東北地域づくり協会(渥美雅裕理事長)は約100年に及ぶ歴史がある北上川上流域(岩手県)の治水事業をまとめた記録誌『五大ダムと一関遊水地~北上川治水・百年の軌跡~』=写真は表紙=を発刊した。1級河川・北上川水系に国直轄で建設された五大ダム(田瀬、石淵〈現胆沢〉、湯田、四十四田、御所)などの整備と流域社会の歴史的背景などを後世に伝え、担い手の確保につなげる狙いがある。約1200部を用意し、岩手県内の中学校や高校、大学、図書館、自治体などに寄贈する。
北上川上流で本格的な河川改修が始まってから80年が経過し、国内最大級規模の一関遊水地(岩手県一関市、平泉町)の完成が迫っている。これを機に北上川河川事業を俯瞰(ふかん)する記録誌を作成し、ダムの役割・整備効果や河川管理の法制度の移り変わり、次代の川づくりに向けた課題などを確認する。
編さんに携わった平山健一岩手大学名誉教授(元学長)は発刊に当たり「最近の異常気象による自然災害に対する流域社会の脆弱(ぜいじゃく)さが指摘されている。命を守る防災意識の形成や災害に強い街づくりの参考として、若い皆さんにぜひ読んでもらいたい」とのコメントを寄せた。北上川上流域の治水事業については「戦前・戦後の『もの』のない時期に生み出されたダムの建設技術や補償制度の充実は五大ダムが育てた先駆的な成果だ」と高く評価した。
記録誌は土木事業のありのままを伝えるため物語風に分かりやすくまとめ、当時の歴史的背景や生活状況なども紹介している。
北上川上流部は日本の河川総合開発のベースになった物部長穂博士提唱の思想「河水統制」を受け継ぎ、河川改修計画を1941年に策定。「多目的ダム」と「水系一貫管理」を柱とする総合的な治水事業が始まった。
五大ダムは81年の御所ダム完成によって一段落した。記録誌は▽治水▽発電▽灌漑(かんがい)用水▽上水道用水▽社会的効果-の五つで整備意義をまとめている。
source https://www.decn.co.jp/?p=145425
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