今月末を期限とする2023年度予算の概算要求を控え、政府の公共事業予算の行方に注目が集まっている。ここ数年の大型補正予算の影響で前年度からの繰越額が増加傾向にあり、事業執行の停滞を懸念する声が一部で出ている。ただ実際の執行率は過去5年で大きな変動はない。国土交通省は適正な工期の確保や施工時期の平準化に配慮しながら「順調に執行している」と強調する。
政府全体の公共事業の予算現額(前年度からの繰越額と当初予算額などの合計)のうち、20年度の繰越額は4兆6937億円(予算現額の35・2%)と過去最高を更新。21年度も4兆円を超えたと一部報道で指摘された。
「予算が過大で消化できていないのでは」との臆測を呼んでいるが、この見方には注意が必要だ。国交省によると、繰越額の多寡は各年度後半に成立した補正予算の規模に左右される。20年度は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の初年度分を盛った第3次補正予算が、年度末を目前とした1月下旬に成立した。例年以上の予算規模が繰越額に影響したとみられる。
それでは繰り越し分が多く含まれる21年度の予算執行は順調だったのか。国交省分に限ったデータ=表参照=を見ると、予算現額の執行率は契約ベースで91・0%。16年度以降5年間の平均(91・5%)とほぼ同じだった。
各年度の予算のうち最終的に使用されず国庫に返納された「不用額」もごくわずかだ。政府全体の公共事業予算で20年度の不用額の割合は1・1%(国交省分0・8%)。例年も1%前後で推移している。そもそも不用額が生じた主な要因は各事業の効率執行や経費節減という。過大な予算措置のため執行できなかったわけではない。
事業執行を引き受ける側の建設業界からも「施工余力は十分」との声が挙がっている。国交省の建設労働需給調査によると、東日本大震災からの復興需要を背景に技能者不足がピークを迎えた13年度以降、不足率は徐々に小さくなっている。現場でICT導入が進展し施工効率も向上。施工時期の平準化など発注者主導の取り組みで施工力を確保しやすい環境も整えられてきている。
国交省は新・担い手3法を踏まえ、適正な工期設定や施工時期の平準化を推進している。繰り越しとは異なる方法として国庫債務負担行為を積極的に活用。22年度予算では新たな枠組みの「事業加速円滑化国債」を盛り込み、2カ年国債やゼロ国債のいわゆる「平準化国債」が過去最大の規模となった。こうした方向性を23年度以降も引き継ぎ、計画的で円滑な事業執行に努めていく方針だ。
source https://www.decn.co.jp/?p=145412
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