東日本大震災による津波で大きな被害を受けた東北の海岸沿いには、被災構造物がそのまま残されている地域がある。震災遺構の保存には被災者から賛否両論が出ているそうだが、残された遺構は想像を超える津波の恐ろしさを来る者に伝える▼土木学会が18年度選奨土木遺産に「阪神・淡路大震災による被災構造物群」を選んだ。特定の歴史的構造物ではなく、複数の震災遺構群を認定する初のケース▼選定に当たった関係者は「被災構造物を保存しようとする動きはあるが、日がたつにつれ、撤去されているのが実情だ」と指摘。阪神大震災の震災遺構も将来的に散逸や消失の恐れがあり、認定はそれを食い止める意味もあったようだ▼阪神大震災は高速道の高架橋が崩れ、土木構造物の耐震基準類が変わるきっかけになった。認定は「土木分野の技術的な発展のための教訓」という位置付けとの捉え方もある▼震災遺構の保存を通じて後世の人々に震災の記憶を伝え、防災意識を高める努力をする。国民の安全を守る技術者に安全へのたゆまない努力を訴え続けることも、土木学会が果たすべき社会的な使命の一つに違いない。
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