2018年5月9日水曜日

【現場を担う】発注者×施工者-首都高・舗装改修工事

 東京都心の大動脈・首都高速道路で東京西局第一保全工事事務所(谷岡尚昭所長)が管轄する工事は、交通量が多い上に路肩が狭いなど、過酷な条件下で行われる。

 NIPPOが施工する「(修)舗装改修工事1-207」の現場代理人・新井光一東京東出張所工事主任は、その日の作業を終えた全員が無事に帰宅するまで「安全第一」を貫き、480日間に及ぶ施工を全うしたいと話す。

 ◇国内有数の過酷な施工条件◇

 4月に始動した工事では都心環状線や1号上野線、同羽田線、八重洲線、2号目黒線、3号渋谷線といった路線の高架部や土工部で既設舗装を剥ぎ取り、表基層を敷設する打ち換えが行われる。対象はあらかじめ決められた箇所となるが、降雪時にトラックがチェーン走行して傷んだ場合の緊急工事などにも対応することになる。

 基本的な作業時間は午後9時から翌日の午前5時までだが、大きな音が出せるのは午後11時までというルールが決められている。

谷岡所長㊨と現場代理人の新井氏
都心部を高架で貫く路線は、すぐ脇にマンションのベランダがあるような場所も少なくない。それだけに「騒音だけでなく、工事に伴う臭気などにも十分気を使いながら行う」と新井氏。工事を取り仕切る現場代理人として、その日の作業が始まる1時間前からミーティングを開き、「安全上必要な場合以外は余計な話はしない、車のドアを閉める時もできるだけ気を使うなど細かい指示を出す」という。

 細心の注意を払いながら工事を進めても、音に対する人の感じ方は千差万別。「もう少し静かにしてほしい」などと第一保全工事事務所に苦情の連絡が入ることもある。そうした場合、谷岡所長は「事情を伺った上で工事の内容をしっかりと伝え、理解していただける努力を重ねる」と話す。円滑に工事を進めるために周辺住民の協力は欠かせない要素だ。

 交通が激しい対象路線での舗装工事はカーブが多かったり路肩が狭かったりする、国内でも有数の厳しい現場条件での施工を強いられる。ひっきりなしに車両が行き交う中での施工なだけに緊張感が途切れることはない。

 そんな厳しい環境で作業する施工者に対して谷岡所長は常日頃、発注者の立場から「皆さんが元気で安全に家に帰って家族に会うまでが仕事だと伝えている」という。日々の現場作業は総勢40~50人ほどで行われる。過酷な条件下で全員に安全第一で工事を進めてもらわなければ、次の日の作業を行うこともできなくなるからだ。

 舗装の打ち換えは1車線ずつ行うため、走行車線にはみ出て規制用のカラーコーンを並べざるを得ないこともしばしば。谷岡所長は「並べ方一つとっても安全のために注意しなければならない」と厳しく指導することもある。

 新井氏との付き合いが既に十数年に及ぶ谷岡所長は、「これだけ難しい現場の頭を張っているのだから、NIPPOの中でも有数の人材だと思う。誰でもすぐにできるような仕事ではない」と、能力に太鼓判を押す。現場代理人として日々の作業をけん引し、若手社員の指導にも情熱を持って当たる姿に、全幅の信頼を寄せている。

 ◇無事に帰宅するまで「安全第一」で◇

 新井氏は、谷岡所長を“厳しい人”と評しながらも「われわれのことを思っていろいろなことを言っていただける。その意思に施工者として応えていきたい」と述べる。

 谷岡所長は、大学院を出て首都高速道路公団に入ってから、長く新設構造物の設計や調査・計画などの仕事を担当してきた。その後、現場での品質管理や保全に携わるようになった。

 最初の開通から半世紀以上が経過した首都高の保全は本当に大変な仕事だが「ここでしっかりと施工ができれば、どこへ行っても通用するだろう」。その言葉には保全の仕事が施工者と一緒に行うものだと考える、谷岡所長の熱意が込められている。

 新井氏は、調査会社勤務を経てNIPPOに入社した中途採用組。まだインターネットもない時代、図書館で見たアスファルトフィニッシャーで行う舗装工事の写真に「道路がきれいに仕上がることに魅力を感じ心がときめいた」という。その思いを今、現場代理人として一歩一歩着実に実現している。

 過酷な首都高での保全工事には、同社に代々受け継がれてきた技術が生かされている。時代が変わる中でも「それを次の世代にもしっかりと引き継いでいきたい」。そう述べる新井氏を谷岡所長は、組織を超えて時に厳しくも温かく見守っている。

 《工事概要》

 【工事名】 (修)舗装改修工事1-207

 【発注者】 首都高速道路会社

 【施工者】 NIPPO

 【工事場所】高速都心環状線、高速1号上野線、高速1号羽田線、高速八重洲線、高速2号目黒線、高速3号渋谷線

 【工事内容】高架部および土木部の舗装打ち換え工

 【工  期】480日間

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