案を示した。事業手法は運営先行PFIとPark-PFI(公募設置管理制度)の導入を検討する。市民意見や地元説明を踏まえ、2025年3月に基本計画をまとめる。
 県では既存公園に隣接する浄化センターの拡張予定地を利用し、公園機能を強化する基本構想を18年に策定。21年に基本計画をまとめ、22年2月に拡張区域を公園予定区域にした。その後、山下真知事が就任し、基本計画の再検討を発表。学識者らによる委員会を設置して新たな基本計画を検討してきた。
 基本計画案によると、基本コンセプトに▽すべての人が楽しく利用できる公園▽こどもの主体的な遊びを通して子育ち・子育て支援に資する公園-を設定。基本方針に「既存公園エリアを含めた公園全体でインクルーシブ機能の確保」を掲げた。
 導入ゾーンは▽交流▽大屋根広場▽プレイパーク▽アウトドア・樹林-の各エリアと既存公園エリア。交流エリアはパークの中心に設け、南側の玄関口に雨天時でも遊べる屋根のある広場を整備する。民間の発想を生かした屋内遊戯場や飲食施設が入る便益施設も設置する。
 アウトドアエリアでは、キャンプを楽しめるように炊事場などを整備する。トレーラーハウスやコンテナ型トイレを設置し、災害時に活用できるようにする。樹林を生かしてアスレチックや木登りなどが体験できる施設も設ける。
 各エリアには日よけができる休憩施設やバリアフリートイレを配置する。駐車場の乗降スペースから屋内施設までは屋根付きの歩行者動線を確保する。
 収益性の高い施設は民間による整備、管理・運営を想定し、Park-PFIなどの事業は、事業者とのサウンディング(対話)を踏まえて検討。駐車場や広場、大屋根などの収益性の低い施設は公共による整備を想定し、一部施設にPark-PFIの可能性を調査する。
 事業手法は管理・運営事業者を先に選定し、維持管理と運営コストを決定した後、設計・施工者を選定する「運営先行PFI(サービスプロバイダ方式)+Park-PFI」の導入を検討する。
 既存公園区域の管理・運営期間は28年度までで、26年度に新たな管理・運営事業者を選定し、27年度にPFI事業者を決める方向で検討。拡張エリアの開業は30年秋ごろを予定している。




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名古屋市/橘小学校等複合化DB、徳倉建設JVに

 名古屋市は4日、設計・施工一括(DB)方式を採用した「橘小学校等複合化整備事業」の落札者を84億円(税抜き)で徳倉建設・青島設計・長瀬組JVに決定したと発表した。今月中に仮契約し、市議会の議決を経て2025年3月に契約を締結する。徳倉建設JVは同4月に設計を開始、29年4月の供用開始を目指す。
 橘小学校(中区橘1の13の12)の敷地内で校舎の建て替えに合わせ、周辺にある生涯学習センターや福祉会館、児童館を集約、複合化する。徳倉建設JVの提案によると、施設はRC+S造地下1階地上5階建て延べ1万0735平方メートルの規模を想定。すべての普通教室にワークスペースを設けることで教室の拡張に対応。建具も全面開放を可能にし、幅広い形態の学習環境に対応できる柔軟性の高い教室とした。ZEB Readyも取得する。
 代表企業の徳倉建設はDB方式を含むPPP事業の豊富なマネジメント実績を持つ。敷地周辺を熟知する企業や市内の学校を含む公共施設の豊富な設計実績のある企業と組むことで、地域の特徴を効果的に取り入れた新たな複合施設を実現する。
 市は6月に総合評価一般競争入札(WTO対象)を公告し、9月20日に開札。11月25日に総合評価委員会委を開き、徳倉建設JVを優秀提案者に選定した。他に2グループが参加表明したがいずれも辞退した。




from 工事・計画 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169504
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熊谷組ら/コンクリ流量調整バルブを開発、山岳トンネルで覆工の連続同時打設を実現

 熊谷組らは4日、山岳トンネルの覆工コンクリート施工時に左右へのコンクリート供給量を制御し、連続して同時打設できる油圧式流量調整バルブを開発したと発表した。配管の切り替えにかかる時間を減らし、コンクリートの品質低下リスクを減らす。
 岐阜工業(岐阜県瑞穂市、宗像国義代表取締役)と共同開発した。主配管と副配管の間にY字管を配置し、先端部にコンクリートの流量を調整する油圧式バルブを設置。側壁からアーチまでの覆工コンクリートを同時に打設し、左右を均等な打ち上がり高さで管理することを可能にした。
 従来の施工方式は、打設口を変更するたびに、主配管と左右の副配管の切り替えが必要だった。供給に時間がかかるため、層間に空隙が生じる「コールドジョイント」などの品質トラブルが発生する懸念があった。作業員が狭いセントルを移動するため、配管切り替え中に指のけがや配管落下などの事故リスクも高かった。
 熊谷組は災害防止や生産性向上に向け、覆工コンクリート自動打設システムの確立を目指す。今後は油圧式流量調整バルブとコンクリート検知センサーをユニット化。打ち上がり高さに応じて流量を調整し、左右同時に連続打設できるシステムを開発する。




from 技術・商品 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169508
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2024年12月4日水曜日

東京・港区/高輪築堤を12月8~9日に一般公開、遺構調査で石垣など発見

 東京・港区は約150年前に築造された鉄道遺構「高輪築堤」を8、9日、一般公開する。区の教育委員会は9月以降、遺構の残存状況を調べるため、JR品川駅と同高輪ゲートウェイ駅の間の9カ所で調査を実施。公開対象はそのうちの1カ所で、公開が終われば埋め戻す。時間は両日とも午前9時~午後3時。参加無料。申し込み不要で、直接現地に赴く。
 3日に報道機関向けの見学会を開いた。所在地は高輪ゲートウェイシティー第II期工事エリア(5、6街区)。高輪ゲートウェイ駅の南西に位置する。遺構は1872年に日本初の鉄道として開業した新橋・横浜間の構造物の一部。うち約2・7キロの区間は、用地の確保が困難だったため海上を通っていた。周辺は19世紀のうちに埋め立てられ、現在は地中に堤が残っている状態だ。
 区は9カ所を掘って調査し、石垣の築石や裏込め石、盛り土の一部などを確認した。調査結果を踏まえ、今後文化財としての価値を評価する。埋め戻しの前に、174平方メートルの範囲を掘削した「トレンチ1」の内部を公開する。
 5、6街区の北側では高輪ゲートウェイシティーの建設が進む。南側ではJR・京浜急行電鉄の駅施設などを含む「(仮称)品川駅街区地区」の開発が進展。今後5、6街区でも大規模開発が始まる見通しだ。
 JR東日本の担当者は調査結果に対し「大変意義深い結果だ」とした上で、「文化財とまちづくりの両立にはさまざまな形がある。有識者や行政の助言をいただきながら、検討していきたい」と話した。
 遺構は高輪ゲートウェイシティーの開発区域内でも見つかっている。同社は一部を保存し、一般の人が見られるような形で公開する考えだ。
 一般公開の詳細は区のホームページ(https://www.city.minato.tokyo.jp/)へ。




from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169467
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回転窓/被災地の冬と教訓

 石川県輪島市の「白米千枚田」で10月中旬から翌年3月中旬までの期間に毎年行われてきたイルミネーションイベント「あぜのきらめき」。今年は能登半島地震と豪雨被害で中止となった▼イルミネーションの電飾は、新潟県小千谷市のイベント「オヂヤホタル」に転用された。2004年10月の新潟県中越地震から20年がたつ同市は能登半島での復興を願い、希望の光をともすことにしたと聞いた▼能登半島地震を教訓にした防災・減災対策を検討してきた中央防災会議のワーキンググループ(WG)が報告書を先週まとめた。耐震対策やインフラ整備、道路啓開体制などの強化・充実を求めている▼全国各地で発生する災害にすぐさま応じる国・地方自治体の職員や関連工事の従事者らの活動拠点を確保することなども提言。元日の発災直後から多くの関係者が厳しい寒さと降雪という過酷な環境下で、十分休む間もなく緊急対応に奔走したためだ▼冬を再び迎えた被災地では復旧・復興工事が続く。年の瀬に現場で奮闘する工事関係者の安全と健康、被災地の早期復興を願う。次なる災害には教訓を生かし、万全を期したい。




from 論説・コラム – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169464
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日建経会長・中村信吾氏(中村建設代表取締役会長)が死去/業界の持続的発展に尽力

 日本建設業経営協会(日建経)会長で中堅ゼネコンの発展に尽力してきた中村建設(浜松市中央区)代表取締役会長の中村信吾(なかむら・しんご)氏が1日、死去した。78歳だった。通夜は8日午後6時から浜松市中央区城北2の26の57のパルモ葬祭浜松貴賓館で。葬儀・告別式は近親者で行う。喪主は長男の誓志(せいじ)氏、施主は同社社長の仁志(ひとし)氏。
 静岡県出身。1969年年高崎経済大学を卒業し、73年中村建設取締役、79年代表取締役副社長、85年社長。2015年から代表取締役会長を務めてきた。
 業界活動では日建経副会長を経て、21年会長に就任。技術や経営の革新、カーボンニュートラル(CN)の実現などさまざまな課題に対し、中堅ゼネコンが機動力を発揮して取り組んでいくことの必要性を訴え、業界の持続可能な発展に力を注いだ。建設業労働災害防止協会(建災防)副会長なども務め、労働者の安全確保や労働災害防止に注力した。08年に黄綬褒章、18年に旭日双光章を受章した。
 地元・浜松の地域振興にに向けても精力的に活動した。新たな魅力づくりに内陸舟運を生かそうと、08年に浜名湖地域舟運都市構想研究会を発足。代表として観光業、遊船業などの関係者や学識者、行政と連携しながら取り組みを展開してきた。
 語り口は穏やかだが信念を曲げない芯の強さがある経営者で、俳句をこよなく愛する人でもあった。




from 人事・動静 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169469
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国交省/改正業法で12月創設の技術者兼任ルールを具体化、連絡員の柔軟配置可能

 国土交通省は改正建設業法の今月中旬の施行分として創設する現場技術者の兼任制度の運用ルールをまとめた。監理技術者や主任技術者の専任が必要な現場で、特例的に兼任を容認する8項目の要件を具体化。例えば現場状況を確認するICT機器は一般的なスマートフォンなどで構わず、監理技術者などをサポートする「連絡員」は複数人を配置し柔軟に運用する方法を認める。低層マンションやリニューアルといった小規模現場が点在する場合にメリットが大きい制度になりそうだ。
 政省令で定める8要件を満たすレベル感や留意点を解説する「監理技術者制度運用マニュアル」の改定案を明らかにした。今月中旬の法施行に合わせ政省令とともに正式に公表する。
 兼任可能な特例のうちICTなどを活用する新たな制度を「専任特例1号」、監理技術者補佐を専任で設置する既存制度を「専任特例2号」と位置付け、両制度を併存させ運用する。特例1号と同じ要件で、営業所専任技術者による専任現場1カ所の兼任も可能とする。
 マニュアル改定案によると、工事途中で請負金額や下請次数の要件を逸脱した場合、以降の特例活用は認めない。兼任する2現場のうち一方が専任不要であっても全要件を満たす必要があり、その場合も2現場を超える兼任はできない。
 連絡員の定義や役割も明確化した。災害・事故対応時を含む円滑な施工管理の補助役として、例えば工程会議や品質検査が2現場で同時進行する場合、監理技術者などが遠隔から指示した内容を現場側に適切に伝達するなどの役割を想定。各工事に配置する際、1人による複数工事の掛け持ちや、1工事への複数人の配置を認める。施工管理の最終責任を請負会社が負うことを前提に、正社員に限らず出向社員や派遣社員の配置も可能とする。
 ICTの活用は「施工体制」と「現場状況」の二つを遠隔把握できることを要件とする。現場作業員の入退場は建設キャリアアップシステム(CCUS)かCCUSとAPI連携したシステムによる確認が望ましいが、ほかのシステムも排除しない。映像・音声で現場状況を確認し双方向でやりとりできれば一般的なスマホやタブレット端末、ウェブ会議システムも許容する。
 特例1号の活用現場では施工管理の手段や人員配置に関する計画書の作成や保存が必要で、国交省が参考様式を示す予定だ。




from 行政・団体 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169454
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北海道建設部/23年度ICT活用工事受注者調査結果、課題は機器コストと技術者不足

 北海道建設部は、2023年度に試行したICT活用モデル工事の受注者アンケート結果をまとめた。作業の各段階で要した日数や人工数の定量的評価は、工事全般の平均値で従来施工より36%削減され、施工の効率化や労力の軽減などの効果が認められた。一方、未実施の理由では機器調達の費用増加や技術者の確保を課題に挙げる意見が多く、費用助成制度の導入・拡大を求める声が多くなっている。
 同部では、国によるi-Constructionの取り組みの加速などを踏まえ、17年2月に「建設現場のICT活用に関する北海道の取組方針」を策定し、18年度から施工前を含めた建設生産プロセスの5段階でICT施工を活用する全面的なICT活用工事を試行導入した。22年度からは一部プロセスでの活用を可能とする部分的なICT活用工事、23年度には設計データ作成と出来形管理・納品に特化した簡易的なICT活用工事を導入し、取り組みを拡大していた。
 今回のアンケートは23年度内に完成したICTモデル工事の受注者を対象に実施し、34件の回答を得た。回答者のうちICT施工を実施したのは18件、未実施が16件だった。
 調査結果を見ると、実施工事18件はすべて土工(道路・河川・砂防)で舗装はゼロ。使用したICT建設機械はマシンガイダンス(MG)バックホウが14件、マシンコントロール(MC)バックホウが7件、MCブルドーザーが1件だった。活用計測技術はUAV(無人航空機)が11件、レーザースキャナー(LS)が5件などとなった。
 定量的評価では、各段階(事前準備段階、施工段階、提出書類作成段階)でICT施工で要した日数と主作業員数、補助作業員数を、従来施工と比較。屋内作業(内業)時と屋外作業(外業)時に分けて集計した。
 内業の事前準備段階で日数が31%増、主作業員が32%増となったほかは、内業、外業ともすべての段階で日数、主作業員、補助作業員のすべてが従来施工より削減された。
 内業では補助作業員の人工が事前準備段階で51%減、施工段階で77%減、提出書類作成段階で50%減とすべての段階で半減した。
 外業では事前準備段階で日数が38%減、主作業員が53%減、補助作業員が49%減。施工段階で日数が34%減、主作業員が46%減、補助作業員が45%減とすべての工程で日数、人工とも縮減している。
 日数と人工を合わせた平均値は内業が43%減、外業が28%減、全体平均は36%減となった。ICT活用工事のメリット(複数回答)については全18工事が「作業効率の向上」と回答し、そのほかにも施工精度の向上や安全性の向上などが挙げられた。
 一方、未実施者に聞いた未実施の理由では「重機や機器のレンタル費用などでコストが増加する」が7件、「3Dデータ作成者やオペレーターなどの技術者が確保できない」が6件と上位を占める。今後の普及に必要なことの質問でも「機器類の調達に係る費用助成制度の導入・拡大」が14件、「人材育成に係る費用助成制度の導入・拡大」が10件となっており、機器調達のコストと技術者不足に課題がある結果となった。




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東京都/防災都市づくり推進計画の基本方針案、25年早期に提示

 木造住宅密集(木密)地域の改善などを定めた「防災都市づくり推進計画」の改定に取り組んでいる東京都は、同計画の新たな基本方針案を年明けに示す。建築物の不燃化や防災機能を備えた公園整備などに対するサポートを拡充する。能登半島地震では木密地域で発生した火災が燃え広がり被害が拡大した。都内に残っている木密地域の解消を加速し、被害を抑えたい考えだ。
 小池百合子知事が3日に開いた2024年第4回都議会定例会で明らかにした。小池知事は「都においても『燃えない・燃え広がらない』まちづくりのさらなる強化が必要」と強調。安全・安心な都市づくりをさらに推進する考えを示した。
 防災都市づくり推進計画は、延焼遮断帯の形成のほか緊急輸送道路の機能確保など、都市構造の改善に関する施策推進を目的に定めている。「基本方針」と「整備プログラム」で構成。基本方針は、防災都市づくりに関する施策の指針や目標を提示している。
 整備プログラムは、直近では20年度末に改定した。不燃化対象地域を「木密地域」「整備地域」「重点整備地域」の3層構造に分け、各地域ごとに対策を展開している。最優先で不燃化が必要な重点整備地域では、建て替え費用の助成のほか固定資産税の減免措置など講じている。




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国交省、人材協/建設人材育成優良企業表彰式開く、国交大臣賞に4社

 国土交通省と建設産業人材確保・育成推進協議会(人材協、事務局・建設業振興基金)は2日、第3回「建設人材育成優良企業表彰」の表彰式を東京・霞が関の同省で開いた。高橋克法国交副大臣が国交大臣賞に輝いた▽小川工業(埼玉県)▽大和ハウス工業(大阪府)▽東亜グラウト工業(東京都)▽ヤマグチ(鹿児島県)-の4社に表彰状と記念品を手渡し、栄誉をたたえた=写真。
 建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した処遇改善や働き方改革などの先進的な取り組みを評価した。式典後には担い手の確保・育成の現状について懇談し、高橋副大臣は「有望な担い手をこの国のためにも確保していかなければならない。皆さまの取り組みを多くの経営者に知ってもらいたい」と述べた。
 小川工業の小川貢三郎社長は、技能者の就業履歴を全現場で蓄積できる体制を整備し「現場の職人が評価されることが重要」と話した。男性社員の育休を推奨し、取得率100%を達成したことも紹介した。大和ハウス工業の河野宏上席執行役員技術統括本部副本部長は、全国で稼働する膨大な現場数に対応するためスマートフォンによる顔認証の入退場システムを展開していると説明。CCUSレベル別の手当を給付する社内制度「技能者キャリアアップ制度」を2025年4月に創設するとした。
 東亜グラウト工業の山口乃理夫社長は、労使の協力で働き方改革を推進し、講話や研修などで「キャリア自律」を支援していると紹介。若手社員などの意欲を引き出すことで個人のステップアップや離職率の低下などにつながっているとした。ヤマグチの山口克典代表取締役は、建設ディレクターを積極的に導入し社内の業務効率化を進めるとともに、社員の資格取得費用を負担したりブランディングに取り組んだりして「建設業の魅力向上につなげていく」と話した。




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大阪府/池田保健所移転建替、緑化計画を継続審議

 大阪府が計画する池田保健所の移転建て替え事業が、府の景観審議会公共事業アドバイス部会の対象事業として新たに加えられ、11月19日に第1回会合が開かれた。府と基本設計を担当している相和技術研究所が、外観にアースカラーを採用することや敷地内の緑化計画を説明し、委員から意見を受けた。2025年度での継続審議となった。
 池田保健所は1960年度の完成から60年以上が経過し、老朽化や手狭な状況が進み、地域保健活動に影響を及ぼしている。このため池田市医師会館跡地(池田市鉢塚1)への移転新築を計画。府の資料によると、新施設はRC造4階建て延べ1743平方メートル、最高高さは約18メートル。
 基本設計を25年2月25日の納期で現在作成中。今後、25年度当初予算に実施設計の委託費を盛り込み、相和技術研究所と随意契約する予定。着工は26年度後半になる見通しで、28年度中の完成を予定。総事業費は21億円超を概算している。
 会合では計画地の背後にある五月山など北摂山系の景観区域に配慮したデザインや緑地の配置計画を提示した。具体的には▽敷地沿道は緑化し、山並みの緑との連続性を保つ▽交差点部や道路に面して、高木・中木・低木をバランス良く配置する▽敷地周辺の建物とボリューム感・色調をそろえる▽北側住宅への日影を配慮し、建物を南側に配置する▽計画地西側の公園と連続した緑化-などに取り組む。
 委員からは「敷地内外の緑化をさらに具体化すべきだ」「周辺地域との調和を強化すべきだ」といった意見が出された。駅から施設までの動線の安全性や交通量への配慮も求められた。
 府は委員の意見を踏まえ、基本設計をさらに精緻化し、次回会合で対応状況を報告する。




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愛知県武豊町/公共交流拠点基本構想案、新庁舎・保険センターは33年度供用目指す

 愛知県武豊町は、「武豊町公共交流拠点基本構想案」を公表した。武豊中央公園南側の公共機能集積エリア内に老朽化した役場庁舎と保健センターを移転新築し、併せて民間提案施設などを整備することで住民が集い交流を育むエリアとするまちづくりを進める。このうち新庁舎と保健センターの公共施設は2033年度の供用開始目標を示し、25年度に基本計画の策定作業に入るとした。
 公共交流拠点の整備エリアは約5・4ヘクタール(半田消防署武豊支所のエリア除く)。計画では役場庁舎と保健センターは合築して敷地南側に配置。武豊港線から視認性が良い敷地北側には集客効果の高い民間提案施設を配置する。役場庁舎・保健センターと民間施設との人の流れをつなぐ交流施設も計画する。誰もが自由に利用できるフリースペースや天候に左右されず親子で遊べる屋内遊戯スペースなどの機能を想定しているが、公共・民間の施設的位置付けは未定。民間提案施設の内容によって今後、検討する。
 役場庁舎と保健センターの公共施設については今後の整備スケジュールも示した。25年度から基本計画の策定に入り、機能や規模、整備手法などを検討し27年度中に策定する。引き続き27年度に基本・実施設計をスタートする。30年度に着工し、33年度の供用開始を目指す。
 造成などの基盤整備は25年度から設計を進め、市街化調整区域内地区計画などの法的手続きの完了後に工事着手する。
 民間提案施設も並行して事業スケジュールや事業スキームなどの検討を進め、より良い官民連携手法の可能性を探っていく。




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2024年12月3日火曜日

日建連/日建連表彰2024表彰式開く、土木賞12件・BCS賞15件の受賞たたえる

 日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)は11月29日、土木、建築両分野を対象にした「日建連表彰2024」の表彰式を東京都港区のThe Okura Tokyoで開いた=写真。土木分野の優れたプロジェクトや構造物を表彰する第5回「土木賞」は12件、国内で建設した優良建築物を表彰する第65回「BCS賞」は15件が受賞した。宮本会長が関係者に表彰状を授与し、功績をたたえた。
 冒頭あいさつした宮本会長は「日建連表彰は良質な社会資本や優れた建築物を創造し、その実現に寄与した方々の功績をたたえるもの。日建連では日建連表彰の知名度向上に取り組んでおり、建設業関係者の間で日建連表彰の価値が高まってきていることを大変うれしく思う。建設業界を代表する表彰制度として定着・発展するよう研さんを積み重ねていく」と語った。
 土木賞とBCS賞の選考委員を代表し、京都大学の木村亮名誉教授と東京大学の稲山正弘名誉教授が講評した。
 受賞者を代表し「東海道線支線南2地区路盤新設他工事狭隘(きょうあい)近接東海道本線営業線直下での交差部桁受替・直下切換工事」で土木賞を受賞したJR西日本の森清裕与之大阪工事事務所長は、橋脚の先端の許容変位幅が12ミリ、工事桁撤去にかけられる時間が15時間という難工事のポイントを説明。その上で「施工時間が最短となる施工計画を検討し、検証を重ねて実施工に臨み切り替えを実現できた。これらはすべての関係者が相互に協力し、取り組んだ成果だ」と語った。
 続いて「ところざわサクラタウン」でBCS賞を受賞したKADOKAWAの夏野剛社長は、建物の竣工時期とコロナ禍が重なったことなどを受け開業後、一部用途を変更したことについて「建てたときと違う用途にした点を評価され、うれしく思う。非常に苦心し、方向転換しながら運営してきた」と喜びを語った。今後の建物の活用に当たっては「サステナブルな建築物になるという確信を持っている」と力を込めた。




from 行事 – 日刊建設工業新聞 https://www.decn.co.jp/?p=169446
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