2023年3月30日木曜日

関東整備局日光砂防/独自対策で不調不落ほぼゼロに、インフラDXも注力

◇DXにも積極姿勢貫く
関東地方整備局日光砂防事務所が独自の不調・不落対策で効果を上げている。山間部の砂防事業は施工条件が厳しく、人手不足の問題が深刻さを増している。こうした状況下、同事務所は総合評価方式でインセンティブを設けたり、技能者不足に果敢に対応したりするなど各種施策を展開。全発注件数の半数を占めていた不調件数が、ここ2年でほぼゼロ件になったという。村松悦由事務所長は成功の決め手を「コミュニケーションを大事にしてきたこと」だと語る。
2021年4月に着任した村松所長がまず取り組んだのは不調率の改善。施工条件の厳しい工事に参加する建設会社は限られ、地元建設業からは「(技能者不足で)国の仕事まで手が回らない」との声も聞こえる状態だったという。厳しい状況を打破するため、同事務所は独自施策を打ち出してきた。
施工条件が厳しい工事を「日光砂防現場技術力認定工事」に独自で指定。工事を完遂した受注者にはインセンティブを付与。次回以降の入札参加時に総合評価方式で加点評価する取り組みを22年度に始めた。再度の入札参加を後押しするとともに、「自治体実績活用型」を積極的に活用し新規参入も促している。
予定価格の設定にも配慮。積算時は材料単価に注意を払い、生コンクリートなど価格変動が大きい資材は調査時の価格と実勢価格に差が生じないよう見積もりを積極活用。技能者不足に対しては、遠方からの技能者向けに宿泊費用を手当てしている。
最も大事にしているのはコミュニケーション。積み重ねてきた信頼関係が、厳しい施工条件の多い山間部の工事でも不調・不落を防ぐ決め手になっている。さまざまな手だてが功を奏し、22年度は入札参加者ゼロの工事をほぼ根絶することができたという。
日光砂防事務所はインフラDXにも力を注ぐ。現場では小規模ICT施工や遠隔臨場を積極的に取り入れている。栃木県建設業協会(谷黒克守会長)と協力して、経営者向けセミナーと技術者向け講習会を両輪にICT施工の普及拡大を図ってきた。
厳しい人手不足に直面する地域や工種は、生産性向上がより求められている。同事務所は関東エリアで初めて衛星通信を使って遠隔臨場を実施。23年度は別の衛星通信キャリアを用いた遠隔臨場にも挑戦する予定だ。
山間部では技能者不足や高齢化に歯止めがかからないのが実情だ。不調件数をゼロにできても、地域建設業が衰退すれば再び不調・不落が増えるだろう。若手技能者の確保には「コンビニ」「スマートフォン(の電波)」の二つが必要だが、山間部の現場にはどちらもない。同事務所では学校と連携した地域教育なども推進。「広く知ってもらえれば必ず建設に興味を持ってくれる人がいるはず」(村松所長)と将来につながる施策にも取り組んでいる。

過酷な山岳土木の現場は人手不足の最前線でもある
source https://www.decn.co.jp/

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