◇30年に市況転換
日本政策投資銀行(政投銀)と価値総合研究所(東京都千代田区、桐山毅社長)が、オフィスビルに対する意識調査の結果をまとめた。テナント企業らにオフィスビルのニーズを聴取した結果、賃料や立地条件に加えて「環境配慮」と「ウエルビーイング」を重視して入居先を選択する傾向にあった。両者は2030年ごろに市況が転換すると予想。ビルオーナー側はニーズを機敏に捉える柔軟な姿勢が求められそうだ。
意識調査は22年8月16日~9月14日に実施した。対象は▽東京23区に本社を構えるテナント企業▽デベロッパーを含むオーナーサイド▽金融機関を中心とした投融資サイド-の3者。有効回答数はテナント199件(うち非上場企業など187件)。オーナー・投融資サイド102件で、デベロッパーや不動産運用会社の回答が59件を占めた。
調査の結果、テナントの多くが立地条件や賃料に加えて環境配慮やウエルビーイングに対応した施設を好む傾向にあった。各国企業がSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)に対応した経営にシフトする中、環境に関連した情報開示は一層厳しさを増している。外部環境の変革が、オフィスの選択基準に変化をもたらしているようだ。
ウエルビーイングを重視する理由として「優秀人材の獲得」や「社員の満足度の向上」を挙げた。両者は、快適で環境にも配慮したオフィスを求める傾向は今後も続くと見通す。双方を兼ね備えた施設に入居を希望するテナント企業の中には、賃料の上昇を許容する社も存在した。ただ経営の圧迫を懸念する中小・中堅企業の多くが、賃料引き上げに難色を示しているとの結果も得た。
経営を継続する上で必要な資金を借り入れる場合、金融機関や取引先側からESG関連の情報開示を求めるケースが増えている。経営環境の変化を捉え、環境配慮やウエルビーイングを積極的に対応する中小・中堅企業は増加する可能性がある。
良質なオフィス環境の整備に軸足を置く理由の一つには、人材採用の面でメリットがあるからだ。熾烈(しれつ)な人材獲得競争を勝ち抜く上で、政投銀らは「賃料上昇を許容する層の裾野が広がる余地は大きい」と分析する。
オーナーサイドに対しては、テナントの要望に応えなければ「長期的に選ばれなくなるリスクがある」と警鐘を鳴らす。30年度までに二酸化炭素(CO2)の排出量を13年度比で46%削減するという政府の政策目標に呼応し、民間企業が環境配慮の取り組みに注力している。両者は「30年ごろに不動産市場のパラダイムシフトが起こる」と予想。稼働率を維持するため、ニーズを積極的に取り入れる姿勢を求めている。
source https://www.decn.co.jp/
0 comments :
コメントを投稿