中日本高速道路会社は、神奈川県沿岸を通る西湘バイパス(BP)の滄浪橋で行っている塩害対策を強化する。コンクリート中の塩化物イオンの濃度を低減し、鋼材の腐食環境を改善する脱塩工と表面被覆工に加えて、プレストレストコンクリート(PC)橋桁のPCグラウトを再充てんする対策工法の開発を進める。海から飛来する塩分で損傷した箇所が多く、予防保全と対策工法を巡る対応を急ぐ。 西湘BPは2021年1月27日に開通から50年が経過した。同社は西湘西宮IC(二宮町)~箱根口IC(小田原市)の14・5キロを管理している。大部分が二宮海岸や小田原海岸に沿って整備され、構造物は台風などで波をかぶる過酷な環境で維持管理している。 滄浪橋は小田原市内の橘IC付近~国府津IC付近に位置する橋梁延長5685メートル(269径間)のPC単純T桁橋。PC橋が延長の4992メートル(240径間)を占める。塩分によって桁の損傷が進行し、開通から約20年となった1991年ころ断面修復工と表面被覆工に着手。表面被覆工は主に91~93年に240径間で行った。99年からは電流の電位差で腐食を防ぐ西湘BPの電気防食工を開始し、滄浪橋は主に2003~13年に240径間の88径間に適用した。 波の届く滄浪橋は受電設備の管理が難しく、19年から脱塩工と表面被覆工を組み合わせた塩害対策を始めた。コンクリートの塩化物イオン濃度を低減した後、コンクリートと内部の鋼材が劣化しないよう、コンクリートの表面を被覆する。240径間のうちの54径間で行っている。 施工中の塩害対策は鉄筋の腐食を防ぐのが目的。滄浪橋は鉄筋の腐食だけでなく、PC鋼材の損傷も発生している。PC鋼材をくるむシース管の内側に注入するPCグラウトが不足している箇所は、グラウトによるPC鋼材の防食効果がなく、PC鋼材と桁の劣化が進行しやすいためだ。補修や電気防食、防水塗装を施した箇所でも再び劣化することになる。 同社は滄浪橋でPCグラウトの充てん状況の調査と再充てん工法の技術開発に取り組んでいる。これまでに240径間のうちの37径間でPCグラウトの重点調査を行い、36径間に2000以上の調査箇所の約13%に相当する充てん不足があることを確認した。超音波の特性を生かす広帯域超音波法を利用した非破壊検査で充てん状況を判定。不足箇所は鉄筋探査の後に、削孔した位置からシース管を開削し、ポンプでPCグラウトを再充てんする作業を試験的に行った。今後必要な技術基準を定めることにしている。 施工当時の工法やシース管では充てん不足が避けられなかったが、材料や工法の改良と基準の改定に伴って1999年以降は充てん不足の発生リスクが低くなった。同社、東日本、西日本の高速道路会社3社は、想定していなかった劣化事例への対応を検討中で、滄浪橋の知見などが生かされるという。
滄浪橋の脱塩工充てん状況の確認作業(中日本高速道路会社提供)
source https://www.decn.co.jp/
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