甘い香りが特徴の沈丁花(ジンチョウゲ)は、春を告げる花と言われる。翌年に花を咲かす花芽が付き始めるのは6月ごろのよう。今がその時期を迎えている▼永井永光氏らの共著書によると、作家の永井荷風は東京の山の手にあった自宅の庭に沈丁花20株を買って植えていた。ところが関東大震災が起きた年からなぜか毎年1株ずつ枯れ、残りわずかとなっていく▼荷風は残る花株の数に自分の余命を重ねて占った。大吉が出れば誰の世話にもならずにある日突然に一人で世を去る願いがかなうと信じ、浅草の観音堂でおみくじをよく引いていたともいう。沈丁花の占いは外れるが、後におみくじに託した願いが成就することになる(永井永光・水野恵美子・坂本真典著『永井荷風 ひとり暮らしの贅沢』新潮社より)▼今年は関東大震災から100年。荷風の日記「断腸亭日乗」に震災の体験や荒廃した東京に関する記述がある。「日まさに午ならむとする時天地忽(たちまち)鳴動す」。最初の強震に見舞われた時のことがそう書かれている▼沈丁花が持つ花言葉の一つは「永遠」。過去の災害で得られた教訓を生かして持続可能な社会でありたい。 source https://www.decn.co.jp/
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