◇現時点では「困難」との懸念も
2024年4月に迫る時間外労働の罰則付き上限規制適用を前に、ゼネコン各社は長時間勤務が見受けられる現場の対策を急いでいる。限られた人員の中でいかに生産性を高めるか。日刊建設工業新聞社が主要ゼネコン35社に実施した働き方改革のアンケートでは上限規制の達成が一筋縄にはいかない状況が浮き彫りになった。必須となる生産性の向上は施工管理業務などのDX化、アウトソーシングを含む現場支援の強化を挙げる企業が大半を占めた。=3面に回答企業一覧
働き方改革関連法では時間外労働(休日含まず)の上限が原則月45時間、年360時間に設定され、来年4月以降は特別な事情がなく超過した場合は罰則が科せられる。
アンケートでは上限規制を見据えた達成度合いを土木、建築現場でそれぞれ▽達成済み▽達成のめどが立っている▽達成のめどは立っていないが順調に削減が進んでいる▽労働時間削減の必要性を感じているがなかなか難しい▽達成は困難-の5段階から選んでもらった。内勤では「達成済み」の企業がある一方、現場は「達成済み」がなく「めどが立っている」は建築で1社(3%)、土木で1社(3%)。「達成は困難」「難しい」と答えた企業が半数以上を占め現場の対策が喫緊の課題となっている。
5年の猶予期間にゼネコン各社は異業種とも連携し、生産性向上に向けた技術の開発や業務のDX化に苦心してきた。現場のDXはAIやIoT、ウェブカメラなどを活用した施工管理の見える化や効率化が大きく前進。現場職員へのタブレット端末の普及も進み、日々の作業間連絡調整や入退場管理、安全書類作成など施工管理を支援するクラウドサービスの導入が目立つ。
一定の効果が出ているものの、「特効薬はなく劇的な効果がない」「思い描いたシナリオには至っていない」「最後の詰めが一番難しい。相当強力に進める必要がある」との声も漏れる。
「働き方改革につながるツールは整えた。あとは使ってもらうだけだ」と話すのは大手ゼネコンの担当者。好事例の水平展開が普及の鍵になるが、現場の着実な進捗(しんちょく)や利益確保が求められる中、新しいツールの導入などに踏み切りづらく、支店や現場で足並みがそろわない状況も招いている。
「工事開始時点で本社が決めた基本的なICTツールの一括導入を決めた」(準大手ゼネコン)。従来の支店・現場判断から本社主導に切り替える企業もあり、危機感や会社の本気度を示すトップの姿勢が一層求められる。
DXは上限規制への対応だけでなく、将来の人手不足を見据えた施工体制の維持や企業の持続的発展に欠かせない要素だ。その基盤とも言えるBIM/CIMの活用促進、施工機械の無人化や自動化に加え、ロボット開発など業界の垣根を越えた取り組みも加速しなければならない。DXはツールの一つに過ぎない。使い手の意識改革やスキルアップ、現場の支援体制の強化、人材の増強や教育など複数の施策を地道に積み重ねていく以外に働き方改革実現への近道はない。
source https://www.decn.co.jp/
0 comments :
コメントを投稿