2018年10月19日金曜日

【回転窓】消えゆく素材を残す努力を

竹酔日(ちくすいじつ)に植え、3年目の10月13日辺りに採集する-。竹細工師の故水谷六々斎が残した言葉だ▼竹の植え替えに最適な日とされるのが旧暦5月13日の「竹酔日」。この日は竹が酒に酔っていて移されたことに気づかないのだそう。その由来は中国の古書に残るとも、民間伝承ともいわれるが、不思議なことに竹が酔う理由は判然としない。ただ、この日に植えた竹は繁茂すると信じられている▼六々斎は竹酔日から3年を経て最もいきおいのある竹にこだわり、花かごなどの作品をつくった。腕を磨くだけでなく、使う材料にこだわるのも一流職人の証しだ▼左官職人の挾土秀平氏から「本物の材料を手に入れるのが難しくなった」と聞いたことがある。「素材を育てる人、保存する人、吟味する人が消えると職人も駄目になる」と警鐘を鳴らしていた▼生け垣やしっくい、畳などに使う材料をどう守り続けるか。高齢者に支えられている世界だけに、残された時間は多くない。技術を継承する前に素材が無くなったというのでは本末転倒。生産者らを含め建築業界も本腰を入れて対応を話し合う時期にきている。

0 コメント :

コメントを投稿