2018年5月28日月曜日

【回転窓】景観を引き立てる建築へ

2020年東京五輪のメイン会場として建設が進む新国立競技場(東京都新宿区)。最難関とされる観客席を覆う屋根工事が本格化し、スタジアムの全貌が徐々に視覚で捉えられるようになってきた▼5月時点で全体工期の約5割という進捗(しんちょく)。工程計画通りの施工に力を合わせるプロジェクト関係者には申し訳ないが、形が現れてくると早くその全体像を見てみたいと気がはやるのは小欄の筆者だけではないだろう▼建築評論家の馬場璋造氏は自著『日本建築界の明日へ』(鹿島出版会)で「景観はその時代、その社会を反映した公のものであるから景観を論じる場合は常に第三者的立場であることを認識していなければならない」と説く。「所有者の思惑とは別に社会的な存在、公の存在となり景観になっていく」とも▼異なる目的で造られた建築や構造物、残された自然や人工的な自然が時間的・空間的に重層して〈景観〉を生み出す。社会を豊かにするとの明確な目的意識があれば、一つの建築が景観を引き立てることもあろう▼誕生する競技場がそんな建築としてスポーツのシンボル、レガシーになるよう願う。

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