松尾芭蕉に春を詠んだ有名な句がある。〈花の雲鐘は上野か浅草か〉。江戸深川の芭蕉庵で作られた▼聞こえてくる鐘の音は上野の寛永寺か、それとも浅草の浅草寺か。咲き誇った桜が連なり雲のように見える中で思いを巡らした。春の穏やかな情景が目に浮かぶ▼インターネットで調べると、〈花の雲〉を〈花曇り〉とする解釈もあるよう。これは桜が咲くころに薄く曇っている空を表す言葉で、春の季語でもある▼14日に気象庁から全国一番乗りで開花が発表された東京の桜は、今週に満開を迎える。平年より10日も開花が早く、時事通信は「桜の開花は地球温暖化で全国的に早くなっているが、東京は都市化の影響もあるかなと考えている」と同庁東京管区気象台担当者の話を報じている。花を楽しめる時期が終わってしまうのも前倒しとなるが、今年は秋にも桜が注目を集める▼9月8日開幕のラグビーワールドカップ2023フランス大会に出場する日本代表チームの愛称は、「ブレイブ・ブロッサムズ(勇敢な桜の戦士たち)」。日本からも桜ジャージを着た大勢のファンが声援を送るに違いない。雲のように満開となって。
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