2023年3月28日火曜日

回転窓/海鷲と秘匿基地

福岡の都心に近く、自然豊かな人気スポットの糸島半島。多くの人が訪れるエリアながら、太平洋戦争末期に海軍航空隊の秘匿基地があったことはあまり知られていない▼冬場に名物のカキ小屋でにぎわう半島南西部、船越地区の「玄界基地」には滑走路も専用宿舎もない。本土決戦にも備え、身を隠すように水上機「瑞雲」など約100機を配備。波穏やかな船越湾から飛び立ち、戦地・沖縄への飛行を繰り返す。隊員は地域の民家に分宿し、それぞれの家族らと交流を重ねたという▼戦後、基地解散時に関連資料は全て焼却処分された。基地の存在を知るすべは少なく、長くベールに包まれた。志摩町(現糸島市)に元隊員が1冊の私記を寄贈したのは平成の半ば。それを基に基地の全容を明らかにしようと、地元有志が奔走。2003年、基地跡に記念碑が建てられた▼福岡で暮らしたこの3年、基地跡を何度も訪ねた。碑文には「平和日本の尊い礎となられた若き海鷲の鎮魂と世界の恒久平和を祈念し此の碑を建立する」との文字▼静かな海原を見守りながら平和の尊さを訴える記念碑。海鷲は今の世をどう見ているのだろう。

source https://www.decn.co.jp/

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