2023年1月19日木曜日

デジタルで建設をDXする・88/樋口一希/今後のBIM展開を左右するCDEとは

 国土交通省が2025年度までにBIM相互のデータ連携環境の構築とともにBIMによる建築確認申請の試行を開始するとし、80億円規模の建築BIM加速化事業を実施するなどBIMを巡る環境は急変している。そのような状況下、BIM相互のデータ連携を可能にするSaaS(Software as a Service)として注目を集めているのがCDE(Common Data Environment)だ。今後のBIM展開を左右する最も重要なファクターであるCDEについて概説するとともに、代表的なCDEとしてBimsync(グローバルBIM社)について例示する。

 □CDEに関する情報源として注目の建築BIM推進会議とBIMの国際規格としてのISO19650□
 CDEは「建設プロジェクトに関わる多くの組織がより効果的に協働するために必須なクラウド上の共通データ環境」と訳される。CDEに関する情報源としては、国交省の建築BIM推進会議やBIMの国際規格であるISO19650に求めることができる。
 建築BIM推進会議は、BIM普及の課題としてデータの不連続を解消するために情報共有基盤の整備を目的とし、CDEについて詳細に検討している。創る=設計BIMから、建てる=施工BIMを経て、管理する=維持管理(FM)BIMに至る建設プロジェクトにおいては、前工程から後工程にデータをバトンタッチ方式で供給(Data Delivery)するとともに、関係者間でデータを共有(Data Share)するCDEが必須としている。
 ISO19650では、発注者による発注者情報要件(EIR)と資産運用時の情報要件(AIR)に従い、設計・施工業者は、プロジェクト情報モデル(PIM=設計・施工段階のBIMモデル)を作成し、維持管理業者は資産情報モデル(AIM)を作成するとしている。合わせて、ライフサイクルコンサルタントがPIMを維持管理に使用するAIMへと展開するとしており、データ連携の核心にはCDEが位置づけられている。

 □IFC・BCFを基軸としてオープンBIMによるコラボレーション環境を実現する「Bimsync」□
 Bimsyncは、ノルウェー・オスロのCatenda社が開発、提供している建設プロジェクト管理に特化したプラットフォームだ。クラウド(サーバー)で稼働し、インターネット経由で利用するのがSaaSとされるゆえんであり、そのためWEBベースで利用でき、OSやデバイスには依存しない。
 デジタル情報は、組織の壁もシームレスに越えていくが、組織によって使用するBIM関連ソフトが多様であり、データ互換性はない。図にあるように、Bimsyncは、異なるソフト間のデータ連携を可能とするオープンフォーマットであるIFC(Industry Foundation Classes=ISO16739)・BCF(BIM Collaboration Format)を基軸としてオープンBIMによるコラボレーション環境を実現する。

 □IFCデータのアップ・ダウンロード+リビジョン管理+ダイレクトリンク+API連携を実現□
 オープンBIMによるコラボレーション環境については、IFCデータのアップ・ダウンロードはもちろんのこと、BIMデータの履歴のリビジョン(改訂)管理から、3次元モデルの重ね合わせ+点群との重ね合わせ、2次元・3次元の切り替え表示、意匠・構造・設備モデルとの確認調整まで優れた特徴を備えている。
 主要なBIMソフトである「Archicad」「Revit」「Tekla」などでは、プラグインによるダイレクトリンクが可能で、IFCによる入出力、BCFでの連携も実現、NYKシステムズの「Rebro」とはプラグインによるダイレクトリンクの開発に着手するなどBIMの推進を加速すると思われる。
 API(Application Programming Interface)による外部アプリケーションとの連携もCDEとしての可能性を広げており、先進的なIWMS(Integrated Workplace Management System=統合型職場管理システム)などとの連携も実現、「MainManager」などとの連携も推奨している。直近では建物設備データ、IoTデータなどとAPI連携できるソリューションをリリースするなどBuilding OS(BOS)への展開も進めている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)



source https://www.decn.co.jp/?p=149560

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