2023年5月15日月曜日

首都圏Look at/旧晴海鉄道橋を遊歩道化/東京・豊洲~晴海に水辺空間創出

高層マンションやショッピングセンターが立ち並ぶ東京都江東区豊洲と中央区晴海。両地区を隔てる運河に年代物の鉄道橋が架かっている。戦後、臨海部で輸出入品を運ぶ貨物専用鉄道の路線の一部として整備した「旧晴海鉄道橋」だ。東京都は歴史的遺構でもある鉄道橋を遊歩道としてよみがえらせようと、約5年間で進める改修工事が折り返しを迎える。
東京港の貨物専用鉄道は1930年、当時の東京市が汐留駅~芝浦駅間を開通させたことが始まりだ。その後、越中島駅まで線路を延伸した。50年に豊洲に石炭埠頭が開設すると、53年には越中島駅から分岐し石炭埠頭までの約2・6キロを結ぶ深川線を整備。57年に深川線から分岐し、晴海埠頭までをつなげる約2・2キロの晴海線が57年に開通した。晴海埠頭に行くには運河を越える必要があり、この時に架けられたのが旧晴海鉄道橋だ。
同橋は橋長190メートル、幅員3・8メートル。鉄道橋として日本初のローゼ橋で、連続プレストレストコンクリート(PC)桁を採用した。東京都港湾局が事業主体となり、旧国鉄が工事を担った。
晴海線が開通したのは、日本が高度経済成長に突入する時期。晴海線ではロール紙や小麦、大豆、雑貨などを運び、日本の経済成長を支えた。65年ごろには貨物専用鉄道の総延長は24キロまで拡張し、取扱量もピークになる。だが75年以降、陸上貨物の主役が鉄道からトラックへと徐々にシフト。鉄道の取扱量は年々減少し、晴海線は89年に廃止となった。
廃止後、鉄道のレールは撤去されたが、橋はそのまま残った。都の担当者は「長い目で見て、価値のある橋だという配慮があったのではないか」と説く。都は海上公園の今後の取り組み方針などをまとめた「海上公園ビジョン」を2017年に策定。旧晴海鉄道橋の遊歩道化を掲げた。
晴海と豊洲の両地区は現在、沿岸部に公園が整備されている。豊洲地区には大型施設があり、多くの人が来館する。東京五輪・パラリンピックの旧選手村があった晴海地区は、大規模マンションを整備中で今後、居住者の増加が見込まれる。「豊洲と晴海の二つの地区が遊歩道でつながることで、過ごし方がこれまでと違ってくる」(都担当者)。「水辺を散策したい」という都民のニーズも増えているという。
都は19年度に遊歩道化の設計に入り、オリエンタルコンサルタンツが担った。21年2月、旧晴海鉄道橋の改修工事に着手し、21年度内に晴海側の下部工耐震補強を完了。21、22年度には豊洲側の下部工耐震補強を行った。下部工は新井組(晴海側)と松鶴建設(豊洲側)が施工した。23年度から上部工の部材補強や塗装塗り替えが本格化。JFEシビルが施工を担当する。遊歩道化工事は10月に発注する予定。25年度までの完成を目指す。
遊歩道の幅は人が二人並んで歩ける程度で、自転車は通行禁止になる見通し。豊洲・晴海両エリアを歩いて巡る--。都民が親しめる水辺空間を提供する海上公園の一部として、歴史的価値の高い鉄道橋に新たな魅力が加わるだろう。

旧晴海鉄道橋。周辺は高層マンションなどが立ち並ぶ(東京都提供)

source https://www.decn.co.jp/

1 件のコメント :

  1. 会社の近くの橋、30年ほど前に入社した時から、歩道橋化が望まれていたものです、楽しみです。

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