文化庁は21日、建築家や学識者らで構成する「建築文化に関する検討会議」(座長・後藤治工学院大学理事長)の会合を東京都内で開いた。建築文化を文化領域の一つとして確立し、建築物単体だけではなく、それを取り巻く風景や街並みを含め、保存や活用の方向性を探る。会合で後藤座長は「建築文化振興法」の制定を提案。近代建築物の維持・保存、継承を後押しするため、同法に基づき指定された建築物を再利用する場合、交付金や補助金で助成率を上乗せするといった優遇措置も案として示した。
5月25日に開かれる次回会合で検討会議の報告書案を提示し、6月初旬までに報告書を決定する予定だ。政府が同月にもまとめる2024年度予算編成方針などを示す「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)への反映を目指す。
会合で同庁は報告書の方向性を提示。それを踏まえ有識者が意見交換した。
同庁は、3月に決定した「文化芸術推進基本計画(第2期)」に「建築文化の振興」が盛り込まれたと説明。建築を文化として捉える流れが政府の中でできつつあるとした。
後藤座長は「建築文化は国土交通省や農林水産省など他省庁と連携の深い点が、ほかの伝統文化との最大の違いだ」と指摘。そうした性質を踏まえ、文化芸術に関する既存の法律に建築文化を組み込むのではなく、建築文化に特化した振興法の整備を提言した。あくまでも討議の中で意見が出た段階で、法整備の方針が固まったわけではない。ただ文化庁の担当者はこの提案に対し「(建築文化を振興していく上で)確かに法律は必要になってくると思う」と前向きに受け止めている。
国内の近代建築物を巡る課題として、建築、維持、取り壊しの循環スパンが短い点が指摘されている。会合では取り壊しを抑制するため税制の在り方や地域でのルール作りも論点となった。
委員として参画する建築家の隈研吾氏は、近代建築が取り壊される制度的な課題として、既存不適格建築物と相続税を挙げた。経済面の話も含め、適切な保存・活用を促すための指針の必要性を訴えた。
source https://www.decn.co.jp/
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