経営理念の具体化に向け話し合いを進めている |
普通高校を卒業後、二つの会社勤務を経て、建築資機材の販売・レンタルを手掛ける今の会社に就職したのが7年前。杉戸明さん(仮名)は、営業マンとして日々現場に出向いて資材を納入している。営業マンとして心掛けているのが、現場で取引先のニーズを丹念に聞き取る「ご用聞き」としての活動だ。
勤めているのは、グループ会社の建築工事部門を含め社員が10人ほどの小さな職場。社長は、さまざまな業種の企業が加盟する中小企業団体に参加している。団体は会員各社に経営理念の策定を推奨。杉戸さんの会社も昨年1月、「わたしたちは、お客さまの“創る歓び”と“想い”を創造します」「わたしたちは、個人の知識と経験を最大化し、協働します」「わたしたちは、人と人が繋がる地域を愛し、地域を活かします」の3項目を柱とする経営理念を成文化した。
経営理念には、社会的存在意義やビジョンを明らかにし、社員の使命感や意欲を高めていこうという思いが込められている。社内では成文化後、理念の内容を具体化するための委員会を精力的に重ねている。
杉戸さんは最近、社会人として初めて3人の部下を持つ立場になった。中小企業団体の支部会にも顔を出している。「うわべの付き合いではなく、経営者同士が本音で語り合える貴重な場であり、勉強になる」と感想を語る。
部下の仕事ぶりを見て、物足りないと感じることもある。「『この日までにこの商品を持ってきてほしい』という顧客からの電話があっても1、2件当たってみて在庫が探せないと、すぐに諦めてしまっている。諦めが早い」。世代間ギャップの大きさを感じている。
中小企業団体の会合に出て気付かされたのは「上司が本気でぶつかっていかないと、部下は変わらない」ということ。会合への出席は、部下への指導という面でも役に立っている。
経営理念を具体化するために、全社員参加で地域貢献を検討する委員会も立ち上がった。自社ビルの1階にある倉庫を活用して、地域の人たちも参加できるようなイベントを開催できないかと話し合っている。
会社は製品の自社開発を進めている。「建築資機材の販売・レンタル業は同業社が多く、価格競争に陥りやすい」。杉戸さんは、自社製品を持つことによって提案営業を行い、受注獲得を狙いたいとする。
経営理念に掲げた「創る喜び」。ものづくり現場を顧客とする会社として、子どものころに感じた創ることへの感動やわくわく感、際だつデザイン、幸福感などをイメージしている。
日々の仕事を進める上で、絶えず経営理念を意識し、協力会社や仕入れ先と協働することを心掛けている。
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