◇自走式ロボでPC杭内部の品質チェック 地域に根差した事業活動を展開し、独創的な取り組みや新分野にも挑戦している東北の建設関連企業にスポットを当てる「東北のチカラ」。3回目は宮城県石巻市を拠点に土木、建築、漁港・港湾、舗装など幅広い分野で地域の未来創造に携わっている「丸本組」(佐藤昌良社長)の新たな取り組みを紹介する。 土木・建築業を手掛ける丸本組の創業は1946年。「地域の安全、安心を守る。」を経営理念に発展してきた。東日本大震災では社屋が全壊するなど大きな被害を受けたが、地元企業として石巻の復旧・復興に力を振り絞った。 主力の建設事業では、高品質な施工につながる取り組みとして、新しい技術やシステムの開発、現場での活用に力を注いでいる。施工中のプロジェクトを例に挙げると、23年1月に着工した「(仮称)栗原警察署庁舎等新築工事」では、杭工事(基礎工事・杭基礎40本、内径600~800ミリ、延長20メートル)の施工管理に新技術を投入した。試作したのはPC杭内面撮影機「MITSUSUKE01(光祐初号機)」。ひびや欠けなどの目視確認が難しい杭内部を埋設前に撮影し、PC杭の状態に問題がないかをチェックしている。 「光祐」は先頭部分にLEDリングライトとカメラ(GoPro)を装着し、バッテリーで駆動するロボットを使い、杭内部を撮影する仕組み。前後6本の車輪アームでバランスを取り、自走しながら各腕のサスペンションで円柱の中心点を保持する。リモコン操作でPC杭内部を走行し、360度カメラで始点から終点まで撮影。人の目が届きにくい部分まで記録でき、管理の幅と質の向上が期待できる。 イオラボ(横浜市青葉区、吉井崇代表取締役)に製作を依頼し、構想から約半年で試作機を作り上げた。同社の酒井慎一ソリューションデザイナーは「現場で使いやすいようにシンプルな操作を心掛けた」のがロボットの特徴と説明する。5月から岩手、新潟両県の杭工場で検査に試作機を投入した。 (仮称)栗原警察署庁舎等新築工事で陣頭指揮を執る丸本組の桑原武司工事所長は「今まで見えなかった部分が画面で確認できるので、品質向上につながる」と話す。「杭製造会社にも興味を持ってもらっている。バッテリーの持続性など試作で見えてきた課題もあるが、今後の改良につなげていきたい」と語るのは、同社の山岸邦亘技術支援部長だ。 同社は今後の構想として、側溝や下水管内の走行撮影など杭内部以外の展開を検討している。スキャナー機能を付加した3D測量への投入も視野に入れる。同社の山本翔太郎常務は「海外情勢などに起因する物価高騰や度重なる自然災害など課題は山積している。時代の変化に合わせて地域建設業も新しい在り方を模索していかなければならない」と先を見通す。 生産性向上や働き方改革を目指す動きは地域に根差した建設会社も決して無縁ではない。「合言葉は『リボーンワーク』」と話す山本常務は、新技術の開発や実用化によって「今までにない新しい地域建設業を目指したい」と前を向く。
「光祐初号機」と山本翔太郎常務(後段左から2人目)ら 実際の杭内面撮影(丸本組提供) source https://www.decn.co.jp/
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