2022年5月20日金曜日

和歌山水管橋崩落/土木学会関西が報告書、つり材の破断・腐食を検証

 土木学会関西支部は、2021年10月3日に和歌山市の紀の川に架かる六十谷水管橋が崩落したことを受けて実施していた調査・解析の報告書をまとめた。
 六十谷水管橋は、支間長約60メートルのランガー桁形式の7径間連続アーチ橋で、4径間目が崩落。崩落箇所の隣接径間でつり材の腐食や破断が確認されている。土木学会関西支部では、杉浦邦征京都大学大学院地球環境学堂教授を団長とする調査団を現地に派遣。21年10月17日と11月2日に現地調査を行い、2月に回収した部材の検分を行った。
 調査報告書は、京都大学による現地調査、腐食に関する現地計測、数値解析と土木研究所による腐食に関する分析で構成されている。
 現地調査では、崩落した径間とその右岸側の隣接径間でつり材の破断箇所が上部と下部の2カ所存在することを確認。上部破断の場合はブレーズ材がアーチリブとつり材を連結し、水管の死荷重がアーチリブに伝達されるが、下部破断の場合はつり材がアーチリブから切り離され荷重を受け持たなくなる、とした。また、崩落以前に撮影された画像情報から3カ所のつり材上部が20年12月地点で破断していることも確認できたという。
 数値解析では、水管橋が崩落に至るには、つり材の一部が破断し、さらにブレース材も腐食などにより本来の強度を発揮できずに破断し、その際に生じる荷重の再分配によって他構造部材に想定外の応力が発生することが原因だと推測できた、としている。
 解析によって得られた崩壊シナリオは次の通り。
 ▽複数箇所のつり部材上部が破断し、ブレース材によって荷重を伝達している状態となる▽いずれかのつり部材が破断したことによりブレース材の作用する荷重が増加し破断する▽アーチリブの4分の1点に過大な鉛直荷重が作用し、面内座屈によりアーチリブが崩壊する▽アーチリブの免罪座屈により径間全体で支持機能を喪失した本管も自重に耐えられずに崩壊する。
 調査により、同支部は、バックアップルートの確保が難しい水管橋の特殊性と重要性、水道システム全体のより合理的で効果的な点検・維持管理手法の必要性を強く再認識した。同手法確立への道は険しいものだが、調査報告書がその一助になることを願う、と締めくくっている。
 報告書は土木学会関西支部のホームページで公表している。



source https://www.decn.co.jp/?p=142715

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