2018年10月5日金曜日

【北海道胆振東部地震から1カ月】室蘭建設業協会・中田孔幸会長に聞く

北海道胆振東部地震の発生から6日で1カ月がたつ。最大震度7を観測した厚真町を中心に胆振管内では大規模な土砂災害が多発し、今も多くの被災者が避難所での生活を余儀なくされている。被害の大きかった胆振管内の災害復旧で中心的な役割を果たす室蘭建設業協会の中田孔幸会長に、初動対応や今後の課題などを聞いた。

 --災害発生直後の初動対応は。

 「9月6日午前3時7分に地震が発生して、関係者、役員などが午前5時ころには協会に集まり、災害対策委員会を立ち上げた。その後すぐに北海道庁の室蘭建設管理部(建管)の方からバックホウを集めてほしいと要請があった。北海道開発局の室蘭開発建設部(開建)からも同様の要請があり、会員各社に声を掛け、バックホウを現地に納入する準備をした」

 「その時は被害の概要は全く把握できておらず、ただ崩れたところがあるということが分かっていただけ。役所の方もどのくらい必要なのかつかめない状況での動員要請だった。現場は冬季前の追い込み期のため空いている機械も少なく、発注者と協議し、今稼働している工事をストップさせてバックホウを集めた。まずは発注者と業者が協議し、動員できる機械リストをもらい、各社と運び方、時間などを相談し、トレーラーを手配するのがわれわれの仕事だった」

 --初動対応で困難だったことは

 「一つは、とにかく機械がたくさん必要だろうということで70台を確保したが、それを運ぶトレーラーがなかった。短時間で多くのバックホウを輸送しなくてはいけないので、バックホウの台数に比べたらトレーラーはなかなか手配が難しかった。そのため、北海道建設業協会に支援を要請し、トレーラーが足りなくなった場合の応援要請を行い、北海道建協の方でも準備はしてくれていた」

 「もう一つは連絡手段。地震直後の停電で電話が使えず、被災地は携帯電話の電波状況も悪かったため、現地の状況把握が難しかった。さらに現場は広範囲に広がっていたため、応援要員が現地に到着した際は、役所の責任者に連絡する段取りだったが、携帯電話がつながらないので、同じ現場にいながらも責任者を探すことも難しかった。朝に出掛けて夕方にようやく連絡が取れたということもあり、時間のロスが多かったと感じている」

 --どのように対応を。

 「会員企業に、現地に入ったらスマートフォンで現場を撮影し、こちらに送るようにお願いした。そうすることで、ここ(室蘭建協本部)にいても現場状況を把握できるようにした。そうして現地の同業者からタイムリーに入る情報を、必要に応じて役所の方に提供することもあった」

 「協会内に、山口志郎副会長をトップとして、初動から現地で対応している協会の中核メンバー6者で構成する災害対策支援会議を設置した。現場の所長と協議をしながら、『機械をどう動かすか』『この作業内容ならこんな能力を持つ業者にお願いした方が良い』といったことをアドバイスさせてもらっている。現在も役所や現地の作業員からの要望を受け調整する窓口として機能している」

 ◇業界が主体的に関わる体制造りを◇

 --今後に生かすべき教訓は。

 「協会では国や北海道と防災協定を結び、組織図も作っているが、それを初動対応がしっかりできるような組織体制に変える必要がある。例えば協会の活動範囲は胆振・日高管内と広域にわたるので、市町村単位など各地域ごとの活動体制を整え、その上で各地域が連携することを前提とした組織体制にするなどの見直しが必要だと思っている」

 「これは災害対応全般の話になるが、現状では役所の手も足りていないというのが実情だ。それを補うために、われわれ建設業界がもっと役割を担えるような応急・復旧体制に変える必要があると思う。定期異動などを考えると、現地により精通しているのは、やはりわれわれ地域の建設業者。現状では役所からの指示がなければ動けないが、『土砂崩れが発生したので復旧したい』という目的さえきちんと指示されれば、われわれはおそらく現場の状況も踏まえて効率のいいやり方で対応できる。その方が、被災した人のためには早く復旧に向かえるのでいいと思う」

 --建設会社が果たすべき役割をどう考える。

 「これまでは、発注者・請負者という流れの中で、われわれ建設業者は『言われたことさえやればよい』というような受け身の防災だったが、これからはわれわれ地域に精通する建設業者が主体的に関わる防災が必要になる。そのためにも国も道も市町村も、そして民間も集まった防災体制組織を作り、平時から役割を決め、防災訓練を含めて連携していくことが重要だと感じている」。

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