2022年8月30日火曜日

東急不動産の我孫子ビレジ/竣工から45年、建て替えず入居率95%維持

 千葉県我孫子市にある東急不動産が開発した複合用途型団地「我孫子ビレジ」。長期の維持管理を前提に設計・施工した20棟の集合住宅(944戸)がある。1977年の竣工以来、建物の計画的な修繕に努め、建て替えを行っていないながらも95%という高い入居率を維持している。我孫子ビレジ団地管理組合法人の田中裕実専任理事は「しっかり造り込んでくれたことで長期の管理が行えている」と強調する。
 所在地はJR常磐線我孫子駅から1・2キロのつくしの3丁目。東京への通勤圏にある大規模分譲団地として、42ヘクタールの敷地に公共施設などの生活関連施設を組み込み、一戸建てエリアとともに開発された。集合住宅は11階建て1棟と14階建て2棟の高層棟3棟(柱SRC一部PC〈プレストレストコンクリート〉造)、5階建ての低層棟17棟(壁式PC造)、2階建ての店舗棟(SRC・RC造)がある。敷地は約4割が緑地。設計は東急不動産、東急設計コンサルタント、施工は東急プレハブなどが担当。東急コミュニティーが一貫して維持管理を行っている。
 欧州の住宅の仕様を踏まえ、設計は長期の維持管理にこだわった。高層棟はSRC造の柱と工場製作のPC部材を組み合わせた当時は国内初の高層建築として建設され、建築確認の際に構造評定を受けた。振動応答解析によって現在も震度6クラスの大地震に十分な余裕があることを確認済み。梁端部と柱の溶接が適正に行われたことも非破壊検査で分かっている。不等沈下が懸念される地域のため杭基礎を採用し、地盤改良を施した。当時は珍しい地上受水槽・圧送給水方式を採用した。
 住戸は給水、給湯、暖房、ガス、生活排水の各管をスラブと床の間に収納し、トイレ汚水管を床上に収めた改修しやすい構造。専有部の給水、給湯、排水の各管は管理組合が所有者に代わって2010年に全戸の改修を終えた。給湯暖房、非常時も想定した受水槽・加圧給水設備などの省エネ改修も計画的に行ってきた。
 各棟は19~20年に3回目の大規模修繕工事を行った。前回から15年がたつ。都市再生機構を参考に、大規模修繕は18年周期を導入しており、36年ベースの長期修繕計画を策定し、管理組合の総会で賛同を得た。計画中の物価上昇や消費増税は織り込み済み。5年後に見直しながら各棟の長期の維持保全に努めるという。住戸内の工事を伴う改修に備え、工法の検証と改修費の算定を行い、長期修繕計画を見直すことにしている。専有部は修繕の細則を定めてある。
 管理組合には理事会傘下の営繕部会があり、維持保全を主導している。同部会は将来「計画修繕委員会」への移行が視野にある。我孫子ビレジは先端性のある設計・施工や、長期の維持・保全などが高く評価され、ロングライフビル推進協会の第31回BELCA賞を受賞した。田中理事は維持管理について「住む人の誇りと認識が支えている」と話す。マンション管理適正化法に基づく物件情報の一般公開を目指しており、安心な住まいを求める若年世代への情報発信に力を入れるという。



source https://www.decn.co.jp/?p=145612

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