建設工事の現場レベルで法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用が浸透していない。国土交通省が元請各社の支店や現場所長に取引実態を直接ヒアリングした2022年度のモニタリング調査で、下請に標準見積書の使用を働き掛けている元請は15%にとどまった。企業単位を対象とする下請取引等実態調査の数値(22年度69・3%)、企業規模が比較的大きな元請が対象だった前年度のモニタリング調査の数値(37%)をいずれも下回る。国交省は調査対象企業に改善を求める文書を送った。
国交省は21年10月以降、モニタリング調査を継続して実施。21年度は完工高1000億円以上の元請を中心に80カ所(1社で複数支店・現場を含む)、22年度は1000億円未満の元請を中心に149カ所(同)を訪問し、19~22年度に受注した「工期1~3年程度・工事費1~50億円程度」の工事を主な対象に下請取引や価格転嫁・工期設定の対応状況を聴取した。
標準見積書の活用が低調だった理由として、国交省の担当者は「前年度に比べヒアリング先の企業規模が小さめだったため、対応が鈍くなったのでは」とみる。同一企業でも支店・現場ごとに対応がバラバラなケースがあり、本社として適切に取り組んでいても現場まで指導が行き届いていない可能性もある。
国交省は明確な算出根拠に基づき適正な法定福利費を計上するため、標準見積書を活用する必要性を強く訴える。標準見積書の使用の有無にかかわらず見積書に法定福利費が明示されているのは92%に上ったが、中には適正額かどうか元請がチェックしていないケースもあったという。
最終的な適正額の計上を確認するため契約書に法定福利費が明示されている必要もあるが、その割合は74%にとどまった。契約額に占める法定福利費の割合が著しく低い契約は14%(前年度14%)、端数処理とは思えない大幅な一括値引きがある契約は9%(26%)。
そうした不適切な対応が疑われるケースの約3割で施工体制台帳などの作成や記載内容の真正性の確認が十分に行われていなかった。
source https://www.decn.co.jp/
0 comments :
コメントを投稿