東日本大震災から11日で12年。福島第1原発事故で発生した除染廃棄物を一時保管する中間貯蔵施設(福島県双葉、大熊両町)の敷地内には特別養護老人ホームが残されている。手つかずのままの姿で震災当時の悲惨さを今に伝える。昨年8月に避難指示が解除された双葉町では、にぎわいを取り戻そうと復興街づくりが進む。震災の記憶と教訓を後生に伝承するとともに、未来志向のプロジェクトが形になりつつある。
特別養護老人ホーム「サンライトおおくま」(福島県大熊町)は福島第1原子力発電所から約1・2キロの距離に位置する。入所者と職員およそ140人は、東日本大震災が起きたその日のうちに避難を余儀なくされた。発災後、最低限しか片付けられていないという。
貴重な震災遺構を現在管理する環境省が2月、報道陣に初めて公開した。建物内には車いすや介護用ベッドが無造作に置かれ、壁や天井が剥がれている。棚から書類が落ちて散らばった様子や動物が出入りした痕跡もうかがえる。
環境省福島地方環境事務所中間貯蔵総括課の服部弘課長は「震災遺構として、このような場所が残っているのも中間貯蔵施設ならではの部分」と話す。安全面から一般公開の予定はないものの、「住民の皆さんの思いが詰まった場所や震災の記憶が残っている場所を示していく必要がある。12年が経過しようとしている中で、忘れさられてしまっている部分はあってはいけない」と語気を強める。
原子力発電所が立地し、すべての住民の避難が続いてきた双葉町でも避難指示地区の解除を受け、復興のつち音が響いている。双葉町役場が2022年9月に再開し、行政機能が回復。双葉駅周辺で復興街づくりが始動している。
駅西側では災害公営住宅86戸を建設中で既に25戸が完成し、同10月に入居が始まった。17世帯20人程度が住んでおり、診療所なども整備された。今後、公共施設や店舗施設などを建設する計画だ。居住が難しくなった家屋の壁にアート作品を描くなど、町の復興を後押しする取り組みも行われている。
同町の担当者は「避難指示は解除されたが、商店街のあったメイン通りにまだにぎわいが戻っていない。まだまだ復興は道半ば」と話す。役場付近や公共用地を使って商業施設の整備を検討している。
20年10月に完成した双葉町産業交流センターの隣で、国と福島県が「福島県復興祈念公園」を整備中。25年度末の完成を目指している。公園の一部は同町中野地区集落の住居跡で、地震と津波の被害の大きさや脅威を伝える空間として残す。国内外に復興に対する強い意志を発信するとともに、震災を風化させないよう記憶と教訓を後生に伝える。
地元の人たちの生活や仕事の基盤を再構築しながら、福島県復興祈念公園などを通じて交流人口を増やすことが福島再生につながっていくだろう。
双葉駅西側で建設が進む災害公営住宅。徐々に入居が始まり一歩ずつ復興に歩みを進めている
source https://www.decn.co.jp/
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