2018年10月1日月曜日

【駆け出しのころ】大成ロテック代表取締役専務執行役員生産技術本部長・松山英吉氏

 ◇失ってはいけない大切な心◇

 北九州市の門司で生まれ育ち、小学生のころは関門国道トンネルを通って遠足などによく出掛けました。その際に先生がどのようなトンネルであるかを説明して下さり、日本にはすごい海底道路があるんだと思ったものです。建設中の関門大橋も見学に行きました。そうやって小さいころから大規模インフラを身近に感じ、毎年のように台風が通過する地域で育ったことも、土木の道に進んだ理由かもしれません。

 入社して最初の赴任地は沖縄です。4月下旬、配属先の九州支社に初めて顔を出した日、私を含めた新入社員3人が支社長とご一緒した昼食の席で、そのままそろって沖縄へ向かうよう言われました。生まれて初めて飛行機に乗ったのがこの時です。那覇空港に着陸してタラップを下りると、あまりの暑さに言葉を失い、「これは3日ももたんな」と真剣に考えていました。でも住めば都と言うように、沖縄での仕事と生活が始まってからはまさにその良さを実感しました。

 担当した現場は米軍基地内にあり、擁壁や大型排水管など一般土木の施工管理を行いました。施工管理といっても新人の仕事は測量や材料試験などが中心です。現場の職員たちは皆若く、互いに競い合いながら測量などを行いました。いろいろな失敗もしましたが、沖縄での3年間は大変に貴重な経験となりました。

 4年目に熊本県内でバイパス道路の工事を担当しました。初めて現場代理人として任された現場であり、上司や先輩に教えてもらいながら施工計画を立てたのですが、実際の施工では次々と予期せぬことが起こりました。そのたびに発注者の方には私や協力会社の職長たちとも一緒になって解決策を検討していただき、一つ一つ問題をクリアしていったのです。竣工を迎えた時、この方から「また一緒にやりたいね」と掛けていただいた言葉がうれしく、その後の自分の大きな糧になりました。

 九州支社に所属していたのは、入社から2011年に本社へ異動するまでの35年間に上ります。このうちの30年間に九州全域で工事を手掛けることができました。

 私たちの仕事に肝心なのはチームワークで、これがなくては目的を達成できません。ただ仲良くすればいいというものでもなく、皆で議論を交わし、納得いくまでコミュニケーションを取ることでチームワークが高まります。情報通信技術などがどれだけ進歩しても、人と人が心を交わせなければ、ものづくりの世界は大変なことになってしまいます。

 そして土木技術者であるからには、出来上がったものへのこだわりと誇りを持たなくてはいけません。これこそ私たちが失ってはいけない大切な心だと思っています。

 (まつやま・えいきち)1976年長崎大学工学部土木工学科卒、大成道路(現大成ロテック)入社。九州支社営業部長、営業本部副本部長、執行役員中部支社長、常務執行役員関西支社長、取締役常務執行役員生産技術本部長などを経て、18年4月から現職。福岡県出身、64歳。

米軍基地内の工事現場で。最初の赴任地は沖縄だった

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