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日刊建設工業新聞社の公式ブログです。
中日本高速道路会社が岐阜県内で建設を進めている東海環状自動車道の柿田トンネルが貫通し28日、可児市柿田のトンネル坑内で貫通式が開かれた。池田光次名古屋支社長をはじめ冨田成輝可児市長、金子俊平衆院議員ら多数の関係者が出席。貫通発破、貫通点清め、貫通点通り初め、鏡開きなどを行い、土岐JCT~可児御嵩IC付近4車線化事業の節目を祝った。施工は大林組。
式典では、池田支社長らが貫通発破のスイッチを押した。無事貫通が確認されると、秋山幸一大林組柿田トンネル工事事務所長が藤原由康中日本高速道路岐阜工事事務所長に貫通を伝え、藤原所長が「設計通り誤差無く貫通した」と報告。関係者による万歳三唱も行われた。
池田支社長は「多くの関係者のおかげで貫通を迎えることができた。大変難しい工事だったが、施工者や協力企業の技術力により無事故での貫通となった」と感謝するとともに「今後も安全を最優先に4車線化を着実に進める」とあいさつ。冨田市長は「市民の念願を着実に進めていただき感謝する。ストック効果をしっかり発揮したい」と祝辞を述べた。
施工者謝辞で山本裕一大林組常務執行役員名古屋支店長は「技術と経験を結集し、工程の順守と厳格な品質管理を実施した。完成まで品質や供用線の通行の安全など、万全を期して取り組む」と力強く語った。
柿田トンネルの延長は1638メートル。掘削断面積は約80平方メートル。NATMを採用し、可児御嵩IC側から掘削を進めた。掘削着手日は2020年10月26日。工期は23年10月13日まで。供用中のトンネルとは約20メートルの距離で近接。約10メートルの低土被り区間もあったが無事、貫通することができた。
貫通を記念し2月1日午前9時から道の駅可児ッテで貫通石の無料配布を行う。
海外建設協会(海建協、相川善郎会長)は23日、海建協と日本建設業連合会(日建連)の会員企業が海外で携わった優れた建設プロジェクトを対象にした第1回「OCAJIプロジェクト賞」の表彰式を、東京都千代田区のホテルニューオータニで開いた。14社が応募した25件の中から11件を選定。相川会長が受賞した会員企業の関係者に表彰状と記念品を手渡した。
冒頭、相川会長は「今回受賞したプロジェクトは各地域から発信されるさまざまな要請に対し、中長期の視点に立った施工計画などが実践され、発注意図に沿う大変効果的な方策が講じられた。わが国の建設業にとって国際的なプレゼンス向上に資する成果を上げられた」とあいさつした。
相川会長は今後の展望にも言及。世界的なインフレやウクライナ危機の長期化などを念頭に「海外建設市場は先を見通せない厳しい状況が続いている。海建協ではOCAJIプロジェクト賞を通じ日本の建設技術があらゆる困難を打開する可能性を備え、将来にわたり時代のニーズに即応し得る水準にあることを積極的に訴えていく」と述べた。
受賞者を代表し大林組の木村隆之アジア支店土木部長は「技術者として大変誇りに思う。今回の受賞を励みに次の新たな目標として研さんを重ね、それぞれの役割をまい進したい」と謝意を示した。
中部地方整備局静岡国道事務所と静岡県藤枝市は21日、国道1号藤枝バイパス(BP)潮トンネル着工式を藤枝市下藪田のトンネル西側坑口付近で開いた。自治体や地元関係者など58人が出席。葉梨こども園の園児らも参加した鍬入れ式が行われ、地域の安全や防災力向上など多方面に貢献する事業の着工と早期完成を祈願した。
式典で稲田雅裕中部整備局長は「藤枝BPの全線4車線化は渋滞緩和や企業活動の活性化、救急医療体制の拡充などに寄与する。工事を安全、着実に進め一日も早い全線4車線化を目指す」とあいさつ。北村正平市長も「藤枝BPは安全・安心な市民生活を守るために極めて重要な道路。潮トンネルの着工で4車線化が大きく前進した」と述べ、事業の早期完成に大きな期待を寄せた。
新東名高速道路の開通で沿線の企業進出が進み、交通量の増加で渋滞が発生。県道や街路に車両が流入し事故も多発している。このため、藤枝市仮宿(広幡IC)~島田市野田(野田IC)間の延長10・7キロを4車線化することで渋滞を緩和し事故率を低下させ、地域の安全・安心を守る。2016年4月に事業着手した。1号藤枝BP潮トンネル工事の概要は、工事延長500メートル、トンネル掘削延長318メートル。施工場所は藤枝市潮~下藪田。施工は飛島建設が担当。
ミライト・ワンの渡辺奈南香さん=写真右=と吉田陽菜さんが、2022年11月4~7日に東京都内で行われた「第60回技能五輪全国大会」の情報ネットワーク施工職種で共に銅賞を獲得した。渡辺さんは1年目に賞を取れず、2、3年目が敢闘賞。悲願のメダル獲得に「取れて良かった」と笑みがこぼれる。吉田さんは2回目の出場。「メダルを取れてうれしいがもう少しできた」と厳しく評価する。
身近な存在に建設業はいなかったという2人。渡辺さんは就職に強い工科高校で学び、電気工事士の資格を取る中で手先を動かす仕事に就きたいと入社した。吉田さんは学生の頃女性が競技に臨む姿が印象に残り憧れを抱いた。「技能五輪に出たい」との思いで飛び込んだ。
入社してからは基本的に技能五輪に特化した訓練に励む。スピードと見栄えが求められ「どう効率良く作業したらいいかを考えながら訓練するのが大変だった」と渡辺さん。先輩に教えてもらいながら正確さを磨いた。吉田さんも普段から効率を考えて生活し、競技で生かしているという。
技能五輪を引退する渡辺さんは今後、選手指導や技能研修のインストラクターとしてサポートに徹する。「業界や技能五輪にもっと女性が携わってほしい」と期待を込める。次の大会で金メダルを狙う吉田さんは「技能五輪で培った技術力を生かしたい。女性でもできると証明したい」と力を込める。
(わたなべ・ななか)(よしだ・はるな)
大阪府門真市の京阪本線門真市駅前の複合ビル「門真プラザ」(新橋町)の建て替えに向け、地権者でつくる再開発準備組合は、前田建設を代表とするグループを事業協力者に選定した。門真市など行政機関の支援を受けながら再開発事業の実現を目指す。準備組合は2023年度に都市計画決定し、24年度の本組合設立、26年度の着工を目指している。
門真市駅前地区市街地再開発準備組合が11日に臨時総会を開き、前田建設グループを事業協力者にすることを決めた。他の構成員は野村不動産、京阪電鉄不動産、旭化成不動産レジデンスの3社。
門真プラザは、市などによる門真市駅前再開発事業で1973年に完成した複合施設。78年から市や民間企業が出資する第三セクター「門真都市開発ビル」が管理している。施設規模はSRC造地下1階地上12階建て延べ約4万1660平方メートル。市営住宅20戸や分譲住宅35戸、店舗などで構成し、老朽化や耐震性に課題がある。
予定する事業名は「(仮称)門真市駅前地区市街地再開発事業」。事業区域は約1・9ヘクタールを想定。市の玄関口にふさわしい都市機能を導入し、駅前広場などを整備することでにぎわいと交流の拠点を目指す。市営住宅と分譲住宅または賃貸住宅、商業・業務、駐車場機能などの導入をイメージしており、今後は地権者のほか、事業協力者の意見などを踏まえ、具体的な施設計画や収支計画を検討する予定だ。
事業協力者は▽基本計画案(都市計画素案)の立案▽事業計画案の策定支援▽組合設立までの事業資金の立て替え▽保留床処分▽権利者の合意形成支援-などの役割を担う。
コンサルタントはユーデーコンサルタンツが担当する。
大分県は「都市計画道路庄の原佐野線(下郡・明野工区)」(大分市下郡南~明野西、延長約1・6キロ)の整備について早期の補助事業採択を国に要望している。事業区間の変更とそれに伴い事業費を約20億円増額し約270億円とする事業再評価が有識者らの県事業評価監視委員会で了承され、2022年12月に都市計画変更手続きを完了し事業化に向けた条件が整った。事業採択されれば測量や調査、設計などに着手する。
下郡・明野工区は21年度に県事業評価監視委で事前評価を行い、23年度の事業化を目指すことを妥当と評価された。この段階で事業区間の延長は約1・3キロだったが、その後、起点側に接続する事業中の下郡工区の連続高架橋部分約300メートルを下郡・明野工区に含める形で事業区間を変更。22年11月の県事業評価監視委で再評価を審議し了承された。
再評価書によると事業内容変更後の重要構造物は本線の連続高架橋が延長914メートル。ランプ部の橋梁230メートルは従来計画から変更はない。これら以外は土工部となる。車線数は4車線、設計速度は時速60キロ。幅員は車道が13メートル、これに歩道や自転車道を含めると22メートル、ランプがある高架部は最大61メートル。
概算事業費のうち約6割を橋梁工が占める。費用便益費(B/C)は前回評価より0・1下がり1・6となる。23年度に事業採択されれば23~24年度に測量や調査、設計と併せて事業内容変更前に下郡工区だった区間の橋梁下部工を進め、25年度の用地取得着手、28年度以降の工事本格化、36年度の事業完了を想定する。
整備されれば大幅な交通の転換により県道大分臼杵線の交通渋滞緩和や所要時間短縮が図られるほか、浸水時の避難路の確保などの効果が見込まれる。
庄の原佐野線は大分市の東西骨格軸となる重要な路線。延長約15・35キロのうち起点から約6キロが地域高規格道路大分中央幹線道路として事業化され、このうち起点から約5・1キロが開通済み、これ以外の約0・9キロが下郡工区として事業中となっている。
奈良県は、興福寺(奈良市登大路町)の国宝五重塔の保存修理に向け、建物全体を覆う素屋根を設置する。当初は今月中の着工を目指し、2022年7月に設置工事の入札を公告したが、建設資材高騰の影響や追加の調査が必要になり、選定手続きがずれ込んだ。20日に「国宝興福寺五重塔素屋根建設工事」の一般競争入札を再公告した。2~4者構成のJVから30日まで参加申し込みを受け付ける。総合評価方式を適用し、2月6日まで技術提案書の提出を受ける。入札書の開札は3月8日を予定。
興福寺は藤原氏の氏寺で五重塔は730年に建てられた。5回の焼失と再建を経て、1426年ごろに現在の塔が建てられたとされる。経年劣化で屋根の傷みが著しく、瓦の状態を確認しながら全面的にふき替える。
参加資格は建築一式A等級で、代表者は県内に本店を置き、経営事項審査の建築一式工事の総合評定値が900点以上。県内に営業所を置く者も900点以上あれば参加できる。それ以外は代表者と同じ条件の構成員と県内に本店や営業所があること。入札書は2月28日~3月3日に受け付ける。
技術提案による加算点は最高22点。品質管理や安全管理、企業の施工実績を評価して落札者を決め、議決後に契約を結ぶ。
工事は仮設用仮設足場の設置。新築、電気・機械設備のほか、除却工事などを含む。敷地は約3900平方メートル。規模はS造6階建て延べ5017平方メートル。仮設足場を含めると7357平方メートルになる。基礎は直接基礎とし、屋根はガルバリウム鋼板折板葺き、外壁は防炎メッシュシート2重張りを採用する。高さは59メートルになる。工期は24年7月31日まで。設計は桝谷設計が担当。
予定価格は22億7999万2000円(税込み)。低入札価格調査制度の対象となり、調査基準価格は20億9759万円2000円(同)。前回公告時の予定価格は14億9494万4000円(同)だった。
愛媛県内の建設関連企業で女性の活躍を後押しする取り組みが広がっている。育児を支援するイクボスの愛媛県版「ひめボス」の宣言事業所が設定した自主目標を達成すると「ひめボス事業所plus」「ひめボス事業所plus+」に認定される新制度が2020年度にスタート。22年度認定(16日時点)で建設関連企業は計25社(全業種は94社)が目標をクリアしている。
県は達成した目標の数に応じ、ひめボス事業所plus(一つ達成)、ひめボス事業所plus+(二つ以上達成)として認定する。22年度は建設関連企業で、ひめボス事業所plusに3社、ひめボス事業所plus+には6社が認定された。
ひめボス事業所plus+に認定された1社が管工事業の重松兄弟設備(松山市、清水盛士郎社長)。目標としていた女性職員の定着で、女性従業員が16年度の6人から21年度に8人に増加。退職者ゼロの定着率100%を達成した。従業員45人で女性比率は17・7%となっている。
同社は産前・産後休業以外に、育児や看護、介護のための休暇を整備。積極的な取得を周知し、男女問わず介護離職などを防ぐ取り組みを継続して行っている。採用者に占める女性比率を30%に引き上げる新たな目標を掲げた。
同じくひめボス事業所plus+に認定された白石建設工業(新居浜市、白石尚寛社長)は、従業員94人で女性比率39・4%。育児のための短時間勤務制度を設けており、21年度は1人が利用した。同制度を使いやすくするため、制度を広く周知して同僚らの理解を獲得。利用者の業務負担の軽減につなげた。
説明会で産休・育休取得の実績をアピールし、新規採用に占める女性比率も増加している。過去3年の新卒採用24人のうち女性が10人を占める。新しい目標として、女性技術者の活躍を推進する研修などへの積極的な参加(年2回以上)を促していく。
アシストスーツを展開するイノフィス(東京都新宿区、折原大吾社長兼最高経営責任者〈CEO〉)やアルケリス(横浜市金沢区、藤澤秀行代表取締役兼CEO)ら4社が、任意団体「アシストスーツ協会」を立ち上げた。アシストスーツの認知度向上と市場形成の加速化が狙い。業務や作業環境によって有効な製品が異なるため、協会で連携して展示会や出張体験会を開き、普及拡大を図る。建設を含めた業界団体らに積極的にアピールしていく。
加地(島根県出雲町、小川要社長)とダイドー(大阪府河内長野市、追田尚幸社長)を含めた4社で、2022年11月11日に発足した。このほか6社が入会を希望しており、早期の一般社団法人化を見据える。
アシストスーツは、モーターによる支援や人工筋肉などを用いた荷重分散効果で、重量物の移動時などに身体にかかる負荷を軽減する。建設現場でも一部で導入されているが、利用目的に見合った製品を探したり体験したりすることが難しい面もあった。メーカー間で連携してPRし認知度を高め、導入促進を狙う。
20日には東京都内で展示体験会「アシストスーツサミット」を開き、会員の製品を紹介した。代表理事を務めるアルケリスの飯田成晃取締役兼最高執行責任者(COO)は「業界団体に声を掛けてもらい、スムーズにマッチングしていきたい。個人が気軽に使えるようにしたい」と話す。行政との連携や、装着時のデータを収集してビッグデータを活用することも見据える。
東光電気工事が全社で取り組んでいるペーパーレス化が浸透してきた。2022年12月時点で全社保有の紙文書量が21年8月時点と比べ、約7割の削減を達成。個人保有の紙文書量は約半分に減らすことができている。紙を削減することによる業務効率化や、時間と場所にとらわれない働き方の実現を目指す。
同社は紙文書を減らすプロジェクト「文書管理改善PJ~紙も電子もスッキリ大作戦」を22年4~12月に実施した。▽全社の紙文書量を70%削減▽個人の紙文書量(袖机)を50%削減▽全社共通の文書管理を維持するための適切なルールの構築-の三つを目標に掲げた。コンサルタントはコニカミノルタジャパンが担当した。
全社の紙文書量の削減率は70・6%。中でも北海道支社、九州支社は約80%の削減を達成した。個人の紙文書量は54・7%の削減率となった。東京都千代田区の本社は、9割以上の部門が50%以上削減した。支社平均は47%以上で、目標値の50%に近い削減結果となった。今後は現場部門の個人文書を中心に削減することで目標達成を見込む。
電子化した後に廃棄する文書も同時に選定。廃棄できない文書の中には、紙での保存義務がない文書が多く存在していたという。電子化によって検索性や閲覧性が高まり、より効率的に文書を取り扱えるようにしていく。
削減活動で不要になったキャビネットを廃棄し、新たな打ち合わせスペースを確保した。袖机を削減できたことでフリーアドレスを一部で導入した。社内コミュニケーションの活性化と、キャビネットや書類の廃棄を促すことで社員一人一人の文書管理の意識定着を図っていく。
同社は今後、プロジェクト成果を踏まえ、23年4月から文書管理ルールの運用開始を目指す。文書管理の是正ポイントを洗い出し、文書を電子化。クラウドや文書管理システムの検討なども進める。
ゼネコン各社が九州で地熱を利用する取り組みを進めている。西松建設は、熊本県小国町で地元企業から譲り受けた地熱発電事業を開始。大林組と清水建設は、大分県で地熱とその他発電を組み合わせて製造過程から二酸化炭素(CO2)を出さない「グリーン水素」の出荷を九重町でそれぞれ実施するなど、地域資源を生かした活動を展開する。
大林組が九重町に建設した実証プラントでは、地熱発電とその他発電電力を利用して製造した「グリーン水素」を九州各地の需要先に供給する事業を2021年7月に開始。同県内で催された自動車レースに水素エンジン搭載車両で参戦したトヨタ自動車は、地産地消で製造されたこのグリーン水素を燃料として利用した。
清水建設はスギのチップ材と地熱水の蒸気をバイオマス資源に利用した低コストなグリーン水素製造技術を地元企業らと共同で開発。九重町に建設したプラントの実証運転を昨年8月から12月にかけて実施。安定的な稼働、製造コストやCO2排出削減率などを算定した報告書を3月中に環境省に提出する予定だ。この実証事業で得られるノウハウを生かした中小地熱発電所に併設する水素製造実用プラントの自社開発に取り組むという。
西松建設が阿蘇を拠点とする石松農園(熊本県小国町、石松裕治社長)から事業を譲り受けた「わいたグリーンエナジー地熱発電所」は、温泉井戸の余剰蒸気を有効活用する温泉バイナリー発電所。西松建設はこれをパイロット事業と位置付け、地域と共存する地熱発電所の開発・運営ノウハウを取得してさらなる事業の推進を図る。
地熱発電発祥の地とされる大分県をはじめ、九州各地には源泉が多く地熱利用のポテンシャルは高い。この地域資源を50年カーボンニュートラルの目標達成に生かそうという各社の活動は、今後一層注目されそうだ。
2022年11月4~7日に東京都内で行われた「第60回技能五輪全国大会」の左官職種で金メダルに輝いた。入社3年目の快挙に「左官の仕事に性別やキャリアは関係ないと実感できた」と喜びをかみしめる。「応援してくれた皆さんのおかげで取れたメダル」と謙虚に捉えている。
建設業を営む祖父に憧れ職人の道に進んだ。阿久津左官店に入社してすぐに、阿久津一志社長に腕を見込まれ出場を薦められた。全国左官技能競技大会で3位となったことがある先輩職人の遠山雄太さんが指南役となり、特訓の日々が始まった。
競技は厚塗りや薄塗りなどの技術を駆使し、ボードにモチーフを描く。練習は「一度も納得いく仕上がりにならなかった」。前日まで完璧にこなせたことが突然できなくなり、ふがいなさに涙を流したときもあった。何度も諦めようと思ったが、そのたびに遠山さんが「大丈夫だよ」と声を掛けてくれた。「親身になって支えてくれた方々のためにも負けるわけにはいかない」。そんな心構えで本番に臨み、金賞を勝ち取った。
大会を終えて「社長や遠山さんがいなければ、今の自分はなかった」と振り返る。若手や女性職人がまだ少ない左官業界だが、「先輩方から教わったことを後輩に引き継ぐ。さまざまな世代に仕事の魅力を広められるようアプローチしたい」と未来に目を向ける。
(おそざわ・みやび)
大阪府警察本部が2023年度当初予算案編成で計上を要求していた、大阪市此花区夢洲地区に新設する警察署庁舎の基本計画策定費5百万円が認められた。府と大阪市、大阪IR(大阪市北区)が誘致を進めるカジノを含むIR(統合型リゾート)施設とのアクセスが良好な場所に設ける。大阪IR区域整備計画によると、警察署設置などのイニシャルコストとして約71億円を見込む。予算の議決後、23年度に基本計画を策定する。24~26年度に設計、26~29年度に工事を行う見通しだ。
夢洲の警察署は、IR施設の開業により、国内外から多くの旅行者や利用者が夢洲を訪れることが想定され、「犯罪の発生対策などに万全を尽くす必要がある」(大阪府警察本部)ため、新警察署の設置方針がIR区域整備計画に位置付けられた。
新警察署の設置で警察職員は約340人を増員し業務を行う計画。夢洲だけでなく周辺の地域や繁華街などでのトラブルや事件・事故の未然防止、マネーロンダリング対策などの検挙活動、青少年の健全育成対策の強化などにあたる。
現在、夢洲地区は此花警察署が管轄し、事件・事故発生時にはユニバーサルスタジオ前交番(此花区島屋)が対応している。
新警察署の計画が順調に進むと、府内の警察署開設は、21年7月の中堺警察署(堺市)以来となる。
国土交通省が2025年度までにBIM相互のデータ連携環境の構築とともにBIMによる建築確認申請の試行を開始するとし、80億円規模の建築BIM加速化事業を実施するなどBIMを巡る環境は急変している。そのような状況下、BIM相互のデータ連携を可能にするSaaS(Software as a Service)として注目を集めているのがCDE(Common Data Environment)だ。今後のBIM展開を左右する最も重要なファクターであるCDEについて概説するとともに、代表的なCDEとしてBimsync(グローバルBIM社)について例示する。
□CDEに関する情報源として注目の建築BIM推進会議とBIMの国際規格としてのISO19650□
CDEは「建設プロジェクトに関わる多くの組織がより効果的に協働するために必須なクラウド上の共通データ環境」と訳される。CDEに関する情報源としては、国交省の建築BIM推進会議やBIMの国際規格であるISO19650に求めることができる。
建築BIM推進会議は、BIM普及の課題としてデータの不連続を解消するために情報共有基盤の整備を目的とし、CDEについて詳細に検討している。創る=設計BIMから、建てる=施工BIMを経て、管理する=維持管理(FM)BIMに至る建設プロジェクトにおいては、前工程から後工程にデータをバトンタッチ方式で供給(Data Delivery)するとともに、関係者間でデータを共有(Data Share)するCDEが必須としている。
ISO19650では、発注者による発注者情報要件(EIR)と資産運用時の情報要件(AIR)に従い、設計・施工業者は、プロジェクト情報モデル(PIM=設計・施工段階のBIMモデル)を作成し、維持管理業者は資産情報モデル(AIM)を作成するとしている。合わせて、ライフサイクルコンサルタントがPIMを維持管理に使用するAIMへと展開するとしており、データ連携の核心にはCDEが位置づけられている。
□IFC・BCFを基軸としてオープンBIMによるコラボレーション環境を実現する「Bimsync」□
Bimsyncは、ノルウェー・オスロのCatenda社が開発、提供している建設プロジェクト管理に特化したプラットフォームだ。クラウド(サーバー)で稼働し、インターネット経由で利用するのがSaaSとされるゆえんであり、そのためWEBベースで利用でき、OSやデバイスには依存しない。
デジタル情報は、組織の壁もシームレスに越えていくが、組織によって使用するBIM関連ソフトが多様であり、データ互換性はない。図にあるように、Bimsyncは、異なるソフト間のデータ連携を可能とするオープンフォーマットであるIFC(Industry Foundation Classes=ISO16739)・BCF(BIM Collaboration Format)を基軸としてオープンBIMによるコラボレーション環境を実現する。
□IFCデータのアップ・ダウンロード+リビジョン管理+ダイレクトリンク+API連携を実現□
オープンBIMによるコラボレーション環境については、IFCデータのアップ・ダウンロードはもちろんのこと、BIMデータの履歴のリビジョン(改訂)管理から、3次元モデルの重ね合わせ+点群との重ね合わせ、2次元・3次元の切り替え表示、意匠・構造・設備モデルとの確認調整まで優れた特徴を備えている。
主要なBIMソフトである「Archicad」「Revit」「Tekla」などでは、プラグインによるダイレクトリンクが可能で、IFCによる入出力、BCFでの連携も実現、NYKシステムズの「Rebro」とはプラグインによるダイレクトリンクの開発に着手するなどBIMの推進を加速すると思われる。
API(Application Programming Interface)による外部アプリケーションとの連携もCDEとしての可能性を広げており、先進的なIWMS(Integrated Workplace Management System=統合型職場管理システム)などとの連携も実現、「MainManager」などとの連携も推奨している。直近では建物設備データ、IoTデータなどとAPI連携できるソリューションをリリースするなどBuilding OS(BOS)への展開も進めている。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)
九州電力と西部ガスが出資するひびき発電合同会社(北九州市若松区)は北九州市に計画するLNG(液化天然ガス)を燃料とした発電所「ひびき発電所」の新築工事に三菱重工業・三菱電機JVの設計・施工で着手した。10日に工事を開始した。2025年度末の営業運転開始を目指す。
建設地は北九州市若松区向洋町38の5のひびきLNG基地の隣接地。出力は62万キロワット(1基)。発電方式は二酸化炭素(CO2)排出量が少ない、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた高効率の発電方式であるガスタービンコンバインドサイクル方式を採用する。水素などのカーボンフリー燃料の活用を視野に入れた設備とする。建物規模は総延べ約10万平方メートル。
事業主体の合同会社は22年4月に設立。発電所の建設により「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、九州地域の発電設備の低・脱炭素化に努めるとしている。
流域全体でハード・ソフト一体の水災害対策を推進する東北地方整備局の新組織「流域治水推進室」の出発式が16日、仙台市青葉区の合同庁舎で行われ、業務をスタートした=写真。多発する豪雨災害で地域をサポートし、課題を横断的に対応・解決していくことを確認。流域治水の取り組みでは、鳴瀬川水系吉田川、阿武隈川水系釈迦堂川の2河川で2023年に東北初の特定都市河川の指定を目指す計画を示した。
発足式には室長の斉藤喜浩河川調査官、副室長の能勢和彦都市調整官と川口滋地域河川調整官、大宮達徳用地調査官をはじめ河川、建政、用地の3部からオンラインを含め29人が参加。斉藤室長は「流域治水を進めるためには、地域の特性に応じた東北らしい氾濫リスク対策を考えていくことが重要だ。これまで以上に連携を深め、街づくりや生業も意識しながら、具体的な取り組みを積み重ねていきたい」と呼び掛けた。
初顔合わせで、流域治水の取り組み事例や特定都市河川浸水被害対策法などについて共有。自然災害に対応した安全な街づくりやグリーンインフラの施策も紹介した。今後、勉強会や現地視察で意識を高めるとともに、東北管内の各事務所や自治体と情報交換しながら連携を図ることを確認した。
東北整備局では12水系で、あらゆる関係者が協働して治水対策を進める「流域治水プロジェクト」を策定。このうち7水系で「緊急治水プロジェクト」が進行する。特定都市河川浸水被害対策法に基づき、21年11月の法改正で特定都市河川を全国の河川に拡大したことを受け、水害リスクを踏まえ流域の貯留・浸透機能の向上を図る。
19年の東日本台風で被害を受けた吉田川では流域治水部会を設置。釈迦堂川は流域水害対策検討会を設けた。集中豪雨などの度重なる洪水被害や地形などの特性を踏まえ流域治水対策を協議。いずれも23年の特定都市河川指定を予定する。
特定都市河川は2河川ともに、国土交通大臣が指定する。一定規模の開発事業や雨水浸透の阻害行為が許可制になる。
このほかの流域でも順次、特定都市河川の指定に向け取り組みを進めることとしている。