2018年10月22日月曜日

【中堅世代】それぞれの建設業・212

スケールは大きくても、現場の仕事は日々の小さな積み重ねが大切
 ◇覚悟を決めて入社したから辞めない◇

 ゼネコンに勤務する細木一枝さん(仮名)は、今年で入社14年目。大学では交通システム工学を専攻した。ゼミ仲間の多くは行政機関や建設コンサルタント会社に就職する中、「ものづくりの最前線に携わりたい」とゼネコンの土木技術職を志望した。

 細木さんが就職活動をしていた当時は、今のようにゼネコンが女性の採用に積極的ではなかった。特に土木の部署はその傾向が強く、女性と聞くだけで敬遠されがち。エントリーシートを提出しても音沙汰なしという会社もあり、なかなか次の選考に進めなかった。

 それでも建設現場で働く夢を諦めず、就職活動を継続。たどり着いたのが、今の会社だった。「最終的に、男女の区別ではなく、会社と自分の相性が良いということで選んでもらった。入社してそう思った」と振り返る。

 細木さんは、今の会社の土木部門で採用された初の女性技術職。最初に配属されたのは連続立体交差事業の現場だった。入社するまでは、土木の仕事は漠然と大きなものを造るというイメージを抱いていた。「でも実際に現場に出てみると、日々の仕事は本当に小さなこと。それが積み重なって大きくなる」と知った。

 その後、複数の現場を経験し、入社8年目に自治体が発注するボックスカルバート構造の道路工事の作業所に配属された。官庁工事はより厳しい施工管理が求められると聞いていたが、自ら志願した。「官庁の現場が少ない中で良い経験をさせてもらった。RC造の基礎も学べた」。着工から竣工まで携わり、成長を実感できた現場として今でも強く記憶に残っている。

 転機が訪れたのは入社12年目のこと。地下鉄工事の現場に勤務していた時に、産休を取ることになった。上司から「戻ってくるのを待っている」と言われたが、それまでと同じ能力を100%発揮しないと現場に付いていけないと思った。

 現場は予期せぬトラブルが付き物。ずっと張り付いていたり、すぐ対応しないといけなかったりと時間に制約がある。育児をしながらでは務まらない。上司の言葉は有り難かったが、復帰後は内勤を選んだ。

 現場勤務を志望して採用してもらっただけに、会社に対して申し訳ないという思いや、女性としてもっと頑張らないといけないという気持ちはあった。ただ、出産を機に辞めることは一切考えなかった。

 現在は会社の時短勤務制度を活用しながら、育児と仕事を両立。積算部門に所属し、設計図や仕様書から材料や数量を算出しながら、工事費の見積もりを行っている。今でも子育てが一段落すれば、現場に戻りたい気持ちでいっぱいだ。

 後に続く後輩が毎年増えている。「たまたま生物学上、女性というだけ。目標は同じ現場にいるかもしれないし、他の所にいるかもしれない。私はロールモデルを背負いたくない」と力を込める。「この業界に志を持って入ってきた人は、そう簡単に辞めたりしない。みんな入って来る時から覚悟を決めている」。その一人として、入社当時の思いを今も変わらず抱き続けている。

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