2018年5月28日月曜日

【建設業の心温まる物語】吉川建設(長野県)・佐々木勝敏さん

 ◇あの時の金髪青年との再会◇

 私が20代のころのことです。小規模で短期間で終わる工事に従事しました。工事の内容は単純だったのですが、工事経験が少ない作業員が従事していたため、自ら泥やコンクリートにまみれて作業を行いながら現場管理をしていました。

 そんな中、髪の毛が金髪で、いつもバイクで現場に通ってくる16歳の作業員が2人いました。協力会社の社長は時々フラッと現場に現れると彼らを何かにつけて怒鳴ります。その都度私は必死に間に入り、「これは私が指示してやらせたから」などと言って、かばっていました。また作業中は彼らを励ましながらくぎの打ち方など作業の基本を教えました。

 それから20年ほどたったときのことです。私の子供が保育園に入園し、保護者会の役員を務めることになりました。はじめの役員会のあいさつの時、あるお父さんと話をしました。とても元気で気さくな人で、今はレストランで働いているとのことでした。「がっちりとした体格だな」と思っていると、そのお父さんが「私は昔、土木工事現場で働いていました。佐々木さんのことを知っています」と言うのです。私はその言葉であの時の様子がフラッシュバックしました。

 「あの時の金髪?」

 「そうです。あの時佐々木さんがいなかったら俺、道を踏み外していました。もう一人の仲間もそうです。だから彼と会うといつも、佐々木さんが僕たちをかばってくれたり、仕事を教えてくれたりした時の話をしています」

 彼が立派な父親となって、しかも同じ保育園に子供がいることに胸が詰まり、言葉にできない感動を覚えました。そして、私たちは建設物を造っているだけではなく、同時に人間を成長させ、自分もこうして救われているということに気が付きました。そんな経験を励みにして、今も笑顔で仕事に向き合っています。

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